「短編画廊 絵から生まれた17の物語 (ハーパーコリンズ・フィクション)」
新ジャンルに遭遇。
エドワード・ホッパー(1882-1967)。 作家ローレンス・ブロックは、ホッパーの作品は「絵の中に物語があること、その物語は語られるのを待っていること」を強く示唆していると語り、ホッパーの絵から物語を紡ぐこの短編集を考えついた。
しかし、良く思いついたなぁ。それが率直な感想。ブロックの呼びかけに集まった面々の中にスティーヴン・キングが居るからと言う理由だけで読んだ私は、美術に全く詳しくない為、ホッパーが如何に偉大な画家だったなのか全く分からない。
各短編を読んでみて、よくここまで膨らませてストーリーを書けるなぁと思った。作家は0から話を考えることもあるから、ホッパーの絵が題材になる今回は多少は楽なのかも知れない。しかし、題材にするからには、ホッパーの絵の意図を汲み取ること、汲み取るまでにはいかなくとも、絵を見て感じなければ、きっと小説を書くことは出来ないし、きっと当て書きよりも難易度が高そうだ。更に、もしかしたら小説を読んだ熱狂的なホッパーファンが、やんや言ってくるかもしれないのだ。なんと面倒なことだろうか。
とは言え、「ガーリー・ショウ」を読むときっと熱狂的なホッパーファンも納得してくれるのではないか。序盤からすると暗めなストーリーと思いきや、最後のオチ。去り際には女性のキレを感じる。おぉ、ポーリーンよ!と思っちゃう。
「キャロラインの話」は、きっと良い話なんだろう、いや、違うのか?と思わせる。あれ?さくっとバレて意外な方向にいくと思いきや、もしかしたら違うかも?と思ってしまった。間違いなく良い終わりに行くはずなのになんでだろう。インパクト弱めだが、気になる短編。
「アダムズ牧師とクジラ」はユーモラスな締め。「音楽室」はキングらしいダークなストーリー。音楽は野蛮な野獣を抑えるって言う台詞がまあ何ともで、最後はローレンス・ブロックによる 「オートマットの秋」 。
どれもホッパーの絵からインスピレーションを受けて描かれていたとは思えない。ホッパーを知る人ならば、きっと楽しめるのだろう。知らない人でも、純粋な短編として楽しめる。