村井章子のレビュー一覧

  • 善と悪の経済学―ギルガメシュ叙事詩、アニマルスピリット、ウォール街占拠

    H

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    経済思想史です

    経済の思想史というべきものです。
    経済学の知見が少なくても理解はできます。でも、経済学の知見があればあるほど、より楽しく読めると思います。但し、著者の考えがすべてとは思いません。
    また、一つだけ、コロナ対策で評価の高い権威主義的国家での経済についての記載が少ないように思えました。

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    2020年12月30日
  • 絶望を希望に変える経済学 社会の重大問題をどう解決するか

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    著者は二人のノーベル経済学賞受賞者。

    原題は「Good Economics for Hard Times」とありますが、コロナ禍の今にあって、ちょうど米大統領選が佳境のころから読み始めたので、本書で取り上げられているテーマと、日々目にするニュースやSNSの投稿などとシンクロすることも多く、政治と経済の今についての理解を深めるには良書であったと思います。

    経済成長
    移民
    自由貿易
    地球温暖化
    社会保障
    格差

    お金だけで解決しないことや、さまざまなトレードオフが生じること、マクロな経済モデルの想定通りには行動しない人や企業、そうした複雑系の中で、良い方向に向かうための本質とは何かを二人の経済学者が力説されています。

    全体を読み通した上で、最後の最後にノーベル経済学賞受賞した経済学者が語る一文(最終章の最後の一文)がとても印象的でした。

    ”経済学は、経済学者にまかせておくには重要すぎるのである。”

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    2020年12月12日
  • テクノロジーの世界経済史 ビル・ゲイツのパラドックス

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    テクノロジーの進化について、古代ローマのテクノロジーからラッダイト運動を経てAI失業まで、一貫性のある説明がされており、目を見開かされる。

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    2020年11月10日
  • プラットフォームの経済学 機械は人と企業の未来をどう変える?

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    今後発展していくであろう、マシン・プラットフォーム・クラウド(crowd)について詳述している本書は、これからの未来を予知している様なものでもあり、将来を考えていく上で必須な知識であると思った。
    特に、インターネットが発達した要因に、完全・無料・瞬時という3つが重要であったことは面白かった。

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    2020年10月11日
  • ファスト&スロー (上)

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    自分で決定してると思っていることの、なんと無意識の気分(システム1)に誘導されていることが多いんだろう!本書をよむと、いかに直感がでたらめなのかよく分かる。迷ったら直感に従うことを心情にしてる人こそ読むべき。

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    2020年10月04日
  • ジョン・P・コッタ― 実行する組織

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    大企業がどうベンチャーのように素早く、価値を生み出していくのかのノウハウが詳しく載っている。働く一社会人として、とても魅力的に感じるシステムが載っていて、しかも簡単な言葉で書かれているからワクワクしながら読み進められる。こんな組織で働きたい!理想だ。実現は難しいんじゃないか…と思ったりも。

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    2020年09月10日
  • 大暴落1929 (日経BPクラシックス)

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    若干の香ばしさが市場に漂う今、もう一度読んでみるべき書籍でしょう。

    もう10回以上、読み返していますが、毎回のように群衆心理の面白さを感じます。
    市場と経済を取り巻く環境は目まぐるしく変化しますが、市場を構成する心理はある種の普遍的な行動パターンがあるのではと思えます。

    市場を構成する主体が生身の人間だけでなくなった今、その普遍性はやや変化したかもしれませんが、学ぶべきことの一つであることに変わりはないでしょう。

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    2020年08月30日
  • ファスト&スロー (下)

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    直感的に働くシステム1と、熟考するシステム2という人間の意思決定について書かれた本。直感であっても、プロが下すものや長年の経験があれば正しく判断できたりするなど、システム1も侮れない。
    より広いフレームで考えること、なるべく多くの選択肢を比較して決定することが大事。そうでないと「見たものがすべて」になり、狭い選択肢で判断してしまうことになる。
    本書でプロスペクト理論と確率決定加重の、行動経済学にこける2つの重要な考えが出てくるので、是非読んでいただきたい。

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    2020年07月24日
  • 絶望を希望に変える経済学 社会の重大問題をどう解決するか

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    ビルゲイツの「今夏必読の5冊」に選ばれた本書。
    世界の諸問題を、客観的な調査や実験に基づいて、いかに解決するかを記したものである。
    とりあえずこれを読んで思ったことは「あっ、自分って現実を勘違いしていたんだな」という事。アッと驚く事実をこれだけ丁寧に、かつ説得力のある文章でわからせる著者の能力は素晴らしい。
    最後は壮大な解答が提示されているところが少し歯痒いが、とりあえず読んでみることをお勧めする。

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    2020年07月03日
  • 絶望を希望に変える経済学 社会の重大問題をどう解決するか

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    開発経済学の研究者として2019年にノーベル経済学書を受賞したアビジット・V・バナジーとエステル・デュフロ夫妻が自身が長年研究してきた社会格差、人種差別(と個人の移ろいやすい嗜好性の問題)、移民、環境破壊、自由貿易などのテーマを一般人向けに平易にまとめた一冊。

    テーマは数あれど通底しているのは、「一見、絶望ばかりに見える問題に対して、経済学が解決できる部分は確実にあり、希望を捨ててはいけない」という点である。真摯な研究者として、経済学を一つのツールとして、確実な課題解決に結びつけるための実践がまとめられており、ランダム化試験などの統計的手法をフルに活用しながら、本当に問題解決につながる政策を決定し、政治に反映させていくというプロセスの重要性を学べる良書。

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    2020年06月07日
  • プラットフォームの経済学 機械は人と企業の未来をどう変える?

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    プラットフォームの日本語訳って”舞台”とか基盤”って意味がり、ビジネスでいうとアメリカのGAFAやUber、Airbnb等、需要者と供給者を結びつけるプラットフォームを構築して莫大な利益を上げています。そんなプラットフォームについて人工知能やロボット、ビットコイン等の科学技術を絡め解説されています。全部で13章の構成となっているのですが、それぞれの章末に”この章のまとめ”と”あなたの会社では?”の項目が有り、一方的な知識のインプットに終わらない様、著者の優しさが感じられます。500頁程と読み応えのある本ですが、その内容の面白さに一気に読めちゃいました!

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    2020年05月16日
  • 悪いヤツほど出世する

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    同じ著者が書いた前作「権力を握る人の法則」はあまり好きでなく後味悪い読書だったが、そうは言っても多々支持されている人なので続編も読んでおこうかという意識から読んだ。結果良かった。リーダー育成産業が盛んなのにも関わらず、なぜほとんどの人は上司に不満なのだろう。リーダー育成プログラムが役に立ってないどころか、まともなこと教えてないんじゃないの?という視点から書かれた本。確かに!人は役職が上がると、周りは皆真実を言ってくれない。間違っていても指摘されない。周りもも上に上るような人は間違いなどしない、という思い込みから、ゆがみが生じていくのは、確かになあ。
    結局は自分の身は自分で守るしかないのだ。リーダーが常に正しくて正義感があって誠実だなんて限らない。良いリーダーについていてもそれは永遠なわけがない。なので、リーダーに頼ることはしない。また、そしてリーダーに依存しなくてよいシステムが作れたらそんな会社が最強だ、ということだ。これがこの本での私の最たる学びだ。
    COVID19さなかの読書。賞賛されるNY州知事Cuomoが、文中に登場する。NY州検事総長だった彼は悪名高きビジネスマンからわいろを受け取っていたという・・・これが真実だとしたらとしたら、この本にあるように、Cuomoの悪事も忘れ去られているということか。
    どんな不祥事を起こしても責任を取らされるリーダーは少なく、取ったとしても返り咲いているリーダーの多いこと。すごくげんなりするけどこれが現実。ただ、自分はそうなりたくないな。ってえらくないからその心配はない。ただ、目は養っていたい。
    メモ)
    裏切るのは、自己の利益が損なわれようとするから。裏切りは個人社会だと罪深き事とうつるが、ビジネスではそうならない。なぜなら裏切った相手が今後も利害関係が生じて、噛みつくことが時として利とならず、それどころか抑止するよう折り合いをつける事も生じる…信頼の裏切りは、コスト高を生む。

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    2020年04月22日
  • ジャパン・ストーリー 昭和・平成の日本政治見聞録

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    【民主主義国家の政治指導者に必要とされるのは説得する力である。リスクを取りたくない、苦い薬を飲まないでなんとかなると思いたい人たちを説得する政治家が、有識者の支持を得られるかどうか、そこに日本の将来が懸かっている】(文中より引用)

    半世紀以上にわたり政治を中心として日本を研究し続けてきた成果がまとめられた作品。過去のエピソードを紐解きながら、令和の時代に求められる政治・社会像を論じていきます。著者は、名著『代議士の誕生』でも知られるジェラルド・L・カーティス。訳者は、経済系の作品の翻訳も手がけた村井章子。

    深い経験と探求に裏付けられた高所からの視点が興味深いことはもちろんなのですが、更に惹きつけられたのは半世紀以上にわたる日本との関わりの中で著者が経験したエピソードの数々。どこでフィールドワークを行うかについて「なまり」を基に中曽根元首相が判断したことや、田中角栄と金丸信の現金の渡し方の違いなどが白眉中の白眉でした。

    『代議士の誕生』も読んでみようかな☆5つ

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    2020年03月25日
  • 国家は破綻する―金融危機の800年

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    インフレ、デフォルト、銀行危機など、様々な経済的な危機について近代-現代にかけての非常に大規模なデータ収集を行った上で、「危機は繰り返す」ということを実証しようと試みる壮大な本です。
    現代日本の積み上げられた国債に対して「日本の環境は特別だから大丈夫」という声が方々から聞こえてくる今だからこそ、読むべき本だとおもいました。
    これほどの大量のデータを収集するために、著者は人生のどれほどの時間をかけたのだろう、このような研究をできる人にはただただ脱帽です。

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    2020年03月05日
  • 大暴落1929 (日経BPクラシックス)

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    1929年にウォール街で起きた株の大暴落について、様々な目線から書かれた本でした。投資家の立場、当局の立場、証券会社の立場など、様々な目線からどう考えどう行動したのかが見えて、とても興味深く読めました。
    人間の織りなすバブル崩壊劇は今も昔も変わらない、という論評がありましたが、その通りだと感じる場面が多かったです。

    バブルの崩壊は何が最初のきっかけなのかはわからない、それにわかったとしてもさほど意味がない、いずれ破裂するバブルがはじけただけ、という箇所が印象的でした。
    また、株式市場の暴落が所得と雇用、繁栄の実体そのものに悪影響を及ぼさないために、権威ある人物は所得と雇用は減少しないと言い続けた、本当に確信していた人はいないのに。という箇所も印象的でした。今も同じことが起きるのではと思いました。

    とても読みやすい良本でした。

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    2020年01月27日
  • 善と悪の経済学―ギルガメシュ叙事詩、アニマルスピリット、ウォール街占拠

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    ヘブライ人の善をなす理由をそれ自体におこうとする思想、これは神という彼岸に現象の理、因果性、意図を求めようとすることによる悩み、矛盾を解決しようという試みが始まり。彼らの悩みは、問の置き方の掛け違いに過ぎぬのではないか?
    ギルガメシュは現象の理不尽さを見て、それが善か悪かといった倫理問題に発展することはない。神は気まぐれであり、洪水の理由は悪行ではない。現象に善悪上の因果性を求めるという奇妙さ。そこに悪行があったのではと勘ぐる陰湿さ、弱者の理論。
    この一見した倫理上の矛盾への悩みが倫理を超越した理論へつながる。例えばルカによる福音書を見よ。敗北者の恨み、妬みが結晶化している。彼らがアブラハムは言う。現世で富んでいたから死後に苦しみ、現世で乏しいせいで死後に祝福されると。もはや倫理を超越する。
    つまりはこうだ。ギルガメシュやエジプト人はにとって支配者は半神、あるいは神そのものである。つまり倫理と力に矛盾や分裂がない状態が支配的安定状態だ。しかし、ユダヤ人はその一致がない民族で、理不尽な現世を妥当させるかを悩み、新たな発明をした民族だった。その一つが法への愛。

    クセノポンの言葉は示唆に富む。アダム・スミスとの対比は、佐伯啓思より面白い。

    p188."心の貧しい人々は、幸いである、天の国はその人たちのものである。"。心の貧しい人に、それで良いのだと教えたところ、大いに広まった宗教がある。なぜ、天国は心の豊かな人たちの国ではないのか?堕ちた人たちの国なのか?

    # キリスト教徒の救いとは借金帳消を意味していた

    彼らの弱さは貧しさでもあった。キリスト教ほど経済、お金、財のことがたくさん書いてある書物も珍しい。そもそも罪とは原意では負債である。赦しとは債務の帳消しであり、破産は奴隷になることを意味していた。現実の問題として、彼ら初期のキリスト教徒にとって借金が最大の問題だった。
    対して、ギルガメシュにも、指輪物語にも、お金のことは出てこず、手に入れたければ、冒険や旅をして、足(意欲、胆力…)と力で手に入れている。キリスト教は、足も力もなく、何も手に入れることができない人に向けた慰めなのだ。

    # キリスト教の現世観
    p199.
    両方の頬をつきだすのは、パレート最適。報復合戦に陥るのは囚人のジレンマ。
    このパレート最適を実現するために、悪と善の判断を停止すること、さらに効用を現世に求めることの否定を説いた。悪は単なる現象であり、その理不尽さを嘆かずにとにかく、隣人を愛せと解く。善悪の理由の探索の停止と忘却。つまり、善行が報われるのは天国でのみで、現世ではない。
    p203. この副作用は、現世は良くなるべきものではなく、脇役に過ぎなくなった。天国での救いの、前段階であり、現世と距離を起き、現世に否定的な姿勢へとつながる。この世では救われないのだから。ヘブライ人の現世での効用の考えを捨てた。

    # 祝福としての労働、呪いとしてのも労働
    労働が苦しいものになったのはキリスト教の価値観で、りんごを食べて楽園を追放されてからだ。

    #デカルト
    世界の根源に数学的な規則を見た、またはそれ以外を棄却したのはピタゴラス。ホモ エコノミクスのルーツはエピクロス。そしてこれらを焼き直して数学的、機械論を世界の規則においたのはデカルト。結果、
    1. 客観、再現性、再観察性を重視し、伝統、神話を世界記述から排除。
    2. 精神と物質の二元論の復活。しかも、精神とは知を主体とした概念に更新。これによって、知的な世界が、物質的現象と対等かそれ以上になり、知的活動のモデルが経験的事実との直接的関係なしに構築可能になった。
    3. 数学的に説明可能な機械論を世界説明の方法と価値の中心においた。数学的機械論。ヘブライ人の倫理、キリスト教の慈愛に相当。

    人間存在論が機械論で説明可能な世界に萎縮し、数学的機械論の説明可能な世界に限定される。人間は土の像。これが心理学、さらに人間行動原理に及ぶと、ホモ・エコノミクスとなる。

    #経験主義の否定とデカルトの合理主義

    世界を説明するに相応しい手段は、単なる経験による理論ではなく理性的考察のよって得られる、数学的原理とその機構で説明されると観る。

    #合理主義の非合理性
    感覚と理性が矛盾する場合は、理性が正しく世界を理解する、とする。このため、デカルト的アプローチの学問は世界の現象と矛盾する。"信じるのが容易か、状況に適しているか、説得力があるか、世界の仕組みに関する人間の内在的な信念、すなわち借用または継承してきたパラダイム、、、偏見と一致するか、ということが決め手となる。"

    つまり、トーマス・クーンのパラダイム論を思い出してほしい。通常科学という発想自体、科学が、社会的受容具合に依存し、科学と社会受容の相互関係でら何が通常かが決まることを示唆している。

    この曖昧性は、数学依存による。数学的に表現できないことを棄却した世界では、現象に対しての解釈や意味論が意識されなくなる。体系への意味論が熟慮されないまま体型が自己成長じ、自己規定的になればなるほど、革命に危険にさらされる。また、超越的になり、体験される現象との関係が希薄になる。このような自体に対し、フッサール曰く、彼は客観主義ではなく、結果、超越論的な主観主義だ、と表現した。

    # ホモ・エコノミクスのトートロジー
    コリンズ経済学辞典によると、効用とは"財やサービスの消費から得られる満足または快楽のこと"。しかしこれでは、何かしたいことをする、と言っているだけで、効用を直接定義していない。満足とは、財やサービスの消費によって得られる効用、と言っても差し支えない。これは循環定義、いわゆるトートロジー。トートロジーはその定義域が無限であっても、何も定義していないので、成立する。何も定義していないのだから。反証可能性が理論の価値。

    # 見えざる手のトートロジー

    p368, c11-.
    見えざる手とは何か。市場や社会集団を、集団としての行動の結果を生む、何らかの法則か作用因郡。つまり何らかの経済的作用のうちの何か、くらいの定義だ。この何か、に効用を生む作用であるという信頼を持つに至って、それを数学的合理性に押し込んだのが経済学の議論。
    私悪も公益を生む、という考え。そのうち、全てこの見えざる手にゆだねていいという考え方が自由放任主義。その逆が計画経済。

    # 数学

    p415.
    "数学的思考は、私達が現に住んでいる物理的な世界のある部分が、人間の作り出した抽象的な数式にある程度従って振る舞い始める、少なくてもそういう印象を与える、という奇跡的な性質を備えている。"

    だた数学も不変ではない。ラッセルのバラドックスのように、定義を変えてつじつまをあわせることもある。

    キルケゴール曰く"論理的な系は可能である。実存的な系は不可能である。"
    ゲーデル曰く、"自然数論を含む形式的内径が、無矛盾であれば、その体系内に真とも偽とも言えない命題が存在する。"つまり無矛盾性と完全性は両立しない。
    数学はトートロジーだ。ウィトゲンシュタイン曰く、論理学の命題はトートロジーである。...論理は超越論的である。...数学とは一つの論理学的方法にほかならない。...実際我々は、生活において数学の命題などまったく必要しない。
    本来、トートロジーな数学に妥当性を与えるのが意味論だ。超越論になりえない。

    例えば、ある計量経済学の論文で、分析の結果、通貨供給量以上に豪雨がインフレに影響を与えたと求められた。ある観察範囲で共起したからと言って因果性があるわけではない。数学に頼り、それが主になると、おかしな理論が氾濫するようになる。なぜなら数学のモデル自体は、その内部ではトートロジーだからだ。

    数学を多用した決定論的な考えはまだ経済学において主流なままだ。量子力学が起こった物理学とは対象的に。

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    2019年11月08日
  • ファスト&スロー (上)

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    プライミング効果
    確証バイアス
    ハロー効果
    メンタル・ショットガン
    質問の置き換え
    少数の法則
    アンカリング効果
    利用可能性ヒューリスティック
    代表性ヒューリスティック
    基準率
    平均回帰
    後知恵バイアス
    妥当性の錯覚

    これらがキーワード。

    システム1、システム2の働きを理解した上で、認知のエラーを見越して直感に頼らずデータから読み取ることが大切だと学んだ。、

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    2019年05月27日
  • 国家は破綻する―金融危機の800年

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    ここ150年ぐらいの世界各国の金融危機をデータで俯瞰する内容。いつの時代も今回は違う、破綻しないと言われ続けているのね、と何度も頷ける。911前後はよくNBCの投資番組を見ていたので、グリーンスパン発言はよく覚えている。

     日経書評には一般向けと書いてあったけど、半分がデータ集なので完全に学術書の部類だと思う。実際届いた時、このボリュームにはびっくりした。でも、10、11章あたりは週刊ポストか現代かと思うような書きぶりでかなり楽しめた。金融本にしては翻訳もうまい。

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    2019年05月05日
  • 良き社会のための経済学

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    経済学者として産業組織論や電力・通信・鉄道等のインフラ産業における規制政策論、ゲーム理論など広範な経済学に関する業績が認められて2014年度のノーベル経済学賞を受賞したジャン・ティロールが、日常生活において経済学とさほど関わりを持たない一般人向けに、経済学の意義を解説する一冊。タイトルが示す通り、本書は経済学という学問を「人々が良い社会を創出しようとする”共通善”の実現にどのように貢献できるか」という基本思想に基づき、様々な社会課題とそれに対する経済学の方法論がまとめられている。

    驚くべきことに扱われるテーマは、ほぼ現在の経済学が取り扱う全ての領域といって良いほど広範であり、どのテーマから読み進めても、経済学という学問が明らかにしようとしている社会への課題認識とその解決の方向性にハッとさせられる。

    ・現代社会における経済学の意義
    ・経済学者の研究生活の実態と政策提言との良い関わり方
    ・市場主義経済の行き過ぎを是正するための国家の意味合いとそのバランスの取り方
    ・気候変動、失業、ギリシャ危機を踏まえた今後の欧州統合の在り方、金融政策等のマクロ経済的トピック
    ・競争政策、デジタル技術/プラットフォーマーがもたらす社会課題、イノベーション、インフラ産業における望ましい規制政策等のミクロ経済的トピック

    個人的には、今年を締め括るにふさわしい一級の知的刺激を得られた一冊。500ページを超える大著であるが、経済学に縁のない人でも読めるような語り口であり、すらすらと読めてしまう。年末年始のお供にぜひお勧めできる一冊。

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    2018年12月30日
  • 帳簿の世界史

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    営業時代は監査を受ける側、内部統制時代は監査をする側。両方の経験があるので他の人よりも興味深く読むことができたと思う。
    本書はお金の流れを人々がどのように管理しようかと考えた中で試行錯誤の中で生まれた複式簿記の歴史を中心に進む。
    そしてお金の流れを管理するための簿記と監査は歴史的な成り立ちからも表裏一体なのだと理解できた。
    国の経営を捉えると、国王は国の収支を知ることができるが、同時に豪華な宮殿建設が国の財政を圧迫している事など、都合の悪い事実も暴かれてしまう。
    国王でもなくても。都合の悪い事実を知る事を拒否したい。それはわかるが良いことも悪いことも含めて事実をしっかり見て把握することは非常に大切だと言うことがよくわかった。

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    2018年12月24日