【感想・ネタバレ】テクノロジーの世界経済史 ビル・ゲイツのパラドックスのレビュー

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Posted by ブクログ 2021年12月30日

まさに「自動化」の渦中にある現代テクノロジーにおいて「人々の仕事は機械に奪われてしまうのか?」「社会経済は、人々は、どうなってしまうのか?」という大問に、真正面から対峙した重厚な一冊。

古くは先史時代から技術革新の歴史を顧みながら、特に近代以降の大変革ーーイギリス産業革命並びに第二次産業革命ーーを...続きを読む敷衍し、これらがいかにして起こり、特に労働者に対してどのような影響を与えたのかについて考察を重ねていく。またこれらの決定因子として、2つの労働の型ーー「労働置換型」と「労働補完型」ーーを提示し、補助線とすることで、難題を柔らかく解きほぐしていく。
著者曰く、特にブルーカラーで起きている自動化はまさに「労働置換型」であり、これはかつてない規模で広範に起きていくということ。そして「労働補完型」のテクノロジーを活用する者のみが富む世界が、目前まで迫っているということ。

これらを整理した上で、終盤では特にアメリカ社会にフォーカスし、現在進行形で起きている格差の拡大、中流階級の喪失およびポピュリズムの台頭といった地殻変動へ論展開しながら、解決策を教育、"戦略的"BI、インフラ、住居規制等に求めていく。
日本社会でも同様に起き始めている世界的な構造変化であるだけに、世界最先端の論者の思考に触れることができて、月並みだけどものすごく勉強になりました。

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Posted by ブクログ 2021年01月04日

民主主義社会である以上、テクノロジーの進退は大衆がその恩恵を享受できるかどうかによって、ゆっくりと決まっていく。
蒸気や電気など、汎用的な過去のテクノロジーは発明されてから広く受け入れられるようになるまで時間がかかった。
また、受容されてから大衆にそのメリットが及ぼされるには数世代の時間がかかる。
...続きを読む人々はテクノロジーのメリットを短期的には過大評価し、長期的には過小評価する。
キーワード:資本家、国家、政府、労働者、中流階級
鉄、鉄道、蒸気、自動車、電力の発明

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Posted by ブクログ 2020年11月10日

テクノロジーの進化について、古代ローマのテクノロジーからラッダイト運動を経てAI失業まで、一貫性のある説明がされており、目を見開かされる。

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Posted by ブクログ 2023年12月09日

◯ 政治的支配力をすでに握っている者にとって、ほとんどの場合、創造的破壊という不安定化プロセスには何の利益もない。(48p)

◯ 短期の問題には政府が慎重に対処すべきだ。イギリスの産業革命を生きた多くの人々にとって、短期とは一生を意味した。(524p)

◯ 自動化がまだきわめて困難な対人サービス...続きを読む業は多岐にわたる。そうした仕事は、お金に余裕のある人が多い高スキル労働者の集まる都市で創出されると考えるのが自然だ。(543p)

★技術の進歩は万人にとって良いことであり、ラッダイト運動は誤解に基づいた間違った行為というふうに思い込んでいた。しかし、進歩の恩恵に与れない人々にとっては、当然に合理的な行為であったのだ。

★AIの発展も、何の政治的な対策もしなければ、社会に混乱をもたらす。

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Posted by ブクログ 2023年05月30日

具体の話が少し頭に入ってきにくい感じがあったので、機会があれば再読を頑張りたい。

第一次産業革命では、ラッダイトと呼ばれる機械を壊して抵抗する労働者が現れたりして、イノベーションに対するアレルギー反応ようなものがでたりするが、最終的には全ての人に技術革新の恩恵が行き渡ることもあり、受け入れられてき...続きを読むた。
ただ労働置換技術によって仕事を失ってしまった人たちが、恩恵を受けずに人生を終えてしまうようなことが第二次産業革命の際にも起きており、政治経済の面からのフォローが必要である。

自分個人としては、イノベーションにいち早く適応し、自身のスキルとして使っていかなければ、ならないと思う。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年08月12日

とても分厚く読み応えがある

過去のイギリスとアメリカの産業革命からテクノロジーが人々の生活にどのような影響をもたらしたかを分析し、今のAIによる自動化の影響を考察している

初めて自動化してもそれによるダメージの大きさを知った。昔のイギリスでは産業革命が起こっても人々の賃金レベルは変わらず、上位の...続きを読む人々だけ恩恵を被ったこと、アメリカでは対して労働補完型のテクノロジーという受け入れ方のため、受け入れられ、生活レベルの向上をすぐに促したことがかかれている。しかし現在のコンピューターの出現により、高卒などの賃金は下がっており、格差がどんどん広がっていることを知った。

そのため、一概にAIによる自動化を喜べるわけではない。ただ、最終的にみると生活水準を上げているため、そこに達するまでの間の職を失った人々をどのように守るか、そしてその人々が織りなすポピュリズムを防ぐかを考えなければならない。

生涯勉強あるのみ…

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Posted by ブクログ 2020年12月13日

AIに代表されるテクノロジーは生産性の向上により人間を不要な労働から救う救世主なのか、それとも低付加価値の労働者の仕事を奪うことで失業率を押し上げる悪魔なのか。論争が尽きぬこの議論に対して、主に産業革命以降のテクノロジーの歴史を紐解くアプローチを取ったのが本書である。

本書では、産業革命以降、労働...続きを読む生産性を向上させたテクノロジーを2つに分解する。1つは”労働補完型”であり、こちらは労働者を存在とするがその労働をより簡易にできるようにし、労働者自身の安全性向上というメリットももたらす。もう1つは”労働置換型”であり、こちらは労働自体をテクノロジーが自動化することで不要としてしまうタイプであり、産業革命期のラッダイト運動の対象となったのもこちらである。

よって、テクノロジーが労働に与える影響を考えるためにはそのテクノロジーがどちらに該当するものなのかを見極める必要がある。”労働置換型”のテクノロジーの場合、歴史を紐解けばそこには必ず不要とされて職を喪失した労働者の存在がある。もっとも様々なテクノロジーによって失業した労働者のデータを追って見れば、年齢が若いなど再学習のチャンスがある労働者は再雇用に成功するものの、そうでない人間にとっては失業が長く続くというのが一般的な傾向である。

結論はシンプルであるが、テクノロジーを巡る長い歴史を押えた上での議論ができる良書。

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