ほしおさなえのレビュー一覧
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シリーズ2作目。
亡くなった妻が残したメッセージから軽井沢を訪れた老紳士、SNSに疲れたOL、そしてフロントスタッフの三枝さんを主人公にした3篇。
銀河ホテルにある手紙室を舞台にした3つの物語は、過去、現在、未来、全てに繋がっているような気がして、文章を読んでいても、手紙室の重厚な雰囲気が伝わってくる。
正直、苅部の良さはまだ分からないし、インクと手紙だけで、どれだけ物語を広げていけるんだろうと、少し不安はあるが、ワークショップと言ってるところで今回の3作目のようなトリッキーな話もありなんだろう。
どうしても、紙屋ふじさき記念館の印象と重なり、この後どんな風にシリーズが続いていくのか、期待してみよう。
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シリーズ7作目。
連句会「ひとつばたご」に一葉が通い始めて3年。
「ひとつばたご」の若手のメンバーたちは、オンラインで連句会を開催したり、文芸誌のコミケへの出展と大忙し。
これから連句の魅力を知って欲しいと言う趣旨で書いているので、7作読んで来ても、イマイチ連句のルールが分からない私にも今作はいろいろ分かりやすく、連句の面白さがシリーズ1で伝わってくる内容だった。
連句を趣味にしている人たちが、定期的に集まって、美味しいお菓子を食べるだけで、十分楽しいと思うし、一般的なサークル活動はそんなものだと思うけど、「ひとつばたご」のメンバーは未知なる世界へ挑戦していくのが凄いと思う。
話が広がっていく分、連句を巻くシーンはだいぶカットされてる感があるけど、一葉たちの熱量で読者も連句の魅力に惹かれていく気がする。
このシリーズがこんなに続くと思ってなかったけど、作者のシリーズものとしては、まだまだ続く気がする。
話が広がっていっても、美味しいお菓子の情報だけは割愛しないで欲しい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ本文から
p.134
古い紙の束に刻まれた文字。そこにはかつて生きていた人たちの言葉が宿っている。その人が死に、その身体がこの世から消えたあとも、言葉だけが文字になって残っている。
p.135
文字も着物の人の似姿だからだろうか。言葉は人の心をなぞろうとする。それを形にとどめたものが文字である。着物は人の身体を包み、身体の形をなぞる。そのとき心まで、なぞっているのかもしれない。
p.141
だれの目に触れることもなく、生き、死んでいくものなどこの世界には無数にある。
記録が残るものの方が稀なのだろう。そのようにして残すというのは、生きものにできることの範囲を超えたおそろしいことのように感じられる。そして、だからこそ心惹かれる。
感想
織物の町で繰り広げられる、優しい記憶の物語。
着物を扱うすてきな女性と出会って、いろんな世界を広げていただいた。なかなか自分で積極的に着たりはしないけれど、「心」までなぞってくれるという表現をみて、なき祖母の着物着てみようかなという気になりました。まだ暑いので、とりあえず浴衣からかな?シリーズが続くようなので読んでみようと思います。 -
Posted by ブクログ
「こんなホテル、あったらいいな」が詰まった、南軽井沢の美しい洋館が舞台の物語。
ブラック企業に疲れ果てて実家へ帰ってきた、このホテルの息子が、風変わりな居候・苅部さんの主宰する手紙室を通して、自分自身を見つめ直していく。
作中に登場するフロントの女性が実践している「人の名前を覚えるアイデア」など、日常で真似したくなるようなエピソードもありつつ、全体的にじっくりと語りかけるような、丁寧で温かい言葉遣いが印象に残る。
ただ、人間の生々しい感情の揺らぎや、ビターな展開のドラマを好む自分にとっては、とても新鮮でお行儀が良い世界観に感じられたし、これこそが軽井沢の澄んだ空気にふさわしい、この著者ならではの持ち味なのだろう。
このホテル独特の穏やかなテンポに身を委ねながら、登場人物たちが織りなす物語の行方を見届けるというのが、この作品の正しい読みかたなのかもしれない。 -
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自分の気持ちがわからない。
そんな人がこのホテルの手紙室で手紙を書くことで自分の気持ちと向き合うことができる。
確かに書くことで気持ちが整理されることはあることですよね。
書いてるうちに胸の底に眠っていた気持ちに気付かされたり…。
そんなワークショップがあるホテル。
手紙を書くにあたっての案内人は表題にある『居候』の人。
不思議な魅力のある人です。
(Word)
結局人生なんて短いものだ。これまでに出会った人とも別れていかなければならない。それならこれからだって、別れを恐れず、生きているかぎりいろんなことと出会っていこう。それがあたりまえだし、それでいいんだと思った。 -
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読者の私が知っている、ほしおさなえさんの作品(活版印刷シリーズなど)とはイメージが違った作品でした。
ファンタジー小説で有名な作家であり、大学の創作のゼミの先生でもある時任晶子の死から物語は始まります。
そして通夜、葬儀、一周忌、三回忌、七回忌と順に、ゼミ生が語り手となった文章が綴られていきます。
2018年からの6年間、コロナ禍や世界で戦争が始まり、ネットも当たり前になり、大きく世界が動いたように思います。それ以前に生きた時任先生と、その渦中も今も生きているゼミ生達が、書くことで繋がっていると感じました。
ものすごいスピードで日々が流されていく今、「表現することの意味」と「創作することにどんな意味があるのか」を、問いかけているとも感じられました。
過去に想いを馳せ、未来を見据えていくことができるという「書く」ということのすごさも感じました。
最後は時任先生の遺作の謎も明かされ、すっきりと読み終えることができました。
〈目次〉
一話 暗い海に言葉を放す
二話 真夜中に橋を渡る
三話 だだっ広い岸辺を歩く
四話 魚の目で空を見る
五話 見に見えない花を描く