村井章子のレビュー一覧
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1929年にウォール街で起きた株の大暴落について、様々な目線から書かれた本でした。投資家の立場、当局の立場、証券会社の立場など、様々な目線からどう考えどう行動したのかが見えて、とても興味深く読めました。
人間の織りなすバブル崩壊劇は今も昔も変わらない、という論評がありましたが、その通りだと感じる場面が多かったです。
バブルの崩壊は何が最初のきっかけなのかはわからない、それにわかったとしてもさほど意味がない、いずれ破裂するバブルがはじけただけ、という箇所が印象的でした。
また、株式市場の暴落が所得と雇用、繁栄の実体そのものに悪影響を及ぼさないために、権威ある人物は所得と雇用は減少しないと言い続 -
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ネタバレヘブライ人の善をなす理由をそれ自体におこうとする思想、これは神という彼岸に現象の理、因果性、意図を求めようとすることによる悩み、矛盾を解決しようという試みが始まり。彼らの悩みは、問の置き方の掛け違いに過ぎぬのではないか?
ギルガメシュは現象の理不尽さを見て、それが善か悪かといった倫理問題に発展することはない。神は気まぐれであり、洪水の理由は悪行ではない。現象に善悪上の因果性を求めるという奇妙さ。そこに悪行があったのではと勘ぐる陰湿さ、弱者の理論。
この一見した倫理上の矛盾への悩みが倫理を超越した理論へつながる。例えばルカによる福音書を見よ。敗北者の恨み、妬みが結晶化している。彼らがアブラハムは -
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経済学者として産業組織論や電力・通信・鉄道等のインフラ産業における規制政策論、ゲーム理論など広範な経済学に関する業績が認められて2014年度のノーベル経済学賞を受賞したジャン・ティロールが、日常生活において経済学とさほど関わりを持たない一般人向けに、経済学の意義を解説する一冊。タイトルが示す通り、本書は経済学という学問を「人々が良い社会を創出しようとする”共通善”の実現にどのように貢献できるか」という基本思想に基づき、様々な社会課題とそれに対する経済学の方法論がまとめられている。
驚くべきことに扱われるテーマは、ほぼ現在の経済学が取り扱う全ての領域といって良いほど広範であり、どのテーマから読 -
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営業時代は監査を受ける側、内部統制時代は監査をする側。両方の経験があるので他の人よりも興味深く読むことができたと思う。
本書はお金の流れを人々がどのように管理しようかと考えた中で試行錯誤の中で生まれた複式簿記の歴史を中心に進む。
そしてお金の流れを管理するための簿記と監査は歴史的な成り立ちからも表裏一体なのだと理解できた。
国の経営を捉えると、国王は国の収支を知ることができるが、同時に豪華な宮殿建設が国の財政を圧迫している事など、都合の悪い事実も暴かれてしまう。
国王でもなくても。都合の悪い事実を知る事を拒否したい。それはわかるが良いことも悪いことも含めて事実をしっかり見て把握することは非常に -
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システム1とシステム2。速い思考と遅い思考。意思決定を行う際にわれわれは直感による速い思考を行っている。直感の出番がない場合には論理で考える。これが遅い思考である。直感は自動的に連想を働かして結論をだす。それは論理的思考でもないし統計的思考でもない。ただうまくストーリーができていればよい。われわれはそれを自信をもって正しいと思い込む。ちゃんと論理的思考の出番があれば間違わなかったはずの結論も直感を信じたために間違えた結論を下す。また思考には色々なバイアスがあり、それによって間違った結論を出してしまう。このようにわれわれの意思決定の仕組みを解き明かした心理学者にしてノーベル経済学賞受賞者の一般読
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2014年ごろ、シリア、イラクの国境周辺で勢力を拡大したイスラム国。巧みなプロパガンダと人質を利用した交渉で多くの国を翻弄しました。それまでに数多く存在したテロ組織とは別次元の勢力になぜ成長できたのか、イスラム国とはそもそもどいういう存在なのかを解説しています。
「イスラム国建国はユダヤ人にとってのイスラエル建国と同じ位置づけである」、「永続的な国家建設が究極の目的であるので、被支配者を恐怖で押さえつけるのではなく、人民からの支持を優先させる」、「人民からの搾取ではなく石油産業などの経済活動から収入を得て、それを再分配することで戦闘員や被支配者の不満をそぐ」等々、彼らが単に暴力に頼って自らの要 -
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マイケルルイスの本の主人公であるダニエル・カーネマンによる人間の意思決定の研究を解説した本である。
マイケルルイスの本を読んだ後だけに、すんなりと読むことができた。実際、ルイス本は、本書の抜粋ではないかと思うくらいだ。
人間の意思決定は、直感的で感情的なファースト思考のシステム1と、意識的で論理的だが怠惰なロー思考のシステム2から成ると説いている。そこから本書の題名が来ている。
様々な例を挙げてそれを説明するが、自身でも心当たりのあるケースもあり、十分説得力がある。なにしろノーベル賞を受賞しているのだ。
もっと本書を読み込んで、自分の行動や思考を分析し、難しいかもしれないが自分を変え -
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ネタバレ久しぶりの書評です。表面的なテクニックに留まらず「あるべき」という倫理を追求することは、改めて仕事に当てはめる必要があると感じさせられました。
本書は、経済思想は本来、哲学、宗教などと密接に関連し、常に「倫理的な規範」「善と悪」の価値判断と不可分であるが、現代の主流派経済学は分析的アプローチと数学モデルによってこうした倫理と決別したように=「価値中立的」に見える。しかし、実は「効率性、完全競争、高成長」「快楽追求・効率至上主義的」に価値を置いているとし、リーマン・ショックの問題も契機に、物質的反映がもたらす幸福を躍起になって追い求める「経済成長」よりも巨額の債務に依存しない安定性がより重 -
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この本は作中にも書かれているように「機械論的・強権的な主流派経済学に対する批判の書」です。つまり、現在の経済学にありがちな数式等を駆使したものではなく、数式で表すことの出来ない倫理、哲学を土台にした経済学の本であると言えます。私自身もこの作者の意見には賛成で、物理学等と違い、経済学は人間の行動を相手にした学問であり、そこには倫理学、哲学だけでなく、社会学、心理学等複雑な要素が沢山絡んでいます。その複雑な要素を数式だけで表すのは到底無理な話であり、実際問題現実世界においても様々な経済学の理論はあれど幾度となく金融危機が生じています。経済学は全てを数式で表そうとはせず、数式で表せる部分とそうではな
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歴史を書くのは全然義務ではなかったが、義務として書かなければならなかったものもある。詩である。あれは、課題の中で大嫌いなものの一つだった。なにもギリシャ語やラテン語で書かされたのではない。そもそも作詩法も教わらなかった。そんなことに時間をかける価値はないというのが父の持論で、朗読させて音律のまちがいを直すだけでよしとしていたからである。ちなみにギリシャ語では散文すら書かず、ラテン語でも申し訳程度だった。外国語の完全な習得に作文が効果的であることを父が知らなかったはずはないが、そのための時間がどうしてもとれなかったからである。というわけで、私が書かされたのは英語の詩だった。
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メディア情報をいかに高度な技術で検証しようとも、しょせん我々は中東諸問題の上辺しか見れていないし、本質を理解することはできない。難民から搾取するために斡旋業者と国家がグルになる。オークションのように吊り上った身代金は、犯罪者の街を潤すばかりか流通する貨幣すらも変えてしまう。ジャーナリストにとって同志だと思われていた反政府組織が、金のために簡単に寝返る。想像するのも悍ましいぐらいだが、これが中東諸問題の実態なのである。冷戦が終わり、グローバリゼーションがもたらした世界を著者は「新世界無秩序」と表現する。海賊で悩むソマリアも、イスラム国のテロによる被害者も、シリア政府に弾圧されている人々も、人道支
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イスラム国に後藤健二さん、湯川遥菜さんが殺害されたニュースは衝撃的でした。人間の命を交渉の材料として利用するに至った背景を今から20年ぐらい前の世界情勢からたどります。
身代金の決定プロセス、助かる人質と助からない人質は何で決まるのか、なぜ現地のリスクを理解しない若者が危険なエリアに次々と向かうのか、など興味深いテーマについて誘拐から生還した人や、身代金の交渉人などの当事者のインタビューから紐解きます。
「どこの政府でも人質の解放のためには多かれ少なかれ身代金を払っている」、「現地のリスクを正しく理解せず、正義感だけで現地から報道することは慎むべき」、「誘拐から数週間のうちなら数千ドルで解決で