マイクル・コナリーのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ボッシュ・シリーズも15作目だそう。
当代最高のハードボイルドと言われる作品、充実した内容です。
ロス市警の未解決犯罪班で捜査を続けることになったハリー・ボッシュ。
根っからの刑事だが、定年が延長になってよかったという年齢。
引き締まった外見らしく、いまだにモテる。
今回は、15歳になる娘のマディと同居、という新しい要素も加わっています。
DNAの判定が進歩したため、再調査であきらかになった証拠による容疑者は、当時8歳の少年という。
ありえない事実は、なぜ起きたのか?
一方、高級ホテルから市議の息子が転落死。
事故か、自殺か、他殺か?
この市議というのが元ロス市警にいたアーヴィン・アーヴィングで、今では市警の天敵ともいうべき存在。
因縁のあるボッシュに、なぜか捜査を依頼してきたが‥?
いつものボッシュが帰ってきた?
期待させる展開に☆ -
Posted by ブクログ
ターニングポイントとなるハリー・ボッシュシリーズ第4弾。主人公はハリウッド署殺人課に所属する一刑事に過ぎないが、コナリーは群れること嫌う「一匹狼」的な存在として描いてきた。
本作は、第1作から伏線としてあったボッシュの母親の死の真相を追い求める物語で、これまで以上の私闘を繰り広げている。上司への暴力行為で休職処分となったことを機に、30年以上前の未解決事件を再捜査するのだが、埋もれた過去から浮かび上がってくる事実は、当然のこと痛みを伴う。娼婦であるがために引き離された息子と再び暮らすことを夢見ていた母親の思いを知るほどに、ボッシュは殺人者への憎しみを深める。
事件の性質上、全編がボッシュの単独捜査となり、より一層孤立感は深まっている。途上でボッシュの闇とも共鳴する女との情愛も挿入しているが、ロマンスの色合いは随分とくすんでいる。終盤において、愛する者の死さえも無常なる社会では泡沫にしか過ぎないことを、悔恨とともにあらためて悟るボッシュの姿が哀しい。
本筋とは直接関係ないが、ボッシュが野性のコヨーテと出会い、荒廃した自らの心象をダブらせるシーンは、静謐ながらも熱い心根を持つ孤独な男の心情を見事に表現している。恐らく生息地域による設定であろうが、強靱で孤高の力強さを想起させる狼ではなく、共通する部分はありながらも、より小型で寂寥感のあるコヨーテをモチーフにしたところに、コナリーのこだわりを感じる。
生存環境を奪われていくコヨーテ。闇に逃れつつも、蝕まれた世界を凝視する眼光。生き続けるための原動力となる餓えと渇き。そのイメージは、卑しい街で不条理な「死」と向き合い続けるしかない一人の男へと繋がっていくのである。
現代ハードボイルドの新たな地平を開くパイオニアとしてのマイクル・コナリーの存在意義は大きい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ定年延長選択制度を適応され、ロス市警未解決事件班で現場に居続けるボッシュ。
未解決事件のファイルの中から、DNA再調査で浮上した容疑者は当時8歳の少年だった。高級ホテルの転落事件と並行して捜査を進めていくが、事態は思った以上にタフな展開を見せる。2つの難事件の深まる謎! 許されざる者をとことん追い詰めていく緊迫のサスペンス!
転落した市議の息子は殺害されたのか、自殺だったのか。未解決強姦殺害事件の背後に潜む深い闇とシリアルキラーの影。
”誰もが価値がある、さもなければ誰も価値がない“という信条のもと非情な捜査を進めるボッシュ。
陰惨な様相を呈しはじめた事件には戦慄の結末が待っていた!
これからは、身内が最大の敵という落ち。 -
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ハラーシリーズにも登場したりしてたからそんなにご無沙汰とは思わなかったけど、ボッシュシリーズとしては「ナインドラゴンズ」の次になるわけだ。「ナイン~」は、第一作からずっと愛読している読者には衝撃の展開で、また、ハリウッド映画的に派手なアクションがあったりして、それまでの作品と比べてぐっとエンタメ色が濃厚であった。私は「暗く聖なる夜」なんかの暗いタッチが好きなんだけど、さあ新作はどう来るか?
読後の印象としては、今回は比較的地味な「警察小説」に戻ったような感じ。このシリーズは現実の時間と同時に進行していて、ボッシュは六十歳になっている。守るべき娘もいて、以前とは雰囲気が変わっているのは当然かもしれない。ずいぶん長く読んでるなあとなんだかしみじみしてしまう。
キズミン・ライダーの立場が変わって、それに伴いボッシュとの関係も以前とは違ってしまう。これが切ない。警察組織上層部や政治家の間で立ち回り、だましだまされ、権謀術数もやむを得ないこととし、結果として「悪」の力をそぐことを考えるライダー。ボッシュは「自分自身が、自分の憎む人間と同じものになる」と、そういうやり方はとらない。ライダーにはライダーの、ボッシュにはボッシュの正義がある。二人の葛藤の描き方が見事だと思った。
たくさんの人を非道に殺害した犯人が逮捕される。その罪は明らかだが、裁判の行方は不透明で、受けるべき報いから逃れるかもしれない。その犯人に報復しようとする行為を察知したとき、どう行動するべきなのか。ボッシュは決断し、いや、本能的に行動し、そのことについて深く苦悩する。ここに一番ボッシュらしさを感じた。
一つケチをつけると、ボッシュの「ラブアフェア」ってないといかんものですか。そりゃあコナリーなので、安易な「お色気担当」という女性の描き方はしてないけど、なんだか映像化用のサービスみたいで、どうもひっかかるなあ。 -
Posted by ブクログ
ボッシュ・シリーズでは『ナイン・ドラゴンズ』に続く作品。香港を舞台にしたエンタメ重視の前作とは違い、丁寧に捜査過程を追っていく本来の警察小説に回帰したとも言える内容。
原題の『TheDrop』には複数の意味が込められている。ボッシュが捜査するふたつの事件──ホテルからの転落(drop)事件と、血痕(drop)からDNAが採取された未解決事件。そして刑事としてのキャリアを左右する定年延長制度(drop)のことでもある。宿敵が事件に絡み、ボッシュは否応なくハイ・ジンゴ(政治的意味合いのある事件)に巻き込まれていく。その中で、捜査手続きをキープし、落とし穴に嵌らぬよう行動するボッシュの決断が本作品の大きな見所。この辺りの円熟度はベテラン刑事としてのキャラクターの成せる業であって、謎解き要素は薄いけれども、それを補って余りあるボッシュの静かなる熱情は吸引力抜群だった。
ふたつの事件はバランスもよく、それぞれがボッシュに教訓を与えるような形で収束する。ひとつは劇的な展開を見せるので、途中で感極まってしまった。ハイ・ジンゴに翻弄され、使命感に燃えて立ち上がるも、結局は苦悩するボッシュに戻るのだなと実感。でもこの実感こそがシリーズ・ファンとしての証だったりするのよね。
そんなボッシュも還暦(!)。前作では父親としてのボッシュに違和感ありだったが、今回はわりとすんなり受け入れられた。警察官を志す娘の師となる時もあれば、弱さを見せる場面もある。長年の友人関係は変化を見せ始め、定年の時期が設定される。刑事としてのキャリアの終焉に向けて、徐々に動き出したように見えなくもないけど、ブレないボッシュを再確認できて大満足の読書時間だった。初期作品と比肩するシリーズでも屈指の作品。 -
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純然たるハリー・ボッシュ・シリーズの上巻。若い頃の血気盛んなボッシュが定年を目前に控え、警察組織に従順なボッシュに成り下がってしまったのは淋しい限り。或いは、従順なボッシュは仮の姿なのか…
ロス市警未解決事件班のボッシュは相棒のチューと四半世紀前に起きた未解決殺人事件の調査と並行し、有名ホテルで起きた要人転落死事件の調査にあたる。少しずつ解れていく、2つの事件の謎。一体、どちらの事件がメインで進むのか。或いは2つの事件はどこかで交錯するのだろうか。
帯には『ボッシュ・シリーズ最高峰!』とあるが、今のところは驚愕の展開も、ボッシュに迫る命の危機も無く、無難な展開。 -
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ネタバレ第1作目のナイトホークスから順に読み返してきたからこそ、存分に本作を堪能できたと感じた。
下巻に入ってからは終始驚かされっぱなしで、緊張感みなぎる圧巻の読み応えで、あまりのおもしろさに圧倒され、一気に読み終えてしまった。
ボッシュがパウンズのバッチをこっそり持ち出したり、パウンズの名前を騙って情報を入手したり、相変わらずいろいろ無茶なことをやってくれるので、ハラハラさせられたが、期せずして、ゴードン・ミテルのパーティーに潜り込むこととなったボッシュが、その場しのぎでした記帳が、恐ろしい悲劇を引き起こす種となってしまったのには衝撃を受けた。
蒔いた種しか生えない。
この予期せぬ悲劇の種を蒔いたのは、間違いなくボッシュであり、ボッシュはこの原罪と今後どのように向き合っていくのだろう・・・
母の仇と匂わしていたコンクリンの独白に驚かされ、ミテルとボッシュの対決が壮絶で驚かされ、ミテルのボディーガード、ジョナサン・ヴォーンの正体に驚かされ、凶器のベルトに付いていた証拠の指紋とミテルの指紋が一致しないことに驚かされ、意外なところから指紋の持ち主が割り出されたのにも驚かされ・・・
ハリー・ボッシュシリーズ一期のクライマックス感を堪能できた。 -
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ネタバレますます盛り上がるハリー・ボッシュシリーズ第4作目。
第1作目からふれられてきた母の事件、死の謎を解く物語がいよいよ始まる。
のだが、ボッシュはまたもや何かまずいことをやらかしたらしい!
ボッシュはストレスによる強制休職に処されており、復職するためにカウンセリングを受けているのだ!
何をしでかしたのかすぐに明かされないし、ボッシュの自宅はLAを襲った大地震で半壊の被害を受けて、立ち入り禁止の赤札がつけらているし、第2作の『ブラック・アイス』からの恋人シルヴィアはボッシュの元を去ってしまっているしで、悲壮感漂う散々な出だしで、ボッシュに一体何があったのか、のっけからグイグイ話に引き込まれる。
本篇の行く末も読み応え満載だが、違法捜査を押し進め、ヤバイこともばんばんやっちゃうボッシュは無事、組織に戻れるのか?
本書のタイトル『ラストコヨーテ』の意味するところは?
ボッシュの家の下の谷に住んでいてボッシュがよく見かけていた一匹の青いコヨーテ。
P148
「コヨーテを見かけるといつも、それがそこに残っている最後の一匹かもしれないという感じがするんだ。つまり、最後のコヨーテだと。そして、もしほんとうにその通りだったり、二度とその姿を見なかったりしたら、おれはさぞかし動揺するような気がしているんだ。」
P149
「あなたがそのコヨーテと同一のものであるのは明らかだと思う。おそらく、あなたのような警官はあまり残っておらず、あなたは自分の存在あるいは任務に同様の懸念を抱いているんでしょう」 -
Posted by ブクログ
ネタバレハリー・ボッシュシリーズの中で何度も引用されるドイツの哲学者フリードリッヒ・ニーチェの『ツァラトゥストラはかく語りき』からの一節が原告側弁護士ハニー・チャンドラーによって、初めて引用される。
「怪物と戦うものはだれであれ、その過程において、自分が怪物とならぬよう気をつけねばならぬ。そして、深淵を覗き込むとき、その深淵も逆に見つめ返しているのだ・・・」
つまり、ボッシュが「ドールメイカー」事件で、ノーマン・チャーチを射殺したのは、深淵を覗くあまり怪物の側に立ってしまったからではないか、という指摘で、ボッシュの出生の事情や心に抱えている精神の闇(ブラック・ハート)が追求されていく。
ボッシュが背負っているトラウマ、自己の闇に立ち向かうため警察組織からはみ出した孤独な一匹狼となり、事件の渦中に飛び込み、自ら捜査する過程でその深淵と対峙していく姿が斬新なハードボイルドを感じさせる。
猟奇的な殺人事件を科学的、法的な見地から追求し捜査していく迫力、
やり手女性弁護士との臨場感あふれる公判場面、
迫り来る見えない敵との闘い!
それらがどれもスリリングで、息もつかせぬままクライマックスからエンディングへと導かれる。