村井章子のレビュー一覧
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ネタバレ我々は140字に何を書こうかと夢中になり、どうすれば簡単に買い物ができるのかに囚われすぎている。
広告主はどのように消費者にクリックをさせようかに情熱を燃やしている。
もっとちゃんと大きな絵を描こう、そうすればまだまだ人類は進歩し、発展できて火星にも行ける。
それなのに、何故前者ばっかりになってしまっているのか。
言いたいことはかなりよくわかる気がした、ごもっとも。
「中身のない中立性」という言葉もかなり今の状況を表している言葉のように思う。
全ての価値基準がお金になり、文化に対するコミットも、善(悪)の表明もできないのは今の日本も同じかと。
浅はかな多様性や平等主義のせいで大きなものを見失っているのもその通りだと思う。
が、一方でまだまだ差別も根強く、ある種の多様性が実現できてないことも事実だと思うので、それが蔓延してるから、、というのは暴論な気がした。
「マイケル・サンデルは現代における道徳の空白の原因として、「善き生という概念を公的言説から締め出そうとする」傾向があることを挙げている。争いを避けるために「市民が公の場で話すときには道徳的・精神信条を棚上げする」ことが要求される...そこにできた空白の大部分を埋めるのが市場原理というわけだ。(市場勝利主義)」
というところは、もうまさに2026年そのもの。
そして『オデュッセイア』のセイレーンに触れた箇所も、クリストファーノーラン監獄の同映画を見てきてすぐだったので印象深く残った。 -
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ドル覇権は米国の実力だけではなくて、運もある。ソ連や日本が過去選ぶ道が違ければ、米国が今のポジションを確立出来なかったかもしれない、必然ではない、故にドル覇権が終わる可能性は大いにある。筆者は10年と最後に付言している。
国際金融の幅広いテーマに関わらず、ここまで分かりやすい書籍は中々ない。一回で全ては理解できないので、何度も読み返したい良書。
ドル覇権の良い所と悪い所、とても整理がされる。
米国の最大の敵は、中国の台頭という外部の要因より、内部の要因ではないかと感じる。勝手に自滅し、そのタイミングで消去法的に代替通貨やシステムに変わる可能性には非常に同感。
日本の過大債務にも何度も触れられている。世界の金利高騰リスクも提唱し、金融に係る予言書としても読む価値あり。 -
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膨大な資料(キッシンジャーから提供された)を基に、英国の歴史家ニーアルファーガソンが描く、キッシンジャーの評伝であります。1960年に発足したケネディ政権が直面したベルリン、キューバ、そしてベトナム等への危機対応が、いかに危ういものだったか、良く判ります。ハルバースタムが名付けた、ベスト&ブライテスト達の失敗も多々垣間見えます(マクナマラ国防長官、マクジョージバンデイ補佐官等)。様々な失敗の積み上げがベトナム戦争の泥沼を惹起する辺り、昨今のトランプ政権によるイラン攻撃の危うさと重なります。当時の危機には、キッシンジャーがいたのですが、今は、誰が居るのか、と、あれこれ想像をめぐらしながら、読み進めております。☆五つであります。
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面白いです。アンソロピックが自社のAI技術を戦争に活用するな、と政府を相手取って論争しているというニュースがありましたが、筆者はシリコンバレーを始めとするテック業界が政府ともっと協働し、国防を始めとする社会課題の解決に役立てるべきという主張をしています。
筆者がCEOを務めるパランティア・テクノロジーは、ベネズエラ侵攻やイラン戦争においても、自社ソフトウェアやAI技術を提供していますが、シリコンバレーの多くの会社が国防から距離を置き、社会課題とは程遠い陳腐な問題解決に終始している事を非難しています。アップルだけでなく、Uberやネット販売系を主に、消費者のみをターゲットにした戦略が、米国の国家衰退すら招きかねないとの事。
特にAI技術が国力を左右する中で、テック業界と政府がかつての第二次世界大戦時のマンハッタン計画の様に協働するべきと。ドイツが過去の贖罪により強い国家に生まれ変われなかった事がロシアの台頭を呼んだとの記載がありますが、これは中国を念頭に、米国も復活出来なければ地政学優位性を失うという危機感からでしょうか。日本も対岸の火事ではありませんね。
引用が多く読み進めにくい事が玉にキズですが、大変面白い本でした。 -
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2026/03/20「ドル覇権が終わるとき」ケネス・ロゴフ(村井章子訳)
1.ドル覇権体制は米国経済の圧倒的な力が支えてきた
長期間の赤字が累積して、今や覇権体制が基盤から揺らいでいる。その現状分析である本書は素晴らしい内容。
ただし「未来図」が描けているわけではない。
また現在AIを梃子にして、「エクイティ資本主義」でファイナンスを回している米国戦略がどのような展開をしていくのか、目下最大の関心事には殆ど触れられていない。アカデミズムの限界とも思う。
2.日本経済の急減速1990-の要因
①円高
②出生率の低下 労働力人口構造の変化
生産年齢減少、女性の増加、高齢者の増加=非正規雇用増
③投資の収穫逓減 高貯蓄・高投資経済の限界
④アジア新興国の台頭
⇒資産価格の異常な高騰と成長の急減速は「金融危機」をもたらす
1992年銀行貸出の減少へ=銀行危機の開始
⇒危機のピークは1998年中国の成長モデルの終焉
3.2015年チャイナ・ショック 中国から資本の引き上げ 中国経済の成長は『巨額のインフラ投資』が主導
最近の中国経済の不調要因は
①不動産バブルの崩壊も大きいが
②海外からの投資削減も打撃大きい 需要・生産力のW
米国との世界覇権戦争が要因 米国の恐ろしさと中国習近平の胆力
4.米国の債務残高の著増(423)
先進国でも突出している 特に2010年―はリーマンショック対策 2020年-はコロナ対策
現在、トランプ政権は何とか安定軌道へランディングさせようと必死
基本、彼は愛国者 -
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「AIの産業革命論」=AIは新しい汎用技術であり、今後百年単位のスケールで経済・社会を変革していく。問題は技術のみならず、それを受け入れる社会、特に「雇用の問題」である。そのスタンス次第で、国家は繁栄もし、衰退もする。第一次産業革命「蒸気機関」の英国vs中国・インドのように。
AIの入り口に立つ我々は、不安におののくだけではなく、積極的に「歴史に学ぶ」姿勢が重要。大部な書であるが、欧米の知識人の努力に負けてはいられない。
1.イノベーション 何時の時代にも重要である。社会発展をブレークスルーするのはイノベーションのみだから。
2.汎用技術 蒸気機関・電気・コンピュータ・AI
これらさまざまな分野に応用できる技術は、多くのイノベーションの元となる。その集大成が「産業革命」であり、100年単位の生産性向上の歴史を作ってきた。
3.産業革命を支えるのは中産階級
産業革命当初は労働者に不利益となることもあり、失業やラッダイト運動など社会問題・労働問題をもたらす。資本の原始蓄積と先行投資の時期だからか?
いずれ成長の果実が賃上げなど社会的に分配され、中産階級が分厚く形成される。
民主主義の発展・福祉制度の形成などが進み、社会発展が実現する。
4.AI時代の未来をどう創るかは我々の課題である。
過去の産業革命同様、技術進歩に加えて、経済・社会・政治のサポートを含めて視野の広い対応が求められるという認識を共有すべきである。
日本の社会体制は対応できるだろうか?
5.その他 トピック
①ムーアの法則が指数関数的成長をもたらした
②コンテナ革命(1956年)貨物の標準化により世界的効果は巨大 港湾・鉄道・トラックなどのインフラ整備
技術よりアイデア・実行力 特に既存荷受け業者との軋轢 -
Posted by ブクログ
最初の2章は馴染みがなくて読みが遅々として進まなかったのですが、マルコムマックリーンが登場する第3章トラック野郎は怒涛の展開で映画より面白かったです。
コンテナを発明してすぐに大儲けとはいかないんですよね。
コンテナサイズを共通化しないといけないし、コンテナを積む船や列車、トレーラーだけでなく、喫水の深い大型船が入れる港とガントリークレーンやストラドルキャリアを世界各地に用意しないと能力が発揮出来ません。
戦争や政治で荷物量はすぐ変わるし船や港にいつ投資するかによって儲けが全然違います。
港の競争で神戸や横浜などの日本の港は出遅れ、上海、シンガポール、釜山などにその地位を奪われてしまいましたよね。
ギャングと言われる冲仲仕がいなくなって港の風景も様変わりしました。
彼らの抵抗も読み甲斐がありました。
文章はやや説明的で長いのでドラマやシリーズ映画で観るか読みやすくリライトされた物を読みたいかな。
内容には太鼓判を押します! -
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ネタバレ第1章 経済の基本は「選択」と「トレードオフ」
・経済とは「限られた資源をどう使うか」という選択の積み重ねである。
・何かを選ぶときは必ず「何かをあきらめる」ことになる。これが「機会費用」の考え方。
・たとえば「残業する」にイエスと言えば「娘に本を読む」にノーを言うことになる。
・すべての意思決定にこの「イエスとノーの関係」が潜んでいる。
第2章 需要と供給が市場を動かす
・価格が下がれば需要は増える。これが「需要の法則」。
・ただし「高いほうが欲しい」という例外(見せびらかし消費)もある。
・供給側では「限界費用=限界収入」になるまで作り続けるのが利益最大化の原則。
・市場は売り手と買い手が「見えざる手」に導かれて効率的な結果を生み出す。
第3章 市場はなぜうまくいくのか
・朝食のパンやコーヒーが当たり前に手に入るのは、世界中の何千万人もの人の選択が市場を通じて調和しているから。
・だれも全体を指揮していないのに、自然にモノが行き渡る。これが市場の「見えざる手」の力。
・市場は分業と交換によって社会全体を効率化する仕組み。
第4章 市場の限界と失敗
・「取り放題」でみんなが取りすぎると資源が枯渇するように、市場には限界がある。
・気候変動も「市場の失敗」の一例で、環境コストが価格に反映されていない。
・市場は万能ではなく、共有資源や長期的影響には調整が必要。
・人は「将来より目先」を重視してしまい、環境問題を後回しにしがち。
第5章 完全競争と独占のはざまで
・理論上の「完全競争市場」では企業は誠実に行動し余分な利益を得られない。
・現実では独占・寡占が多く存在する。
・独占は悪とされるが、場合によっては「規模の経済」や「特許制度」によりイノベーションを促す。
・「良い独占」と「悪い独占」のバランスが重要。
第6章 情報の非対称性と「レモン市場」
・買い手と売り手が持つ情報が異なると、不誠実な取引が生まれる(例:欠陥車=レモン)。
・情報の不完全さは市場の信頼を損ない、結果的に全体の効率を下げる。
・気候変動問題でも複雑な情報が混乱を招いている。
第7章 労働市場と賃金の仕組み
・賃金は「労働の限界生産力」で決まる。
・どれだけ価値を生み出せるかが給料に反映される。
・賃金を上げるには「自分の生産性(人的資本)」を高める必要がある。
・新しいスキルへの投資が長期的な収入と経済成長を支える。
第8章 経済成長と豊かさ
・経済成長が人々の生活の質を大きく変えてきた。
・GDPはその成長を測る基本指標であり、「生産・分配・支出」の3つの面から計算できる(=三面等価の原則)。
・ただし生活の実感を知るには「一人当たりGDP」で見ることが大切。
・経済が成長すれば教育・寿命・生活水準が上がる。
第9章 成長を生み出す4つの要素
・経済の生産を支える4要素は「土地・労働・資本・技術」。
・土地には限りがあり、資本(機械・設備)は老朽化する。
・だからこそ技術進歩が鍵となる。
・技術とは知識や制度、発明など「生産性を高めるすべて」。
・ただし新技術は古い産業を壊し、格差を広げることもある。
第10章 分業・比較優位・貿易の力
・分業は「得意なことに集中する」ことで全体の生産性を上げる。
・国レベルでも同じで「比較優位」に基づく貿易によって双方がより豊かになる。
・イギリスはイチゴ、エクアドルはバナナのように、得意分野に専念して交換することで全体の利益が最大化する。 -
Posted by ブクログ
あらゆる本で引用されてる古典なのでずっと気になっていて、いざ手に取って読んでみたが、いやはやなんとも素晴らしい。
SNS中毒、スマホゲーム中毒、フェイクニュース、陰謀論、ポピュリズム、トランプ現象など昨今の問題を理解する上で必読と言える。
ビジネス書では研究エビデンスを本文中に盛り込むことが多いが、取ってつけたような形が多く、読みにくいし印象に残りにくい。その点、本書は項それ自体のテーマを裏付ける研究であるし、著者本人が考えて生み出した研究であるから固有のエピソードもあって面白い。
やはり一次情報は強い。
身近な人を思い浮かべると、システム1優位な人もシステム2優位な人も思い浮かぶ。
しかし本書の別の項の例を読むと、今度は同じ人であっても、THEシステム1的なあの人も、あの部分はシステム2的だな、などと思い出されたりする。
となると、単純にAさんはシステム1でばかり考える、といった評価はやはり短絡的だ。誰しもがコンディションや環境条件などによってシステム1と2をコロコロと使い分けていて、ただAさんの目立つ一面が1だったり2だったりして、私が偶然そこを頻繁に、ないし強く印象付けられているだけなのだろう。
プライミングに関する記述は非常に編集工学的だ。
自分の思考は、事前に何らかの形でインプットされた別の情報によって左右される、という事実が、自己という枠が非個体的であることに繋がる。
起きてすぐに耳にしたTVのある音楽フレーズが一日中頭に流れ続けたり、ふと広告から目に入った食べ物が食べたくなってランチ選びに影響したり、夢に見た内容がポジティブなものかネガティブなものかでその日のテンションが変わったり。
絶えず目から耳から肌から伝わってくる情報、更には養老孟司がいうような脳内で情報をグルグル回すことで生まれる情報もある。
こうして自分と他者、自分と世界の境目というのが非常に流動的で、液体同士が混ざり合うような構造をしていることが分かる。
文化資本の差が子供の人生に影響する度合は数値化しにくいが、プライミングの強力さを考えると相当な影響力だろう。
その一方で、平均への回帰の存在もまた良くも悪くも刺激的だ。
変数が少ないものや、直近の未来予測などには相関関係が大きくみられるのに対し、変数が増えるほど関係は薄くなり、運要素の大きい、確率の問題に収束していく。結果、平均へと回帰していくと。
生殖細胞のDNA組み換えの際のランダム性によって平均へ回帰し、身長が高い人同士が交配し続けても巨人にならないように、プライミングによる影響も、社会で求められるスキルの変化や、子どもの素質といった変数によって大いに回帰しうる。
SNSや悪書に触れる機会量が自分を毒していくことへの注意意識と、その逆に「結局そこまで悪いことばかりではない」という安心を同時に得られた一冊だった。