あらすじ
「ケネディとニクソンほど、その運命が対照的だった大統領もいないだろう。一方は暗殺により道半ばにして斃れ、他方は辞任で屈辱にまみれた。両者は、アメリカの政治において対極的な位置付けにあると言えよう。
ところが奇妙なことに、この二人のどちらにも仕えた男がいる――ヘンリー・キッシンジャーだ。」(本書13章「柔軟反応戦略」より)
キッシンジャーから懇情され、一旦断わったものの、膨大な私信・資料を見せられてファーガソンが引き受けたキッシンジャー公認の評伝。ファーガソンが10年がかりで完成させた大作。
ハーバード大学の少壮教授となったキッシンジャーは、核戦略・外交の専門家として共和党の大統領候補ネルソン・ロックフェラーの外交顧問となり、転じてケネディ大統領、ジョンソン大統領の密使としてパリを舞台に北ベトナム代表との間でベトナム戦争の秘密和平交渉に関与する。
前期キッシンジャーの思想と行動を膨大な資料から浮き彫りにする。
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Posted by ブクログ
キッシンジャーの傑作評伝の下巻。舞台となるのは、ハーバード大学の教鞭を取りながら、大富豪ロックフェラーの大統領選の参謀として徐々に政治の世界に足を踏み入れる1958年から。そして下巻の中心となるベトナム戦争の和平工作に足を踏み入れながらも、ジョンソン政権下で結果としてはうまくいかずその営みが徒労に終わるも、ジョンソンに次ぐ大統領に就任したニクソンの元で、 NSA/国家安全保障局の大統領補佐官に就任するところまでが描かれる。
キッシンジャーが問題視したのは、ジョンソン政権下での外交問題が、様々な部局の縦割りで統一的な戦略や意思決定プロセスを経ぬままに迷走していた点である。彼がニクソンの元で政権入りして取り組んだのは、膨大な外交に関するデータの分析手法、大統領への判断の仰ぎ方等の統一的なプロセスに関するシステムを構築することであった。その背景として、実際にどのような迷走がジョンソン政権下で行われていたのかが、この下巻では克明に描かれ、アメリカのベトナム戦争でのゲリラとの戦いが文字通り、底なし沼にはまり込んでしまっているという点を、痛切に理解することができる。
キッシンジャーという稀代の人物を通じて、20世紀の歴史を振り返ることができる一冊。