ほしおさなえのレビュー一覧
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ネタバレ祖母が孫娘と共に祖母の故郷を訪れる。
それは祖母の古い記憶を辿る旅でもあった。
いいな、こういうの。
私も年老いた時にそんな旅をしてみたい。
祖母が生業としている金継ぎ。
器等の欠けた部分を繕うその仕事は、欠けた部分を直して元通りにするだけでなく、敢えて色等も変えて継ぎ目や繕った跡を残し、新たな景色を楽しむものだという。
人生も同じだ。
思い通りにいかないからといって無理に繕う必要はない。
継ぎ足して変えていってもよいではないか。
目の前に伸びる道を真っ直ぐ進めばよいと思っていたのに、思いがけず予想外の方向へ曲がることもある。
そんな時は元通りの方向へわざわざ戻らなくてもよいではないか。
曲がったその先にあるものがその人にとって新たな道標となることもある。
金継ぎのように、素敵な器に生まれ変われるかもしれない。
祖母・母・孫と三代の女性の生き方はその時代背景で異なるものとなった。
幼い頃の思い出にすがりたくなることも時にはあるけれど、各々の行きたい道を手探りで歩む三人の姿はとても清々しかった。
ほしおさんの物語は柔らかくて優しい気持ちになれる。 -
Posted by ブクログ
今、私は結構しんどくて、しんどくて、この本を読むのにも休み休みで読んだ。(;^ω^)
とっても面白いし、背中を押してもらえるし、読んでいて苦しくなるような「救いのない本」ではない。
むしろその逆なのに、登場人物の強さがしんどくて、休み休みで読んでしまった。
「生きているのが楽しいのはほんのちょっとで、人生の大部分が戦い」
だなんて、ニコニコ笑顔で話されても、ああそうですよね、って、ちょっと今は言えない。
何せ戦いの真っ最中なもんで。
でもって、その戦いに気持ちが折れそうになってるもんで。
ああ、こういうもんなのね、って思ってしまう。みんなそう。苦しくて、もういいやって投げ出して楽になりたいって思うのにそれもできない。わかってる。わかってるけど、物語くらい、甘い甘い夢を見てもいいじゃないか、と、思ってしまって。
こういう本を読んで、よし、私もがんばろうって思えるぐらい強くなりたいな。
みんなも、同じように苦しいなら、もっともっと未来を見て、輝く遠い場所が幸せなんだと信じて毎日毎日旅立てるような、そんなふうに私も思いたい。
同じことを繰り返していても輝く遠い場所には届かないし、自分ひとりでは立ち止まってしまいそうなときでも、だれかとつながっていられれば少しずつでも前に進めるかもしれない。
だれかと一緒に何かをするのは、やっぱり、とても楽しいことなんやろう。
あと少し。
あと少しで、一歩踏み出す勇気が出そう。
大丈夫、たしょう立ち止まっていてもまだまだ先は長いんだから焦らず、私にとっての「輝く遠い場所」を目指そう。
この本では、活字がその「輝く遠い場所」を繋げている。
「思い出の時修理します」も、同じようにどこか「遠い場所」を探しているお話やけど、あちらはタイトル通り、「思い出」から未来を探している。
こちらも、やっぱりタイトル通り「活版印刷」から、「遠い場所」を探している。
どちらも素敵。どちらもロマンがあって、「同じことを繰り返していてもどこにも着かない」と、思っている私にとって何かのきっかけになるんじゃないかと期待して、活版印刷をやってみたいと思っている。
今回は、朗読会のお話もあって、こちらもやってみたいと思った。
素敵なんじゃないかなと思った。でも、たぶん、ちがう。それは他人の真似であって、どれほどその世界が素敵でも、私の「遠い場所」は、たぶんそこにはないんやろう。
でもでも、そう思っていても進めないもんね。
幸い、私は読書というツールがあるので、その読書で触れた何かは、手にできるものならやってみようと思っている。
活版印刷も朗読も私にとっての「遠い場所」ではなくても、一歩踏み出すことで何かが変わるかもしれないから、やってみようと思う。ちょっとお試しするぐらいの軽い気持ちです。
40年ちょっと生きてきているけれど、私の経験値はかなり少ない。もっともっと若いころに、
「ちょっと気になるな」
ってことに手を出してみればよかった。あのころは、そんなふうに興味本位で何かをやろうと思うことは浮ついていると思っていたし、そもそも「ちょっと気になるな」と、いうことを探すのもへたくそやった。
若いころのほうが時間も体力もあったのになあ、と、思うけど、いやいや、この年齢になったからこそ、「ちょっと気になるな」と、いうことを、自分以外のものに見付けられるようになったのかもしれへんしな。
感情の元になるものは、十歳のときにそろうのだそうだ。
それって遅いのか早いのか、そこからはあれこれ複雑になっていくばかりだそうやけど、感情がすべてそろうのすら十歳なんやったら、二十代であれこれ小器用にやりこなそうとか、無理な話やな。
そう思うと、四十代、いい年代なのかもしれへんな。
(と、自分に言い聞かせるよ。笑)
あれこれあれこれ並べてるな(笑)。屁理屈の武装でも、今はほしいねん。自分を奮い立たせるための何かが。(;^ω^)
確かに、傷のない人生は人生と言えないのかもしれへんよ。
傷があるからこそ、その人なりにそれをどう癒すか、ほんで、他人にどう接していくかが変わってくるんやもの。
自分がつらいぶん、もしかしたら他人に優しくなれるのかもしれない。
(なれないのかもしれない…)
自分で自分を癒すのはやっぱり大変で、そのときに他人の力を借りるから、今度は自分がだれかの力になろうと思えるんやろう。
そっか傷から何かが生まれるって、版画のことか。
傷をつけて、絵を文字を刻むんやもんね。絵や文字は魂の跡だわ。魂を形作るのに、無傷じゃあ、そりゃあ無理やろうな。
それは、分かるんやけどね…。
やっぱり今は、ありえないってぐらい、夢見がちなオチの話のほうがいいのかもな。笑
…うん…。
でも、足りなくても、それが私やねん。
足りなくても、あかんことばっかりでも、それが私。
そして生きるということに、正解はないねんね。
正解があって、その通りにすれば万事オッケーというものがあっても、それを単になぞらえるだけなら確かに機械でいいのかもしれない。
足りなくていいのかもなあ。足りないからこそ、誰かに補ってもらって、支えあえるのかもしれない。
ああやっぱり、夢見がちなオチにしてるんかな、自分で。笑
本には確かに文字しかないよ。
でも、読んでいる私にとっては、色も形もある。色や形や重さを感じる瞬間が、とても好きだ。
今回は、活版印刷と版画のコラボレーションもあった。
豆本といい、まったく見たことがないので想像でもできひんけど、版画の専門用語がバシバシ出てきたのには
「おおー」
と、思った。
普段からやってはる方には、こういう専門用語も、うんうん、そうよね、って思えるんかな。
寒冷紗
ラシャ
人絹
ドライポイント
メゾチント
エッチング
アクアチント
エングレーヴィング
ニードル
ビュラン
などなど…。
作中でもさらりと説明してくれてはるし、このあたりの手法や技法をくどくど言われると読んでて面倒くさくなりそうなので、このシリーズは(活版印刷も含め)このあたりの匙加減がとても面白い。
興味を持ったら、その後は自分で調べればいいんやもんね。
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■消波ブロック
海岸や河川などの護岸や水制を目的に設置するコンクリートブロック。消波根固ブロック(しょうはねがためブロック)、波消しブロック(なみけしブロック)と呼ばれることもある。
英語では「tetrapod」と呼ばれ、日本語でも消波ブロック全般を「テトラポッド」と呼ぶこともあるが、日本では「テトラポッド」は不動テトラの四脚ブロック製品の登録商標である -
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「菓子屋横丁月光荘」の2冊目。
どこかで読んだような話と思えば、三日月堂の最終巻に出てきた古書店・浮草の話じゃないか。
店番の安西さんは、同じ巻の第2話の就活に悩む女子大生だよね。
ネットで見ると、作者は同じ時期にこれらの話を書いたようで、あちらの話をこちらから見ればという趣向。
何という話でもなかった最初の巻だったが、この巻になって、三日月堂に近しいテイストを感じて、なかなか良くなってきた。
昔と違って、歳を取って、最近、仕事で気持ちの通わない人とやり取りするのが億劫になっているのだけど、『人とかかわるのに痛みはつきもの。心を閉じてしまえばどんどん鈍感になれる。まわりになにも働きかけないでいれば、傷つかない。だけど、それじゃダメなんだ』なんて、ちょっと耳が痛いやね。
また、この作者には父子の関係の話が良く出てくるのだけれど、『子どもを育てるためにお金と労力をかけるのは、子どもが大事だからだと思うんです。命がけで育てるからこそ自分の価値観を押し付けたりもする。祖父が生きてるうちにそのことをわかってたら、もう少し話せたのかも、って思いました』とはなかなか思いつかないし。
私は父に対してこう思えなかったけど、息子は私に対してどう思っているかなぁ。 -
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シリーズ4作目。
学生時代に一緒にバンドを組んでいた一躍スターになった友人のライブに軽井沢に訪れた有村。
長年、銀河ホテルのシェフを務め、息子が8歳の時から誕生日に手紙室を訪れる吉田。
挙式を間近に控える真奈。
年代も環境も違う3組の物語が紡がれる。
3作目までは、何となく展開が一緒でなかなか読み進めるのに苦労するシリーズだな、と思っていたが、4作目で理由が分かった。
物語として、先に展開していくことがないのだ。
語り手が変わり、過去を振り返りながら、手紙室で手紙などを書く。
毎回展開が一緒で循環してないのが、自分の中で合わない理由だったのかもしれない。
でも、理由に気付くと苦にならなくなった。
手紙室と言うテーマだけで、毎回趣向を凝らすのは大変だろうと捻くれた見方もしていたが、人によっては感情を吐き出すのに言葉だけじゃなく、1作目の有村みたいに感情を音楽で表す人もいることを気付かされた。
物語の構成は四宝堂に似ている感じがして、最近四宝堂を読んだから、今までと違う気持ちで読めたりして。
そんなことを考えた4作目だった。