あらすじ
2019年ノーベル経済学賞受賞者による、受賞第一作!
いま、あらゆる国で、議論の膠着化が見られる。多くの政治指導者がひたすら怒りを煽り、不信感を蔓延させ、二極化を深刻化させている。対立する人々は、話し合いをすることもままならなくなっている。ますます建設的な行動を起こせなくなり、課題が放置されるという悪循環が起きている。
現代の危機において、経済学と経済政策は重要な役回りを演じている。たとえば・・・・・・
●成長を回復するために何ができるか。富裕国にとって、経済成長は優先すべき課題なのか。ほかにどんな課題を優先すべきか。
●あらゆる国で急拡大する不平等に打つ手はあるのか。
●国際貿易は問題の解決になるのか、深刻化させているだけか。
●貿易は不平等にどのような影響をもたらすのか。
●貿易の未来はどうなるのか、労働コストのより低い国が中国から世界の工場の座を奪い取るのか。
●移民問題にはどう取り組むのか。技能を持たない移民が多すぎるのではないか。
●新技術にどう対応するのか。たとえば人工知能(AI)の台頭は歓迎すべきなのか、懸念すべきなのか。
●これがいちばん急を要するのかもしれないが、市場から見捨てられた人々を社会はどうやって救うのか。
よりよい世界にするために、経済学にできることを真っ正面から問いかける、希望の書。
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Posted by ブクログ
貧困に陥った人は、能力主義な世界では自分に能力がないからと自己嫌悪に陥ってしまう。しかし、データで示されている通り所得間の移動は固定的であり、頻繁に起きるものではない。だから、貧困に陥ってしまった人は、自分が生まれた境遇が原因であることが多い。だからこそ、社会は、彼らを見捨てず救済しなければならない。しかしそれは金銭面だけではなく、人としての尊厳や生きがいを取り戻せるよう支援できるようなシステムが必要である。
Posted by ブクログ
著者の前作を読んだことがあるので、興味本位で通読。
現代社会に蔓延している問題について、新たな視点で分析しているところが本著の面白いところだった。
著者の前作を読んでなければ、恐らく手にとらなかった作品だが、視野が広がった本である。
Posted by ブクログ
今まで章単位でしか読んでいなかったので初めて通読してみたが、どの章もよく書けていて面白いし翻訳も良い。環境問題から自由貿易までトピックは幅広いが、バナジーとデュフロが本当に書きたかったのは終盤の2,3章(給付、スティグマと尊厳、ベーシックインカム、etc.)なのだろう。ただ、ここは心情的には「そうだよな」と思っても、データで相手を納得させるのが難しい領域のようにも感じた。
著者2人のコロナ禍を経ての更なる考えの深化があればぜひ聞いてみたいと思った。
Posted by ブクログ
これまでに読んだ経済学の本の中で最も面白かった。読みやすい文体で具体的な課題(格差、移民、貿易、貧困等)について書かれているので、経済学に関する予備知識がなくても読み進められる。多くの人に読まれてほしい。
Posted by ブクログ
良書だった。
格差、貧困の中にある人と真摯に向き合い、なぜ経済学、政府が失敗するのか。
一つの答えとして、尊厳を持って相対すること。型にはめたプログラムと金銭ではなく、一人一人の人間に尊厳を持って向き合うことが示されていた。
福祉の現場では、生活保護であれば金銭を支給する政府とその恩恵を享受する受給者という上下の分断が発生するが、それは本来の福祉の目的から遠ざかり、不経済を産むということ。
Posted by ブクログ
従来の経済学では、移動が可能なら賃金の安い地域から高い地域に移るのが当たり前だが、実際の人間は多くは移住しない。
人間はリスクを過大評価して、リスクを取りたがらない生き物なのだ。
さらに、人間としての尊厳が重要で、金だけの価値で動くことはないし、あったとしても幸福にはならない。
これを前提とした政策を打ち出す政府、政治家が必要だ。
Posted by ブクログ
今までなんとなくそうだろうと思っていたことが、実際のデータに照らすと実は間違っているということがこの本の中には多くでてきた。貿易はどの国にとってもメリットはもたらすわけではないし、移民は受け入れ国の雇用を奪うことはなく、常に賃金を下げるわけではない。移民は仕事があるからといってたくさんアメリカなどの国にやってくるわけでもない、など読んでいなかったら誤解したまま物事を考えてしまっていたので、なんとなく知っているというのは危ないと思った。全ての人間が人間らしく生きられるようにするという前提で考えることが、政策を考える上で重要だと思った。
Posted by ブクログ
2019年ノーベル経済学賞受賞のインド系米国人とフランス人(おそらく夫婦)の著作。
様々な視点について最新の学説を紹介しながら、筆者qとしての見解を示している興味深い著作。特にUBIや格差是正などに強い想いがあるのだろうか、踏み込んだ提言が多かった。リベラル的な立場と言って良いと思う。
面白かった。再読したい。
以下、備忘的な学び事項。
国際貿易論: グローバルに貿易を行うことによってお互いの国が成長するという確かサミュエルソンの定理は、個別の産業のことに触れておらず、淘汰される産業への救済、他の成長産業への労働資本の移転が求められるが、必ずしも上手くいっていない事を最新の論説を紹介しながら解き明かす。トランプもあながち間違っていないということか?米国のラストベルトの荒廃も貿易による影響。ヒルビリーエレジーも紹介。
富の再分配: 米英の高所得者層の減税により所得格差が拡大した。昔は最大70%だった。レーガン、サッチャーの規制緩和、減税の功罪について紹介。筆者は否定的な立場。スウェーデンなどの北欧では、格差は拡大していない。UBIに対して賛成の立場。
人の選好は、社会的な立場などに影響される。トランプの出現の後に、公に人種差別する事を厭わない人が増える。共同体、村の繋がりが重視される社会では、協力し合うことが生活に必要。
Posted by ブクログ
専門家の意見をどれくらい信用するか、というインターネット調査があり、1位は看護師で84%、最下位は政治家で5%だった。では経済学者はどれくらい信用されているだろう?
下から2番目、25%である。
経済に関係する政策には経済学者が必ず関与しているが、その結果としての社会の現状に、多くの人が不満を抱いているのだろう。
こういう社会では、分かりやすい政治家に人気が集まる。経済学者でも、分かりやすい経済施策で人気を集める人もいる。彼らの政策、市民に支持される政策は、往々にして良心的な経済学者の意見とは異なるものである。
人々から信用されていないかも知れないが、世の中には良い経済学もある。それはとても抑制的で、ベストな答えを与えてくれないが、誤った考え、偏見を正してくれる。例えば、移民を受け入れると失業が増えたり給与水準が下がったりするか?関税障壁をなくすと経済は成長するか?格差への影響は?
本書は、今の社会に重要な問題について、多くの経済学者の研究に基づき分かっていること、いないことを論じたものである。興味深いのは、経済学とは経済成長が善悪の基準と思っていたが、本書では人の幸せが究極目標として、施策の良し悪しを論じている点だ。後半からは特に、格差、所得の再配分、社会政策について、人に寄り添った論説が続く。
印象に残った一部を引用する。ある貧困撲滅団体のリーダーの言葉で「ここに来るまでの人生では、みんな施しをされてきた。誰も彼らには、君たちも社会に貢献してくれとは頼まなかったんだ」
一貫して言えるのは、幸せには尊厳が必要という極めて当たり前のことなのだが、実際に行われる政策で、どれだけこの観点が欠けているか…自分自身も、いつの間にか上から目線になっていないか、反省してみた。
Posted by ブクログ
著者は二人のノーベル経済学賞受賞者。
原題は「Good Economics for Hard Times」とありますが、コロナ禍の今にあって、ちょうど米大統領選が佳境のころから読み始めたので、本書で取り上げられているテーマと、日々目にするニュースやSNSの投稿などとシンクロすることも多く、政治と経済の今についての理解を深めるには良書であったと思います。
経済成長
移民
自由貿易
地球温暖化
社会保障
格差
お金だけで解決しないことや、さまざまなトレードオフが生じること、マクロな経済モデルの想定通りには行動しない人や企業、そうした複雑系の中で、良い方向に向かうための本質とは何かを二人の経済学者が力説されています。
全体を読み通した上で、最後の最後にノーベル経済学賞受賞した経済学者が語る一文(最終章の最後の一文)がとても印象的でした。
”経済学は、経済学者にまかせておくには重要すぎるのである。”
Posted by ブクログ
ビルゲイツの「今夏必読の5冊」に選ばれた本書。
世界の諸問題を、客観的な調査や実験に基づいて、いかに解決するかを記したものである。
とりあえずこれを読んで思ったことは「あっ、自分って現実を勘違いしていたんだな」という事。アッと驚く事実をこれだけ丁寧に、かつ説得力のある文章でわからせる著者の能力は素晴らしい。
最後は壮大な解答が提示されているところが少し歯痒いが、とりあえず読んでみることをお勧めする。
Posted by ブクログ
開発経済学の研究者として2019年にノーベル経済学書を受賞したアビジット・V・バナジーとエステル・デュフロ夫妻が自身が長年研究してきた社会格差、人種差別(と個人の移ろいやすい嗜好性の問題)、移民、環境破壊、自由貿易などのテーマを一般人向けに平易にまとめた一冊。
テーマは数あれど通底しているのは、「一見、絶望ばかりに見える問題に対して、経済学が解決できる部分は確実にあり、希望を捨ててはいけない」という点である。真摯な研究者として、経済学を一つのツールとして、確実な課題解決に結びつけるための実践がまとめられており、ランダム化試験などの統計的手法をフルに活用しながら、本当に問題解決につながる政策を決定し、政治に反映させていくというプロセスの重要性を学べる良書。
Posted by ブクログ
絶望を希望に変える、、、とは、大きくでたなー、と手に取った本。
なるほど、この大口のタイトルに負けない話、経済学者は言いそうにない(と勝手に思い込んでいた?)話もいろいろ書かれていた。
最初に、移民と貿易の話からはじまる。
そして、人間は経済合理性通りに動かない、それは、今までのデータから明らかことなのだと。
でも、だから賢く経済合理性に沿った行動をすべきだ、ではなく、そういう人間の在り方を受け止めた上で、経済で傷ついている人の尊厳を守りながら方向転換する術はないか、という本なのかな、と受け止めました。
経済学といえば、アメリカ、アメリカ、アメリカ、ヨーロッパ、のイメージだけど、インド(筆者の一人のルーツ)の視点が入ることで、グッと多様性を包摂している感じがする。
若い人はもちろん、いい年した大人やそして高齢者であっても、これから出会う未来に、それぞれの希望を持てたらいいな、と思う。
Posted by ブクログ
第1章 経済学の信頼性
職業の信用度で、一位は看護師、最下位は政治家、下から二番目は経済学者。
経済学は医学と同じで、これが正しいと断言できる者がない。
第2章 移民について
移民は自然災害や戦争で起きる。経済的インセンティブだけではあまり増えない。
マリエル難民事件=大量の移民があっても、雇用には悪影響を与えない、ことの実証。キューバからマイアミに大量の移民が押し寄せた事件。労働市場は、単純な需要と供給曲線の結論には従わない。
1,移民がお金を使うので、労働の需要も増える。
2,機械化の進行が遅れるため。
3、増えた労働者を効率的に活用するべく、生産工程を変える。
4,既存労働者の労働と競合せず、補完する。やりたがらない仕事をやってくれるおかげで、別の仕事ができるようになる。
移民のほうが野心と丈夫な身体がある。その2世は活躍する。ジェフベゾス、スティーブジョブス、フォード、など。
人を雇うことは、普通の仕入れとは違う。首にすることは簡単ではない。そのため、無作為には雇わない。ただやすければいい、ということではない。従って、受け入れ国の労働者をそのまま代替することはない。
高技能移民の場合のほうが、既存の労働者の代替になりやすい。プラスマイナス両面があり得る。
移民は大群にはならない。移民するにはコネクション、ネットワーク、人のつながりが必要。何もないとレモン市場のように、粗悪品だけが市場に残るように思われて移民に踏み切れない。
発展途上国では、インフラ整備や都市開発の予算が限られているため、一部だけが高い家賃になり、それ以外はスラム化する。都市化は、田園都市を目指しやすいため、規制をかけて高層アパートを作らせない。その結果、周辺にスラムが広がる。生まれ故郷は心地よく、助け合いがあるため、魅力的な仕事があるとわかっていても、都市に出てくる人数も限られている。農村部の人にとって都市は不確実性の塊。
家族の面倒を見て貰うため、わざと男の子に高い教育を受けさせないこともある。
どんな産業でも企業は群れる。群れた方が、宣伝、雇用などで有利。
強制的な移民政策がかつてはあった。都市部を有利にすることで労働力を確保しようとした。
慣れ親しんだ故郷を離れることは、ハードルが高いことである。
Posted by ブクログ
貧困は減りはするも無くならないだろう、国によって貧困の程度が変わるけど富裕層は、どの国でももっとリッチになっていくんだろうと、地球も心配だし、経済学って考えた結果どうりにはなりにくいらしいし、希望はあまり持てませんでしたが、おもしろい本でした。
Posted by ブクログ
強いて言えば現代日本に拡大しつつある「貧困と格差」という問題の中で、筆者の専門とする開発経済学の部分部分には触れてはいたように思う。
人間が一見すると不都合な行動を取りうるというテーマは様々な学域で興味を引く議題として散見するが
合理的経済人という鏡像からではなく、実際的な人々の営みを突き詰めるべくして膨大な規模や時間を費やした研究のもと、統一された正解というものは見出しがたいであろうからこそ学問として面白い。
Posted by ブクログ
移民、関税、AIとライダット運動、温暖化、ベーシックインカムなどいろんな話題がデータをもとに書かれている。同じ著者の「貧乏人の経済学」より話題が豊富で面白かった。
行動経済学系の本に登場する実験には結構飽きてきたが、本書のデータにはインドや途上国を被験者にした実験が多く目新しい。
Posted by ブクログ
なぜ未熟練労働者の賃金が移民の流入で押し下げられないのか。
①新たな労働者の流入によって労働需要曲線が右へ移動するから。
なぜなら、その人々がお金を使うから。
その結果として賃金は押し上げられ、労働者の供給拡大の影響を打ち消す。
よって賃金水準も失業率も変化しない。
②機械化の進行を遅らせるから
③雇用主が流入した労働者を効率的に活用するべく、生産方式を再編成するから。
雇用主は企業内の賃金格差があまりにも大きくなることに否定的。
なぜなら労働者の不満が溜まり生産性が上がらないから。
だから賃金が安いからと言って移民に仕事が取って代わられる訳ではない。
高技能移民は賃金水準を押し下げる可能性が高い。
なぜなら外国出身の有資格者を相場より安い賃金で雇えるとなれば、企業はそっちを優先する
貿易は国民全員の生活水準を向上させるのか?
①国際貿易から得られる利益は、アメリカのような規模の大きな経済にとっては極めて小さい。
②規模の小さい経済や貧しい国にとっては貿易の利益は潜在的に大きいものの、市場解放を行なうだけでは問題は解決しない。
③貿易利益の再分配は口で言うほど簡単ではない。
減税により経済成長が起こる証拠はない。
とくに所得上位10パーセントに対する減税は効果ない
イノベーションは無からは生まれない。
経済的なインセンティブがないと生まれない
ヨーロッパが植民地を開拓していた時代に初期入植者の死亡率が高かった国は、今日でもうまくいっていない。
なぜなら、そのような国にはヨーロッパ人は入植せずに搾取的な植民地を建設し、強権的な制度を導入したから。
対照的に、植民地にならずほぼゼロからのスタートとなった国々(ニュージーランドやオーストラリア)ではヨーロッパ流の制度が構築され、それが近代資本主義の基礎となった。
入植者の死亡率が低く今日では事業環境の整った国は、そうでない国よりはるかに豊かになる。
産業集中度の高い部門ほど、労働分配率は下がっている。(増えた利益を株主に分配するため)
賃金がGDPと同じペースで増えない理由は産業集中の進行である程度説明がつく。
Posted by ブクログ
世界の現状や、それに対して行われている施策/研究を理解するに良い本。貧乏人の経済学の方が個人的には好きだけど、貧乏人の経済学で述べられていたことを補強的に理解するという意味でとても参考になった。
Posted by ブクログ
■著者が扱っているメインテーマ
よりよい世界にするために経済学にできることは?
■筆者が最も伝えたかったメッセージ
一部の裕福層の成長を優先するのではなく、
それ以外の層への生活の質向上にシフトすべき。
■学んだことは何か
市場を放任すると不平等が解消されることはなく、
貧富の差は拡大するばかり。成長ではなく、世界にとって地球にとっての平等な社会のために、富から貧への再分配のしくみと他人と地球をおもいやる対人力が大切になてくる。
Posted by ブクログ
移民や貿易、経済成長などの問題について、経済学的な見方や様々な事例の紹介、解決策などについて述べている本。
人や資本はいつも最適な場所に移動できるわけではない。そのせいで、不利益を被る人の尊厳を守るようなアプローチが必要だ。このような人の怒りが昨今のポピュリズムに繋がる。
エビデンスもなく社会的に受けいれられている物事が多い!
Posted by ブクログ
経済政策について議論している。
経済学的に考えることが好きなら面白いと思う。
希望は人間を前に進ませる材料。
抱えている問題でその人を定義することは、外的な条件をその人の本質とみなすこと
希望を失い、疎外されたと感じる人が増えるのは社会にとって危険なこと
尊厳を大事にする
貿易には負け組がいる。
負け組への支援が必要ということを繰り返している
Posted by ブクログ
原題: Good Economics for Hard Times.
タイトルの訳がちょっと微妙。
Hard Timesを絶望と訳すのはちょっと。
アイキャッチを狙ってかな。
どこかで誰かが勧めていて興味が湧いたので。
素晴らしい本でした。
是非いろんな人に読んでいただきたい。
著者のアビジット・V・バナジーとエステル・デュフロは存じませんでしたが、非常にバランスが取れている方々とお見受けします。
アビジット・V・バナジーは2019年のノーベル経済学賞を受賞した経済学者、エステル・デュフロはアビジットの配偶者らしい。
現代の世界が抱える問題について、経済学者の視点から考察した本。
不平等や不信が加速させる世界の二極化について、私達はどうあるべきか、考えさせる一冊。問題は何か、解決が可能なのか、あるいは、明るい未来に向かうために社会はどうするべきか。
極端に楽観的でも悲観的でもなく、常に一定の温度感なのがいい。
経済学とはあるが、経済を超えた現代社会分析でもあると思う。
アビジットは、自身が貧困問題が深刻なインド出身だからか、貧困問題を主に研究しているようで、本書もそのあたりがメイン。
また現在アメリカに住んでいるので当然だが、アメリカ経済を例に取り上げているケースが多い。
多くの賢明な人のご多分にもれず、明確な解決策を提示するわけではない。なので、何かクリアな解答がほしい人はがっかりするかもしれない。
しかしながら、一つひとつのケースを積み上げた分析は説得力があり、世界は複雑で様々な要因が絡み合っていることがわかる。世の中がいかに思い込みで溢れていて、いかに経済学者を含む人々にわかっていないことが多いか。
その上で、私達にはまだまだできることがあると希望を提示する。
そして最後に、この社会を良くするヒントは尊厳だと説く。この発想は実はアビジットがアジア出身という事実によるのではないだろうか。施しを与えるという行為は、一見良い行いに見えるが、実は根底に差別がある。自分は施しを与える立場、相手は可哀想な人、という。この視点は欧米人には決定的に欠けている、と私は個人的経験から思う(もちろん全ての人がとは言わない。教育と経験による?)。アビジットももしかしたらそういった経験をしているのかもしれない。
この本が述べるように、昨今は世界が分裂に向かって進んでいるように見える。
それでも、世の中にはこういった人間性に優れた賢い人がたくさんいるんだな、と思うと、希望が持てる。
そのためにも多くの人がこの本を読んでほしい。
Posted by ブクログ
社会の重大な問題を、どう解決するかについて述べた本です。
重大な問題として取り上げられたのは、移民、自由貿易、経済成長、気温、不平等、政府について。
「経済学者の言っていることが信用されていない」という前提で、では、それはなぜなのかというと、悪い経済学がまかり通っているからということと、経済学者が根拠の説明が足りないということを理由に挙げています。
新聞やテレビなどでニュースを見聞きした時、自分自身で問題意識を持って、自分事に当てはめ、今後、どうなっていくのか、それに対して自分はどうしたら良いのかを考えられるようにしたいものです。
Posted by ブクログ
経済学は信用されていない。
学者の中で一致した意見が、一般の人々の意見とかけ離れていることが一因。また悪い経済学者ーエコノミストーが大手をふってまかり通っている。彼らは自社の経済的利益を代表して発言している。
しじょうの楽観主義をあおろうとする傾向が強い。アカデミックな学者は身長に予想を避ける。将来予想はほとんど不可能だからだ。これらの学者は含みを残した結論を説明するのに、それを導き出した複雑な過程を長々と説明する。
事実は無力である。2つの質問をする。
1、自分の意見は?
2、事実に基づく知識は?
で、2→1で質問した場合。自分の事実誤認を再確認して、意見を求められた場合、事実誤認を認めても自分の意見を変えない。
1→2と答えた人は事実を知り、自分の意見を変える人が出てくる。
事実はなぜ無視されるのか。
メキシコは高所得国に位置付けられ、社会福祉制度は広く称賛され模範とされている。P26
大量の移民が流入しても受け入れ国側の賃金・雇用に与える-影響は極めて少ない。コンセンサスを確認したい場合は、米国科学アカデミーがまとめた移民の影響に関する報告(無料)を確認すべし。
移民も生活をする。雇用(仕事)が増える中で、移民自らが働き相殺され、受け入れ国の需給のバランスは崩れない。増えた雇用は技能がなくても就職できるものが多く(髪切り、買い物レジ打ちなど)技能を持たない移民でもこなしていける。賃金水準が上がり、労働者供給拡大の影響を打ち消す(この部分がよくわからない。なぜ賃金水準が上がるのだろうか?この箇所グラフで表示されているが、観測による数値化の結果でこのグラフができあがったのだろうか?理解力が足りない。この前の文章で見落とし・知識の抜けがあるのかもsれない)
ただし、雇用の需要が増えず、移民の賃金が他国に流れ移民先に流れた場合、労働力が過剰になり賃金水準の低下となる。
また移民の増加は機械化の進行を遅らせる。わざわざ機会に投資せずとも安い労働力で賄えるから。また雇用主が移民を効率的に働かせるために生産方式を再編成する。これにより新たな役割が出てくる。受け入れ国の雇用を脅かすことはない。移民が受け入れ国の労働者と競合せず、補完しあうようになる。移民は受入国住人がやりたがらない仕事を(母国より給料が高いため)喜んで引き受ける。
ここで注意するのは移民の性格。起業精神旺盛な移民は受入国で雇用機会を増やすだろう。技能を持たない移民は未熟労働者の大集団に加わり受入国のそれと競合することになる。
移民を雇用する企業は、働くふりをする人を取りたくない。給料が低くてもいいので採用してくださいと言う人は、働くふりをする人になる率が高いので採用されない。労働者が企業内格差を嫌う事も低賃金労働者を雇わない理由になっている。既存労働者の仕事を移民者が横取りする余地はない。
高技能労働者の場合は、仕事が面白く熱心に働くため、受け入れ国労働者の賃金水準を押し下げる可能性が高い。(効率賃金を払う必要がないため。効率賃金とは会社が労働者に逃げられないように払う追加賃金。他社の賃金と関係なく組織内で生産性を高めるために決まる賃金水準のこと。離職率の低下、従業員の質が高くなる、労働意欲が高くなる効果がある)
また技術があり、安く雇える者が入ってくると、賃金が下がり既存の高技術者が辞めていく現象も起こる。
マイナスの面ばかり挙げたが、プラスの面もある。受入国の貧しい人々に恩恵があることがある。例えば、低所得者のコミュニティに医者などのが介入するようになる(アメリカでは貧困層の地域に移民の医者が開業することが多い)
レモン市場(崩壊した市場)レモンは見た目で腐っているとはわからない。中身は腐っている。
逆選択
紹介による労働者の受け入れについて。質の悪い労働者を掴まされらることを避ける雇用主は賃金をできるだけ安くする。推薦状を持っていない人は低賃金を嫌い応募しない。市場にいるのは推薦状を持たない労働者ばかりになる。こうして最も粗悪な物しか市場に出回らない状況になる。
移民者の社会の中で就職するには、コネクションやネットワークなどのつながりが優位になることがある。このことは、労働状況を不平等にさせ市場を崩壊させる。競争条件が平等でなければ市場を機能しない。結果ほとんどの人が職にありつけない(ここがよくわからない。職をがっちりつかめる人と、つかめない人の2種類の人がいるだけでは?ほとんどの人が職なしになる理由が分からない。?)
国外へ移住するかどうかは、事前の情報の多価に左右される。ある国で移住者が死んだという情報が流れればその国への移住者は激減する。
移住者は移住先の収入を過大に想像する。悲観的な情報は暮らし向きが楽になる可能性をしぼませる。
角度を変えて見ると。
9.11のような誰も予想しえない「未知の未知」を不可実性という。多くの人は不可実性にしり込みする。楽観的な未来予測と、悲観的な情報から見えてくる、何が起こるかわからないという感覚は、しり込みを生み、移住をためらわせる要因になる。また状況を把握できないケースは決断を先送りする傾向もある。移住先は不可実性が高い。悪いことが起こる確率を高めに見積もり移住をためらわせる。
しり込みせず、挑戦したあとする。
人は自分が積極的に決めたことが、何もしなかったときより悪い状況になった時大きく落胆する。失敗を恐れる気持ちは冒険の足かせになる。
だれしも、自分は賢く、勤勉、論理的な人間だと思っている。この気持ちは気分がよく、いざというとき困難に立ち向かう勇気と自信を与えてくれる(ここよくわからい)
Posted by ブクログ
この本はノーベル経済学賞を受賞された経済学者が発行している本である。そのためその方の視点において全世界の社会的な問題を勉強していくことができる。全世界の社会の抱えている経済的な格差の問題やその国の政治を取り仕切っている政府との関連性、経済の成長の終焉など様々な教養を深めると言う部分においても勉強になる本である。記載内容の範囲が広範に渡っているため専門的なことを学びたいと言う方には向いていないかもしれない。移民問題や貿易と経済成長、不平等、環境といったものと経済との関連から重要度の高い問題に関することを普遍的に記載している。