【感想・ネタバレ】菓子屋横丁月光荘 光の糸のレビュー

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Posted by ブクログ

「菓子屋横丁月光荘」の6冊目。こちらもシリーズ完結のようね。

2つのお話の最初は、守人が木谷先生らとともに訪れた蕎麦懐石の店にまつわる、昔その地に栄えていた織物・広瀬斜子と、その店が改装して入る前の古民家が中心の話。
これまでもそういうところがあったシリーズだが、今回はとりわけ、そうしたかつてあったものがなくなっていくことに対する感傷と、たとえなくなっても引き継がれる思いがあることについて、強く描かれていたように思えた。

続く後ろの話では、田辺の祖父・敏治さんが衰えを見せる中、色々な思い出が詰まった家から離れざるを得なくなる敏治さん本人の葛藤と周囲の気持ちが中心に描かれる。
それは前の話を受けて、今まで生きていた人が亡くなっていくということにつながっていき、この話でもコロナ禍が陰を落とすが、それも相俟って、亡くなった人を想いながら今を生きるということや、あるいは自分がなくなった後に遺ることということについて考えさせられる。
敏治さんが持つ亡き妻への思い、田辺ら周囲が考える老いた身内をどうしてあげるのが良いかと悩む気持ち、それぞれの気持ちがよく分かる。
そして、しんみりするだけでなく、守人と豊島さんとの交情や、田辺と石野が古い家を改装してカフェにしようとする話を挿むことで、それでも生きていくことについて前向きな話になっていく。
この歳になると、ふとしたことで寿命が尽きる時に向かっていることを思わされ、怖くなったり切なくなったりすることがあるが、『だからこそ、いまじゅうぶん生きなければならない』という最後に書かれた言葉には、とても心に沁みるものがあった。

シリーズ初めの頃はモラトリアムで引き籠りの守人だったが、隠れた才能も開花しだし、好きな人もできたりで、よい終わり方でした。

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2024年03月03日

Posted by ブクログ

「ジュウブン、イキロ」
ひとも、家も、いつの日にかその身体を失う日が来る。
「失う(喪う)」ことへの葛藤。

失うまでには嬉しいこと、楽しいこと、悲しいこと、辛いことがいくつも起きる。
それは身体あってのこと。
だから、生きる。
体があるうちはじゅうぶんに生きる。

守人はこれから未来へと踏み出していくのに、なぜかいつか迎える終わりのことも頭をよぎる。

最後のページをくった時、はあっとひとつ大きな息をついて、そぅっと、静かに、本をとじる。
そんな完結巻でした。

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2023年11月07日

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シリーズ完結編。
…と知らずに読んだ。

そうか、終わってしまったのか。淋しい。
それでも、彼らの未来は続いていく。
「ジュウブン、イキロ」
「ドコニイテモ、イツモイッショ」
いつかどこかの作品で、彼らとまた会えることを楽しみに。

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2023年10月29日

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生きること、働くこと、人と繋がること。そういったことを考えさせられる話って、顎を摑まれて「ほら、見ろ、目を背けるな。」と圧を掛けられるような痛みを感じるものが多いけれど、このシリーズは、隣を並んで歩きながら「こんなことあってさ。」「そういうこともあるよね。」なんて話しているような小さな旅路のようでした。

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2023年09月25日

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完結したと思ってた月光荘に続きがあった!
大きな変化はなく流れるようにまとまっていく
落ち着いていって、またいつか旅立っていく
終わりのようにみえるけど、つながっていく
かたちがなくなっても、きっと何処かにある

手放したりなくなってしまうものがあっても
何処かに白い世界があって楽しそうにしている
…今は生きていかなきゃね

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2023年09月05日

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大好きなシリーズでしたが、今回で完結編。
守人の今後も他のメンバーの今後ももっと読みたい。

ジュウブン、イキロ。
心に滲みます。

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2023年08月20日

Posted by ブクログ

あー、私の大好きなシリーズがとうとう終わってしまったーという感じ。
肉親の縁薄く、内へ内へとこもりがちな守人が、川越の月光荘に住み始めたことをきっかけに、いろいろな人と親しくなり、自分の能力も認めることができ、自分の人生を生き始める様が読んでいて、胸に染み入るようであった。
家とは何か。入れ物としての家、一族、祖先という意味の家、あるいは家そのものの辿ってきた歴史。
その地域の、ひいては小さな取るに足りない人間一人一人の、たしかに生きた証。
そういうものの愛おしさ、美しさが確かに感じられた良作であった。

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2023年08月04日

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遂に月光荘シリーズ完結です。
なんとなくこの先どうなるのか気になる事柄が多いまま完結となりましたが、その先は読者が自由に夢想してかまわないということなのでしょう。

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2024年05月07日

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ほしおさなえさんをきっかけに去年の9月に川越を訪れた。菓子屋横丁や蔵の町並み、氷川神社、、川越城本丸御殿などを巡った。たくさんの観光客で、とにかく暑かった。
今回は月光荘より田辺家がメイン。とんとんからーの蕎麦会席の古民家が切なかった。守人と豊島さんの今後が気になる。

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2024年01月13日

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「カラダガアルウチシカ、デキナイコト、タクサンアル。ダカラ、イキロ」

わたしたちも蚕も、暗いところからやってきて、少しのあいだあかるい場所にとどまって、また暗いところに帰る。あかるいところにいるときだけ、身体という形を持つの。でも、ただそれだけなのよ。

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代々繋いでいくこと、繋がっていくこと。
それは一方では、「しがらみ」のように感じて、しんどく感じるものだけれど、
この物語ではそれが「安心」や「根っこ」になっている。

ファンタジーのような世界で現実にはないかもしれないけれど、これが現実だったらいいな、と思った。

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2023年10月28日

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【収録作品】広瀬斜子/光る糸

シリーズ最終巻。
出てくる人たちがみな温かい。川越の街を歩いてみたくなる。

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2023年10月26日

Posted by ブクログ

三日月堂シリーズで、ほしお作品にはまる。
以来、現在刊行中の『言葉の国のお菓子番』も、『紙屋ふじさき記念館』も読んでいる。
古民家、和紙、織物、活版印刷、和菓子など、レトロな手仕事をテーマにしているので、ついつい、手が伸びる。

さて、本書は川越を舞台にした『菓子屋横丁月光荘』。
いよいよこれが最終巻とのこと。

家の声が聞こえる遠野守人。
大学院を修了した今は、月光荘の管理人としてイベントの企画なども行っている。
恩師木谷先生に連れられて行った料亭で、家の発する声から、その家でかつて織物をしていたことを知る。
広瀬斜子(ひろせななこ)という、今は途絶えてしまった織物。
いつのまにか守人のまわりにできていた人のつながりで、その家の持ち主の子孫が、取り壊されようとしているその家に帰ることができる。

広瀬斜子については全く知らず、興味深かった。
が、正直物語の枠組みの中でではなく、他の形で読みたかった気もする。
物語の登場人物の世界で何が進行していたか、時々見失ってしまった。

後半は繭の家、田辺くんの祖父母の住む家の物語。
喜代さんに先立たれ、弱っていく敏治さん。
祖父への愛ゆえに、弱っていく祖父を受け入れられない孫の田辺くん。
そういう葛藤はとてもリアルだと思う。
そして、施設に入るかどうか。
守人世代より、四十代、五十代の人にささりそうな問題だった。
最終的には、この家を田辺くんと石野さんが古民家カフェとして利用していく道が拓かれていくのだが…。

作品世界にもコロナ禍がやってくる。
守人がその中で小説を書き、世間に出ることとなる。
守人はまだ結婚しそうにないけれど、そのお相手が示されていく。
べんてんちゃんだと思っていたが、そうじゃなかったんだ。

あとは、ちらりと三日月堂のその後が垣間見えるのは、三日月堂ファンにはうれしいところ。
あの弓子さんも、お母さんになったようだ。

だとすると、他の作品の中で、作家になった守人がちらりと出てくることもあるのかもね。
また会える日を期待しよう。

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2023年09月24日

Posted by ブクログ

かつては孤独だった守人だか、様々な人との繋がりを得て、充実した日々を送っている。仲間のシアターカフェ計画、自身の小説執筆、途絶えていた親族との関わりなど、明るい未来に満ちている。家の声を聞くことができる守人に、家は、「カラダガアルウチシカ、デキナイコト、タクサンアル。ダカラ、イキロ。ジュウブン、イキロ。タノシク、イキロ。」と言う。家も人もみんな、最後には明るいところに帰るのだろう。それまでは、一生懸命楽しく生きていこうと思えた。

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2023年09月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

シリーズ完結。「活版印刷三日月堂」からのおつき合い。
これからもジュウブン、イキロ…優しいことばです…
守人くんの本を読んでみたいなぁ…

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2023年08月11日

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[1]家が笑っている(p.288)/モリヒト、トモダチ、ドコニイテモ、イツモイッショ(p.293)
[2]蕎麦懐石「とんからり」の建物の出す音と声。その建物は川越織物研究会の深沢さんの曽祖母の実家なのかも?/豊島さんと共にかつて自分が暮らした場所に行く。土地と家と人の営み…このシリーズのキーワードかもね。
[3]守人の進む道は?/喜代さんの死後、敏治さんが弱ってきているかもしれない。施設に入るべきか? あの家はどうする?/最終章のようです。川越のCMっぽさは影を潜め守人の物語として終わりました。

■この巻の簡単なメモ

【広瀬斜子/ひろせななこ】島田と木谷に招待された蕎麦懐石の店「とんからり」は古い建物でかつては広瀬斜子と呼ばれる機物を織っていたらしい。守人が行ってみると家は「とんとん からー」という音と「マスミ」という言葉を発したが話しかけたら沈黙してしまった。その家が川越織物研究会の深沢さんのとこに残っていた写真から彼女の曾祖母の実家の可能性が高そうと、深沢さん、会長の武藤由香里さん、豊島さんと守人の四人で訪れ同一の建物であると確認。散会の後豊島さんに乞われ守人が昔住んでいたエリアを訪ねさまざまな想いが去来する。豊島さんと急接近した回でもある。
【光る糸】コロナ禍、各人各様の現状。/田辺の祖父で喜代さんの夫、敏治さんが少しずつ弱ってきている。施設に入るべきか、蚕の音と声の聴こえるあの家はどうする?/さまざまな決断、ものごとはいろいろ動いていく。/家は言った「タノシク、イキロ」。

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2024年04月23日

Posted by ブクログ

完結編だったのね。いつもの柔らかな雰囲気で無事終了でした。川越はまた別シリーズで出てきそうだが、月光荘の声はもう聞けないのね

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2023年08月28日

Posted by ブクログ

シリーズ第六弾にして完結編。

川越を舞台に、“家の声”が聞こえる遠野守人と彼を巡る人々との繋がりを描いた物語。
完結巻の今回は、連作中編二話の構成となっております。

月光荘オーナーの島田さんと大学の恩師・木谷先生と共に、狭山市の古民家を改修した蕎麦懐石店「とんからり」を訪れた守人は、そこで聴こえた機織りの音と“家の声”から得た構想を物語にすることに・・・。(第一話「広瀬斜子」)
そして、コロナ禍で月光荘でのイベントが中止になり、動画配信やオンラインに切り替えていく中、守人の書いた小説が優秀作に選ばれて・・・。(第二話「光る糸」)

月光荘の管理人だけでなく、小説家としての道を歩む決意をした守人。
毎回、何もかもがトントン拍子に進み過ぎる気がしないでもないですが(オンラインイベントもすぐ収益化できているし)、人と人との奇跡のような繋がりやご縁が広がっていく様子がこのシリーズの魅力なのですよね。
新しい時代に対応しつつ、古き良きものを大切にしたいという思いが作品から伝わってきて、例えば、守人の友人・田辺さんの祖父母の家を、古民家カフェにして残したいという石野さんたちの構想も素敵です。
そして、“家の声”が聞こえるだけでなく“会話”ができるようになった守人と家とのやりとりも心温まるものでほっこりしました。
特に終盤での月光荘の
“モリヒト、トモダチ。ドコニイテモ、イツモイッショ”
という言葉に、なんて“いいこ”なんだろう・・としみじみした私です。
そして、この巻で急に守人が豊島さんへ好意を抱いていましたが、個人的には“え?安西さんじゃなかったんだ?”と意外な感じでした。
とりま、皆それぞれの道を歩き始める感じで終わった当シリーズ。
また番外編でもよいので、今後の彼らの様子を描いて頂けたらありがたいなぁ・・と思いました。

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2023年07月22日

Posted by ブクログ

シリーズ完結編。
月光荘の管理人となった守人はイベントなどと忙しい日々を送っていた。
そんな中、月光荘のオーナーと恩師である木谷と一緒に蕎麦懐石のお店をやっている古民家を訪れる。
その店で出会った不思議な音が、不思議な縁を結んでいき、守人はある決意をすることになる。
同じく家の声が聞こえた喜代の死後、落ち込むこともあった守人だが、その喜代の家の声に背中を押され、強く生きることを決意する。
シリーズ序盤から、主人公の性格に芯がないことが気になったいたが、守人がやりたかったことは、このことだったんだ、と言うのが正直な感想。
少し拍子抜けのような、そんな感じ。
今作が終わったら、もう川越のみんなの様子が読めなくなるのは、少し寂しい気がする。
あとは「ふじさき記念館」が川越にオープンするのを、どう絡めていくのか。
そちらを楽しみにすることにしよう。

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2023年07月01日

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