出口治明のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
歴史に関する著書を多数出している著者による、読者からの質問に答える形で進んでいく、歴史をどのように活かしていくかの指南書です。著者独自の視点は、他の著書を見ても分かる通り、明快で筋が通っており、おもしろく読み進められます。
今までの歴史的な出来事や人物を取り上げながら、これをどのように現代に活かしていけばいいかという内容ですので、教科書で学ぶ歴史とは一味も二味も違う内容となっています。
著者独自の固有名詞の使い方となぜかセリフの引用が関西弁になっているのが気になりますが、一通りの歴史を学んだ後、このような良書を見て、歴史の活かし方、おもしろさを感じたいと思います。
▼歴史を学ぶことの意義の一つは、このように予期せぬ出来事に遭遇した時、適応するため参考にする、即ち「歴史を活かす」ことにつきるだろうと僕は考えています。歴史を多く知れば知るほど、最適解にたどり着くヒントになるのです。
▼引きこもっていては、人々の生活が豊かになるはずはありません。目安の一つとなるのは、平均身長と平均体重です。日本の歴史上、最も平均身長と平均体重の数値が高いのは、現代の私たちです。反対に、最も低いのは江戸時代の末期でした。男性でおよそ身長155センチ、体重50キログラム。外国人の目に「小人の国」と映っても不思議ではありません。戦国時代などのほうが、はるかに体格はよかったのです。それほど貧弱な体格になったのは、鎖国で経済が停滞したことに加え、キリスト教を禁じる観点から人々を宗門改めで土地に縛りつけた、つまり人々の異動を禁じたことが主な原因でした。
▼歴史上の出来事を振り返るとき、その時点でネーションステートが成立していたかどうかは重要なポイントの一つです。そのBefore/Afterで、人々の考え方がまるで異なるからです。
▼激しい内戦が起こるのは、明確な対立軸があるときです。
▼ローマ帝国も大元ウルス(追記:モンゴル帝国)も、リーダーの失敗で滅びたのではなく、きっかけは地球の気候変動でした。産業革命以前に滅びた大帝国のほとんどは、気候変動に伴う諸部族の移動や病原菌の移動が主な原因となっています。産業革命までは農業が主たる産業でしたから、当たり前といえば当たり前です。人間に失敗があったとすれば、気候変動によって大帝国は亡びるものだということに気づいて対処しなかったことかもしれません。
▼歴史に登場する大帝国や覇権国家には、いくつかの共通点があります。ダイバーシティの尊重、身分にとらわれない実力主義、新しい技術の導入などですね。しかし最大のポイントは、合理的でシンプルなグランドデザインを生み出したか(描けるリーダーがいたか)どうかです。
▼ヨーロッパの封建性社会では、わかりやすくいえば、頂点に王や皇帝がいて、その下に中間層として諸侯などの領主がいて、その下に一般の民衆がいるというピラミッド構造を成しています。だから、ヨーロッパでは皇帝や王がその地位を追われたとしても、一気に人民まで転落はせず、中間層の諸侯や領主に戻ることができたわけです。
▼もちろん中国にも領主層がいて、皇帝の多くはそういった領主層や遊牧民の首領から出ています。しかしヨーロッパとは異なり、中国では封建制が早くに姿を消し、皇帝が飛び抜けて偉いだけであとは比較的フラットな流動性の高い社会を形造りました。この本で何度も登場している始皇帝が生み出したグランドデザインのたまものです。加えて共産党支配下の中国では領主層は存在できません。それによって、皇帝をやめさせられた人が一般市民になって生涯を終えるという、大転落が実現したのです。
▼ヨーロッパの歴史でキーマンを三人挙げるなら、ローマ帝国のグランドデザインを描いた古代ローマのユリウス・カエサル(紀元前100~44)、近代国家の基礎を築き、ルネサンスを準備したローマ皇帝フェデリーコ二世(在位1220~50)、そしてネーションステート(国民国家)を完成させたナポレオンだと思います。
▼リーダーの最も大切な仕事は、将来のビジョンを描くことです。そのビジョンは規則やルールに表れます。とりわけ創業者は何もないところから組織をつくりますから、リーダーとしての資質や才覚が明らかになります。
▼明治時代になって、天皇制をコアにして国民国家を創設する際に、イエ制度とセットにして中国の朱子学の考え方を採り入れた影響が大きいと思います。朱子学は、南宋の儒学者だった朱熹(1130~1200)が唱えたもので、君主権や身分制度を許容する男尊女卑の学問です。これが明治政府の天皇制、家父長制とうまくマッチしました。
▼国内の政治がうまくいかないときの一番簡単な対処法が排外主義だからです。「この不幸な状況はあいつらのせいだ、けしからん」と批判の眼を国外にそらす。これは日本にかぎらず、危機に直面して国をまとめられない愚かな指導者の常套手段です。
▼歴史学者のジョン・ルカーチは、著書『歴史学の将来』のなかで、愛郷心や愛国心は誰にでもあるけれど、それが劣等意識と不義の関係を結んだとき、排外的なナショナリズムが生まれると述べています。戦後日本のアイデンティティの柱であった経済大国(GDPでアメリカに次ぐ世界第二位の大国)の地位を中国に奪われた時から排外主義が生まれてきたように思えてなりません。近代の日本の歴史をみてもわかる通り、排外主義は国を滅ぼします。日本で排外主義が目立つように感じたら、阿部正弘が策定したグランドデザインを思い起こしてみるべきでしょう。
▼リーダーの仕事は、究極的にいえば、人々を幸福にすることです。優れたビジョンは、社会の混乱を治め、人々の暮らしを豊かにします。数百年、数千年も受け継がれるのは、最初の設計図がしっかりしていた証拠です。
リーダーシップといえば、メンバーに号令をかけたり、チームを引っ張ったりといった統率力が第一と勘違いされることがあります。どれだけ統率力があっても、優れたグランドデザインを描けなければ、リーダーとして失格です。ビジョンが描けないリーダーは、場当たり的にゴールを変えてしまいがちで、やがてフォロワーにも愛想を尽かされます。誤ってゴールに人々を導くリーダーは、チームの全員を不幸にします。そんなリーダーは、むしろ統率力がないほうが人々は幸せかもしれません。
▼人間は、ホモ・モビリタスという別名があるように元来、あちこち移動して交流する生き物です。人間の歴史は、大規模な移動や交易によって発展してきたといっても決して過言ではありません。だから日本の江戸時代、中国の明朝のように、外国との交易を禁じたり、移動の自由を奪ったりすると、その社会はどんどん住みにくくなります。場合によっては、人間の身体まで、貧弱になってしまうのです。僕はそういう政策を採った政権を評価しません。
▼長期的に見れば、人類は地球上を自由に移動し、自由な交易によって互いに不足するものを補い合って発展してきました。人類の歴史を知っていれば、本質的な観点から現在の出来事を把えることができるでしょう。それこそが、歴史を活かすことだと僕は考えています。
<目次>
はじめに
第1章 マネー
第2章 失敗
第3章 リーダー
第4章 大逆転
第5章 女性
第6章 宗教
第7章 戦争
第8章 ライフスタイル
第9章 アメリカ
第10章 日本と世界
おわりに -
Posted by ブクログ
分岐路で組織をどちらの方向に引っ張っていくべきかを判断する力「大局観」をテーマに論じた本書。
大局観とは何かを皮切りに、その大局観の重要性・身につけ方、著者・著名人の大局観に関するエピソードを解説。後半では、大局観と関連性が高い、日本で求められるリーダー像を、本書前半で書かれた大局観の手法をもとに現状分析から説明している。
「作業者としての動きしかできていない」という上司FBを受け、全体像を見た仕事の進め方を理解したいということが小職の本書を読むきっかけとしてある。
小手先のテクニックではなく、本質的な内容であったため学びとなった。
・大局観とはボス猿の持つ能力と似ている
群れの猿たちが木を見て餌を集めている中、ボス猿は森を見て、変化や他の土地の森と比較する中で、餌が困窮した際、群れを率いる方向を決定するのだ。
・大局観には、ベースとなる思考軸が大きく影響する
物事に対してどのような現状であり、それがどのようなトレンドに乗るのか、また、その物事に対して私(達)はどのような立場にあるのか。これを直感的に把握する際に、個人の思考軸が起因する。
・直感を磨くのは多様で大量のインプットが必要
タテヨコ思考(歴史と比較)ができるかどうかが、質の高い思考ができるかの基準となるが、そのためには多様なインプットが欠かせない。本・旅・人・食事…コンフォートゾーンに居続けては刺激を受けることがなく、多様性を得ることは難しい。
・リーダーに必要な三つの要素
1.旗(ビジョン)を掲げる力。2.ビジョンに共感する仲間を集める力。3.仲間をゴールまで引っ張っていく力。特に、1と3は大局観と関わりが強い。未来のベクトルを見据え、ブレないビジョンを掲げること、そして、難しく、不確性が高い分岐点で意思決定をできる力が求められる。 -
Posted by ブクログ
読んで元気になるなぁ。わりとよくある教養エンタメを思いつつ読み始めたけれど、教養を深めようということを越えた、もっと教育の必要性、重要さを説く本だった。自分自身に教育を与え続けることはもちろん、現代社会、日本においても幼児教育から、大学教育まで、どのような場面でどのような教育を整えるべきかの具体的な提案がある面白かったねぇ。
また、そこここで見られる対談における相手の方も含めた考え方も面白い。
「仕事でもなんでも、大事なことは、いい結果を残すことです。それなのにいさしぎょく腹を切って死んでしまっら、何も残らない。」
とかね。俺自身を含めて、美談をありがたいと思ってしまう面はあるからなぁ。アハハと笑いつつ、納得した。
出口氏の本は、引き出しが多いね。 -
購入済み
高校の世界史の授業で、先生が宗教はその時代の文化だと言っていたのを思い出した。哲学や宗教を時代背景や人物像に即して解説してあるので、無理なく入ってくる。広く浅くといった感じだが、参考図書も多量に示してくれているのでこれで丁度いい。
ただ、横に時間軸のある図を見開きで2ページつなげて見ることができないことが残念。せっかく良い図があるので、漫画のように見開きで見ることができるようにして欲しい。 -
Posted by ブクログ
著者の本の読み方、付き合い方についてまとめた本。
稀代の読書量を誇る著者からにじみ出るエッセンスが凝縮されている。取材から起こしている本ということもあり、平易な表現で記述されているので、今まで読書の習慣がなかった人にもお勧めできる。
以前の新書版を読んだかどうか覚えていなかったが、必要なところは最新の状況にあわせた記述となっており、これまでの著者の考え方や自分の軸の持ち方の再確認をする意味でも、価値ある時間を著者と共有できたとの考えている。
私は本を読むときは線を引く(付箋を貼る)し、書き込みもするし、ビジネス本も読むし、必要なタイミングで再読もいとわないところが著者の付き合い方とは異なるものの、これは本当に人それぞれだろう。
いくつか気になった本も紹介されていたので、今度また読んでみたい。こうして「読みたい」本が増えていくのだけれど、それははうれしい悲鳴であり、贅沢というものかと思う。 -
購入済み
この時代に生きていること
この時代に生きていることの意味や低迷している時代の生き方の道しるべになる一冊だと思います。もう一度、自分を見つめ直し前向きに進めるきっかけになると思います。
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Posted by ブクログ
著者である出口さんの何がすごいかというと、そのバイタリティである。70歳から全く畑違いのことを始める、と言うと大抵の人は驚くかもしれないが、「定年制など不合理」「置かれた場所で咲けばよい」といった著者の考えからすれば、むしろ何の違和感も無い。
この本を読んで改めて確認できたことが3つあり、いずれも非常に心地よい気づきであった。
1.出口さんをロールモデルとして、働けるうちは年齢にこだわらず元気で働きたい。求められるか限りは社会に価値を提供したい。
2.価値を提供するため、いくつになっても学び続けたい。本を読み続け、いつかはまたAPUのような多様性を尊ぶ大学でいろいろな事柄を人からも講義からも学びたい。
3.いつか出口さんに会い、もしくは講演などでお見かけし、さらに色々と吸収したい。 -
購入済み
若者にもおすすめ
出口氏の複数の著作を人生100年時代の観点でまとめたような本。社会論、お金の話、教育への投資、歴史などが各章にコンパクトにまとまっており非常に読みやすく分かりやすい。もちろん中年以降の読者にも有用だが、若者にこそこうした日本の現代の知の巨人の経験と思考でたどり着いた生き方を人生の早い時期から意識するとさらに大きな効用があると思う。