島田荘司のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
再読。
本格ミステリと社会派の融合を味わう。
消費税のために起こったとされる殺人事件に隠された、ある男の人生を探る社会派的側面から、消えるピエロ、動く死体といった、遥か昔に起こった列車での一連の不可思議事を解き明かす本格ミステリ的側面までを、見事に織り交ぜた長編。
島田荘司ならではの不可解さを帯びた出来事を、吉敷刑事が社会派的テンポで解き明かしていく姿は心地よいBPMで読みやすい。
ただ、解決編のテンポがいわゆる"名探偵によるワンパン"ではない上、社会派の部分でも同情を誘う度合いが時間的障壁等の関係から薄くなるため、読みやすい分強烈なインパクトはなく、一読で満足する印 -
Posted by ブクログ
絞殺死体が全力疾走して電車に飛び込む事件。全員がアリバイのある不可能密室殺人事件。会ったこともない男に、封筒の宛名書きをさせられる事件。犬と暗号とタコ焼き屋と子供の誘拐事件。奇想天外にして巧妙なトリックを秘めた事件に御手洗潔が挑む。
御手洗潔シリーズ第三弾。今回は四つの事件に挑む短編集。四つの事件を通して、変人(?) 御手洗潔とは、どういう人物なのかを掘り下げたエピソードが揃っている。
特にお気に入りの事件は、”数字錠”。いかに御手洗潔という人物が魅力的なのか、が詰まったお話。
「こんな罪まで、暴かなければならなかったんだろうか。」
御手洗潔の人柄、情の深さ、優しさの深さを知れるととも -
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Posted by ブクログ
謎の絵師写楽の正体は?
実在する歴史上の謎に対し、小説の体をとりながらも、作者の膨大な下調べと長年の考察による新説をぶち上げる。このような小説を読むのは初めてかもしれない…
自分は写楽について知識がないので、これが写楽論争に一石を投じ得るものなのかは分からないが、
読んでいる限り状況証拠もいくつかあるしとても面白いと感じた。もちろん小説家ならではの創造力がその合間を埋めているのはわかっているが。
なによりこのようなチャレンジングな小説を読んだのが初めてなので単純に感動した。
実在しない絵師をでっち上げて完全フィクションを作ったのならこんなに感動しなかったろう。