ほしおさなえのレビュー一覧
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シリーズ第六弾。
連句会「ひとつばたご」での交流を通して、主人公・一葉の気づきと成長を描く連作六編が収録されております。
今回は前作で触れていた、「きりん座」の大輔さんと一葉のお父さんとの合同写真同人誌・『坂道ノート』作りの話が中心って感じですかね。
とにかく一葉のお父さんが楽しそうだったのが印象的で、大輔さんとも意気投合して打ち合わせも撮影もやる気満々でしたし、雑誌作りをきっかけに学生時代の写真仲間との交流も復活したりと、イキイキ輝いている様子が伝わってきました。
勿論、一葉も『坂道ノート』のイラストやフリーペーパー制作、そして大輔さんと共に文芸マーケットに参加したりと連句以外での活動も -
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母の死後、生きる意味が見いだせずにいる20代後半の女性、槐(えんじゅ)が主人公。川越で染織の工房を営む叔母の伊予子と、不慮の事故で心を閉ざしている大学四年生のいとこの綸(りん)との暮らしのなかでの物語でした。
各章のタイトルが草木染の色の名前です。読んでいるうちに、草木染と手織りが特徴の伊那紬の色の美しさや繊細な織り目を実際に見てみたくなりました。それぞれの色が、木の枝や根などの自然の素材で作られたものだということや、どうやって染めるのかとか、手織りの織り方などが詳しく書かれていました。
小説では、三人で暮らすうちにそれぞれが生きていく方向を見つけることが出来ました。信じられないような出来 -
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ネタバレいつの間にか、このシリーズも完結していて、残り4冊を一気に読んだ。
想像通り、記念館は川越に移転し、百花の父の雑誌に書かれていた小説が「手仕事をめぐる旅」として単行本化されることになり、絶版になっていた「東京散歩」もあらためて出版される運びとなった。
コロナ禍を経て、こもの市も開かれ、懐かしい三日月堂や、月光荘のお話に出ていた川越の笠原紙店なども登場する。こうして川越での手仕事が一堂に介したところで大団円となる。
一成と対立しがちだった浩介も、コロナ禍を経て和解したようだし、新入社員ばかりで記念館のオープンを任されたことも杞憂に終わり、何一つ障害なく、新しい記念館のオープンを迎えられた。皆いい -
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とてもきれいな装丁に引かれ、さらにお菓子ときたら読むしかないっ!と思い手にとったが、あまり馴染みのない連句というのが物語の根幹で少し難しそうと思った。
しかし読みやすく連句の世界をじっくり知ることができた。言葉の表しかたって沢山あるのだな。
シリーズ物と知り、連句を通じてポップのお仕事も軌道に乗る一葉さんの今後と会のみんなとの関わりがどうなるのか気になる。
登場するお菓子や土地は知っている所ばかりでさっそく言問団子を購入した。今は反対車線の歩道にある桜と梅が咲き始めていてお花見にはぴったり。少し歩いたら長命寺のお店も草餅のお店もあり、あの辺りはいわば甘味ロードだ。
桃林堂さんなんて、昨年前を -
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活版印刷三日月堂の番外編。
東日本大震災から14年目の昨日、東日本大震災の描写があるシーンを目にした。
すごいタイミングに見えない何かを感じる。
祖母・祖父・父を見送り、この流れで活版印刷の第1弾に繋がっていったのかと本編で目にしたあれやこれやを思い出し感慨深さを味わった。
本編に繋がっていた色んなシーンそれぞれが思い出され、本編がより奥行のある物語として存在してくれた。
色々な人とを見送ったり、失われたものを思い浮かべたりする機会も多かったので、読み終えた今、少し淋しさを感じる読後感を味わっている。
でも!この後ものすごく素晴らしく力強い世界が広がって行くんだよなということを思い出す。
よし