村井章子のレビュー一覧
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原文の題名は「今回は違う」であり筆者のデーターは今回も違わなかったことを証明するのみ。
金融危機のパターンは金融規制緩和と資本流入から過剰投資。住宅価格の急騰の後の急落が銀行危機の前触れとして非常に相関性が高い。
日本の借金は対内債務なのでデフォルトはしないとの説を唱える人がいるが、本書を読む限りいつか実質的なデフォルト(例えば高インフレによる債務の希薄化)が来ると覚悟すべきなんだろう。早くローンを返さねば・・・
中国も地方政府がインフラ整備と不動産販売をセットで行い投機資金が流れ込んで高騰。地方債務の担保が不動産なので住宅価格が下がると地方銀行はかなりヤバい。最後は国が助けるんでしょうが。ソフトランディングを祈るのみだが一方でインフレ退治をしているのでかなりの綱渡りの気がする。 -
Posted by ブクログ
過去に起きた国家的な債務危機、金融危機を、1800年以降を中心に(古いところでは1400年代も含めて)長期的な視点でデータを蒐集して研究した大変な労作である。今後は、この本に出ていることは経済・金融関係者にとって当然の共有知識として持っておきたい。ロゴフは"Foundations of international macroeconomics"という優れた国際マクロ経済学の本も書いている。しかしこの本では経済モデルは出てこなくて、データに全てを語らせるというスタイルが貫かれている。588ページの本であるが、本文は414ページまでで、残りは参考資料である。
この本を読めば、金融危機は以前から何度も繰り返し起きていることが分かる。リーマン・ショックもそのうちの1つであって百年に一度などと呼ばれるようなものではない。
以下、いくつかおもしろい文章を抜粋。
* そもそも複数年におよぶリセッションは、大々的な再建を必要とするような経済にしか発生しないものである。たとえば1970年代のイギリス、1990年代のスイス、そして1992年の日本などである(なお日本の場合は、単に金融の崩壊だけではなく、中国の台頭を考慮して経済を方向転換する必要があったことも原因である)。
* 政府債務の衝撃的な急増は、深刻な金融危機に伴うリセッションによって税収が急激に落ち込むことが主因である、ということを改めて強調しておきたい。銀行の救済コストが原因だというようなことがさかんに言われるが、そうではない。多くの場合、危機後の債務負担の増加分に占める救済コストの占める割合は、ごく小さい。
* (ディアツ・アルジャンドロが論文の中で)「金融抑圧をやめると金融危機がやって来る」と述べたように、金融自由化と同時に銀行は国外の信用市場にアクセスできるようになるため、国内でリスクの高い融資をしがちになる。やがて、貸し出しの増大と資産価格の上昇のブームが去ると、銀行のバランスシート悪化が表面化し、銀行部門で問題が起きるという経過をたどる。
* 「最近五回のリセッションのうち、株式市場は九回を予想した」(Samuelson 1966)と、サミュエルソンが茶化したのは有名である。
* 日本を始めとするアジア各国では、銀行危機前に発生した資産価格バブルにおいて商業用不動産が重要な要因となった。
* 【危機の進行過程】 金融の規制緩和→銀行危機の発生→通貨暴落→インフレ率上昇→銀行危機のピーク→対外債務・国内債務のデフォルト→インフレ危機の悪化と銀行危機のピーク
* 銀行危機の先行指標<ベスト>:実質為替レート、実質住宅価格、短期資本流入/GDP、経常収支/投資、実質株価。 <ワースト>:インスティテューショナル・インベスター誌およびムーディーズのソブリン格付け、交易条件。
* 通貨危機の先行指標<ベスト>:実質為替レート、銀行危機、経常収支/GDP、実質株価、輸出、M2/外貨準備。 <ワースト>:インスティテューショナル・インベスター誌およびムーディーズのソブリン格付け、内外金利差(貸出金利)。
しかし"This time is different"を「国家は破綻する」としたタイトルはいただけない。 -
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本書は、1920年代末から始まった世界大恐慌のきっかけとも言われる、アメリカ起こった1929年の株式市場の大暴落について書かれたものです。
初版発行はなんと1954年。50年以上も版を重ねて読み継がれている本です。
題名やテーマから、少しとっつきにくいかもしれませんが、内容は分かりやすく特に難しいということも無いと思います。
ご存じのようにバブルというのは現代だけの特殊な現象ではなく、近代から何度も何度も繰り返されているものです。有名なところでは、オランダのチューリップバブルとか、イギリスの南海泡沫会社バブル、新興市場(当時の南米諸国のこと)や鉄道バブル。新しいところではアメリカのインターネットバブルや日本の不動産バブル等々・・・、枚挙に暇がありません。
そして、おそらくこれからも何度も何度も繰り返されるていくのでしょう。
そういった意味では、典型的なバブルの破裂であった1929年の大暴落について知ることは、決して無駄なことではないと思います。
とはいえ、一種のエンターテイメント作品のような面白さが本書にはあるので、あまり難しく考えずに一度手にとってみても良いのではと思います。
良書だと思います。 -
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そうか、そういうことだったんだ
世の中は、公平・公正ではないそうだ。
「不届きとしか思えないふるまいをしたり(いるいる)、強引に自分を売り込んだり(いるいる!)、上昇志向をむき出しにしたりする他人を見かけると(まさにアイツだ)、こう考える――あんな連中から学ぶべきことは何もない、あいつらは一時的には出世するかもしれないが、いずれ馬脚を露して左遷されるに決まっている、と」こんな無邪気な考えは、捨てたほうが身のためだそうなのだ。
この本は、「世の中のリーダーシップ本は眉唾である」と言っているように、美しく思いやりに満ちた世界を追いかけて、きれいごとやごまかしに騙されるのはもうやめよう、と呼びかけてくる。なんと大胆な!
中でも私の価値観を根底から揺るがしたのが、「実績と昇進は関係ない」のところだ。実際その通りのことを感じながらも「なんかおかしいよなぁ」と思っていたのだが、そんなのはおかしくもなんともなかった、というわけだ。おそらく社員数が膨大に多い大企業になると、評価する側も機械的に行わざるを得なくなり、実績をもとに判断する比率が高まるのだろうが、社員数がそれほど多くない会社であれば、実績はほとんど関係ない存在ということになるのだろう。むしろ抜きんでた仕事ぶりは昇進の邪魔になることさえあると言うのだから。そしてこの本では、出世につながる数々の行動の事例が列挙されていく。。。
こういうことを邪道と思って視界から外してきた者と、こういうことを教わらずとも自然と身につけていく者と、いったいどっちが正しくどっち幸せなのか。それを考えると複雑な思いになって、ヌースになりたい!などと逃避したくなってしまうが、でもこれが競争社会での現実に間違いないのだろう。仕事の成功法と昇進の成功法は別物だということを、私の価値観に加えていかねばならない。
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高校生の頃にも一度読んだ本。翻訳が絶版になっていたので、ペーパーバック版をつん読にしていたが、日経BPクラシックとして再版になったようだ。FRBによる低金利政策や続々とIPOする怪しい企業、投資信託ブームなど、いつの世も同じだなぁと痛感させられる。バブルはimmunizing effect を持つので、しばらくは再発しないが、何年か経つと繰り返される。29年の暴落がその後、大恐慌として長く影響を残すことになった理由についても考察が行なわれている。大きな理由の一つとして格差問題が挙げられている。当時は格差が大きく、株価暴落による資産効果へのインパクトを通じて富裕層に与えたダメージが大きかったことがその後の経済低迷を招いたとしている。本書が書かれた当時('54) は、格差も小さくなっており、仮に、今('54)株価が暴落しても大恐慌のようなことにはならないだろう、という見通しは、今回の金融危機を考える上でちょっと怖い。■ like all booms, it had to end.■ It is another feature of the speculative mood that, as time passes, the tendency to look beyond the simple fact of increasing values to the reason on which it depends greatly diminishes.■ Stock prices have reached what looks like a permanently high plateau (Irving Fisher)
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シンプルに漂流記かと思っていたが、想像以上に心理学的な内容だった。
書籍としては発刊年が2026年8月と新しいが、元となるエピソード自体は1973年と古く、既に関連書籍も出いてたものだ。
つまりベイリー夫妻が漂流したのは僕の生まれる前なので、そりゃ世界中で話題になったとはいえ、知らなくて無理もない。マラリンは2002年に亡くなり、モーリスも2018年に没した。モーリスは、本書を読んでみると意外に感じるが長生きし、2018年と近年まで存命であった。
根本的な教訓としては、古風な冒険がしたくとも、無線機のような命に係わる設備は用意しておくべき、ということだろう。
準備と漂流が1部と2部。そして残る後半3部に関しては、助かって以降の半生が辿られる。
なので漂流にハラハラするのは本書全体の割合としては多くない。密度は非常に高いが。
その代わり多く焦点を当てられるのが、対照的な夫妻の思考回路だ。
夫モーリスは現実主義で悲観的で鬱病気質で勤勉、神経質。
一方でマラリンは運命論寄りの思考で、前向きだ。
どちらも一長一短あって、どちらが良いというものでもない。
少なくともモーリスは周囲の人々にとって頭痛の種だったように見える。
私としても関わり合いになるは避けたいタイプではあるが。
人の思想や信条は複合的なものだ。
信仰や思想、性格をレッテル化したいずれかの要素に、行動の原因を単純に紐づけしにくい。
だから「運命を信じる思考がよい」とか、「悲観的なのは寿命を縮める」と一概に帰結できない。
ただ、本書後半に触れられていたように、一方が悲観的であることにより、もう一方が奮い立つという相互関係は充分にあり得るだろう。
兄弟姉妹の性格は、何番目の子であるかで傾向が似通るし、パレートの法則のように、ある集団内で怠ける人が2割いたとしてその2割を取り除いた集団を作っても、またその中の2割が怠けだしたりする。
集団の構成員の関係性によって人の行動が変わることを考えると、ベイリー夫妻それぞれの性格から教訓を導き出すのは栓無きことなのかもしれない。
ただ、結果論として、前向きでいること、そしてより掘り下げれば、前向きで居られる拠り所があることは命を救いやすいことは間違いないだろう。
私は今の推し活のブームをあまり肯定的に受け取りにくく感じているが、支えや拠り所、奮起せざるを得ないイベント(例えば災害や戦争など)がない環境では、人を生かすエネルギー源として有用なのだろう。
また逆に言えば、人は虚構だろうがなんだろうが、生きる意味を自ら生み出さずには居られない存在ということでもあり、潜在的な生きる意志の底力を感じさせらる。 -
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「ある種の規範や規則の厳格な遵守を重んじるようになったのは、社会がもっと重大な問題の直面しているから」
著者はシリコンバレーの技術者が重大な問題から目を逸らし、身の回りの快適さや利便性を高めることばかりにエネルギーを注いでいることを批判している。本書はシリコンバレーで仕事している、リベラルの気風のある技術者たちへの批判で書かれている。
共同体の空隙を市場が埋めているというのはまさにそうで、そこに貨幣のやり取りが生まれ生活の市場化が進んでいるという感じ。
左翼リベラルと言っても階層化が進んでいるような気がして、本書で批判の対象となっているのは、有名大学を卒業したエリート技術者たちで、日本にいるような低所得労働者の左翼リベラルについては書かれていない。アメリカにも低賃金労働者はいるけど、その階層への言及ではなく、あくまでエリートたちへの批判になっている。
著者が国家という共同体への帰属意識を取り戻せと発破をかけるのは、中国を意識したものだろうと思う。中国に対抗するには、国家規模の課題へのコミットメントが必要という危機意識があるんだろう。 -
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■概要と基本姿勢
・本書はパランティア・テクノロジーズの共同創業者兼CEOアレックス・カープと法務責任者ニコラス・ザミスカによる、西側民主主義社会と先端技術(特にAIや軍事ソフトウェア)の関係を問い直す政策・技術論である。
・冷戦終結後の西側諸国、とりわけシリコンバレーに蔓延した「技術は国境を越えて世界を平和にする」という楽観的リバタリアニズムやグローバリズムの幻想を強く批判する。
・権威主義国家(中国やロシアなど)が軍事・社会統制へ先端技術を急速に統合する現在、民主主義を守るためには「軍事力と直結した強大な技術的優位」が不可欠であると断じる。
■シリコンバレーの思想的怠慢と偽善の糾弾
・ビッグテック企業が米軍や防衛機関との協業を「倫理的懸念」を理由に敬遠・拒絶する一方、独裁国家市場へ妥協的に参入してきたダブルスタンダードを痛烈に批判する。
・「技術の中立性」は幻想であり、民主主義陣営が抑止力としての技術開発を放棄すれば、権威主義的価値観が組み込まれた技術体系が世界標準になると警告する。
・国家の防衛や安全保障に資するエンジニアリングこそが、自由と繁栄を支える市民的義務であると説く。
■現代の軍事力とソフトウェアの役割
・従来のハードウェア(戦闘機、戦車、空母など)中心の軍備から、戦場全体のデータを統合・解析しリアルタイムで意思決定を下す「ソフトウェア駆動型防衛」へのパラダイムシフトを詳述する。
・ウクライナ戦争などを実例に挙げ、商業用先端技術とアルゴリズムの統合が、数で勝る旧来型軍隊を凌駕する実態を示す。
・防衛調達の旧態依然とした官僚主義を打破し、民間スタートアップの破壊的イノベーションを迅速に取り込むエコシステムの必要性を強調する。
■「テクノロジカル・リパブリック(技術的共和国)」の再興
・民主的価値観、法の支配、個人の自由を維持するためには、技術力と国家権力が健全に連携する「技術的共和国」の再構築が求められる。
・倫理とは開発を止める免罪符ではなく、自由社会の生存を確実にするための実行力(パワー)を伴う責任であると再定義する。
・結論として、西側諸国が技術的覇権を巡る闘争から撤退する選択肢はなく、抑止力なき理想主義は破滅を招くと警鐘を鳴らす。 -
Posted by ブクログ
長期の分析で”this time is different”で毎回同じような歴史を繰り返してきたのだなと思った。
長期のデータセットと分析は非常に興味深いと思いつつ、”なぜその危機が起こったのか”という背景には踏み込まず、あくまで起こった事象の解説という感じがしたのが若干物足りなく感じた(ただ、扱っている事件や事象が広範すぎるので、無理な願いという気もする)
また、例えばヘンリー8世?など昔のデフォルトについて、現代と同じように分析して良いのかなど、時代や社会背景が違う事象を並べて分析して良いのかという点にも疑問が残る。
ただ、今回は違うということはない、という点を広範なデータセットで提示しているという点が非常に興味深い本だと感じた