村井章子のレビュー一覧
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蒸気機関の登場がザ・ファースト・マシン・エイジであり、まさに訪れようとするシンギュラリティがザ・セカンド・マシン・エイジである。冒頭のグーグルカーのくだり、GDPの形骸化の指摘は視座に富む。
しかし後半の提言は意外に基本に忠実で現実的なもの。経済学の王道をゆくものだ。ベーシックインカムに対する労働の真価の議論は興味深いながらも、未知の時代の対応策がこれでよいのか、多少の疑問は残る。
どういった時代が訪れるのか概観する中盤まではよく現状がまとめられている。その答えは、筆者は一つの考え方を提示しているものの、我々自身がこれから模索していくことになるのだろう。 -
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スタンフォードのビジネススクールの教授が権力者がいかにその権力を手にしたのかを研究した成果。綺麗事ではなく、現実を見据えて淡々と打つべき手を打つ人間が権力を握っていく。
仕事ができる、成果を残す人間が必ずしも権力を握るわけではない。上手に上の人間にアピールし上の人間を気持ちよくしていく必要がある。権力を握るための7つの資質として決意、エネルギー、集中、自己省察、自信、共感力、闘争心が挙げられていて、知能はあまり出世に関係ない。その他に上昇する部門でキャリアをスタート、リソースを確保し強力な人脈を築く、権力者として振る舞うといったコツが紹介されている。
ただ権力を手にした人間が払う代償も大きい。衆人環視、時間とエネルギーの代償、人間不信など。ただ権力者の方がピラミッドの底辺の人間よりも長生きするらしい。 -
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人工知能の実用化など、IT革命が”シンギュラリティ”に入りつつある今日を、18世紀の産業革命に続く「第二機械時代」と位置づけ、そこに内在する”機会と脅威”を解き明かした一冊。
「第二機械時代」では、「ムーアの法則」に従って指数関数的に進化するコンピュータ技術と、低コストで無限に複製可能なデジタル技術がネットワークを通じて融合し、これまでにない高度で多様な組み合わせ型イノベーションが生み出され、社会に新たな価値をもたらすが、それらは情報経済や非貨幣経済といった従来のGDPだけでは捉えきれない動きでもあり、また高スキル労働者や資本家などに富が集中する「勝者総取り」によって、格差を助長する構造を孕んでいるという。
組織が自動化できる仕事を全て機械に任せた後の個人は、豊かな発想力やパターン認識、複雑なコミュニケーションといった人間固有の能力を活かして「機械と共存する」ことが求められる。同時に税制や教育によって格差拡大を防止することも重要であり、様々な政策が提言される。前著「機械との競争」と同様、著者の目線は基本的に「楽観論」であるが、そのための”条件”は厳しい。「運命を決めるのはテクノロジーではない、私たちだ」という結びの一文が、重たく響く。 -
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『とくに注目すべきは、従来人間にしかできないとされてきた知的な仕事をデジタル技術がこなし始めたことである。
汎用コンピューターは、労働人口のうち情報処理的な仕事に携わる60%に直接的影響をおよぼすだけでなく、残りの40%も次第に侵食しつつある。
チェス盤の残り半分を進むにつれて、テクノロジーのパワーは倍々ゲームで強化され、その用途は飛躍的に拡大し、職業や雇用に影響を与えずにはおかない。
したがって、スキルの面でも、社会制度や産業の面でも、遅れを取り戻すべく努力しなければならない。さもないと、この先もっと多くの労働者がテクノロジー失業に直面することになるだろう。』
簡潔で分かりやすい問題提起的な作品。
我々としては、機械で出来ることは最大限機械で行って、機械では出来ない部分をいかに強みとして人間に働いてもらうのかを真剣に考えることが大事なんだろうなぁ〜。
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ネタバレ「機械との競争」とほぼ同じ内容ではあるが大幅に加筆されており読みやすい。読むべき価値のある本だし、今選ぶならこちらだろう。
・産業革命は機械の力を生産に利用するためのファーストマシンエイジの幕開けであった。今、時代はセカントマシンエイジの入り口にある。
セカンドマシンエイジには指数関数的な高性能化、デジタル化、組み合わせ型イノベーションという特徴がある。
指数関数的な高性能化はムーアの法則に代表されるが、CPUのみならず記憶装置やネットワークなど全てがそう。これまでこのような増加を続けた分野はない(飛行機の速度や小麦の収穫量などが18ヶ月ごとに倍になることはなかった)。イノベーションは全く新しいことを発明するのでなく、既存のものの新しい組み合わせであるが、デジタル化はこれを容易にする。
・今後は物的資本を蓄積してきたもの(資本家)、人的資本を蓄積してきたもの(高スキルの労働者)、スーパースター(特別な才能に恵まれたもの)に勝ちがかたよる
・定型的な仕事は機械にとってかわられるだろう。非定型な仕事は肉体労働も非肉体労働も今後とも需要は堅調だろう。ただし、非定型な仕事であったも介護職や庭師など肉体労働の分野には機械に職を奪われた層が移動してくる。そのため、人間同士の争いが熾烈になる。
・これまでの市場では輸送コストや供給面の制約から、最高の商品といえども市場の一部しか満足させられなかったが、デジタル化により複製が容易になったため、セカンドベストはお呼びでなくなった。価格も大幅に下るため「ちょっと質は落ちるが安い」という手も使えなくなる。ベストの者が限りなくゼロに近い限界費用を活かし、勝者総取りになるの傾向が強まった。ネットワーク化もこれに拍車をかけている。フェイスブックを使っている人が多ければ、新しくSNSを始める人もフェイスブックを選ぶ。
・世の中の所得分布はこれまでのように正規分布から外れてきて、べき分布になっている。とりわけ高所得層の世界はべき分布によく当てはまる。正規分布の時代には少しでも能力差があれば、少しでも給与の違いとして反映されたが、べき分布の時代には教育だけで違いを生み出すことはできない。
機械が高度に発展した時代には、必ずしも人間が仕事をする必要はないのかもしれない。と、いうことでベーシック・インカムについても検討されているが、これはヴォルテールのことばにある「労働は、人間を人生の三悪、すなわち退屈、悪徳、困窮から救ってくれる」という中の困窮には効果があるが、他には効き目がない。おそれくこれは人間を怠惰にし、治安を悪くさせるだろう、ということで負の所得税が勧められている。 -
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西洋の古典における経済思想を解きほぐし、現在の数理的に割り切った分析に基づく経済学を心を失った社会学として不完全なものとする。
ギルガメシュ叙事詩や旧約聖書では都市と自然、社会と個人などが対比され現代に通じる自然が不自然化する(服を着るなど)、文明化と経済社会化を記述する。しかし経済社会はいつも倫理とセットであり、ヘブライ社会では経済は重要な項目であったが社会はあくまで神の論理を一番に置いていた。アダムスミスも道徳感情論を主著としていたようにあくまで人間の本質が前提で経済の考え方は後にくるものだと考えていた。ケインズも経済が成熟化すれば誰も経済のことなど考えなくなると予想していた。教養本としてはギリシア哲学、キリスト教思想など西洋のベースとなる思想をカバーしておりためになるとは言えるが、実際に現在の経済を理解する上で役に立つかというとわからない。
結論としては、現状は過去の倫理学から分かれた政治経済学とは異なり、何度もインセンティブが暴走し経済危機が起こる不安定な状況であり、この倫理を忘れた合理的人間像をベースにした経済学の欠点を浮き彫りにしようとしている。 -
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「トマ・ピケティの新・資本論」
ピケティが日刊全国紙リベラシオンに2005年から2012年まで毎月連載していた時評をまとめたもの。「21世紀の資本」とは違い時事の評論なので短く読みやすく、ピケティの考え方がよくわかる。
日刊紙に連載されていただけあり、その時々のフランスの問題点がよくわかる。問題点は違うものの政治的に日本とあまり変わらないような気がする。
問題点の指摘はいろいろあるが、税制の問題、所得格差、社会保障、大学の問題が多い。
特にフランスでの税制の複雑さと金持ち優遇の税制を指摘し、資産への累進課税を主張している。特に不労所得者に関しては容赦がない。
確かに、民主主義を主張するのであれば、その個人の努力と能力によって労働の価値を認めるべきであって、世襲で財産を引き継ぐことによって莫大な利益を享受することはかなり問題があると言える。
また、個人の努力と能力と言ってもどこまでが本当に評価するべき点であるのかは難しい。経営者が会社の増益を自分の能力によるものだと言って莫大な報酬を受けるようにすることに対して有効な歯止めがないように思える。あの、カルロス・ゴーンの莫大な報酬に引きずられるように、日本の経営者の報酬が上がっていることに関してあまり批判的な評論は聞かない。
その意味では、さすがフランス革命の国の評論だと思う。その一方で、その思想を体現する平等の国アメリカでは格差が大きく、ヨーロッパのようになるまいとして累進課税が課されていたものがどんどん廃止されていくのが矛盾しているように思える。
民主主義による自由はダメで、やはり、共産主義による恐怖が必要なのだろうか。 -
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コッター先生の最新作!
本作は組織論となっています。
ざっくりまとめると、階層型組織とネットワーク型組織を融合したデュアルシステムを提唱していて、それが、変化にも柔軟に対応し、イノベーティブな動きを導き出すことができるとしています。
デュアルシステムを成功に導く5つの原則として
・社内のさまざまな部門からたくさんのチェンジエージェントを動員する
・「命じられてやる」ではなく「やりたい」気持ちを引き出す
・理性だけでなく感情にも訴える
・リーダを増やす
・階層組織とネットワーク組織の連携を深める
さらにネットワーク型組織を機能させる8つのアクセラレータとして
・危機感を高める
・コアグループを作る
・ビジョンを掲げ、イニシアチブを決める
・志願者を増やす
・障害物を取り除く
・早めに成果をあげて祝う
・加速を維持する
・変革を体質化する
としています。
そして、その理論を裏付ける成功事例の紹介。さらには、従来型の階層組織での失敗例の紹介もなされています。
この本の最後のほうにあるFAQみたい章にもあるのですが、デュアルシステムと部門横断型のタスクフォースとの違いが完全に腹に落ちません。
本書によれば違いは「命令されてやって、レポートを上に上げる」か「自らがやって、自分たちで管理する」の違いのようです。
部門横断のタスクフォースを志願制で集めて、成果を自分たちで確認しながらやればそれがデュアルシステムというわけでもない感じです。
日産の改革事例と比べて、同じなのか違うのか?
自分の知っている事例と比べて、ここが違うとか、本質的には同じとかって誰か解説してくれないかしら...
成功事例を読むと理解できた感じがするのですが、じゃぁ、それを自分の組織でやろうとしたらどうなる?といったイメージができません。
ということで、まだまだ勉強が足りないなぁと思いました! -
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縦割型・階層型組織の弊害として官僚主義や意思決定の硬直化に陥った企業が、外部環境の変化に柔軟に対応するための変革プロジェクトを成功させるにはどうすればよいのかを、主に組織論の観点から解説した一冊。
企業は創業時のフラットな「ネットワーク型」組織から、ビジネスの拡大に伴い、効率的なマネジメントを行うために「階層型」組織へ移行することが多いが、著者は変化の少ない定常的業務を行う階層型組織を基本としつつ、変革プロジェクトのような緊急性・重要性の高い業務を行う組織としてネットワーク型組織も並存させる「デュアル・システム」を提唱し、熱意ある社員が様々な部門から自主的に参画し、役職に関係なくリーダーシップを発揮することで、変革に成功した企業の事例を紹介している。
全く異なる価値観をもった組織が共存するためには、そもそも社員が変化や機会に対して「オープンマインド」であることと「真の危機感」を持つことが不可欠であるというが、逆にそれらがあれば、デュアル・システムではなくても成功するのでは、という気もしなくはない。とはいえ、所謂"大企業病"を克服し、"変革マインド"を根付かせる実践的手法として、有効な手段であることは間違いないと思う。 -
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MIT教授らによる、IT革命がもたらした"影"の部分、すなわち雇用喪失や格差拡大といった、社会に対する「負の影響」のマクロ経済的な分析と、それらの課題に対する提言をまとめた一冊。
過去の産業革命では、蒸気機関等の革命的技術が衰退産業を上回る規模の雇用を創出したため、失業が社会問題化することはなかったが、「ムーアの法則」に象徴される今日の技術革新スピードは速すぎて人や組織が着いていけず、「雇用喪失>雇用創出」の状態に陥っており、格差を助長する要因にもなっているという。
この状況を打開するには「技術を味方につける」ための組織革新や人的投資が不可欠であるとして、「新たな組み合わせによるイノベーション」を、足し算ではなく"かけ算"で行うことができる組織・人材開発の必要性を主張する後半は「フリー」以降の文脈にも通じており、「ITによって仕事が奪われる」という危機感を逆に原動力にして、前向きに未来を切り開こうという"楽観論"は納得感が高い。 -
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本書は分析やと統計の学術書でもなければ、技術書でもありません。「分析力を組織・経営に活かし、その組織・経営が競争優位でありつづけるにはどうあるべきなのか」について論じ・事例を示し・そのためのプロセスを包括的にまとめた、おそらくは世界で最初の一冊です。
第一部では「分析力を武器とする企業の特徴」と題して、分析力を武器とするとはどういうことなのか・具体的に分析力を武器とする企業とはどんな企業でどんなことをしているのか・本当に業績(経営)に結びついているのかなどについて、まとめられています。
第二部では「分析力を組織力にする」と題して、分析力を組織として武器にするためのプロセスをモデル化し、それぞれのステージでやるべきことや、陥りやすい問題・課題について実例を交えまとめられています。
2008年の初版発行から7年。今も版を重ねていることが、なによりも雄弁に本書の質を物語っていると言えます。
私が本書を読んで取り組んでみたいと特に感じたのは、無形資産、特に人的資産への分析力の適用です。本書に出逢う機会を頂いたことで、一つのきっかけをいただきました。問題はこれを読んだ私が、自分に・自分が関わる組織にこれを活用・適用でるのか。それは自分次第。とても興味深い一冊でした。
【トーマス・H・ダベンポート/ジェーン・G・ハリス著
「分析力を武器とする企業 強さを支える新しい戦略の科学」ハラーズ・エンターテインメント 会長、社長兼CEO
ゲイリー・ラブマン】
誰のアイデアか、誰の意見かにはこだわらず、その中身だけを吟味し、事実の裏づけがあるかを確かめなければならないし、そうした姿勢を組織に浸透させなければならない。
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一定の規則性が存在しない状況では、直感は信用できない
直感の妥当性は下記条件で満たされる
・十分に予見可能な規則性を備えた環境であること
・長期間にわたる訓練を通じてそうした規則性を学ぶ機会があること
計画の錯誤を減らすには
「多くの人は過去の分布に関する情報を軽視または無視しがちであり、この傾向がおそらく予測エラーの主因だと考えられる。したがって計画立案者は、入手可能なすべての分布情報が十分に活用できるように、予測問題の枠組みを整える努力をしなければならない」
死亡前死因分析は自信過剰に対して効果的
損失回避
損失は利得より強く感じられる
損失回避率はおおむね1.5〜2.5
悪は善より強し
安定した関係を維持するためには、楽しい会話と楽しくない会話の比率を少なくとも5対1にしなければならない
プロスペクト理論
四分割パターン
利得|損失
95%の確率で1万ドル貰える|95%の確率で1万ドル失う
高い確率 万一の落胆を恐れる |なんとか損を防ぎたい
確実性の効果 リスク回避 |リスク追求
不利な調停案も受け入れる|有利な調停案も却下する
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5%の確率で1万ドル貰える|5%の確率で1万ドル失う
低い確率 大きな利得を夢見る |大きな損を恐れる
確実性の効果 リスク追求 |リスク回避
有利な調停案も却下する|不利な調停案も受け入れる
左上欄はベルヌーイが論じた領域:リスク回避的
左下欄は可能性の効果が働く。宝くじが人気なのはこのため
右下欄は保険をかける状況
右上欄が驚きの領域で多くの不運な状況である、起死回生の一手を打とうとして大失敗をおかす
・狭いフレーミング:決定1と2は二つの単純な問題と考え、別々に処理する
・広いフレーミング:四つの選択肢のある一つの問題と考え、1回の決定で処理する
複数の決定を一つにまとめて扱える場合は、いつでもそうするほうがよい
小さく勝って小さく負けるが損失回避を防ぐ呪文
個人投資家は四半期に一度見直せば十分
広いフレーミングで考えるように努める
後悔をあまり重大視すべきではない、たとえ後悔するとしても、いま考えるほどひどくはないものだ
並列処理は単独評価より合理的な判断が下される
持続時間の無視とピーク・エンドmp法則
記憶する自己は経験する自己よりも独裁者
ハッピーになるいちばん簡単な方法は、時間の使い方を自分でコントロールすることだ。自分の好きなことをする時間を増やせばいい
幸福を感じる気質というものは身長や知能のように遺伝する
全体のテーマとしては認知的錯覚
システム1とシステム2
エコンとヒューマン
経験する自己と記憶する自己
資本主義は認知的錯覚の上に成り立っている