ほしおさなえのレビュー一覧
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「言葉の園のお菓子番」の5冊目。
前巻で知り合った「きりん座」のメンバーを「ひとつばたご」に招いたり逆に「きりん座」の定例会に参加したりで、一葉を取り巻く世界はまた広がりを見せる。新たな人とのつながり、そこから思い起こされる過去の記憶、触発される歌心…。
様々な年代が集まる「ひとつばたご」と若い世代が中心の「きりん座」の対比が面白く、「きりん座」で出している同人誌からつながった文芸マーケット(文学フリマみたいなイベント)にも惹かれる。
学生の頃に写真をやっていたという一葉の父の応募した写真が入選した時のエピソードにもほのぼのとする。
すぐ前の句とは異なる情景を詠みながら、前の句に込められ -
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〔Ⅰ〕記念館再起動準備の巻、とはいえ全体がエピローグという感じでもあり、駆け足的ではあるけれどめでたく始まりを迎える。
〔Ⅱ〕コロナ禍は少しずつ終息に向かっているようではある/第一巻からいずれ移転しそうな気がしていた川越で新たに出発する記念館の建物を改修してくれるのは月光荘も手がけた真山さん/新人だけのプロジェクトチームのメンバーは百花、松岡、本宮、烏丸/紙こもの市も再開/ビジネスの場でも使える「ベーシックライン」としてまず懐紙/百花の父の『東京散歩』再刊予定。同時に未刊行エッセイ書籍化の話が出てき、そちらの発行は道草書房、印刷は三日月堂/月光荘の名前もちょっと出てくる。近いうちに守人くんとも -
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アナログでレトロなものや、紙ものの質感が好きな人にはたまらない小説だと思う。
レターセット、ショップカードにコースター、栞、結婚式の招待状。活版印刷ならではの味わいを堪能できるアイテムが各章で登場し、一つ一つの言葉に込められた「想い」が活版印刷により「重み」を与えられてそれらに刻まれる。以下好きな描写の引用を2つ。
くっきりした文字だった。「刻まれている」と感じた。ふつうの印刷だと紙に文字が「張りついている」感じだが、これは凹んでいるわけではないのに「刻まれている」。文字ひとつひとつが息づいているみたいに見える。
コンピュータのなかでは文字に重さがない。厚みもない。「もの」じゃない。だけ -
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去年。ジャーナリングを楽しむためのオンラインサロンにいたときに、文通相手がふたりできた。でも、数回やりとりしただけで終わってしまった。
LINEなんかが主流になっている今、その延長で手紙を書くという行為に変えるって意外と続かないものだなと思った。
手紙を通して、関係性をうまく積み重ねることができなかったからだと思う。ご縁がなかったといえばそれだけ。
でも、その人のために便箋を選び、万年筆に使うインクを選びをしたのは、とても楽しかった。ボールペンとは違う書き味の万年筆と、自分の好みの色で書けるインクの組み合わせがとても好き。今使っているジャーナリング用のノートが、万年筆だと裏抜けしてしまって -
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手紙が書きたくなったというより、インクに興味を持ちました。万年筆を使っているけれど、確かにボールペンより紙の上をするするとすべる感じで書きこごちがとても良い。
いつも同じインクを使っているけれど、インクひとつとってもたくさんの種類があることを知りました。
つけて書くものもあることは知っていたけれど使ったことはなくて、この本を読んで一度使ってみたくなりました。
「手紙室」というワークショップがあるホテルなんてなかなかない発想。ホテルに泊まることじたいめったにないことだけど、もしそういうワークショップをやっているホテルがあるなら一度泊まってみたいなと思いました。 -
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シリーズ第3弾。
軽井沢にある銀河ホテルの手紙室。
ホテルのアクティビティの一環として「手紙教室」がある。
文字じゃなくてもいい。誰に書いてもいい。
出さなくてもいい。ゲームでもいい。
1000色並べられたインクから好きな色を選び何を書こうか考える。そんな素敵な時間を過ごす物語が3つ。
3つとも、銀河ホテルの手紙室を訪れる人たちの人生が丁寧に描かれていた。時おり、これは銀河ホテルを舞台にする意味があるのだろうか?と読み進めていくと、この場所だからこそ、過ごせる時間があるのかもしれないなと思える結びにつながる。
私は第3話の「十人十色」がとても好きだった。
定年を迎える大学講師が、銀河ホテルで