あらすじ
「格差」とは何か? 世界的ベストセラー『21世紀の資本』著者による大注目作!
世界的ベストセラー『21世紀の資本』のトマ・ピケティが、「格差」について考察。
「r>g」の衝撃から10年。戦争、気候危機、経済不安などを受け、世界は”第二次ピケティ・ブーム”へ。
その最新思想エッセンスを、ピケティみずからコンパクトな一冊にまとめたのが本書である。
・「社会は平等に向かうべき」との思想はいつ始まったのか
・所得格差が最も少ない地域、最も多い地域は?
・「所得格差」と「資産格差」について
・累進課税制度の衝撃
・世界のスーパーリッチたちの巨額税金逃れ問題について
・ジェンダー格差をどう考えるか?
・環境問題の本質とは、「自然資本の破壊」である
・炭素排出制限量において、取り入れるべきアイデア
・「戦争や疫病が平等を生む」という定説は本当か
――「持続可能な格差水準」は、存在するのだろうか?
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Posted by ブクログ
トマ・ピケティが社会にある不平等の定量的実態と、その源泉について講演した際の書き起こし。
不平等の源泉は政治的構造であるという批判は、『国家はなぜ衰退するのか』と同じ論調。
再分配・累進課税の強化には賛成だけど、どこまでも比率を上げ続ければ良くなるのか?という検証と、働く人が意欲を失わない制度設計(=『壁』の完全撤廃)は必須に思う。
Posted by ブクログ
ピケティ入門書。2冊の他の著書を引用しながらした講演をまとめたもので、問題意識がクリアなものの、資料は一部のみしか掲載されてません。気になる箇所が出たら追加で文献を買って深掘りする必要があります。
なぜ不平等ではいけないのか、参政権が平等にあれば男女格差は是正されるのか、先進国は本当に二酸化炭素の排出量が低いのか、そんな素朴な質問を持つ人が最初に読むと良い本かもしれません。
Posted by ブクログ
講演録なので、分かりやすかった。所得格差と資産格差をどうにかしないと格差はなくならない、とわかった。教育もすごく重要だし、ジェンダー格差もなくさないと日本に未来はないと思った。
Posted by ブクログ
格差についていくつもの観点からなされた分析を、1〜2枚の図表と短い文章で次々と展開していく。しかもそれらが一つの明快な主張のもとに構成され、澱みなく連なっている。どのトピックもワークショップのネタにすぐ使えそうだ。
Posted by ブクログ
講演の原稿が元なのでわかりやすくまとめられている。
ぼんやりとわかっていても実際どうなのかな?
が、あーそうなってるんだになる。
格差を是正するのに必要な素地の形成には時間がかかるだろうけどやらなくちゃいけない。
意見を持つ、実現可能か考える。
非現実な飛躍は話をしてないのと同じ。
そうでなくて大藩の藩士善良な人たちと前に進む道標になる一冊なんじゃないかな。
勉強になった。
Posted by ブクログ
一般的に、ここ1世紀でだいぶ不平等が解消されたような印象があるが、『世界不平等リポート』のデータで見ると中間層が増えただけで資産ゼロの貧乏人の割合は実はぜんぜん変わっていない。フランスもフランス革命の栄光を自慢するほど平等にはなってない。
それでも全体がゆるやかに平等へと向かっているのも事実。例えば平等世界一を誇るスウェーデンも、第一次世界大戦までは税金納付額に準じた票数を富裕層で割り振って貴族が首相をつとめる国だったが、識字率の高い労働者階級が参政権運動に励んだ結果1932年社会民主主義系の政権が成立し、今のように変わっていった。スウェーデンが特殊なのではない。社会構造は永続的な物ではなくいつでも変化するものである。だから希望を捨てず、経済学者まかせにせず、教育に公的資金を投入し、みんなで平等への道を歩いて行こうぜ。
最近自由研究のテーマとして新自由主義関連本を読んでいるせいで、地球はもう強欲商人の遊園地として焼け野原になるしかないようで気が滅入っていたが、まだこんなまともな文化人もいたのかと元気が少し回復した。
所得の再分配に関して、第二次世界大戦後のドイツに相続税の引き上げを指示したアメリカの話も興味深い。民主政が金権政治に脱しないようとの意図だったと。新自由主義にそまったレーガン大統領以前のアメリカは旧大陸的な不平等社会を反面教師にして富の再分配にも非常に積極的だった。それが現在は第一次世界大戦前のヨーロッパ並みに逆行している。まるでオセロゲームのようだ。社会構造は決定論では語れないとのピケティの言葉はここにも当てはまる。
分厚くて読みづらそうなイメージで名前しか知らなかったピケティを講演録というダイジェスト版で、しかもこのタイミングで読める価値を考えると、薄めの本だが投資分の収穫は充分ある。
Posted by ブクログ
ピケティさんの書籍はどれも読むのが大変だが、本書は講義内容の文字起こしなのでサクッと読める。格差(所得、資産、ジェンダーなど)や環境問題(炭素排出制限量の南北問題、自然資本の破壊など)についての彼のスタンスとその結論に至った経緯が簡潔に記されている。ピケティさんご自身による「ピケティ入門書」という位置づけの本。
Posted by ブクログ
不平等は何故起きるのか、所得格差、教育格差、CO2排出量格差、ジェンダー格差の実態はどうなのか、フランスと米国を比較していて分かりやすかった。経済成長は教育による、累進課税は必要、公的債務等ピケティの明快な理論が少しでも分かった。
Posted by ブクログ
不平等・格差の歴史についての講演会をまとめた一冊。
講演会なので比較的分かりやすくまとめてあり、読みやすい。
スウェーデンの社会民主政党をサンプルとして取り上げており、スウェーデンの政治について知識がなかったので、興味深く読んだ。
Posted by ブクログ
【抜粋】
(p6)不平等は、社会によって顕著に異なる経済、政治、文化、文明、宗教の移り変わりと密接に結びついている。今日私たちが目にする社会的不平等のさまざまなちがいや度合いや構造は、広い意味の文化で説明することができる。いや、文化以上に、参政権をはじめとする政治参加のほうが大きな原因だったかもしれない。その一方で、「自然」の要因、たとえば個人の能力であるとか、天然資源などに恵まれているといったことが果たす役割は、思うほど大きくない。
—
(p10)不平等の大幅な解消なくしては、また現在の資本主義システムとはまったく異なる新しい経済システムの出現なくしては、気候変動問題を解決することはできないだろうし、自然と人間の共存も不可能だろう。その新しい経済システムを私は「民主的でエコロジカルな参加型民主主義」と呼んでいるが、もちろんちがう名前をつけていただいてもかまわない。
—
(p14)平等の実現は制度構築と機会の創出に懸かっているのである。(中略)変化の真の原動力となったのは、参政権をはじめとする市民の政治・社会参加であり、また制度を構築し、機会を創出する国家の能力であった。
—
(p52)教育への公的支出の増加は個人の解放、社会の平等化、経済の繁栄を促し、格差を縮小すると同時に生産性と生活水準の向上に寄与した。私たちはこの事実に慣れすぎて忘れがちだが、教育支出のこの変化は、平等に向かう歩みにおいて重要な役割を果たしてきたのである。
Posted by ブクログ
『21世紀の資本』で有名なピケティによる2022年3月に行われた講演の内容を書籍化したものとなっているので、分厚い『21世紀の資本』と違って、1時間くらいで読み終えてしまった。
内容としては、やはりピケティらしい不平等についてのもので、
不平等の問題は、まだまだあるものの、全体として不十分ではありながら平等への歩みは続いているとしたうえで、
所得格差や資本格差、ジェンダーや議決権の不平等などついて、データを示しながら、語られている。
また、不平等が生まれる背景には、社会的、文化的な原因があるため、フランスやスウェーデンの歴史的事例を通してそのことが述べられている。
これらの中で特に印象に残ったのは、自然への影響(環境問題)と不平等の関係で、格差と環境問題がどう関係するのか、と思ったが、CO2排出量が、国際的にはいわゆる先進国に偏りがあり、また、国内でみれば所得上位10%に偏っているとあり、CO2の排出量規制への努力を格差を無視して平等に強いるのは、実態に則してしないと気づかされた。
読んでいて、気になったのは、
資本格差は、所得格差よりもはるかに大きく、また、不平等の解消度合いも低いこと。
不平等の解消には、教育が必要であること。
不平等の問題を解決するには、より平等な資本主義社会か、資本主義に替わるシステムが必要なこと。など、ピケティの考えていることが端的に述べられているものの、もとが講演会の内容のため、この本だけでは十分に理解できなかったのが、ちょっと残念だった。
でも、短くても発見のある本だと思う。
Posted by ブクログ
トマ・ピケティの著作が、さまざまな場面で取り沙汰されるのを見るにつけ、「21世紀の資本」を読まなくてはなあと思ってはいた。
だが、いつも後回し。読みたい本がたくさんありすぎて腰を据えて読む気になかなかなれず。
そんな時に、この講演録は、章立てが細かく、データを駆使してわかりやすくピケティの分析を披露してくれているので、経済学に暗い自分でも十分に読める。
データは中央値や平均値を見るのでは実態が掴めないこと。データ分析が鮮やかでさすがだ。
そこから浮かび上がる格差について、ピケティはあらゆる格差をゼロにしようと思っているわけではなく、一部の富裕層と圧倒的多数の一般庶民の格差を5対1.あるいは10対1くらいに抑えたいと考えていること。資本主義社会の枠内の現実路線を目指しているなと思う。これは意外。
そして地球温暖化と経済格差の相関性も鮮やかにデータで示している。
気候変動の影響はこの暑い夏でひしひしと感じることだが、これまで以上に日常生活で実感できるようになったら、現在の経済システムに対する考え方が急激に変わる可能性があるという仮説を立てている。
確かにその萌芽はすでにあると思うが、やはり一筋縄でないいかないだろうな。
私はこの件に関してはとても悲観的だ。
知れば知るほど、日本は、世界は、人類は決して解決できないと確信してしまう。
確信がひっくり返されることを願ってまた次の本を読んでいくのだが。さて。
Posted by ブクログ
2022年3月18日のジャック・シラク美術館で行われた講演録。
「社会的不平等の違いや度合いや構造は・・・・参政権をはじめとする政治参加のほうが大きな要因だったかもしれない。その一方で、「自然」の要因、たとえば個人の能力であるとか、天然資源などに恵まれているといったことが果たす役割は、思うほど大きくない。」
スウェーデンの例は「ある国が本来的に不平等だとか平等だということはないと示した点で興味深い」「肝心なのは、政権運営を担うのは誰か、何を目指すのかということである。」
そして「不平等の大幅な解消無くしては、また現在の資本主義システムとはまったく異なる新しい経済システムの出現なくしては、気候変動問題は解決することはできない」と結論づける。
Posted by ブクログ
ピケティの思想がギュッと詰まったコンパクトな一冊。個人的には、50ページほど増やしてもう2-3ずつ論拠を示して欲しかった。反論の余地がある部分がいくつか。このページ数でこの価格、というのもちょっと抵抗あり。
Posted by ブクログ
富の集中は文明の影のように歴史を歩んできた。――経済学者トマ・ピケティは講演でこう問いかける。「成長が続いても不平等はなぜ縮まらないのか」。自然の恵みを共有してきた人類はやがて制度と資本によって分断された。文化は人を結びつける力を持つが同時に格差を正当化する物語にもなり得る。だからこそ彼は「分かち合う知」を強調する。自然を守り、文化を尊び、富を循環させる社会へ――その道を選ぶのはいまを生きる私たちである。
Posted by ブクログ
スウェーデン、不平等だった国だが、1930の社会民主系が政権をとり、急速に変わり、今は世界で一番平等な国になる。
個人の才能が国ごとにこのように分布しているわけがない。天然資源のせいでもない。それぞれの社会が選んだ制度が不平等つくってる。
脱市場化のプロセスを継続し、より多くの分野に拡大すべき。一国の経済活動全てが脱市場化する可能性も否定しない。
そのためには権限委譲が必要であり、組合や共同体といったプレイヤーが重要になってくる。この非市場経済は、所得と資産に対する累進課税と、残存する企業のより良い議決権配分の仕組みに支えられる。単なる金銭的再配分ではないことがポイント。
Posted by ブクログ
トマピケティの本。フランスの講演会の内容をまとめた本なので、格差の現状を図表を使って説明しておりとても判り易い。著者は世界の所得、税、ジェンダー、環境等の格差問題について言及考察しているが、これは複雑な要因が絡んでおり問題解決は一筋縄では行かない。各国にはそれぞれ事情があって、資本主義社会である限り、著者が指摘する格差を是正するのは難しいと思う。
Posted by ブクログ
世界中で起きている現代の不平等は、自然や文化の変化だけでなく、政治によって大きく変化する。特に所得格差の拡大や富裕層の税逃れなどが不平等を助長している現実があり、これらの問題に対処するためには、個々の専門学者の取り組みだけでなく、政治的な施策が不可欠だと、言う事だ。日本においては、特に所得税や相続税が他国に比べ既に高い利率がかけられていることを認知しておくべきだ。
Posted by ブクログ
あまり新鮮な意見では無かった。
多分皆んながなんとなく感じてる「格差が無くなればいいのにな」って事を具体的な数字で示してくれている。
だからこそ格差は今後も無くならないと思う、だって皆んなそう思ってるはずなのに、過去から格差が拡大していってるから。
特に資本主義が最強のイデオロギーのうちはね。かと言って共産主義はありえない。
で、エコ社会主義!ってのもありえないだろ。
資源の消費速度が早くてそのうち枯渇するだろうけど、その時は適当に人間が間引かれて、それに適した数の人類が生き残って、「そういう環境」がまた出来上がるだけだとおもう。
私ができるのは悲惨な間引きが行われない事を願うだけだろう。
Posted by ブクログ
オーディブルで聴いたのは失敗だったかもしれない。豊富なデータ比較や諸外国の事情についてなので、オーディブルだと分かりづらいように感じた(わたしの理解力の問題かもしれない)。
翻訳本なので日本との比較が少ないのも個人的にはイメージしづらかった原因のひとつかなと思う。でも調べないと分からない海外の事情を知れるのはいい機会になった。
Posted by ブクログ
資産やジェンダー格差、自然と不平等などについて現状をデータで解説しています。
様々な面で過去よりも改善されつつあることがわかりますが、まだ道半ばということもわかります。
Posted by ブクログ
2022.3.18にケ・ブランリ=ジャック・シラク美術館で行われた講演の原稿を加筆訂正したもの。講演は民族学会の招きで行われた。
・不平等を生む体制が社会によってどれほど異なるとしても、過去数世紀にわたって基調的な流れ~社会的な平等へと向かう底流はあった。18世紀末という特定の時期に水脈が現れ、政治的・社会経済的平等の実現をめざして勢いを増したていった。
・不平等を生む体制は社会によって大きく異なるが、自然、文化、不平等の間にはまったくちがう種類の関係性が存在する
・気候変動問題は、現在の資本主義システムとはまったく異なる新しい経済システムの出現なくしては解決できない。それは「民主的でエコロジカルな参加型社会主義」である。
・スウェーデンは今日きわめて平等的な社会だといわれるが、20世紀初頭はそうではなかった。1920年に普通選挙が実現し、社会民主労働者党が1932年に政権党となり以後2000年代までほぼ切れ目なく政権を担当し、税収は教育や医療へのアクセス拡大に充当された。
・不平等に関しては二つの問題がある。累進課税と環境破壊だ。
・経済成長の真の原動力となるのは教育だ。
・単に金銭的な再分配だけが福祉国家の仕事ではない。
・自然の破壊とは自然資本の破壊にほかならない。
・気候変動の影響がこれまで以上に日常生活で実感できるようになったら、現在の経済システムに対する考え方が急激に変わる可能性は十分にある。
・不平等の問題は経済学者だけでは解決できない。狭い視野ではなく、歴史学者、社会学者、政治学者、人類学者、民俗学者たちの力が必要だ。経済や歴史の知識と知恵を共有することで、より民主的な社会と権力のよりよい配分をめざす運動の重要な一翼を担うことができるし、またそうしなければならない。
2023.7.10第1刷
Posted by ブクログ
r>gで有名なフランスの経済学者のトマ・ピケティが過去データを分析して、不平等を切り口に世界で起こっている様々なことを論じる。
所得、ジェンダー、教育格差など。驚いたのはヨーロッパなどでは1800年代から統計データがあること。
累進課税などの導入により、十分ではないが、格差は縮まっていること。
教育に国がかけるお金は重要であり、これが格差を縮めるのに重要な役割を果たすが後回しにされること。
炭素の排出量は一人当たりに換算すると北米が群を抜いて大きいにも関わらず、同様の排出量が求められていることなど、筆者が述べるように分野を超えて専門家の知見を集約することが重要である。
Posted by ブクログ
一般的な知識で格差や平等を語っていたが
違う視点でこれらを考えさせられた
不平等とは それらを生む体制を歴史的に考える
所得格差 資産格差 ジェンダー格差
図で説明されると
説得力がある
人間はそれでも平等への道を歩んでいる
歩みはのろく範囲は限られるが
そして著者は気候変動の影響が日常生活に
影響を及ぼすようになると
現在の経済システムに対する考え方が
急激に変わるとしている
今だと思う もう始まっている
どうなる