村井章子のレビュー一覧
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システム1とシステム2。速い思考と遅い思考。意思決定を行う際にわれわれは直感による速い思考を行っている。直感の出番がない場合には論理で考える。これが遅い思考である。直感は自動的に連想を働かして結論をだす。それは論理的思考でもないし統計的思考でもない。ただうまくストーリーができていればよい。われわれはそれを自信をもって正しいと思い込む。ちゃんと論理的思考の出番があれば間違わなかったはずの結論も直感を信じたために間違えた結論を下す。また思考には色々なバイアスがあり、それによって間違った結論を出してしまう。このようにわれわれの意思決定の仕組みを解き明かした心理学者にしてノーベル経済学賞受賞者の一般読者向けの著作。
プロスペクト理論:
参照点と損失回避
二項対立:
システム1とシステム2。エコン(合理的経済人)とヒューマン。経験する自己と記憶する自己。 -
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1929年の米国での株式市場の大暴落の前後とその後の経済情勢を述べている。現在はそのころとが違って政府の規制やいろいろな仕組みができてはいるが、第九章のガルブレイスの以下の言葉が気にかかる。「だがかつてもそうだったように現在も、金融上の判断と政治の配慮は逆方向に働く。長期的にみれば経済を救う措置であっても、現在の安寧と秩序を乱すものであれば、けっして高くは評価されない。そこで、たとえ将来に禍根を残すとしてもいまは何もしないでおこう、ということになる。こうした姿勢は、共産主義を蝕んだのと同じように資本主義も脅かす。このような考え方に陥るからこそ、事態が悪化していると知りながら、人はあの言葉を口にするのだ−状況は基本的に健全である、と。」
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国富論に並ぶアダム・スミスの主著。
「道徳感情論」と「国富論」前提となる人間観が、共感的か、エゴイスティックかということで矛盾しているみたいに言われることもあるが、「道徳感情論」の初版は、「国富論」出版前だが、「道徳感情論」の第6版は、「国富論」の出版後に出ていることから、アダム・スミスとして、この2冊には、一貫した人間観があると考えて良いはず。
実際に読んでみると、人間の共感性を基本としているが、同時にエゴイスティックな面やしょうもないまでにセコイところ、とほほな面もしっかり観察している。
そして、そういうしょうもなさも含めて、自然、神の大きな意思(見えざる手)のもとでは、全体としてOKなんだとおおらかに包み込む感じ。
個人的には昔の哲学は、言葉の定義から初めて、そこから演繹的に展開していくイメージがあるが、ここはイギリス経験論の世界。日常の観察を積み上げながら、論を一つ一つ進めていく感じですね。(なので、この議論って、MECEなんだろうか?とか思ってしまう)
親しみやすい卑近な例も多いが、時代的になんとなくピンとこないところも。
色々な日常的なお話の積み上げだし、18世紀のイギリスと21世紀の日本の文脈の調整をする必要があるので、なかなか全体が見晴らせない。
とりあえず全体を通読したが、まだまだ、その偉大さは見えてこない感じ。
でも、スミスさんって、いい人だったんだろうな〜、みたいな人柄は伝わってくるな〜。
次は、「国富論」に進め、もう一度、「道徳感情論」に戻ることとする。 -
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無味乾燥で数式とCeteris paribus(他の条件が一定なら...)のオンパレードとなった経済学を、倫理と哲学の視点からRe-buildを諮るユニークな一冊である。
アダム・スミスの代表的著書が『国富論』と並び『道徳哲学論』であることを考えれば当然なのだが経済活動と道徳は呉越同舟である。しかし皮肉なことにアダム・スミスを契機に無機質化した経済学に再度有機的要素の復権を試みる。ギルガメッシュ叙事詩や新旧約聖書、ギリシャ哲学のなかに経済学的要素を見出し、特にマンテヴィルの「蜂の寓話」の非効率非対称だからこそ経済は発展する例えは示唆に富む。
「不足感が不足を生む」「数学はエレガントに創っているからエレガントに感じて当然」など、セドラチェク氏の逆説的論法が小気味良くて面白い。途中までは知的で大局的な内容であったが、最後で「人間的な地に足の着いた経済活動を」的なこじんまりした結論を語っているのでそこは不要だったかも。
倫理に根差した自然発生的な人間の経済活動を、「神の見えざる手」を起点に「アニマル・スピリッツ」から第三者の象牙の塔が何やら得体の知れないものとして扱い始め、ゲーム理論など一周回って余計難解な解釈に行き着いてしまっている。今一度基本に立ち返って経済を考える時期にきたのでは、という警鐘を鳴らす本であった。 -
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あの陶器で有名なウェッジウッドは、最終監査役は自分であり、リアルタイムで監査を行う「毎週月曜日に帳簿を見られるように、これを永久運動のように継続して欲しい」と私設会計士に依頼した話。経営者にとって会計とこれを永久運動のようにする事が期待されてるって、自分も外資系企業の営業一員として動いてると今も同じかと…
この本は、なんで会計なんてやらないと行けないんだ?と素朴に疑問に思っている人に、歴史的な事象をストーリー仕立てで必要性を感じることが出来るんじゃないかな。そして、ウェッジウッドの言葉にある、リアルタイムで監査ができ、「永久運動」と言うという言葉に愕然としたりして…
本書では、帳簿が発生したのは、古代メソポタミア、ギリシャ、中国などなどと紹介され、政治と帳簿、商人と帳簿、公認会計士の誕生、リーマンショックと近代の帳簿へとストーリーが続く。本書の中で、政治に利用したのは、ローマ帝国初代皇帝のアウグストゥスとの記載があり、自分が出資した話として政治アピールに使ったとあるが、塩野七生のローマ人の物語だと、カエサルの借金の多きさが語られていて、こっちも借金王として帳簿に残ってたはずだが、エピソード的にあまり広がらない?
最近、コンサルティングファームの方たちと仕事が増えてきているんだが、企業としては、会計系コンサルティングなんだが、完全にITの世界の話。で、その語源が、「会計改革の道筋を作ったフランス革命」1780年代、ネッケルの章にあって、妙に納得してしまった。「フランス語で、会計や決算、報告を意味するcompte、古くはacomptであり、こらが英語に入ってきたとされる。accountantは、accomptantだった。大元のラテン語は、computareで、これはcomputerの語源。」
この本は、挿絵も素晴らしい。カネに翻弄される人々の風刺。
解説の山田真哉氏の「ブロックチェーンを帳簿が乗っかっている貨幣」という言葉は、「帳簿の歴史」と将来を考えるうえで、なかなか面白いポイントだなと。
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著者のジェイコブ・ソール(1968年~)は、歴史学と会計学を専門とする南カリフォルニア大学教授。
本書は、2015年に単行本で邦訳が発刊され、2018年に文庫化。
本書は、「帳簿(会計)」という斬新的な視点を軸に歴史の裏側を明らかにしたものであるが、一般に経済に大きな影響を与えると考えられている「帳簿(会計)」が、実は政治や文化に影響を与え、更には歴史までも動かしてきたことを示す、興味深い内容となっている。
大まかな内容は以下の通りである。
◆会計の初歩的な技術は古代メソポタミア、ギリシャなどに見られ、ローマ帝国初代皇帝アウグストゥスは、会計の数値を自らが建造した記念碑にも刻み、透明性の高い精密な会計を自身の政治的正当性と功績に結び付けた。
◆12世紀、フィレンツェ、ジェノヴァ、ヴェネツィアなどの商業都市国家が並立し、当時欧州で最も豊かだった北イタリアにおいて、“複式簿記”が発明された。その要因は、それまでとは異なるアラビア数字が使われていたこと、貿易が発展して多くの資本が必要となり共同出資方式が考案されたため、帳簿が単に所有しているものの記録ではなく、出資者への利益配分を計算するための記録となったことというのが定説である。
◆14世紀にトスカーナ商人のダティーニが、15世紀にフィレンツェのメディチ家が、会計技術を支えに富豪となったが、ルネサンス期の思想に強い影響を与えた、人間の栄光は芸術・文化・政治的業績に基づくのであり、現実的・現世的な商業は重視しないとする“新プラトン主義”により、会計と責任の文化は根付かなかった。
◆16世紀以降、“太陽の沈まぬ帝国”スペイン、欧州最大の王国・仏ブルボン朝などの君主国で会計が注目されたこともあったが、複式簿記による国家の会計システムを安定的に確立した君主はいなかった。それは、君主にとって会計の透明性は危険ですらあったためである。例外は、共和制を維持し続けた黄金時代のオランダ(とスイス)だけであった。事実、ルイ16世期の国家財政が民衆に開示されたことが、フランス革命の要因のひとつとも言われる。
◆18~19世紀、アメリカの建国の父たちは、会計の力を信じ、それを駆使した。鉄道の登場による会計の複雑化は公認会計士を生み、更には、多くの専門家を抱えた大手会計事務所が作られることになった。しかし、大手会計事務所が、独立性を必要とする“監査”と企業の立場に立つ“コンサルティング”の双方を手がけるという構造的矛盾を起こすに至り、エンロン事件やリーマンショックが発生した。
そして最後に、「本書がたどってきた数々の例から何か学べることがあるとすれば、会計が文化の中に組み込まれていた社会は繁栄する、ということである。・・・これらの社会では、会計が教育に取り入れられ、宗教や倫理思想に根付き、芸術や哲学や政治思想にも反映されていた。」、「いつか必ず来る清算の日を恐れずに迎えるためには、こうした文化的な高い意識と意志こそ取り戻すべきである。」と結んでいる。
数百年に亘る会計の歴史を辿りつつ、現代の複雑化した金融システムを維持するために、我々にはどのような心構えが求められるのかを示唆する、奥深い一冊と思う。
(2018年5月了) -
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これはアメリカ人がアメリカ人に向けて書いた物である。日本人の感覚からすると少し違和感があるが、普遍的な真実を言い当てていると思うところもある。
曰く、アメリカのリーダーシップ論では以下の5箇条が良いリーダーの条件とされているらしい。
①謙虚さ、②自分らしさ、③誠実、④信頼、⑤思いやり。
この内①謙虚、③誠実な人はリーダーになる前の競争でふるい落とされるので、そもそもリーダーには備わっていない資質であり、またリーダーも一人の利己的な人間に過ぎず、闇雲に④信頼したり、⑤思いやりを期待したりするのは間違っていると言う。もっともである。ただ②自分らしさについて言えば、日本ではそれほど重視されない資質であり、個人の感情や都合を優先させない冷静で犠牲的な行動が評価される日本ではピンとこない。
でも、出来ないからと言ってそれを良しとするのはいかがなものか?自分が入社した25年以上前には、会社にも心から尊敬できるリーダーがいたのだ。いつの頃からか、狡猾かつ利己的で、自己主張が上手なだけのつまらないナルシストばかりが上に昇っていき、この本で書かれている通りの展開になっている。正直で部下思いで奥ゆかしい人は決して出世しないどころか、ある時期が来るとお払い箱となる有り様である。
著者も日本におけるリーダー像の変遷を研究すれば面白い成果が得られるのではないか? なんならウチの会社でも調べてみては? -
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テクノロジーは雇用を破壊する。
コンピューターは雇用に影響を与えず、近年低迷しているのではないか、と言われていたが、むしろ逆だ。発展が早すぎて人類が進化に追いつけていない。
コンピューターの発展は雇用体系を大きく変え、失業を起こしている。
労働力を節約する手段が、その労働力の新たな活用先を見つけるペースを上回ることで、失業率が高くなっている。
技術の発展の恩恵は存在がするが、誰もが技術の恩恵にあずかれるという保証はどこにもない。むしろ大半の人が恩恵を得られるかどうかという法則すら存在しない。
現にアメリカの平均賃金に変化はなくとも、中央値は下がっている。テクノロジーの発展により格差が広がり、富めるものは富み、貧しきものはより貧しくなる。
富めるものと貧しきものの差は何かが言及されている。
・スキルの高い労働者 ↔︎ スキルの低い労働者
これからの時代を生きぬくにはSTEAM ( Science , Technology , Engineering, Art , Mathematics )らしい。
仕事を奪われると嘆く人は、コンピューターにもできる仕事しかしていない。
・スーパースター ↔︎ 一般人
コンピューターの発展により誰でも世界に発信できることや、様々なもののコピー可能なことが大きな影響を与えている。
現在 ( 2007) の アメリカの0.01%の人間が、アメリカの6%の資産を持っている。
・投資家 ↔︎ 労働者
労働者は機械に変わるが、投資家は変わらない。投資家は労働者の賃金ではなく機械に投資するようになる。
これから我々はどうするべきか、筆者は提案している
・教育
1.とりあえず先生の報酬を増やし、よりよい人材にとって訴求力の高いものとす2.る。
2.教師の終身在職権を剥奪し、裁量制とする。
3.学生の指導と、試験・資格認定を切り離す。学校は学生の募集や評判や社会的地位向上を考えるのでなく、教育を重視するべき。
4.義務教育の時間を増やす。(そして経営学やプログラミングなどを学ぶ)
5.スキルを持つ移民の積極的な受け入れ行う。
・企業家精神
6.全ての高等機関で企業と経営の基礎を教え、起業家層を育成する
7.起業家ビザを作り、企業家精神の発展に努める
8.起業の手間を簡略化。意見交換の場も揃える。
投資
9.通信、輸送インフラの強化に投資する(アメリカはインフラが弱いらしい)
10.基礎研究や、政府の重要な研究機関への予算を増やし、無形資産や組織改革を新たな研究対象に設置する。
法規制
11.労働市場の流動性を保つ。解雇が処罰されるとなれば、企業にとっては雇うことがリスクになる。
12.技術の導入より人間の雇用の方が相対的な魅力になるような状況を作り出す(これは雇用の観点なので、僕としては懐疑的である)
13.福利厚生と企業を切り離し、市場の流動性を高める。医療保険やその他の福利厚生が雇用に義務付けられていると、転職や起業がしづらくなる。企業を考えていても、医療保険がなくなるかと思うと踏み切れないように。
14.新しいネットワークの規制はゆっくり行う。実験段階の、とりわけ新しいプラットフォーム作りに関しては、最大限試行錯誤や実験ができるようにするべき。
16.金融サービスに対して供給されている補助金を削減する。「金融機関が大きすぎて潰せない」と政府に存続を保障されることで、金融サービスに多くの優秀な人材とテクノロジーが吸われてしまう。
17.特許制度を改革し、審査官を増やす。
18.著作権の保護期間は伸ばすべきではない。新しいアイディアは既存のアイディアの掛け合わせで生まれるから。
日本はアメリカを目指してすらいないが
日本より教育が進んでるとされているアメリカでも、教育に関して問われているのだ。今こそ改革の時、ということなのだろう。 -
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著者は、文中でパワーポリティクス(権力闘争)の中で生き延びるノウハウとして読んでくれと言ってます。
”あなたの最大の敵は自分自身である”
確かにそう思います。
社会心理学でも学びましたが、人は自分の事が一番好きなのでしょう。
そのために、無意識ながら自分の事を誇大に伝えたり、自分自身に言い訳をする理由を捜したり、意図的に作ってしまう。(セルフ・ハンディキャッピング)
思えば、自分もその様な事をしている節があります。
人間である以上は、これらをやめることなんてできない。
ただ、このような知識を知った上で、様々な場面で思考&行動する時のヒントになるんだと信じたいものです。