ほしおさなえのレビュー一覧
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このシリーズ4冊目。またまた配偶者のほうが先に読み終えた。
第一話が「活版印刷」って。三日月堂、きた~!
毎回ここまで必要かと思うのだけど、今回もじっくりと川越の観光のことが描かれて、どさくさに紛れて月光荘まで出てたね。
活版印刷やそれが好きな人たちのことか書いてあるだけでじんわりくる。弓子さん、出掛けていて出てこないかと思っていたら帰ってきたのでニンマリ。
そこも含めて今回は、百花も大学3年生になりそろそろ卒業後のことを考え始めなければならず、一方で記念館が入っている建物の売却も本決まりになりその行く末も気にかかる、そんな心持ちが色々な出来事や人との会話を経て深められていく様が描かれて、それに引っ張られて一成も一皮向けていく。
引っ込み思案の百花も元々やれば出来る子だし、一成も才能はあるし凡百の家庭にはない環境や経験を持っているわけで、もちろん二人ともとてもよく頑張っているのだけれど、定期ワークショップやウェブサイト作りなどうまく行くばかりなのが、話の展開としてはいささか喰い足りないところはあり。
とは言え、和紙に惹かれる真っ直ぐな思いとか、今の世の中に相応しい“豊かさ”についての提起とか、過去と現在を踏まえた上で自分や記念館の未来を見据え考える姿などに打たれるところは多く、喰い足りなさを補って余りある。
和紙の世界も、折形やら型染めやら板締め染色やら、まだまだ出て来て、本当に奥が深いな。 -
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シリーズの5作目。
第一話 ぴっかり千両
第二話 墨流しと民藝
第三話 春霞の小箱
ふじさき記念館も残すところ半年ほどで閉館する。
そんな中、百花は夏休みにサークル遠足として東秩父へ和紙の紙漉き体験へと出かける。
古い町並みや趣きある鄙びた雰囲気を存分に楽しみながらも滲み出る歴史の厚み、時の流れの儚さを思い貴重な体験をする。
体験して得るものは、価値があり何ものにも代え難い貴重なものとして残るだろう。
この中で、「西本願寺本三十六人家集」を知る。
三十六歌仙の和歌を集めた装飾写本であり国宝だと。
歌を読み学ぶためのものであり、美しい筆跡を味わう。
初めて知り得ることが多くて勉強になる。
墨流し、これは水と墨と風だけで作り出す。
人間には作り出せない世界であり、一回だけの形。
いろいろな体験をすることにより、ふじさき記念館でのワークショップに活かすことができ、閉館へと向けて準備も順調に進んでいくのだが、年が明けてから世の中の雰囲気が変わってきつつあった。
2月まではなんとかワークショップもできたが、3月にはとうとう中止となる。
そして、先の見通しのないまま、閉館セレモニーもなく、記念館の最終日を静かに終えるのだった。
ラストが、寂しいのだが今回もものづくりをしている人たちの姿、ものに宿った手の跡に心惹かれる。
伝え続けることの難しさもあるが、けっして無くしてはならないものだと気づかせてくれた。
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シリーズ3作目。
実は2作目はまだ入手していない。
先にこちらを読んでしまった。
が、全く問題なくお話に入っていける。
波乱万丈なストーリーではないせいもあるけれど、最近の書き手のみなさんは、いい加減な読書行動にもやさしい気がする。
読みながら、第一作の「歌う家」を思い出した。
ああ、そういえば、守人くんの「家の声が聞こえる」というファンタジー設定に、やや抵抗感があったんだっけ、と。
が、この巻には、同じような力を持つ老女、喜代さんが登場する。
守人の同期、田辺の祖母だ。
人生の終わりに近づいた彼女が、家に住んでいたいろいろなものが混ざって家の声になるのではないか、と守人に語る。
そんな世界観が見えてきて、ようやく自分もこの設定に折り合いがつけられるようになった。
さて、守人は月光荘を起点に、だんだん人や土地とのつながりを広げていっている。
三月堂シリーズに出てくる人たちも登場する。
修士論文の構想はまだ混沌としているようだけれど、進むべき道をつかみつつあるようだ。
読んでいるこちらも、広々とした気持ちになって、読むのが楽しくなってくる。
いつか、作品世界が仮想空間になったりするのかな?
現実の川越をベースにした空間に、月光荘、三月堂や古本屋の浮草、コーヒー豆専門店の豆の家、元料亭の宿新井なんかが並んでいる。
守人やべんてんちゃんなんかはAIかもしれないが、その空間でイベントをやったり、リーフレットを作ったりしている。
読者はARでそれを体験しに行く、なんてことになるのだろうか?
まあ、桐一葉のコーヒーを飲むことはできないわけだけど。
出版社が将来、そういうビジネスに発展するのかな、なんて思ったりした。 -
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金継ぎと漆工をめぐる、3世代の女性の物語。
金継ぎに漠然とした興味があったので読んでみた。
物語とは別に、金継ぎや特に漆に関して知らなかった知識を知ることができた。
章によって語り手が異なるのも面白い。
「飛騨春慶」が気になって検索してみた。素朴で日常に馴染みそうな漆器もあるんだな。
漆器が樹木の骨(木材)と血(樹液である漆)から出来ていると書いてあって、すごい表現だと思った。生き物そのものなんだなと、これから漆器を見る目が変わりそう。それと同時に職人が減っていることは残念に思ったけど、自分もそういうものを大切にして購入していかないと、文化は守れないのだなと反省。 -
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金継ぎの家、というタイトル通りです。
一般的に金継ぎと呼ばれる、漆を使う繕い。
個人で細々と金継ぎを請け負う、熟練の、80代の千絵の物語を中心に、千絵と二人で暮らす高校生の孫娘、真緒との交流、故郷の飛騨高山、漆の生産地と、静かながら、ドラマチックに物語は進みます。
語り手も、千絵と真緒とで交代するのですが、プロローグとエピローグだけ、単身赴任中のバリバリホテルウーマンである娘の語りで、千絵や、真緒の輪郭がわかるのも面白いです。
千絵は、繕うことに、愛も誇りも誠実さも持っているけれど、女性ならではの、柔軟さ、優しさ、気楽さも持っており、とても好感が持てます。
金継ぎや漆に全く興味がないと、厳しいかもしれませんが、私にとっては、物語としても面白く、知識も得られてためになり、一石二鳥な一冊でした。 -
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キャラクター小説風の表紙を見ていると、主人公の百花と館長の一成の間のラブストーリーなのかと思ってしまうが、少なくとも今のところはそうではない。
百花が、熱心さのあまり、一成に対抗意識さえ持ってしまうのが意外な展開。
持ち前のセンスと器用さで、和紙の記念館のバイトの範囲を超えて活躍する女子大生、百花のお話の三冊目。
割と若い読者を想定したシリーズのようだが、内容的にはもっと上の世代にも共感されそうな内容だ。
今回は、百花が母とその妹(叔母)とともに、信州飯田の祖母の家へ帰省するところから始まる。
母たちが育った田舎の家は、今は兄(主人公からは伯父)夫婦の家族が住んでいる。
その家が老朽化して、建て替えをするという話が出てくる。
主人公の百花より、懐かしい家がなくなってしまう寂しさを感じる祖母、実家を離れた母と叔母の方がクローズアップされていく。
実家の処分なんて話に直面する世代こそ、反応してしまいそうなところだ。
おばあちゃんのてるさんがとてもいい。
「誰かが困っているときは、自分のことは後に回してでも助けに行く」というあたたかい人物。
このおばあちゃんがSNSの使い方を学んで、どんどん発信していくようになるというのが、面白い。
それにしても、前の巻の蝋引きといい、このシリーズは今回の水引やガラスペンといい、次々と楽しそうなものを提示してくれる。
蝋引きはチャレンジできそうにないが、ガラスペンは、お試しだけでもいいから一度使ってみたい。 -
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第4弾。
百花も大学3年になり、新入生を迎える時期になる。
そこへ百花を訪ねてやってきた天野さんという新一年生。
彼女は、高校生の頃から三日月堂でアルバイトをしていた。
それが縁で、新入生歓迎遠足を川越市にする。
そして活版印刷の体験をすることとなる。
とにかく、百花も行動的になり、もはや1年前とは比べ物にならないほど。
いろいろなことに挑戦していく姿に応援したくなる。
それに付随して、むっつりと愛想のなかった記念館の館長もワークショップの講師もするようになる。
京都の染め工場の見学にも百花は付いて行き、今までにはない行動力なのである。
和紙の魅力に引き寄せられて、今まで眠っていたパワーを全開にした感じがした。
これからの記念館は、2人でどう盛り上げていくのだろう…か。
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第3弾。
百花は、年末年始に母の実家である飯田市へ…。
そこで祖母に水引きを教わる。
水引きとは、熨斗で使っているもの、としか印象になく一般的な紅白、黒白、黄白くらいだと思っていたが、最近では、カラーも豊富に使っている熨斗もある。
ただ小物を作るのは、かなり技術が必要だろう…と。
もちろん誰かの手解きがいるわけで。
1話から2話にかけては、水引きのワークショップを文字箱主催でやる〜そして、代理の講師で祖母が参加する。
この話も心が温かくなるのは、若い人や祖母まで年齢など関係なく、和気藹々とする雰囲気だろう。
水引きとは、「結ぶ」こと結び納めることから結納。
そして、助け合いの心。
水引きの雛飾りで…
そろそろお雛祭りの時期だ
3話は、ガラスペンとカラーインク。
百花の大学の後輩もインク集めの喜びを知り、どっぷりとインク沼にハマったらしい。
確かに文具大好き女子には、たまらないだろうと思う。
私ごとだが、やっぱり、ハマる。
特にインクの色など…。
ガラスペンは、持っていないが万年筆のインクは、色々使った。懐かしい。
今は、ボールペンの色にこだわってブルーブラックとオレンジとグリーンとゴールドを使い分けしているが…。
3話も文字箱が、ガラスペンとカラーインクをセット販売…ということで、インクのネームを考えるのに今回は、百花が苦悩する。
そして、またまた従兄弟の浩介による横槍が入って…と。
スムーズにはいかないところも一成と百花が親密になる要素かな…と思える。
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第2弾。
① ふじさき記念館、館長一成の美濃市行きに同行して百花と友人の莉子は、紙漉きを体験する。
美濃和紙の歴史、千三百年というのに驚き、紙の良さを伝えるだけでなく、和紙を使う文化や習慣自体も復活させなければならないと思う。
和紙の中に秘められた可能性を探り、和紙を今の世の中にふさわしい形で生かすことが、必要だと感じた。
かなり詳しく美濃和紙について書いてあるので、とても勉強になった。
一度、美濃市へ足を運んでみたいと感じた。
② 彫金デザイナーの雫のパッケージのアイデアやディスプレーなど百花の意気込みが、ジンジンと伝わってくるので、応援したくなる場面が盛りだくさん。
ここでは、一成の従兄弟が登場するのだが、彼の嫌味もサラリとかわす一成が男前である。
③ 一成の大学時代のゼミの先輩のお店、新刊と古書の両方を扱うセレクトショップ「文字箱」で記念館のグッズを扱ってもらう。
そこで、百花は亡き父の小説を見る。
これも何かの縁…なのかと思ってしまう。
記念館と文字箱とのコラボで、蝋引きしたペーパーに小説の一部を印刷することを思いつく。
それが、物語ペーパーになる。
この発想と直ぐに実行に移し、自分で見本を作ってみるというのが、とにかく凄い。
おとなしかった百花が、成長したなぁと感じる。
次々とアイデアが、湧いてくるのに、若さなのか…とも思いながら、ますます応援したくなる。
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百香は、叔母に誘われ「紙こもの市」へ行ってから紙の世界に魅了される。
そこから自分で紙を使ってカードを作る。
それがきっかけで、紙屋ふじさき記念館でバイトすることになる話。
紙好き、文具好きにはたまらない。
本屋にしろ文具店にしろ半日は潰せるのでわくわく感も半端ない。
物語は、人見知りする女子大生の百香と無愛想で頑固で偏屈な紙屋ふじさき記念館の館長との距離感も気になるところ。
いったい2人は上手く仕事していけるのだろうか…と気を揉みながらも楽しめる内容でもあり、和紙にも詳しくなれる。
紙はむかしから強い力を宿すもの。
文字は言葉を形にしたもの、目に見えない重さがある、文字をのせる紙にはそれだけの力が宿っている。
この言葉は、百香の亡き父が小説で書いていた。
確かにそうだと感じる。
なぜか、紙を触っていると安心するというのか、寛げるというのか。
とにかく紙が好きなのだと改めて思った。
最近、電子書籍にしようかと思っていたのだが、やはりまだまだ先になりそうだ。
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ネタバレ「紙屋ふじさき記念館」その3。
前巻で百花の企画した「物語ペーパー」から、さらに新しい個性的な書店主たちとの出会いを呼び、また新たなコラボ企画が記念館に持ち込まれる。
第一巻で百香が初めて作った麻の葉紋様のカードのヒントとなった飯田の祖母の家で、水引細工の手仕事を讃美するエピソードを挟み、カラーインクとガラスペンの物語へ。
物語としては、またまたやたらとトントン拍子。
百香も一成も、本作では大きな人間的な成長も、恋愛的な進展も無かったような。うーん。
そして、またまた好みの問題かもしれないけど、表紙のイラストが…とにかくうるさい。色も素材も、とにかくうるさい。
そして、一成らしき男性の左腕の長さが変!
作風に、どうにも合ってないような…
巻末で、『キャラクター文芸』という言葉を見て…
少し前に読んだ「拝啓、本が売れません」の中で、ラノベはとにかく強烈なキャラを必要とする…というようなことが書いてあったんだけれど、どうやらこのシリーズはラノベと文芸書の中間狙いなのか…?
ラノベも読むし楽しめるけれど、ほしおさなえさんにはそれを期待していないので、どうもどこか物足りない。
もし、このシリーズを読んでほしおさなえさんのファンになった人がいたら、それはそれで結構。でも、次はぜひ、「三日月堂」を読んでもらいたい。
ところで…ガラスペンは、本当に美しいです。
インクが溜まっているところも美しいので、無色透明のガラスペンを持っているんだけど、幸い?あいにく?私がインク沼にそれほどハマらないのは、カラーインクを画材としてしか使わず、文字を綴ることにはそれほど執着が無いからか。