ほしおさなえのレビュー一覧
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家の声が聞こえる、不思議な能力を持つ守人を主人公にしたシリーズ第3弾。
2作目で登場した「二軒家」を街づくりの為、改修するところから始まる。
改修しようと、「二軒家」の中を片付けるボランティアに参加した守人は、天袋に隠されていたひな人形を発見する。
以前、住んでいた家族には女の子の子供はおらず、しかも三人官女の一人が欠けていた。
そんな謎だらけのひな人形を、せっかくだからと月光荘に飾ることに。その飾りを観つつ、昔ながらの遊び「貝合わせ」を作るワークショップを開催することにした守人たち。
「貝合わせ」自体は記憶にないが、自分が子供の頃は、毎年近所の家でお雛様の飾りつけをしたことを思い出す。お雛様や鯉のぼりを飾る習慣はいつから無くなってしまったのかと、感慨にふけりながら、読んだ。
2作目では、守人の同級生・田辺の祖父母にまつわるエピソード。3作目では以前は料亭だった「新井」と言うお店をリノベーションして、旅館にするに当たり、リーフレットを作成すると言うエピソードが語られる。
ここまでで、守人が川越に来て、約1年。
自分が何がしたいか、悩んでいた守人だったが、川越に来て、様々な人に出会い、様々な経験をして、自分の道を見つける。
と、ここできっとこの作者さんのことなので、このシリーズは終了なのだろう。
最後のエピソードでは思い切り「三日月堂」や「桐一葉」も登場し、「活版印刷」から読んでいるファンには嬉しい限り。
そして、今シリーズでも川越と言う街を舞台に、人と人との繋がりの大切さ、温かさを考えさせられた。
古くからの友人とでさえ、簡単に会えない時間が続き、ふさぎ込んでいた私の心にも「文鳥」がふらっと飛んできた。そんな感じのするラストだった。
コロナが終息したら、川越に行って、この作品と「活版印刷」を堪能しよう。 -
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老舗紙メーカー、藤崎産業の資料館でバイトをする大学生、百花。
ものづくりが好きな百花の物語の続編。
小冊子研究会の文化祭、館長の先輩が開業した書店などのエピソードも楽しい。
蝋引きは、自分でもやってみたくなる。
今回も、百花が商品開発をする。
モデルで彫金のアクセサリー作家、淵山雫の新作のパッケージ、そして館長の先輩綿貫の書店で商う「物語ペーパー」など。
おとなしめな百花だが、今回の彼女は少し挑戦的。
というのも、彼女のボスに当たる館長・一成の従兄弟が雫に関わって登場したから。
何かと一成に敵愾心を持ち、資料館の廃止論者。
何かお家騒動の雰囲気が漂い、物語にも緊張感を生み出す。
今後も尾を引きそうな感じだ。
ところで、同じ著者の『活版印刷三日月堂』でも和紙のことが出ていた。
この作品では正面から和紙を題材にしている。
今まで何が不満って、どうして和紙を扱っていながら美濃和紙について全く言及がないのかということだった。
だって、和紙にとって、美濃は「聖地」だよ?
東京が舞台とはいえ、スルーはあんまりじゃない?
そうも思っていたが、やっと登場。
今回、名古屋での紙こもの市開催、そのついでの美濃市訪問がやっと叶う。
すてきな古い町として描かれていて、よかった。
さて、まだ続編が出そうだ。
先が楽しみになってきた。 -
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・家の声を聞くことができる青年、守人の周辺で起こる優しいできごとのシリーズ二巻目。ようやく川越にも馴染んできた。
・三日月堂でも出てきた古書店「浮草」の顛末。あちらではさらっと描かれていた部分。浮草のつぶやく声は? そしてなんと月光荘と会話ができるようになる。
・廃業した和紙専門店。切り紙、窓紙づくりのワークショップを行う。
・オイテカナイデ、と語る家と少年。
▼月光荘についての簡単なメモ
【旭爵位文庫】実際にある施設らしい。安藤さんが佐久間さんと藤村さんに紹介したかった建物。写真を見ると昔よく行ってたタイプの店舗建築だった。
【旭湯】銭湯。遠野が月光荘に入った日に行った。リアルにある銭湯だったようだが最近なくなったらしい。
【安西明里/あんざい・あかり】Y大学立花ゼミの学生。古書店「浮草」でアルバイトをしている。三日月堂の登場人物の一人で、そのときは課題で川越を題材にした雑誌づくりをした。四人姉妹の末っ子。自信のないタイプで進路に悩んでいる。
【安藤万年/あんどう・かずとし】べんてんちゃんの友人のトモちゃんのおじいさん。喫茶店「羅針盤」の経営者。月光荘に昔住んでいた女の子の知人。遠野守人くんの能力の理解者になってくれそうな雰囲気がある。
【家の声】遠野守人が聞くことができる。午前中に聞こえることはあまりなく夕方から夜にかけてよく聞こえるので物怪の一種かもしれないと守人は考えたりしている。
【家守/いえもり】家は人が暮らしていないとすぐ荒んでしまう傾向がある。それを防ぐため誰かに暮らしてもらうこともある。遠野守人くんはそういう役割だろう。「やもり」でもいいようだが両生類のヤモリと混同しそうだしここでは「いえもり」としとく。梨木香歩さんの『家守綺譚』は好きな作品だがなんとなくあれを思い出した。
【石野】ふんわりした外見と裏腹に強情っ張りで毒舌。会社員になったがブラック企業だったらしい。
【一行目・第一巻】《その声をはじめて聞いたのは、物心つく前だったのではないかと思う。家にいるとどこからか聞こえてくる声。そこにいる人、だれのものでもない声。》p.8。いっとき本や作品の一行目ないしは一センテンスをコレクションしていたことがある。ただ、最近の作品はあまり一行目が魅力的でないのが多くいつの間にかやめていた。Eテレの2355やったかの読書週間特集で一行目を紹介するコーナーがあって「悪くないな」とか思ったんで復活してみようかと思う。
【一行目・第二巻】《九月のあいだは残暑が続いていたが、十月になってようやく少し涼しくなった。》
【浮草】古書店。三日月堂の話にも出てくる。児童書の棚もあるらしい。
【大隅のおじいちゃんとおばあちゃん】月光荘に前に住んでた人たち。
【かくれんぼ】《かくれんぼというのは、隠れるためにするのではなく、だれかに見つけてもらうためにするのかもしれない。》第一巻p.197。
【笠原宗介】守人たちのみっつ上の先輩。紙店の息子だが跡は継がず会社員になる。
【笠原方介】笠原宗介の父。気難しそうに見えるがそうでもない。代々継いできた紙店を廃業する。
【笠原美代子】笠原宗介の母。
【菓子屋横丁】川越にある通り。元は菓子の製造卸の店が並んでいたが衰退し、後に駄菓子販売の店が並ぶ通りに変貌。月光荘がある。
【川越】《過去の姿が透けて見える》第一巻p.93。
【神部/かんべ】笠原の会社の先輩。起業を考えている。
【木谷】Y大学大学院で遠野の指導教官。専門は日本の近代文学で小説の舞台になった町の古い地図と現在の町を比較検証している。郵便局員だった父が集めた昭和期の地図を月光荘で展示している。
【切り紙】紙を折って切ったりしてデザインされたものをつくる遊び。笠原宗介と神部が中心になって月光荘の空き部屋でワークショップが行われた。
【桐一葉/きりひとは】喫茶店。「活版印刷三日月堂」シリーズに出てくる店の名が出てきたので同じ世界のようだ。
【月光荘】遠野守人が管理人をすることになった町家。島田が老後の住まいとして改装している途中だが現在は利用の予定がなく管理人を探していた。遠野が初めて入ったとき歌声が聴こえた。「月光荘」という名前は近所の人が付けた愛称でなんでも小さな天窓のような丸窓があって夜になると家の中の光が満月のように見えていたかららしい。また家の中からものぼってくる月が見える。郵便局員だった木谷の父が集めた昭和期の地図を展示している。
【珈琲を自分で淹れる】《珈琲の時間はひとりの時間です》第一巻p.200。
【佐久間晃平/さくま・こうへい】喫茶店「羅針盤」の古くからの客。珈琲を淹れるのが趣味で焙煎屋を営むのが夢。四十二歳独身。一生結婚する気はないと宣言しているらしい。藤村さんは恋人のようだが?
【沢口】大学生のときの大学祭で同じ展示グループだった友人。姉御タイプ。
【島田】月光荘の持ち主。木谷の知人。話し方からすると友人のようだ。
【正月】《年明けは家たちがみんな黙る。》第二巻p.211。どうやらどこかに出かけているらしい。出雲とか?
【蒼子/そうこ】本川蒼子。佐久間さんのお姉さん。
【田辺】大学生のときの大学祭で同じ展示グループだった友人。コミュ力が高い。埼玉県の高校で教師をしている。
【魂】《人はその魂で人を支える。大人でも子どもでも老人でもみな魂をもっていて、魂には大きさなんてない。だから、だれだってだれかを支えることができる。》第二巻p.291
【月夜と眼鏡】小川未明作。第二巻「浮草の灯」で守人が古書店「浮草」で購入する。おそらく新潮文庫だろう。我が家にもある。ほとんどの本を売ってしまったときにも残したもののうち一冊。
【データ】《データというのは「ある」ようで「ない」。》第二巻p.133
【遠野守人/とおの・もりひと】主人公。Y大学大学院生。建物の声が聞こえるタイプ。また、節目節目で彼の向かない方向から回避する道が示される運のいいタイプでもある。後輩からは悪い意味ではなく「仙人みたいな人」と言われている。
【遠野守人の父】実業家にと期待されていたがその道には進まず青年海外協力隊に参加、帰国後は大工になったもよう。
【豊島つぐみ/とよしま】安西明里の立花ゼミでの友人。三日月堂の登場人物の一人でそのときは川越を題材にした雑誌づくりをした。Y大学の修士課程に進む予定。
【藤村手鞠/ふじむら・てまり】喫茶店「羅針盤」の古くからの客。デザイナー。徳島出身で実家は和三盆の干菓子をつくっていたらしい。佐久間さんの恋人のようでもあるが? 三十五歳くらい。
【古い家】《古い建物に住むというのは、大きな魔物の腹にはいるのと同じだと思うんです。》by安藤さん、第一巻p.191。
【べんてんちゃん】→松村果歩
【べんてんちゃんのお姉さん】→松村果奈
【牧野綾乃】悠くんのお母さん。離婚してシングルマザー。日本茶インストラクターをしていて駅ビルの日本茶の店で働いている。
【牧野悠】切り紙ワークショップに来ていた少年。「おいてかないで」という声がするとウワサの家を慰めようとしていた。
【まちづくりガイドライン】川越の旧市街、重要伝統的建造物群保存地区に設定されている規制。
【松村果奈/まつむら・かな】べんてんちゃんのお姉さん。保育士。
【松村果歩/まつむら・かほ】木谷ゼミの三年。愛称の「べんてんちゃん」は家の松村菓子店が銭洗弁天のある熊野神社の近くだから。松村菓子店はカステラが美味しい。川越の生き字引。
【松村徹二】べんてんちゃんのお父さん。菓子職人。婿に入った。
【松村桃子】べんてんちゃんのお母さん。
【窓花】切り紙を飾りとして窓に貼ったもの。川越という街には似合っていると守人は思う。
【真山さん】月光荘の改築を手掛けた建築士。
【水上】古書店「浮草」の主人。《なんだか、今日はいい日だなあ》第二巻p.98
【守谷】水上の前の古書店「浮草」店主。
【守谷さんの奥さん】本の声が聞こえる人だった。元々「浮草」は奥さんのお父さんの蔵書を他の人に渡すために始めた古書店だった。
【悠くん】→牧野悠
【悠くんのお母さん】→牧野綾乃
【羅針盤】大隅さんの前に月光荘に住んでいた一家(月光荘を建てた人たち)の娘が同級生の安藤さんにくれた。くれた理由はわからない。いろいろあって安藤さんは今、喫茶店「羅針盤」を経営しておりその羅針盤は店に飾られている。
【和ろうそくの店】旧花街を抜けたところで見つけた店。調べてみると「HAZE(ヘイズ)」という店があった。そこがモデルなのかもしれない。 -
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活版印刷のほしおさんが、今度は和紙をとりあげる。
とはいえ、三日月堂のシリーズでも、細川紙のことがでていたから、和紙に光が当たるのも、自然な流れか?
主人公は吉野百花という大学生。
日本文学専攻で、小冊子研究会というサークルに入っている。
ちょっと内気なところがあるが、手先が器用で、紙を使った小物を作るアイディアも豊か。
その百花が、器ものを商う叔母、紫乃の導きで、製紙業を営む藤崎産業の記念館で働くことになる。
創業一族の館長一成は、若く、紙への情熱も人一倍だが、和紙で商売が成り立つ時代ではないとあきらめ、無気力になっている。
少し偏屈な一成が、百花の懸命さにふれて変わっていく、という筋書きはまあ、安心感のある展開。
続巻もあるようなので、今後、どんな和紙の世界が繰り広げられるか、楽しみ。
紙屋ふじさきをSNSでPRする件も面白かった。
しかしこれは、サザエさんとは異なり、年を取らない小説ではなさそう。
百花は大学二年生。
就活で苦戦する先輩の様子が描かれるように、百花にもやがて立場の変化は訪れるだろう。
大河シリーズにはならない気がする。 -
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「菓子屋横丁月光荘」の3冊目。
大したことは起きないが、登場人物が善い人ばかりでイヤな人が出て来ないのはこの本の値打ち。
最初のお雛様の話も、どうということもないが、なかなか泣かせる。
2話目では舞台が川越を離れて隣の川島町まで行ってしまったが、川越だけではネタが尽きてきたのかしらん。
土地勘がないのだけど、川越の北のほうということで、地図を写真にしてみると確かに田んぼばかりみたいね。
だけども、この町も遠山記念館をはじめとして見どころはたっぷり。ネットで見る遠山記念館はいや本当に素晴らしい。
見学できる醤油屋さんは「金笛しょうゆパーク」というんだな。前に川越に行った時に松本醤油商店を見学しなかったのが悔やまれる。
こうして読んでいると、本当に川越はいい町だと思える。また行ってみたいな。
で、前作あたり、家が喋るということについて物語の中での意味合いが多少薄くなってきていたように思ったが、この話では他にも家の声が聞こえる人が出て来たり、棟木に書かれた守人の曽祖父の名前を家が呼んだりで、今回はまだ謎めいたままだが、これから続くだろう話へ興を惹く。
3話目になると今度は浮草が出て来て三日月堂とリンク。サービス満点。
モラトリアムの守人くん、ようやく自分の居場所について朧げにだが見えてきたかな。
それにしても、この料亭のモデルはどこかにあるんだろうかなぁ?その料亭変じて宿の朝食からまた川島町へと話が展開しそう。
色んな意味で続きが楽しみ。(続くよね?) -
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ほしおさんって手仕事そのものを創る人じゃなくて
それを文字にする人なんだな
既刊の本を見てそう感じた
取材するだけじゃ無くてどう表現するかっていうのも重要ですね
さて今回のテーマは和紙です!
今立と名塩を訪ねたことがあるので興味のあるジャンルです(^^)
続けて続刊の「物語ペーパー」
大学生のサークルの様子とか新商品開発とか
現実的では無いけどワクワクするストーリーです
それでも美濃和紙の章では現実に旅に出られそうな(^^)
この本を貸してくれたMZTさんも行きたいって!
ちょうどNHKのせかほしで特集していたらしいです
伝統工芸を現代につなぐのは素晴らしいです!
後半は三日月堂の流れを感じるストーリー
ほしおさんは、最近お父さんを亡くされたとの事
故人の思い出が感じられてじんわりきますね -
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完結したシリーズの、スピンオフ後日譚。
シリーズを通して、こんなに登場人物がいたんだなあ、と再確認できる。
結婚した弓子さんのその後が描かれたのが、表題作の「小さな折り紙」。
埼玉の細川紙(和紙)の話も面白かった。
それにしても、技術の継承の問題は興味深い。
簀桁を作る職人さんがいなくなりつつあること、楮を自ら育てて収穫しないと材料が手に入らないことなどを知った。
このシリーズで活字鋳造がもうできなくなっているということが何度も語られていたが、まさに同じ話。
一つの技術は、生態系のようにネットワークの中にある。
その一つの要素が損なわれると、存続が難しくなるんだなあ、と気づく。
新しい技術が便利で優れていれば、そちらに移行していくのは当然のこと。
ノスタルジーだけで古い技術を守れというのは、無責任だけど。
ただ、何らかの事情で新しい技術が行き詰った時、古いものが残っていることの意味が出てくるのでは?とも思う。 -
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シリーズ2作目。
シリーズものは続けて読まないと決めているけど、どうしても気になって、2冊続けて一気読み。
前作では、和紙を使った小物の制作の話が多かったが、今作では美濃を訪れて、和紙漉きの体験を描いたり、百花の亡くなった父の話など、人間模様も描かれる。
百花の大学の学園祭の様子などもあり、前作とは少し趣向が変わるが、ここでも百花のアイデアで普通の紙に蝋を流して、栞を作成してみたりと、また試してみたくなるようなところも。
百花が入るまで機能していなかった記念館も、段々記念館らしくなり、日本橋に行ったら、本当にありそうで、ちょっと探してみたくなる。
そして、続きを早く読みたいと思わせる作品。 -
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「活版印刷」シリーズの作者が描く「和紙」をテーマにした新シリーズ。
大学2年生の百花は、陶器のお店を営む叔母の紫乃に連れられて、「紙こもの市」を訪れる。
紙製品の展示会にテンションの上がる百花。しかし、紫乃の仕事の取引相手である紙屋ふじさきのブースを最後に訪れ、やる気のない藤崎一成に出会い、一気にテンションが下がってしまう。
ブースは出しているものの、全く売る気のない一成。しかし、そこには百花の心を揺さぶる和紙の数々が…
和紙を通じて、心も通いだす百花と一成の様子が丁寧に描かれる。
今回の物語の舞台は「日本橋」。「活版印刷」の川越もいいけど、日本橋の街の描写もいい。
出版社が違うから、直接「活版印刷」の話は出て来ないが、「細川紙」「楮」など「活版印刷」ファンには堪らないキーワードも。
百花が家にあるもので、いろいろ和紙雑貨を作るシーンも思わず真似したくなる。 -
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真緒は高校二年生。母の結子は金沢のホテルに単身赴任中で、今は祖母の千恵と二人暮らしだ。
祖母は、漆を使って壊れた器を繕うこと(金継ぎ)を仕事にしているのだが、夏休みに千恵の仕事を間近に見た真緒は、少しずつ金継ぎの作業を手伝い、深い満足感を知るようになっていった。
ある日、千恵が大切にしてきた紅春慶の簪をきっかけに、ふたりは千恵の生まれ育った故郷・飛騨高山への旅に出ることに。
千恵、結子、真緒の三代の女性たちが交代で語り手となって、それぞれの時代の制約の中で、自らの思いを胸に、喜びをもって打ち込める仕事を見いだしてゆく過程が清々しい。
何もかもが壊れてしまった戦後の混乱期や、夫の裏切りに傷ついた時、“美しいもの”に心を支えられてきたという千恵。
そういうことって確かにあると思う。
漆の木を育て、木を傷つけて漆を得て、何度も繰り返して仕上げる漆工芸。
割れてしまった大切な器を繕って、思い出をも再び繕い蘇らせる金継ぎ。
丁寧な手仕事から生まれる美と、人の手を経てきたものを大切に慈しむ心。
そういうことを忘れずに日々を過ごせたら…
…と、この頃、ついつい食洗機OKの素っ気ない器ばかり使ってしまっていることを、少し反省。