あらすじ
「格差」とは何か? 世界的ベストセラー『21世紀の資本』著者による大注目作!
世界的ベストセラー『21世紀の資本』のトマ・ピケティが、「格差」について考察。
「r>g」の衝撃から10年。戦争、気候危機、経済不安などを受け、世界は”第二次ピケティ・ブーム”へ。
その最新思想エッセンスを、ピケティみずからコンパクトな一冊にまとめたのが本書である。
・「社会は平等に向かうべき」との思想はいつ始まったのか
・所得格差が最も少ない地域、最も多い地域は?
・「所得格差」と「資産格差」について
・累進課税制度の衝撃
・世界のスーパーリッチたちの巨額税金逃れ問題について
・ジェンダー格差をどう考えるか?
・環境問題の本質とは、「自然資本の破壊」である
・炭素排出制限量において、取り入れるべきアイデア
・「戦争や疫病が平等を生む」という定説は本当か
――「持続可能な格差水準」は、存在するのだろうか?
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このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
一般的に、ここ1世紀でだいぶ不平等が解消されたような印象があるが、『世界不平等リポート』のデータで見ると中間層が増えただけで資産ゼロの貧乏人の割合は実はぜんぜん変わっていない。フランスもフランス革命の栄光を自慢するほど平等にはなってない。
それでも全体がゆるやかに平等へと向かっているのも事実。例えば平等世界一を誇るスウェーデンも、第一次世界大戦までは税金納付額に準じた票数を富裕層で割り振って貴族が首相をつとめる国だったが、識字率の高い労働者階級が参政権運動に励んだ結果1932年社会民主主義系の政権が成立し、今のように変わっていった。スウェーデンが特殊なのではない。社会構造は永続的な物ではなくいつでも変化するものである。だから希望を捨てず、経済学者まかせにせず、教育に公的資金を投入し、みんなで平等への道を歩いて行こうぜ。
最近自由研究のテーマとして新自由主義関連本を読んでいるせいで、地球はもう強欲商人の遊園地として焼け野原になるしかないようで気が滅入っていたが、まだこんなまともな文化人もいたのかと元気が少し回復した。
所得の再分配に関して、第二次世界大戦後のドイツに相続税の引き上げを指示したアメリカの話も興味深い。民主政が金権政治に脱しないようとの意図だったと。新自由主義にそまったレーガン大統領以前のアメリカは旧大陸的な不平等社会を反面教師にして富の再分配にも非常に積極的だった。それが現在は第一次世界大戦前のヨーロッパ並みに逆行している。まるでオセロゲームのようだ。社会構造は決定論では語れないとのピケティの言葉はここにも当てはまる。
分厚くて読みづらそうなイメージで名前しか知らなかったピケティを講演録というダイジェスト版で、しかもこのタイミングで読める価値を考えると、薄めの本だが投資分の収穫は充分ある。
Posted by ブクログ
2022年3月18日のジャック・シラク美術館で行われた講演録。
「社会的不平等の違いや度合いや構造は・・・・参政権をはじめとする政治参加のほうが大きな要因だったかもしれない。その一方で、「自然」の要因、たとえば個人の能力であるとか、天然資源などに恵まれているといったことが果たす役割は、思うほど大きくない。」
スウェーデンの例は「ある国が本来的に不平等だとか平等だということはないと示した点で興味深い」「肝心なのは、政権運営を担うのは誰か、何を目指すのかということである。」
そして「不平等の大幅な解消無くしては、また現在の資本主義システムとはまったく異なる新しい経済システムの出現なくしては、気候変動問題は解決することはできない」と結論づける。
Posted by ブクログ
スウェーデン、不平等だった国だが、1930の社会民主系が政権をとり、急速に変わり、今は世界で一番平等な国になる。
個人の才能が国ごとにこのように分布しているわけがない。天然資源のせいでもない。それぞれの社会が選んだ制度が不平等つくってる。
脱市場化のプロセスを継続し、より多くの分野に拡大すべき。一国の経済活動全てが脱市場化する可能性も否定しない。
そのためには権限委譲が必要であり、組合や共同体といったプレイヤーが重要になってくる。この非市場経済は、所得と資産に対する累進課税と、残存する企業のより良い議決権配分の仕組みに支えられる。単なる金銭的再配分ではないことがポイント。