村井章子のレビュー一覧

  • 道徳感情論

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    何とも言えない満足感が得られる書籍でした。ただ中身が非常に濃いので(ページ数も700ページほどある)、正直最初の方の議論がほとんど頭から抜けつつあり、なんとか時間を見つけて2度目に挑戦したいと思います。

    冒頭にノーベル経済学賞受賞者でもあるアマルティア・センの序文がありますが、これだけでもお金を取れるレベルです。アダム・スミスの代表作である「道徳感情論」と「国富論」、表面的に読むと、同一人物が書いたとは思えない、あるいは互いに主張が矛盾しているという印象を持つ人は多いかもしれません。前者が「徳」「正義」「共感」などを論じているのに対して、後者はそのような感情を排した「利己心」を中心に経済メカニズムを論じているように見えるからです。しかし私自身は本書を読んで、道徳感情論こそがアダム・スミスの包括的な書であり、その中の「交換メカニズム」について詳細に分析したものが「国富論」であるという見方をしたいと思います。実は「道徳感情論」は、「国富論」に先立って執筆されましたが、その後亡くなる直前までスミスは「道徳感情論」を加筆・修正しています(日本語版も最終版をもとにしています)。つまり、アダム・スミスは若かりし頃に道徳や共感のメカニズムを本(道徳感情論)にしたけれども、宗旨替えをして利己主義が経済メカニズムの中心だ(国富論)と論じるようになったわけではないのです。むしろスミスの頭の中心には「道徳感情論」で書いたこと(あるいは書ききれなかったこと)があって、その中の極めて狭い領域について詳細に議論したのが「国富論」だと考えるべきです。

    センが指摘しているように、「道徳感情論」は「国富論」ほど注目されていませんが、その理由は、本書がカバーするテーマの包括性(幅広さ)にあるのではないかと感じました。取り上げているテーマの広さと、それぞれについて複数の説を丁寧に解説しているので、何冊もの専門書を一気に読んでいるような感じがする、つまり悪く言うとキーメッセージが頭に残らないのかもしれません(対照的に、国富論では見えざる手などのキーコンセプトが明瞭に頭に残ります)。逆に言えば本書からは、アダム・スミスの知識の恐ろしいほどの広さ、また視野の広さをうかがいしることができます。視野の広さを示す例として、本書でたびたび登場する「中立の観察者」があります。人が何か行動を行う際に、心の中にいる「中立の観察者」がそれをどう感じるか(称賛するのか、恥ずかしいことだと思うのか、やり過ぎだと思わないだろうか、など)を考えよということなのですが、センはこの概念を「開かれた中立性」と呼び、ジョン・ロールズの「公正としての正義」が論じている「閉じた中立性」よりも優れていると評価しています。

    資本主義の限界が議論されるにつれて、最近マルクスブームがまた起こっているようです。マルクス主義者がマルクスの再評価を試みる本が巷にあふれていますが、私自身ははっきりいって食傷気味です。マルクスではなく、むしろアダム・スミスこそが再評価されるべき人物である、そして「道徳感情論」の中に資本主義の進路変更の答えがあると私は思います。

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    2023年05月06日
  • コンテナ物語 世界を変えたのは「箱」の発明だった 増補改訂版

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    The BOX コンテナ物語


    本書の構成
     コンテナの影響が最初に述べられ、普及した背景が述べられていく。そして、現在起こったことに対する見解が述べられる。

    経緯に対しての感想
     システムの開発から統一までの経緯が本書には詰まっていた。
     マクリーンのアイデアの影響範囲を広く捉えるという視点は良いと思った。(コンテナなら、自社コスト削減どころか、海運のシステムを変えられるなど。)
     また自社だけだと資産や影響力に限りがあるので、以下に他社を巻き込みチャンスを掴むのかのが大切かもわかった。(軍しかり、投資家しかり。)さらに普及の過程では、totalで仕事の生産性は増すとしても(理解している人も少ないかも)、雇用の安定性、競合他社自身の利益など、普及の阻害要因は沢山出てくることがわかった。しかし、現代社会においては技術の進展による解雇は経営者側が有利と思われる。特に日本だとストライキも起こらないので。
     いかに先駆者利益を勝ち取るかという点においては、港の設置はプラットフォームビジネスだなと思った。さらにそこで差別化や付加価値の提供が出来ると強いor 必須。

    現状(&結果)に対しての感想
     コンテナ化により、運賃コストは下がり、輸送の信頼性、安定性は向上した。
     規模の経済を拡大させていくと、格差は広がるなと感じた。安いところは悪循環で発展しにくい。しかし、成功者もまた拡大にはリスクを抱えている。やがて生き残るものは少なくなる。
     物流の進化により、市場のグローバル化が加速したのは間違いないと思った。海外品が入ってきて、価格競争に嫌でも巻き込まれる。また逆に自社は海外に拡大できる。
     

    第1章 最初の航海
     物体の価値は使われ方にある。最小限のコストで貨物を運ぶ高度に自動化されたシステム。その主役がコンテナ。
     コンテナにより、工場の位置が都心から地方に変わり、グローバル化も進んだ。(勝手にもう巻き込まれる)
     コンテナ港は、ほとんどコンピューターにより制御されている。人為的ミスが入り込む余地がない。
     輸送費は今では本当にわずか。
     本書では3つの研究テーマを重ね合わせた。「輸送技術の変化がもたらした影響」「イノベーションの重要性」「輸送コストと経済地理学との関連性」

    第2章 埠頭
     コンテナ登場以前は、港の荷役作業は危険で労働集約型だった。
     トラック対抗のため導入されたコンテナだが、初期は相変わらず沖仲仕がいり、コスト節減には繋がらなかった。

    第3章 トラック野郎
     マクリーンは最初トラック輸送業者から始まる。ルートの認可よりも借りると言う発想で、ICC(利益よりも安定を優先の州際交通委員会)の規制を回避。会社を成長させ、高速の渋滞回避を考えていた時に海上輸送の方法を考える。ターミナル用地はちょうどよく見つかる。トラック運送会社が船会社はできないので、別の会社に資産を移し、その後アメリカ初のLBO(レバレッジバイアウト)を行う。LBO後は、不要資産の整理も行なった。
     そして、さらに大胆なコンテナのアイデアを思いつく。スペースが無駄だからトラックから車輪を取ればいい。
     マクリーンは輸送コストの圧縮に必要なのは、単に金属の箱ではなく、貨物を扱う新しいシステムだと理解していた。港、船、クレーン、倉庫、トラック、鉄道、そして海運業そのものだと。

    第4章 システム
     セルとクレーンの改良。
     続いて、物理学者によるアプローチの紹介。コンピューターのシミュレーションを用いて、コスト削減などの計算をしている。またコンテナの寸法(作業時間と無駄なスペースの関係から)も決めている。クレーンは岸側に設置。
     マクリーンはプエルトリコの航路を独占。その過程で、現地を支援する子会社を設立したり、政府重役への配慮を行なったり抜かりない。またすっかり大企業になっても、コスト意識は相変わらず高く、またビジネスマンとしての言動・行動も伴っている。

    第5章 ニューヨークvs ニュージャージー
     ニューヨーク港 vs ニュージャージー港でニューヨーク港が時代の流れに背き、衰退していく様子が書かれている。
     ニューヨーク港は、1950年代前半には栄えていたが、内陸輸送費、ストライキ、犯罪、施設老朽化により衰退の一途。ニュージャージーは、港湾局に、マクリーンも巻き込めた。
     コンテナは職業や工場立地に大きな影響。

    第6章 労働組合
     沖仲仕の労働組合は、機械化により仕事が減るのではないと懸念。さらに、機械化による恩恵を還元しろと要求。結局海運側は、雇用保証などお金を払うこととなる。ただ、それ以上に機械化の利益はあった。ただ、このように機械化の恩恵を、経営側と労働側で分かち合うのは珍しい例だった。

    第7章 規格
     各社コンテナのサイズが色々あったが、これではコンテナにあった船やクレーンがいることになり、非効率である。しかし、コンテナの規格化は、各社の最適解があったり、鉄道などの影響が及ぶ範囲も広く難易度が高い。
     まず、長さは複数出すことにした。そして、組み合わせがいいよう長さはに10、20、30、40フィートとした。さらにISOにより、欧州側で主だった小型も追加される。なお、コンテナの先駆者のパンアトランティック海運とマトソン海運のコンテナはいずれも規格外になった。ただ、後に綺麗な数字よりも市場で役立つ数字ということで追加された。また固定具などの問題は有用なもので統一された。最適といかないまでも、コンテナ普及のために妥協して決定されていった。

    第8章 飛躍
     マークリンはお金がないが船が欲しかった。そこで、お金があり造船技術も持っている会社とうまく提携して、船を確保した。(これまでは、新たに船を作るよりも中古の軍用の船などを安く買っていたほうがコスト的によく市場にはコンテナ非対応の船が多かった。)そして、実績を出し普及。
     しかし、アメリカの鉄道会社は、現状うまく行っている有蓋貨車を守るため、コンテナの設備投資を回避するために、非協力的なままだった。

    第9章 ベトナム
     当時兵站が課題であった。ベトナムの港は数も少ない上に、整備もされていなかった。
     そこに、業界を革命していたマクリーンが呼ばれて、さらにコンテナアイデアを大将に直訴して、結果で認めさせた。軍は最大の支援者になった。

    第10章 港湾
     コンテナの普及により海運会社にとって、どの港にも立ち寄る時代は終わろうとしていた。建造にカネがかかり、必然的に効率を命とするコンテナ船は、大量の貨物を高速で運ばなければ利益が出ない。したがって、大量の貨物が確保でき、スムーズな荷役な補償される港でなければコールする価値がなかった。つまり、コンテナ輸送が盛んになる程、海運は少数の大型港に集中し、港は生き残りをかけて競走する必要が出てくる。
     西海岸は、もともと地理的要因から冴えない状況が続いていて、コンテナの可能性にいち早く気づいた。(当時、貿易はヨーロッパ中心で、アジアは戦争や政情不安、内陸の需要も西海岸は薄い。)コンテナ以前は、健全な地方経済を支えるのは製造業だというのが常識だった。一方、港の価値は輸送需要の大きい製造業が近くに立地するかで決まっていた。ところが、コンテナの出現により、「もはや物流は、生産と消費を結びつけるだけの他業種に依存した産業ではない。独立した産業として逆に生産と消費のあり方を決めるのが、物流である。」とされた。また「市内の産業と港との距離が近いことは、もはやさしたるメリットではない」とも言われた。
     一方、東海岸では、労働組合と予算の観点からコンテナ普及が遅れた。(ニューヨークでは年間所得保障と引き換えにギャングの人数削減を労使が合意している。)。そしてコンテナ輸送萌芽期中に、出遅れた港はフィーダー港(支船港)になった。
     コンテナ化の流れは海外でも起こり、欧州全体やイギリスでも大きく勢力図が変わった。シンガポールも力をつけた。

    第11章 浮沈
     1966年の春に国際コンテナ輸送が始まり、1968年には、ロッテルダム(オランダ)、ブレーメン(ドイツ)、アントワープ(ベルギー)、フェリスクストウ(イギリス)、グラスゴー(イギリス)、モントリオール(カナダ)、横浜、神戸、サイゴン(ベトナム)にはコンテナの設備が整った。
     設備投資にお金が必要な中、アメリカにはコングロマリット(巨大企業がいた)という味方がいた。マクリーンは、公定運賃ならば集荷で差をつけるのはスピードとして、船の建設に力を入れる。そして、地元のよしみもあるタバコ会社に身売りして、お金を調達することに。
     同時に世界では船の建設ラッシュが起こるが、供給過剰に陥る。すると、値下げ競争という苦痛に満ちた局面に突入することになる。しかも、設備投資のための借金を抱えながら。運賃体系が崩壊すると、船会社の利益は当然減り、業界再編が起こった。また競走の制限とちう解決策にたどり着いた。しかし、景気低迷や供給過剰になれば必ず再発すると考えられ、運賃は輸送コストギリギリまで下がるだろう。すると、ローコスト体質の企業の方が生き残れる可能性は高く「もっと大きくもっと速く」というプレッシャーが企業にかかるようになった。
     しかし、オイルショックにより燃料費が高く取られる船はかえって不利になった。マクリーンは、運輸業は資本集約型で景気やライバルなどの外的要因を受けやすいとして、タバコ会社からスピンオフされた。独自技術から次々にヒット商品を生み出し数十年にわたって高利益を上げ続けるのは難しい。

    第12章 巨大化
     船が大きくなり、港も巨大化する必要が出てきた。港の、問題はサイズであり、立地でなくなった。かつては、貨物を一旦そこで堰き止め、改めて送り出すことで繁栄していた。港の背後に控える内陸部と経済的に密接に結びついていた。しかし、コンテナ時代には、ごく少数の港に立ち寄るのみ。荷主は始点から終点までにかかるトータルコストが一番安いルートを選ぶようになった。
     またリスクを背負いながら借金を払い続けることが負担になった政府は、民間に売り渡された。この頃(1980年代初頭)には、民間も資本を調達できるようになっていた
     マクリーンはスピードが遅く(オイルショックの反省から)巨大な船を注文するようになる。しかし、1980年代石油価格は大幅に下落し船は場違いに。負債も溜まり、ついにユナイテッドステイツ海運の持ち株会社(マクリーンの会社)は破産する。ついに、マクリーンはこの破産に耐えられなくなり公から姿を消した。しかし、彼への敬意は皆忘れていない。

    第13章 荷主
     コンテナの影響を最初に受けたのは、海運業界(船主、港、港湾労働者など)。コンテナ革命の最も重大な影響が現れたのはもっと後。何をどこで作ってどこで売るか、何かを輸出または輸入した時に割りに合うかを考える時に、運賃が非常に重要な要素だった。この重みを変えた時、世界経済を様変わりさせた。
     コンテナの影響を考えるには、海上運賃の他、陸上運賃、梱包、倉庫、港湾使用料、保険などさまざまに考えなくてはならない。陸上運賃以外はコンテナ化により確実に削減された。
     またコスト削減に寄与しているのは、荷主の存在もある。盟外会社が行き交うようになったこと、また運輸業の規制が緩和されたことで、荷主の力が強まった。
     そして、こうしたコスト減少の結果、消費者は多大な恩恵を被った。

    第14章 ジャストインタイム
     ジャストインタイムに代表される定時輸送は、コンテナの存在が大きかった。貨物を1個1個人力で運び、港に何日も停泊し、船からトラックへ、トラックから鉄道へま、受け渡しに煩雑な手順を要する時代では、「いつ着くか」を予想することは至難の業であった。よって、生産ラインを安定化させるには、在庫をたくさん抱える必要があった。
     輸送の安定性・信頼性が増加すると、企業は人件費の安い海外に拠点を移すようになり、労働集約的な作業は人件費の安い国で行うようになった。しかし、サプライチェーンに組み込まれるためには港が必要。アフリカは人件費は安くても港がなく普及してこなかった。
     コンテナ革命は1980年代前半で終わったが、その余波は30年経っても続いている。欧州でも日本でもアメリカでも、安価な輸入品が高価な国産品を押し除けるようになった。先進国で物価が下がった。
     旧態依然の港や非効率な港に呪われた国は、グローバル経済で躍進を遂げようにも致命的な障害を抱えることになる。
     巨大化もデメリットはある。建造に巨額の融資を伴うため、十分集荷できないと採算が合わない。またコール回数が減り、港のインフラが放置されることもある。
     最近では自動化の進展がめざましい。

    第15章 付加価値
     港の選ばれ方は、トータルで見たコストや所要時間が他のルートより有利だからという理由に尽きる。だから港は、貨物の通過を円滑化・迅速化することで存在理由を強化しなければならない。アントワープら、艀輸送サービスの拡充で港としての魅力を高めた。
     コンテナが引き起こす3つの社会問題。① 放置された大量のコンテナ ② ディーゼル燃料で動くコンテナ船やトラックなどの排気ガス ③ 公安当局の頭痛の種(テロ・コンテナ、人間コンテナなど)

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    2023年03月24日
  • NOISE下 組織はなぜ判断を誤るのか?

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    上巻よりも読みやすかった。
    バイアスとノイズ。
    計量経済学での攪乱項を深く分析していると認識しました。

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    2023年01月22日
  • MEGATHREATS(メガスレット)世界経済を破滅させる10の巨大な脅威

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    足元で起こっている経済状況が過去最悪に近い事をこれでもかという事実を積み上げて説明している本。著者は有名ではあることに加え、帯で推薦している人達の顔ぶれが凄い。だから内容にも信頼ができると思える。次の経済危機がいつ起こるのか分からないが、相当深刻なものになるのはほぼ間違いないだろう。それに対する備えも少し書かれていて好感が持てる。投資家にとって必読。

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    2022年12月11日
  • ファスト&スロー (上)

    購入済み

    楽しく読めます

    間違っていながら自信たっぷりってことありますよね。今更ながら反省することが多い私は、文中の事例がふに落ちるものばかりで、とても楽しく読めました。おすすめします。

    #深い #タメになる

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    2022年11月30日
  • コンテナ物語 世界を変えたのは「箱」の発明だった 増補改訂版

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    ひろゆき一推しということで購入。

    いかに既得権益が存在している中で革命を起こすのが難しいか、革命が始まると一瞬で世界が変わること、コンテナが当たり前の時代になり、市場がコンテナで溢れかえると逆に低価格化競争によって利益が生まれにくくなること、輸送費が下がったことでものづくりが現地生産では無くなったこと、成功には運も必要なことなど、学ぶことが多くおもしろかった。

    また、非常に学術的にまとめあげた筆者に拍手をおくりたい。

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    2022年11月10日
  • ファスト&スロー (下)

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    人間の認知選択の特性はこの本を読んでおけば事足りるのではないかと思えるくらい網羅的に書かれている。
    プロスペクト理論により選択を間違えることはかなり多そうなので、計算に基づいた選択をするように心がけていこう。

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    2022年09月05日
  • 悪いヤツほど出世する

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    1.ずっと気になっていたリーダーについての本音の部分だったので読みました。

    2.「リーダーとは謙虚であれ」という理想を裏切る内容が書かれています。本書ではリーダーについての実態が調査され、実際に出世している人達はどのような人格なのか、どのような立ち振る舞いをしているのかを書いています。

    3.謙虚とは控えめで素直であること、と定義されているのですが、リーダーにおける謙虚さは定義がズレるのだと思いました。そもそもリーダーは人の前に立つことが求められるので控えめでいることは難しいと思います。
    リーダーにおける謙虚さは
    ・素直さ(ミスした時に他人のせいにしない等)
    ・人を傷つける嘘はつかない
    と言ったことが当てはまると思いました。

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    2022年08月29日
  • ザ・セカンド・マシン・エイジ

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    社会の発展度合いを計測する『社会開発指数』により人類史を捉えると、まさに現代は重大な転換点にある。その原動力となるのが
    ・デジタル化
    ・コンピュータの『指数関数的』高性能化
    ・『組み合わせイノベーション』
    である

    コンピュータの高性能化は、チップの処理速度がおよそ18ヶ月で2倍になる『ムーアの法則』が知られる。これは科学者の努力によるものであり、ここまで加速度的な進歩が起こる産業は他にはない

    人工知能の発達は目覚ましい。これまでは、機械により雇用がなくなることは『労働塊の誤謬』とされていたが、今後は分からない。人間も馬のように、産業界から排斥される可能性もある。

    人間特有の能力として、『複雑なコミュニケーション』『パターン認識』『非定型の肉体労働』が挙げられる。特に、人間にとっては簡単な運動でも機械には困難な『モラベックのパラドクス』が興味深い。

    デジタル産業の強みは、情報伝達、複製のコストがほぼゼロの『限界評価ゼロ』経済であることだ。今や世界中のデータベースにアクセスでき、最高のアルゴリズムを無限にコピーして、しかも無料で利用できてしまう。

    デジタル経済は人々の生活を劇的に豊かにしておきながら、その費用は極端に低い(あるいは無料で提供されるため)GDPに反映されない。音楽産業がCDからストリーミングに転換した時、まるで産業が丸ごと消えてしまったかのような現象が、統計上では起こる。

    デジタルサービスの場合、物理的な障害がほとんどないため、すぐにグローバル化する。そして、一番が市場を独占し、その流れが『ネットワーク外部性』により加速する『ウィナー・テイク・オール』の世界である。

    その結果として、桁違いの所得格差が生じる。今後、大金持ちとなる可能性のある人間は
    ・エンジニアなどの高スキル労働者
    ・システムを所有する超資本家
    ・芸術、スポーツなどの分野のスーパースター
    である。

    機械によって代替されにくい人間の特徴として、『発想』が挙げられる。機械は答えを出せる一方で、問いを立てることが出来ない。今後の教育には、ラリーペイジやジェフべゾフなど、名だたる天才が受けたとさらる、個人の自発的な好奇心を伸ばす『モンテッソーリ教育』が効果的かもしれない。

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    2022年08月02日
  • NOISE上 組織はなぜ判断を誤るのか?

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    前著「ファストアンドスロー」が人間のバイアスについて書かれた本であったのに対して、本著は「ノイズ」(=標準偏差。ばらつき)について書かれた本。
    同じ人間でも、判断する気分・時間・外部要因によって答えを変えてしまう。それに対応するためにはどうすればよいのか?

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    2022年07月31日
  • ブラック職場があなたを殺す

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    著者の主張は今すぐ全部は実現できないと思う。しかしながら、フリーランスで働くことや在宅ワークで働くことが隆盛となっている現在。またそれも困難でなくなくブラック企業で働かざるおえない方に是非読んでいただきたい。

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    2022年07月29日
  • コンテナ物語 世界を変えたのは「箱」の発明だった 増補改訂版

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    イノベーションというと、ついGoogleやAppleなどのビックテックを想像してしまうけど、本当の意味でのイノベーションは人々の生活を変えるためにエコノミクスが合うように社会実装する事を指すのではないかと気付かされた

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    2023年12月26日
  • NOISE上 組織はなぜ判断を誤るのか?

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    バイアスについての名著『ファスト・アンド・スロー』の内容の繰り返しにならないかを懸念してたのですが、杞憂どころか、ノイズという全く新しい視点で書かれた目から鱗の内容でした。統計学的な中央値のずれがバイアスなのに対し、標準偏差の大きさがノイズです。

    経営判断や司法判断などの一度きりの判断は、繰り返しや結果の検証がされないために、信じられないほどのバラツキを持っていることが認識されていません。本書はその衝撃の事実をデータで示してくれむす。さらに、判断者ごと、判断ケースごと、または偶然性によるもの、などの要素にノイズを分解して、ノイズ全体がその要素の二乗和になっていることが説明されます。

    バイアスを減らす重要性が広く認識されてきた中で、本書はノイズという新たな課題を突きつけます。下巻でその方法論がどの様に語られるか、楽しみです。

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    2022年07月27日
  • NOISE下 組織はなぜ判断を誤るのか?

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    第16章 パターン
    パターンノイズについて話そう
    「あなたはずいぶん自信ありげだが、この問題はそうかんたんではない。情報はいろいろな可能 性を示している。別の解釈も可能だということを見落としていないだろうか?」
    「君と私は同じ候補者と面接し、いつものように同じような質問をした。なのに、君と私は正反 対の判断に達している。このパターンノイズの原因は何だろう?」
    「人間いろいろで性格もちがうからこそ、イノベーションが生まれる。さまざまな個性は興味深 いし、刺激的でもある。だが判断ということになると、話は別だ」

    第17章 ノイズの原因
    ノイズの原因について話そう
    「判断の平均レベルのちがいにはすぐ気づく。だが気づきにくいパターンノイズも大きいのでは?」
    「この判断ミスはバイアスのせいだと君は言うが、結果がちがってもそう言っただろうか?ノイズの存在は考えたことがあるか?」
    「バイアスを減らす努力をすることはもちろん正しい。だが同時に、ノイズを減らすことにも取り組むべきだ」

    第18章 よい判断はよい人材から
     つまり、認知反射や認知欲求のテストは注意深い遅い思考に取り組む傾向を計測するのに対し、開かれた思考テストはさらに踏み込み、自分の判断は未完成であり必要に応じて修正したいとする謙虚な思考態度を計測する。

    よい判断を下せるのはどんな人かについて話そう
    「君はたしかに専門家だ。しかし君の判断は結果で検証可能なのか、それとも不可能なのか?」「われわれは二人の専門家から得た助言のどちらかを選ばざるを得ない。しかし、彼らの専門的な能力や過去の実績は何もわかっていない。だから、知的能力の高いほうのアドバイスを採用することにしよう」
    「ただ、知的能力がすべてというわけではない。認知スタイルや思考態度といったものも重要だ。 われわれが選ぶべきなのは単に頭のいい人間ではなく、開かれた思考のできる人だと思う」

    第19章 バイアスの排除と判断ハイジーン
    バイアスの排除と判断ハイジーンについて話そう
    「いま減らしたいのがどういうバイアスで、どんな具合に結果に影響を与えているのか、はっき りしているのだろうか。もしわかっていないなら、複数のバイアスが作用している可能性を考え なければならない。その場合、どのバイアスが強く作用しているのかを見きわめるのはとてもむずかしい」
    「話し合いを始める前に、まず意思決定プロセスのオブザーバーを指名しよう」
    「今回は判断ハイジーン手順をきちんと実行できた。よい決定を下せたのはたぶんそのおかげだろう」

    第20章 科学捜査における情報管理
    情報管理手順について話そう
    「判断のあるところノイズあり。 指紋鑑定も例外ではない」
    「この件についてはいろいろな情報が入ってきている。だが知っていることをすべて専門家に話すのは、彼らが判断を下すまでやめておこう。バイアスがかかりかねないからだ。向こうからどうしても必要だと要求してきた情報のみ提供することにしたい」
    「セカンドオピニオンを求めるにしても、その人物が最初の判断を知っていたのでは、独立した意見にはならない。三番目の人物もそうだ。確証バイアスのカスケードが起きてしまう」
    「ノイズと戦うには、まずノイズが存在することを認めなければならない」

    第21章 予測の選別と統合
     …超予測者の特徴は、分析的、確率的に感がられることだったのである。
     超予測者は問題をどのように捉え、どのように構造化するのだろうか。たとえば重大な地政学的問題(EUから離脱する国はあるか、これこれの地域で戦争が勃発するか、政府高官が暗殺される可能性はあるか、など)に取り組むとき、彼らはいきなり漫然と予測するのではなく、まず構成要素に分解する。直感だの虫の知らせだのには頼らず、「答えがイエスになるのは何が起きた場合か」「答えがノーになるのは何が起きた場合か」を考える。次に、そこから派生する問いまた考える。こうして問いと答えを重ねていく。
     超予測者は「統計的視点」から考えることにも長けており、基準率をつねに探す。ガンバルディのケース(第13章)で述べたように、ガンバルディの経歴や人柄に注意を払う前に、平均的なCEOが二年の契約期間を全うできる確率を知っておくことは役に立つ。どうやら超予測者には、基準率を調べる習慣が身についているようだ。一年以内に中国とベトナムが国境紛争をめぐって武力衝突する可能性はあるか、と質問されると、超予測者はすぐさま中国とベトナムがいま何をしているか調べたりはしない。おそらくその件についてニュースや解説記事を読んで自分なりの直感は働いているにしても、それはひとまず棚上げする。彼らは、直感に従うとだいたいにおいてろくなことにならないと知っているのだ。だから基準率を調べる過去の国境紛争が武力衝突に発展したケースはどのくらいあるのか。もしそういうケースが稀だとすれば、まずその事実を押さえる。その後に初めて中国とベトナムの現状に目を向ける。
     要するに、超予測者を際立たせるのは彼らの絶対的な知的能力ではない。それをどう応用するかが重要なのである。

     サトパの推論によると、ある人の予測精度が他の人より高い理由、低い理由は主に三つある。
     第一に、精度の高い人は予測に必要なデータを見つけて分析するスキルに長けていると考えられる。このことは、情報の重要性を示唆する。
     第二に、一部の人は一方の側に偏ってエラーを犯す傾向がある。一〇〇回の予測のうち、何かが起きる確率をほぼ必ず過大評価する人は変化を好むバイアスが、過小評価する人は安定を好むバイアスがかかっていると考えられる。
     第三に、一部の人はノイズが小さい、つまりランダムエラーが少ない。判断と同じく予測でも、ノイズを誘発する要因はたくさんある。ある種の情報に対する過剰反応(これはバターンノイズの一種である)や機会ノイズのほか、使う尺度がちがう場合にもノイズが生じる。

    選別と統合について話そう
    「四つの独立した判断の平均をとることにしよう。こうすれば確実にノイズを半分に減らすこと
    ができる」
    「私たちは永遠のベータ版であり続けなければならない。超予測者のように」
    「この状況を検討する前に、該当する基準率を知っておくべきだ」
    「このチームは人材揃いではあるが、判断の多様性という面で不安がある」

    第22章 診断ガイドライン
    医療のガイドラインについて話そう
    「医師の診断には想像以上にノイズが多い。X線撮影を行った場合ですら、専門医の意見が一致しないことがある。患者にとっては、受ける治療がくじ引きで決まるのとたいして変わらないとさえ言える」
    「月曜日でも金曜日でも、あるいは朝早くでも午後遅くでも、つねに安定した診断を下している医者は言いたがる。だが実際にはそうではない。疲れは診断に影響する」
    「医療ガイドラインが導入されれば、医師の診断ミスで患者が犠牲になるケースは減ると期待できる。ガイドラインは診断のばらつきを減らすことになるので、医師にとっても大いに助けとなるはずだ」

    第23章 人事評価の尺度
    評価尺度について話そう
    「わが社の人事評価制度には膨大な時間を注ぎ込んだが、それでも実態はといえば、ほんとうに能力や実績に基づく評価は四分の一にすぎず、残り四分の三はシステムノイズという体たらくだ」
    「この問題に対処するために三六〇度評価や強制的ランク付けも試してみたが、事態はますます悪くなった」
    「レベルノイズがこれほど多いのは、たとえば”すぐれている”と“きわめてすぐれている”の解釈が評価者によってちがうからだ。具体的なケースをアンカーとして評価尺度に付け加えれば、評価者の間の不一致を減らせるだろう」

    第24章 採用面接の構造化
     この問題を克服するために、グーグルでは評価を事実に基づいて行うだけでなく、項目ごとに独立して行うことを徹底した。「構造化行動面接(structured behavioral interview)」、まさにその具体的な例である。この面接では、面接官には候補者を気に入ったかどうかを決めることは求められていない。面接官の役割はもっぱら評価項目に必要な情報を収集し、項目ごとに採点することにある。そのために、候補者の過去の行動についてあらかじめ決められた質問をしなければならない(「これまでに、これこれの状況に遭遇したことはありますか、あなたはそのときどうしましたか、そのどうなりましたか?」といった類のである)。また採点に際しては、あらかじめ定められた統一的な尺度に従うことが大切だ。その尺度には、質問ごとに「ふつう」、「よい」、「きわめてよい」の例がこまかく記載されている。前章で紹介した行動基評価尺度にいくらか似ていると言えるだろう。こうした共通の尺度があれば、ノイズを減らす役に立つ。
     くだけたおしゃべりのあるおなじみの面接とはずいぶんちがうぞ、と感じただろうか。それは当たっている。じつのところ、構造化行動面接は口頭試問か尋問に近い。しかも一部の調査では、面接をする側も受ける側も構造化面接を嫌っていることが判明した(すくなくとも非構造化ほうを好む)。それに、どのような構造化されていると言えるのかについてはまだ結論が出ていない。それでも、一つ確実なことがある。それは、従来の構造化面接に比べ、将来の実績との相性がずっと高いことだ。相関係数は0.44~0.57、PCで言えば65~69%である。つまり、よい人材を選べる確率が七割近い。これは、非構造化面接の56~61%と比べると顕著な改善と言ってよい。
     加えてグーグルは、いくつかの評価項目では他の情報も考慮する。たとえば知識については、プログラマー志望者にはコードを書いてもらうというふうに実務試験を行う。調査によると、将来の仕事の出来不出来に関する限り、こうした実務試験の予測精度が最も高いことがわかっている。グーグルは、社内の照会も参考にする。これは、候補者が指名した照会先ではなく、たまたま本人を知っている社員に会する方法である。
     第三原則は、総合判断は最後に行うというものだ。かんたんに言うと、直感を禁止するわけではないが、最後の最後まで遅らせるということである。グーグルの場合、最終判断は採用委員会が下す。委員会では面接ごとに各評価項目についてつけられたすべての採点を集めたファイルおよび結果など他の評価に基づき、各委員が対等の立場で発言し、そのうえで誰に内定を出すかを決定する。
     グーグルはデータ指向の強い企業として名高いにもかかわらず、そして評価の統合は機械的に行うほうが臨床的に行うよりすぐれているという数々の証拠があるにもかかわらず、最終決定は機械的に行わない。グーグルといえども、そこは人間の判断に委ねられている。それはそうだろう、採用委員会であらゆる情報を集約し、勘案したうえで議論するのは、「この候補者はグーグルでうまくやっていけるか?」ということなのだ。

     判断を分解する、評価は独立に行う、総合判断は最後に行うという三つの原則は、必ずしもすべての企業に当てはまるとは言えない。それでも、これらの原則は組織心理学者がずっと前から提唱してきたこととおおむね一致する。

    構造化面接について話そう
    「構造化されていない標準的な面接では、候補者のことを理解できたつもりになったり、ウチの会社に合わないと決めつけたり、といったことは避けられない。こうした直感を鵜呑みにすべきではない」
    「標準的な面接は危険だ。バイアスがかかりやすいだけでなく、ノイズも大きい」
    「面接を、いや人材選抜プロセス全体を構造化すべきだ。まずは候補者に何を求めるのかをもっと具体的にはっきりさせよう。そして、項目ごとに独立して評価するというルールを決めて実行しなければいけない」

    第25章 媒介評価プロトコル
    媒介評価プロトコルの手順
    1.判断を媒介評価項目に分解する
     (繰り返し行う判断では、1度決めれば流用できる)。
    2.各項目の評価では、可能な限り「統計的視点」を取り入れる
    (繰り返し行う判断では、可能であればケース尺度を使い、相対的に評価する)。
    3.分析段階でも、可能な限り項目ごとの評価の独立性を維持する。
    4.意思決定を行う会議でも、媒介評価項目を1つずつ切り離して評価する。
    5.会議はデルファイ法に沿って進める。
    6.最終決定に臨むまでは直感を働かせないが、最終決定に際しては直感を禁じない。

    媒介評価プロトコルについて話そう
    「わが社では採用決定のプロセスを構造化した。採用だけでなく、戦略的な意思決定にも構造化を導入してはどうか?考えてみれば、選択肢は候補者のようなものだから」
    「この決断を下すのはむずかしい。 媒介評価項目の採点はどうなっているのか?」
    「この計画について、直感に基づいて総合的な判断を下すことは重要だ―しかし、いまではな い。まず先に独立した評価項目ごとに検討しよう。その後のほうが、われわれの直感はずっとうまく働く」

    第26章 ノイズ削減のコスト
    ノイズ削減に伴うコストについて話そう
    「教育におけるノイズを減らしたいなら、かなりの支出を覚悟しなければならない。生徒の採点に関する限り、先生たちはノイズだらけだ。同じ課題を採点しても、五人が五人ともちがう」
    「ソーシャルメディアが人間の判断に頼らず何らかのアルゴリズムを導入し、文脈を問わずある種の言葉を含む投稿を機械的に削除したら、たしかにノイズはなくなるだろう。だがたくさんのエラーを生むことになる。治療は時として病気より悪い」
    「バイアスのかかったルールやアルゴリズムが存在することは認めよう。だが人間の判断にもバイアスはある。われわれが問うべきは、ノイズがなくバイアスも少ないアルゴリズムを設計するのは可能なのか、ということだ」
    「ノイズを排除するには、たしかにコストがかかる。だがコストをかけるだけの価値はあるだろう。ノイズのある判断はきわめて不公平だ。もし、ノイズを減らすために講じた手段が行きすぎと感じられる場合、たとえばガイドラインやルールがあまりに硬直的だったり、逆にバイアスを第生んだりするなら、全部を投げ捨てるのではなく、よりよい手段を試みるべきだ」

    第27章 尊厳
    尊厳について話そう
    「多くの人が対面でのやりとりを重視し、ぜひとも必要だとさえ主張する。自分の不安や苦情を生身の人間に聞いてほしいのだ。だから、人間に裁量の余地を与えるべきだという。もちろん、そうなればノイズが生じることは避けられない。だが人としての何物にも代えられないという」
    「道徳的価値観は絶えず変化するものだ。あらゆることを厳密に規定するルールを導入したら、変化する価値観に対応する余地がなくなってしまう。ノイズを減らす方法の中には、あまりに硬直的なものがある。あれでは、変化をまったく受け付けない」
    「不正行為を防ぎたいなら、ある程度のノイズは容認しなければならない。学生たちが、論文の盗用をしたらどんなを受けるかわからない状態にしておくほうがいいのだ。そうすれば、盗用を慎むだろう。ノイズの形でいくらか不確実性を残しておくことが抑止効果を高める」
    「ノイズをなくしたければ、明確なルールを決めるしかない。そうしたら、よからぬ輩は必ず抜け道を見つけるだろう。だからノイズは、ルールの裏をかくような行為を防ぐために払う価値のある代償だと言える」
    「創造性ゆたかな人間には、それを発揮する場を与えてやらなければならない。人間はロボットはではないのだ。どんな職業でも、人間には判断の余地を与える価値がある君を規則でがんじがらめにしたら、君はノイズを出さないだろう。だが全然楽しくないから、独創的なアイデアも出てこなくなる」
    「結局のところ、大方のノイズ擁護論は説得力がない。人間の尊厳を重んじ、価値観の変化に対応する余地を確保し、創造性を発揮できるようにしつつ、ノイズの不公平とコストを抑える方法はいくらでもある」

    第28章 ルール、それとも規範?
    ルールと規範について話そう
    「ルールはやることを単純にし、ノイズを減らしてくれる。規範しかないと、状況に応じていちいち判断しなければならない」
    「ルールか規範か?まず、エラーが多くなるのはどちらか考えよう。次に、ルールなり規範なりを決めて運用するのはどちらがかんたんか、どちらの負担が大きいかを判断しよう」
    「本来ならルールを決めるべきときに規範を設けていることが多い。それは、ノイズに注意を払
    っていない証拠だ」
    「世界人権宣言からノイズをなくせとまでは言わない。すくなくともいまは。だが、ノイズがきわめて不公平であることは強く言いたい。世界中の法制度はもっとノイズを減らすことを考えるべきだ」

    まとめと結論 ノイズを真剣に受け止める
    ノイズを(そしてバイアスも)減らすには
    原則1 判断の目標は正確性であって、自己実現ではない
    原則2 統計的視点を取り入れ、統計的に考えるようにする
    原則3 判断を構造化し、独立したタスクに分解する
    原則4 早い段階で直感を働かせない
    原則5 複数の判断者による独立した判断を統合する
    原則6 相対的な判断を行い、相対的な尺度を使う

    付録B 意思決定プロセス・オブザーバーのチェックリスト
    バイアス発見のためのチェックリスト
    1 判断に臨む姿勢
    (a)置き換え
    ・情報や証拠の取捨選択や議論の焦点に問題はないか? 本来判断を下すべき困難な問題を、答えを出すのが容易な問題に置き換えていないか?
    ・重要な要素を見落としたり無視したりしていないか、また無関係な要素を不当に重視していないか?
    (b)統計的視点
    ・検討に際して統計的な視点を取り入れているか?絶対的な判断ではなく相対的な判断を試みているか?
    (c)多樣性
    ・何人かにバイアスがかかっていて、同じ方向に偏ったエラーが出る可能性はないか?
    ・重要な意見や専門家としての見解があるのに黙っている人がいると感じる点はないか?

    2 予断と時期尚早な結論
    (a)議論開始前の予断
    ・ある結論にいたると得をする人はいるか?
    ・すでに結論を下してしまっている人はいるか? 何らかの偏見や予断を疑うべき妥当な理由が存在するか?
    ・何にでも反対するタイプの人はいるか?その人は意見を述べたか?
    ・極端な意見に引きずられて議論があらぬ方向に迷走する恐れはないか?
    (b)時期尚早な結論、過剰な一貫性
    ・早い段階で検討された選択肢に予期せぬバイアスがかかっていないか?
    ・他の選択肢も十分に検討されたか、他の選択肢を裏付ける証拠を積極的に探したか?
    ・都合の悪い情報や不快な意見を無視したり抹殺したりしていないか?

    3 情報処理
    (a)入手可能性、顕著性
    ・最近起きたとか、劇的であるとか、個人的に重要な意味があるといった理由から、あまり関係のない出来事や情報を過剰に重視していないか?
    (b)情報の信頼性
    ・個人的な体験、断片的なエピソード、説得力のある物語や比喩といったものに過度に依存していないか?報の裏付けをとったか?
    (c)アンカリング
    ・正確性や信頼性の疑わしい数字に最終判断が左右されていないか?
    (d)非回帰的予測
    ・平均への回帰を無視した推定、見積もり、予測を行っていないか?
    4 決定
    (a)計画の錯誤
    ・予測を参照する場合に、情報源や有効性をチェックしているか?統計的視点を活用して予測を検証しているか?
    ・不確実な数字について信頼区間を設けているか?その区間は十分な幅があるか?
    (b)損失回避
    ・意思決定者のリスク選好は組織の方針と一致しているか?慎重すぎないか?
    (c)現在バイアス
    ・計算に使用される数字(現在価値への割引率など)は、組織の短期的長期的優先順位のバランスを適切に反映しているか?

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    2022年06月25日
  • NOISE上 組織はなぜ判断を誤るのか?

    Posted by ブクログ

    第1章 犯罪と刑罰
    量刑のノイズについて話そう
    「調査によると、同じ犯罪に対して刑の厳しさに大幅なちがいがあるらしい。これは不公平だ。どの判事が担当するかで量刑がちがうのはどう考えてもおかしい」
    「重さが裁判官の機嫌だとか、その日が暑いとか寒いといったことに左右されるべきではない」
    「量刑ガイドラインはこの問題に対処する方法の一つだ。だがガイドラインを嫌う人も多い。適切な判断を下すにはある程度の量の余地が必要なのに、それを狭めてしまうからだという。たしかに、どのケースもそれぞれにちがうとは言えるかもしれない」

    第2章 システムノイズ
    保険会社のノイズについて話そう
    「保険会社では、プロフェッショナルが下す判断の質が非常に重要だ。私たちは、誰が担当しても判断はほぼ同じだと考えていたが、この前提はまちがっていたようだ」
    「システムノイズは予想より五倍も多かった。つまり、容認できる水準の五倍もあった。ノイズ検査を行わなかったら気づかないままだっただろう。ノイズ検査のおかげで、一致の錯覚は打ち砕かれた」
    「システムノイズは由々しき問題だ。損失は数億ドルに上るだろう」
    「判断のあるところノイズあり。それも、思った以上に多く」

    第3章 一回限りの判断
    一回限りの判断について話そう
    「これはたしかにめったにない出来事ではあるが、いまのアプローチだとノイズが多くなりそうだ」
    「一回限りの判断も、繰り返し行う判断がたまたま一回だけだったケースにすぎない。このことを忘れないように」
    「あなたが判断のよりどころにしている過去の経験は、今回の判断と関係があるのだろうか」


    第4章 判断を要する問題
    プロフェッショナルの判断について話そう
    「これは判断を要する問題だ。となれば、みんなが完全に一致することは期待できない」
    「たしかにそうだ。それにしてもいくつかの判断はあまりにかけ離れているから、まちがっているにちがいない」
    「あなたの候補者選びのやり方は単に好みを表しているだけで、まじめに判断したとは思えない」
    「決断を下すには、予測的判断と評価的判断の両方が必要だ」

    第5章 誤差方程式について話そう
    誤差方程式について話そう
    「バイアスを減らしても、それと同じだけノイズを減らしても、正確性におよぼす効果は同じらしい」
    「予測的判断のノイズを減らすのはとても効果的だ。このとき、バイアスが多いか少ないかは関係ない」
    「真の値を上回る予測と下回る予測の比は八四一六だったから、バイアスはかなり多い。それでも正規分布であれば、バイアスと同じだけノイズが存在することになる」
    「どんな意思決定にも予測的判断が関わってくる。予測的判断においては、正確性が唯一の目標であるべきだ。だからあなた個人の価値観は、事実から切り離しておくように」

    第6章 ノイズの分析
    ・レベルノイズは、判断者ごとの判断の平均的なレベルのばらつきである(たとえば厳しめの裁判官と甘めの裁判官)。
    ・パターンノイズは、特定のケースにおける判断者の反応のばらつきである(再犯者に厳しい、共犯者に甘い、など)。
     量刑調査では、レベルノイズとパターンノイズはおおむね等しいことがわかった。だがバターシノイズには一過性の原因による機会ノイズが含まれている可能性が高く、機会ノイズは偶発的ランダムエラーとして扱う必要がある。
    ノイズ分析について話そう
    「裁判官によって厳しさのレベルにちがいがあるときは、レベルノイズが存在する。ある特定の 被告を厳罰に処すか寛大な措置にするかで裁判官の意見が一致しないときには、パターンノイズ が存在する。パターンノイズの一部は機会ノイズだ。つまり、同じ裁判官が別の機会には別の判断を下す。」
    「完璧な世界では、被告は正義の裁きを受けられる。だが、現実には、ノイズの多いシステムに翻弄されるのだ」

    第7章 機会ノイズ
     ヘルツォークとヘルトヴィヒによる意思決定者へのアドバイスをかんたんにまとめると、次のようになる。独立した第三者に意見を求められるなら、そうするほうがよい。これはまさに「群衆の知恵」であり、判断精度を向上できる可能性が高い。だがそれができない場合には、自分の中に群衆を作って、同じ質問をもう一度自分にしてみることだ。

    機会ノイズについて話そう
    「判断はフリースローのようなものだ。どんなにがんばっても、同じ動作を正確に二回繰り返すことはできない」
    「あなたの判断は気分に左右されている。気分だけでなく、直前にどんな話をしたかとか、今日 の天気とか、そういうことにも。人間はいつも同じ人間ではないと考えなければならない」
    「君は先週の君と同じではないかもしれないが、ありがたいことに、今日の他人よりは先週の君 に近い。つまり機会ノイズは、システムノイズの最大の要因ではないということだ」

    第8章 集団によるノイズの増幅
     個人の判断に入り込むノイズだけでも由々しき問題だが、これが集団になると一段と問題は大きくなる。とかく集団というものは、本来は無関係のさまざまな要素に左右され、とんでもない方向に迷走しがちだ。 誰が最初に発言したか、誰が最後か、誰が自信たっぷりに話したか、誰が黒を着ていたか、誰が誰の隣に座ったか、絶妙な瞬間に笑ったのは、眉をひそめたのは、頷いたのは、首を振ったのは誰か、といったことが結果を大きく左右する。組織では、さまざまな決定が集団で下されているはずだ。採用、昇進、支店の閉鎖、広報戦略、大学入試、 新製品の発売時 環境規制への対応、さらには国家安全保障にいたるまで、一人で決断するということはまずあるまい。

     …メイシーらが指摘するように、「最初に動いたごく少数の人がたまたまどちらに転ぶか」が、その後の形勢を決してしまうほどの影響力を持つ。

     …集団極性化とは、集団で話し合うと、個々人の当初の考えよりも集団の意思が極端な方向に振れやすいことだった。

    集団での意思決定について話そう
    「どうやら、最初に人気が出るかどうかですべてが決してしまうらしい。新製品が発売第一週で話題になるよう、戦略を練るべきだ」
    「いつも思うのだが、政治家の発言も経済学者の提案も映画スターとたいして変わらないのでは ないだろうか。誰かが好きだとわかると、みんなが好きになるという点で」
    「チームが集まるといつも意見が一致して自信満々になり、ものすごい勢いで突き進む。これが どうも不安で仕方がない。意思決定プロセスのどこかにまちがいがあると思えてならない」

    第9章 人間の判断とモデル
    「人間は判断を下すときに、複雑で微妙なルールを見つけたと考えがちだが、複雑で微妙な斟酌はだいたいにおいて単に時間の無駄だ。そのようなものが単純なモデルの精度を上回ることはまずない」
    「ポール・ミールの著書が発表されてから六〇年以上が経つが、機械的な予測のほうが人間より上だと聞くといまだにショックを受ける」
    「要するに、人間の判断にはノイズが多すぎる。だから、ある人の判断から生成した近似的なモデルのほうが本人に勝つことになる」

    第10章 ルールとノイズ
    ルールとアルゴリズムについて話そう
    「大量のデータが存在する場合には、機械学習アルゴリズムのほうが人間や単純なモデルより精 度の高い予測ができる。ごく単純なルールや式ですら、人間の判断を上回るという。これは、ノ イズがないことに加え、複雑で微妙な匙加減などしないからだ。そういうものはだいたいにおいて予測の役に立たない」
    「結果についてのデータが何もない状況では、均等に重み付けしたモデルを使うのがよい。最適の重み付けをしたモデルとほとんど同等の予測精度が期待できる。それにとにかく、人間の場当たり的な判断よりはるかにましだ」
    「君はモデルの予測を信用していないようだ。何か折れた足のような決定的な情報を持っているのか、それとも単に機械的な予測が嫌いなのか?」
    「もちろんアルゴリズムも誤りは犯す。だが人間のほうがずっと誤りは多い。それでも人間を信用するのはなぜか?」

    第11章 客観的無知
     答えは、こうだ。人材の採用といった重要な事柄では、信頼性がすこし上がるだけでも大きな価値がある。そもそもエグゼクティブたちは、わずかばかり利益率を上げるために日々改善や改革の努力をしているではないか。もちろん、成功が保証されてはいないことを彼らはよく知っているはずだ。それでも成功の確率を高めると考えられる決定を下す。エグゼクティブたちは、確のこともよく承知している。当たる確率が五九%のくじと六五%のくじが同じ値段で売っていたら、前者を買う人はいないだろう。
     問題は、エグゼクティブたちにとって値段が同じではないことだ。五九%のくじ、つまり直感に頼る場合には、ご褒美がある。「これでよし」と言ってくれる内なるシグナルだ。だから内なるシグナルに匹敵するか、さらに上回るような確実性の感覚が得られるなら、彼らは直感を断念して予測精度の高いアルゴリズムを採用する気になるだろう。だが、内なるシグナルのご褒美を諦めてまでアルゴリズムを採用しても、予測精度が人間よりたいして高くないのであれば、払う代償が大きすぎると感じられてしまう。

    客観的無知について話そう
    「予測のあるところ無知あり。それも、思った以上に多く。われわれが頼っている専門家たちがダーツ投げをするチンパンジーよりましなのかどうか、チェックしたほうがいい」
    「何か決定的な情報を知っているわけでもないのに、自分の勘に頼って満足している。そういう姿勢を、客観的無知の否定と言う」
    「モデルの予測精度はつねに人間より上だが、大幅に上回るわけではない。人間の判断の精度がひどく低い場合、モデルはだいたいにおいてそれよりいくらかましという程度だ。だとしても、精度がいいに越したことはない」
    「この種の決定を下すときにモデルを使うのを渋るのは、自分で判断して”内なるシグナル”を感じたいからだ。だったら、モデルを使わずに済むよう、われわれの意思決定プロセスを改善しなければならない」

    第12章 正常の谷
    統計的思考と因果論的思考
     本章では、統計的思考と因果論的思考を対比させた。後者は遭遇した出来事を即座に正常か異常分類してのけ、思考の労力を大幅に省いてくれる。異常だとなって初めて、状況と記憶の両方から必要情報を探すという労力が動員される。静観して続報を待つにしても、忍耐という努力が必要だ。対照的に正常の谷に収まる出来事には、ほとんど頭を使う必要がない。道ですれ違ったお隣さんが愛想よくにっこりしても、上の空で会釈しただけでも、どちらもよくあることなのであなたはたいして注意を払わない。お隣さんが満面の笑顔で何か言いたそうだったり、むっつ不機嫌にあなたを無視したりしたとき、あなたは検索モードに入り、記憶の中から原因を探す。因果論的思考は、異常な出来事を察知する警戒は怠らないものの、無用の努力は避けるのである。
     対照的に、統計的思考は相当な努力を必要とする。まず、注意力という貴重なリソースを動員しなければならない。これは、システム2にしかできないことである。「ファスト&スロー」で述べたように、システム2は熟考、意思的な努力、秩序を要する遅い思考を司る。統計的思考をするには、ごく初歩的なものを除けば専門的な訓練が必要だ。まず集合を見て、個々のケースは大きなカテゴリーに属す例だと考える。たとえばジョーンズ一家の立ち退きを一連の出来事の結果とはみなさない。ジョーンズ家と同じ予測的特徴を備えた大量のケースをあらかじめ分析したうえで、統計的に起こりうる(または起こりそうもない)結果だとみなす。

    理解の限界について話そう
    「相関係数が0.20(PC=五六%)は、人間に関する事柄ではごく標準的な数字だ」
    「相関関係は因果関係を意味しないが、因果関係は相関関係を意味する」
    「大方の出来事は、予想してはいないが、起きても驚きはしない。こうした出来事には説明は不要だ」
    「正常の谷に収まる出来事は、とりたてて予想はしていないにもかかわらず実際に起きても驚き はしない。なぜ起きたのか、すぐに説明がつく」
    「どうしてこういうことになったのかわかったつもりでいるが、だからといって、こうなると予想できただろうか」

    第13章 ヒューリスティクス、バイアス、ノイズ
     判断にかかっているバイアスは、多くの場合、真の値を参照することによって突き止められる。エラーがおおむね一方向に偏っている場合には、バイアスが存在する。たとえばプロジェクトチームが完了までの日数を見積もるケースでは、見積もりの平均が実際に要する日数を大幅に下回ることが多い。このおなじみの心理的バイアスを「計画の錯誤(planning fallacy)」と言う。

    ヒューリスティクス、バイアス、ノイズについて話そう
    「心理的バイアスはたしかにどこにでもある。だからといって、何でもかんでも漠然とバイアスのせいにすることは厳に慎まねばならない」
    「熟考を要する質問をかんたんな質問で置き換えれば、エラーが起きるに決まっている。たとえば確率を判断すべきときに類似性で置き換えたら、基準率を無視することになる」
    「結論バイアスがかかっていると、自分が最初に抱いた印象とつじつまが合うように証拠の解釈を歪めることになりやすい」
    「第一印象というものはすぐに形成されてしまう。そうなるとそれにこだわり、対立する情報をあとから入手しても軽視しがちだ。こうした傾向を過剰な一貫性と言うらしい」
    「心理的バイアスは、多くの人に同じバイアスがかかっている場合には統計的バイアスを生む。ウス、バイアス、ノイズだがそれぞれにちがう方向にバイアスがかかっていれば、システムノイズを生むことになる」

    第14章 レベル合わせ
     統計学的に言えばまったくばかげた予測に行き着くという事実にもかかわらず、与えられた情報をレベル合わせに使う誘惑に抵抗するのはむずかしい。セールスマネジャーは往々にして、営業成績が去年抜群によかった部下は今年もそうなると予想する。人事担当役員が輝かしいキャリアを積んできた採用候補者に出会うと、ゆくゆくは社長になるだろうと期待する。映画プロデューサーは、前作が大ヒットした監督は次もヒットを飛ばすだろうとそろばんを弾く。
     こうしたレベル合わせ予測の例は、だいたいにおいて失望に終わる。一方、与えられた情報があまりにネガティブな場合には、レベル合わせで予測すると実際以上に悲観的になりやすい。与えられた情報に基づいてレベルを合わせる直感的予測は、情報がポジティブであれば過度に楽観的に、ネガティブであれば過度に悲観的になりがちだ(この種の予測エラーを専門的には「非回「帰的」と表現する。なぜなら、「平均への回帰」という統計的現象を無視しているからだ)。

    レベル合わせについて話そう
    「二人ともこの映画がすごくよかったという点ではたしかに一致した。だがあなたは私ほど感動していないように見える。使った形容詞は同じでも、使っている尺度がちがうのだろう」
    「このテレビドラマシリーズはシーズン1がすばらしかったので、シーズン2もヒットすると思った。つまりレベル合わせ予測をして、みごとに外したわけだ」
    「論文を採点するときに一貫性を保つのはむずかしい。順位をつけるほうがいいと思う」

    第15章 尺度
    尺度について話そう
    「われわれの判断には大量のノイズがある。これは、各自の尺度の理解がちがうせいだろう」 「最初のケースがアンカーになって、ちょうど尺度上の基準点のように作用することを忘れないように」
    「ノイズを減らしたければ、順位の判断に切り替えるほうがいい」

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    2022年06月25日
  • NOISE下 組織はなぜ判断を誤るのか?

    Posted by ブクログ

    下巻は、統計的な手法から距離を置き、各人の資質、個人の判断を中心として、バイアス、ノイズの排除に関する考察です。

    下巻の範囲は以下

    第4部 人間心理に立ち戻り、ノイズが生じる根本原因の検討(途中から)
    第5部 判断を改善しエラーを防ぐ実際的な問題への取組み
    第6部 ノイズの適正水準はどの程度なのか。経済的な要請からの考察

    終章に展開される結論は以下です。

    人間の判断を補うために、今日よりずっと幅広くアルゴリズムが導入されるようになる
    複雑な判断はシンプルな媒介評価項目によって分解される
    できるだけ多くの独立した判断を集めて統合される。
    統計的な視点が組織的な判断プロセスに組み込まれるようになる。意見の不一致が表面化するようになり、それを建設的に解決できるようになる
    その結果、ノイズの少ない世界が実現され、無駄な支出や、損失が大幅に減り、公共の安全と健康が改善される。

    下巻にて気になったことばは次です。

    ・良い判断は、良い人材から。専門家の中には、同業者から尊敬されるリスクペクト専門家がいる。
    ・IQ(知能指数)よりも、GMA(一般知的能力)とよい判断との相関性がある。つまり、知的であれば、判断もよりよくなる。
    ・認知スタイル:判断すべき問題に直面したときのアプローチ 問題を深く考えるタイプか、それとも、直感的に判断をするタイプか。
     あきらかに、直感的に判断をするタイプの方が、判断エラーを犯しやすい
    ・判断からバイアスを排除する方法は2つある。
     事前方式 体重計がくるっている場合、事前に調整をして、計測の結果を正確にする ⇒ナッジという
     事後方式 体重計がくるっている場合、計測して、誤差を計測結果から修正する
    ・バイアスは存在するが、すべてを排除することはできない
    ・リアルタイムでバイアスを排除するアプローチ:オブザーバー
    ・判断ハイジーン:ノイズは予測不能なエラーであるが、ノイズを減らすアプローチ
      バイアスの排除⇒病気の治療
      ノイズの排除 ⇒予防的な衛生管理:これを判断ハイジーン という
    ・予測精度の向上:各判断者には、状況や他判断者の判断結果を知らせずに情報を与える。それぞれの判断を最後に総合的に判断する
    ・判断にガイドラインを利用する
    ・グーグル面接の3つの原則
     ①媒体評価項目 構成要素に分解し、ガイドラインとして作成する
     ②独立:評価項目ごとに質問し、情報を収集し、個別に評価する。項目ごとに独立して行う
     ③総合判断:最後の最後まで判断を遅らせる

    ・ノイズの排除 ノイズをゼロにすることはできない
    ・アルゴリズムはノイズを排除するがバイアスを排除できない
    ・データにバイアスがかかっているケースがある
    ・ノイズを削除するためにルール化をするのかそれとも規範とすべきか。ルール化するためには、多様な人々の賛同を得にくい。

    目次は以下です。(上下巻 通し)

    上巻

    序章 二種類のエラー

    第1部 ノイズをさがせ
     第1章 犯罪と刑罰
     第2章 システムノイズ

    第2部 ノイズを測るものさしは?
     第4章 判断を要する問題
     第5章 エラーの計測
     第6章 ノイズの分析
     第7章 機会ノイズ
     第8章 集団によるノイズの増幅

    第3部 予測的判断のノイズ
     第9章 人間の判断とモデル
     第10章 ルールとノイズ
     第11章 客観的無知
     第12章 正常の谷

    第4部 ノイズはなぜ起きるのか
     第13章 ヒューリスティクス、バイアス、ノイズ
     第14章 レベル合わせ
     第15章 尺度

    下巻

     第16章 パターン
     第17章 ノイズの原因

    第5部 よりよい判断のために
     第18章 よい判断はよい人材から
     第19章 バイアスの排除と判断ハイジーン
     第20章 科学捜査における情報管理
     第21章 予測の選別と統合
     第22章 診断ガイドライン
     第23章 人事評価の尺度
     第24章 採用面接の構造化
     第25章 媒体評価プロトコル

    第6部 ノイズの最適水準
     第26章 ノイズ削減のコスト
     第27章 尊厳
     第28章 ルール、それとも規範?

    まとめと結論 ノイズを真剣に受け止める
     終章 ノイズの少ない世界へ

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    2022年05月22日
  • NOISE上 組織はなぜ判断を誤るのか?

    Posted by ブクログ

    ノイズ(Noise)とは、原因不明な異音、転用して、判断に含まれている説明のつかない誤り

    628頁、29章にも及ぶ大作、統計学、心理学、行動経済学にまたがる
    理解困難な難書でした。見慣れない用語が、複数の章にまたがって、現れるので
    その確認を含めて、一読に1週間以上も時間がかかってしまいました。

    冒頭には、本書をまたがる、大きな地図があり、また、各部の冒頭、各章の終わりにはまとめがあって理解を助けてくれます。

    刑罰への量刑とか、病気への診断とか、人事評価とか、似たような状況なのに、人間によって、その判断が大きくことなっていて、理解不能な不平等がこの世に広がっている。その差は人々が考えている以上に大きく深い。

    その原因は、何か。また、その不平等を改善するために、判断の質を上げるためにはどうすればいいのか が本書の目的です。

    その判断を誤らせるものは、バイアスとノイズの2つがあると説きます。

    バイアス 偏見 偏りがある
    ノイズ 説明のつかないランダムなばらつき

    上巻の範囲は以下
    第1部 ノイズとバイアスとの違い、
    第2部 人間の判断というのはどういうものかの分析
    第3部 予測的判断の分析
    第4部 人間心理に立ち戻り、ノイズが生じる根本原因の検討(途中まで)

    上巻にて気になったことばは次です。
    ・世界は複雑で不確実であり、判断は難しい
    ・不一致の度合いは一般に予想されるよりははるかに大きい
    ・「もしこうだったら」「もしこうでなかったら」と事実と異なる仮定を立ててみれば、きっとそこにはノイズが見つかるはずだ。
    ・判断とは、「人間の知性がものさしとなるような計測」と定義することができる。
    ・判断には、「予測的判断」と「評価的判断」がある。
    ・バイアス、各ノイズの各量は、標準偏差で分布すると仮定し、平均二乗誤差(MSE)で計量化しています。
    ・ノイズは、システムノイズ(レベルノイズ、パターンノイズ)、機会ノイズ、

     システムノイズ 誤った判断からバイアスを差し引いて残るもの
     レベルノイズ 各人の平均的な判断のばらつき、レベルエラーのばらつき
     パターンノイズ システムノイズからレベルノイズを差し引いて残るノイズ
     機会ノイズ 1回目の判断と2回目以降の判断が異なるというノイズ

    ・カスケード効果 順番に前の人の選択情報を参照しながら判断する場合に、自分自身のもつ情報に基づかず、多数派の選択肢を選ぶ傾向。

    ・置き換え 2つの事実の順番を変えることによって、判断がことなってしまうこと

    目次は以下です。(上下巻 通し)

    上巻
    序章 二種類のエラー
    第1部 ノイズをさがせ
     第1章 犯罪と刑罰
     第2章 システムノイズ
     第3章 一回限りの判断

    第2部 ノイズを測るものさしは?
     第4章 判断を要する問題
     第5章 エラーの計測
     第6章 ノイズの分析
     第7章 機会ノイズ
     第8章 集団によるノイズの増幅

    第3部 予測的判断のノイズ
     第9章 人間の判断とモデル
     第10章 ルールとノイズ
     第11章 客観的無知
     第12章 正常の谷

    第4部 ノイズはなぜ起きるのか
     第13章 ヒューリスティクス、バイアス、ノイズ
     第14章 レベル合わせ
     第15章 尺度

    下巻

     第16章 パターン
     第17章 ノイズの原因

    第5部 よりよい判断のために
     第18章 よい判断はよい人材から
     第19章 バイアスの排除と判断ハイジーン
     第20章 科学捜査における情報管理
     第21章 予測の選別と統合
     第22章 診断ガイドライン
     第23章 人事評価の尺度
     第24章 採用面接の構造化
     第25章 媒体評価プロトコル

    第6部 ノイズの最適水準
     第26章 ノイズ削減のコスト
     第27章 尊厳
     第28章 ルール、それとも規範?

    まとめと結論 ノイズを真剣に受け止める
     終章 ノイズの少ない世界へ

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    2022年05月22日
  • プラットフォームの経済学 機械は人と企業の未来をどう変える?

    Posted by ブクログ

    デジタル技術の進化による環境変化を、AI、マッチングプラットフォーム、ブロックチェーン技術の観点から論じている1冊。
    重厚な1冊だが、技術的なテーマだけに特化することなく、経済性への影響・変化を連続性をもって語られており、ビジネスパーソンとして本領域を学ぶ上では活用しやすい形で情報が整理されているのではないか。
    特に後半については従来型組織と分散型自律組織(DAO)との対比まで触れられており、2018年時点で既にここまで論じられているというのが衝撃。

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    2022年05月11日
  • NOISE下 組織はなぜ判断を誤るのか?

    Posted by ブクログ

    行動経済学という学問をまさしく一般に普及させた立役者の一人といえば、『ファスト&スロー』等の著作で知られるダニエル・カーネマンであろう。彼が、ナッジ理論の理論的中枢もであるキャス・R・サンスティーンらと記した新作にあたり、行動経済学の新たな世界が開けた、といっても過言ではない面白さに満ち溢れている(私はこの本をコロナワクチン3回目接種の副反応で寝込んだベッドの中で読み通してしまった。そのくらい面白い)。

    行動経済学の定義は幾つかあると思うが、オーソドックスな定義の一つは”人間の不合理な行動やエラーというのはなぜ起きるのかを解き明かす学問”であるというものではないか。その際によく言及されるのが”バイアス”と呼ばれる人間のものの見方の偏りである。

    しかし、不合理な行動やエラーを起こす要因としてもう一つ大きなものがある。それが本書のテーマ、”ノイズ”である。本書は行動経済学の中で”バイアス”ばかりが語られている点を是正すべく、いかに”ノイズ”が我々のエラーを巻き起こしているのか、そしてその対処法までを明らかにする。

    ここでいう”ノイズ”とはいわゆる分散の概念である。
    例えばダーツに的を投げたときに、
    ・投げたダーツが一定のエリアに集中している⇒”バイアス”
    ・投げたダーツがバラバラに散っている⇒”ノイズ”
    ということになる。

    合理的な意思決定をしているようで実は”ノイズ”によって人間の意思決定がてんでばらばらであるということを明らかにする事例として、同一人物による病気の診断や保険金の支払査定などのバラつきのデータを見ると、これが恐ろしいほどの分散を見せる。その分散はあまりにもひどいため、過去に自身が判断したデータを用いて簡単な機械学習モデルを作ると、遥かに機械学習モデルの方が高い精度を出せるという。

    ”ノイズ”の要因は色々あるが、大きいのはそのときの人間のストレス、気分などである。疲れを知らず感情に惑わされることがない機械学習モデルが高い精度を出すのも、むべなるかな、というところであろう。

    さて、そうした”ノイズ”の実態、それがどれだけのエラーを巻き起こし、結果として社会にどれだけの余剰コストを生み出しているかを考えると、この対処策が重要になってくる。本書では簡単なテスト形式で、具体的に組織の”ノイズ”を減らすための処方箋も示されている。

    ”バイアス”が行動経済学のキーワードとなったように、ワーディング自体は全く珍しくもなんともないものの正しくその弊害が認識されていない”ノイズ”をいかに扱うか、これは行動経済学の実践としてより良い社会・組織を作っていく上で、必須のものになっていくのではないか、という強い期待すら感じた。

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    2022年03月21日
  • NOISE上 組織はなぜ判断を誤るのか?

    Posted by ブクログ

    行動経済学という学問をまさしく一般に普及させた立役者の一人といえば、『ファスト&スロー』等の著作で知られるダニエル・カーネマンであろう。彼が、ナッジ理論の理論的中枢もであるキャス・R・サンスティーンらと記した新作にあたり、行動経済学の新たな世界が開けた、といっても過言ではない面白さに満ち溢れている(私はこの本をコロナワクチン3回目接種の副反応で寝込んだベッドの中で読み通してしまった。そのくらい面白い)。

    行動経済学の定義は幾つかあると思うが、オーソドックスな定義の一つは”人間の不合理な行動やエラーというのはなぜ起きるのかを解き明かす学問”であるというものではないか。その際によく言及されるのが”バイアス”と呼ばれる人間のものの見方の偏りである。

    しかし、不合理な行動やエラーを起こす要因としてもう一つ大きなものがある。それが本書のテーマ、”ノイズ”である。本書は行動経済学の中で”バイアス”ばかりが語られている点を是正すべく、いかに”ノイズ”が我々のエラーを巻き起こしているのか、そしてその対処法までを明らかにする。

    ここでいう”ノイズ”とはいわゆる分散の概念である。
    例えばダーツに的を投げたときに、
    ・投げたダーツが一定のエリアに集中している⇒”バイアス”
    ・投げたダーツがバラバラに散っている⇒”ノイズ”
    ということになる。

    合理的な意思決定をしているようで実は”ノイズ”によって人間の意思決定がてんでばらばらであるということを明らかにする事例として、同一人物による病気の診断や保険金の支払査定などのバラつきのデータを見ると、これが恐ろしいほどの分散を見せる。その分散はあまりにもひどいため、過去に自身が判断したデータを用いて簡単な機械学習モデルを作ると、遥かに機械学習モデルの方が高い精度を出せるという。

    ”ノイズ”の要因は色々あるが、大きいのはそのときの人間のストレス、気分などである。疲れを知らず感情に惑わされることがない機械学習モデルが高い精度を出すのも、むべなるかな、というところであろう。

    さて、そうした”ノイズ”の実態、それがどれだけのエラーを巻き起こし、結果として社会にどれだけの余剰コストを生み出しているかを考えると、この対処策が重要になってくる。本書では簡単なテスト形式で、具体的に組織の”ノイズ”を減らすための処方箋も示されている。

    ”バイアス”が行動経済学のキーワードとなったように、ワーディング自体は全く珍しくもなんともないものの正しくその弊害が認識されていない”ノイズ”をいかに扱うか、これは行動経済学の実践としてより良い社会・組織を作っていく上で、必須のものになっていくのではないか、という強い期待すら感じた。

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    2022年03月21日