ほしおさなえのレビュー一覧
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このシリーズも4作目
主人公の「一葉」が連句の会「ひとつばたご」に通うようになって一年半ほどとなった。
初心者から初級者位になって、連句のことも会に集う人たちのことも少しずつ、見えてきた。
この会の主宰「航人」さんは生い立ちから愛されることがうまく出来ない人。
でも懸命に人を思って生きている。
「人って放っておくと自分のことばかり考えてしまうから。人はもっとほかの人のことを考えたほうがいいと思うんです。」
「僕は大丈夫ですよ。大丈夫じゃないけど、大人ですからね。」
そして、航人さんを昔から見てきた佳子さんはこう言う。
「その傷は、彼女が変わったからと言って帳消しにはならない。そんな都合のいい -
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祖母のメモから始まった連句の会。
毎月持っていくお菓子は、この会のお菓子番だった祖母が残したメモ通り。
でも、今回の会に参加する新しい人はあんこが苦手だと言う。
祖母が残したメモの今月のお菓子は「桜餅」。
どうしたものかと悩んでいたら
祖母が「定番は大事だけどルールじゃない。ただのルールになってしまったら、心がないじゃない」と話していたことを聞く。
臨機応変に、新しいものも取り入れることで定番の良さを知ることもあるだろう。
定番に固執することで、通り過ぎてしまう新しい風もあるだろう。
今回はシリーズ3作目。
少しずつ連句の会や仕事に慣れ始めた主人公「一葉」が、苦手意識があったことや、新しい -
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シリーズ第2段
前作で祖母の残したノートを読んだことから連句会「ひとつばたご」に参加した一葉。
相変わらず月に1度、お菓子番だった祖母の代わりに毎月お菓子を買って参加していた。
本屋時代に培った店内ポップ作成の仕事も少しずつ続けていた一葉に新しいお仕事のきっかけが訪れる。これも連句会「ひとつばたご」が繋いでくれたご縁。繋がれるご縁もあれば、1番大切な人との縁が途絶えてしまうこともある。
それが人生。繋がって、切って、忘れて、覚えていく。
各章に出てくる連句には難しい箇所もあり、理解出来ないことも多々あって読み止まってしまうこともあるけれど、眺めていると言葉が沁みて入ってくるこの物語。
次も -
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ネタバレ前作は戦争を絡めたずっしりと重い話だったが、今回は多少は身近な話で、総絞りの振袖に秘められた切ない恋のお話だった。
琴子が夢を見るたびに、秘密のベールが一枚ずつ剥がされていくようで、少し酷く感じてしまった。
その反面、次はどんな光景が広がるのか、美しい振袖を思い浮かべながら期待する気持ちが湧き上がってくる。
まさに覗き見なのだが、最後の光景はこちらも辛かった。
母より先に逝ってしまった娘、若くして和解できずに逝ってしまった想い人、思い出を処分して施設に行く母。
みんなみんな悲しい。
だけど救いがあるとしたら、娘の気持ちを汲むことができたことだろう。
一区切りつけて、新たな生活をスタートでき -
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シリーズ第六弾。
連句会「ひとつばたご」での交流を通して、主人公・一葉の気づきと成長を描く連作六編が収録されております。
今回は前作で触れていた、「きりん座」の大輔さんと一葉のお父さんとの合同写真同人誌・『坂道ノート』作りの話が中心って感じですかね。
とにかく一葉のお父さんが楽しそうだったのが印象的で、大輔さんとも意気投合して打ち合わせも撮影もやる気満々でしたし、雑誌作りをきっかけに学生時代の写真仲間との交流も復活したりと、イキイキ輝いている様子が伝わってきました。
勿論、一葉も『坂道ノート』のイラストやフリーペーパー制作、そして大輔さんと共に文芸マーケットに参加したりと連句以外での活動も -
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今作は長年連れ添った妻の手紙を受け取りにきた夫の話と、SNSで疲れ果てた末に気晴らしで訪れた女性と、仲は悪くないがどこか距離がある親子の三本立て。
どれも、お話に寄り添ったインクが使われていて情景が浮かぶようだった。
手紙も亡き妻へ宛てたもの、自身の決意の言葉、母親と一緒に遊べるように描いたゲーム。三者三葉でとてもよかった。お手紙ってどんな形でも相手に伝わればいいものだね。
苅部さんの過去がやっと明かされたけど、結構ほの暗くて衝撃・・・。
最近友達に色々なチケットなど一時だけ立て替えていただた際に、お代と一緒に少しのお手紙を添えている。お礼と楽しみにしている事など添えると、当日が待ち遠しくた -
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母の死後、生きる意味が見いだせずにいる20代後半の女性、槐(えんじゅ)が主人公。川越で染織の工房を営む叔母の伊予子と、不慮の事故で心を閉ざしている大学四年生のいとこの綸(りん)との暮らしのなかでの物語でした。
各章のタイトルが草木染の色の名前です。読んでいるうちに、草木染と手織りが特徴の伊那紬の色の美しさや繊細な織り目を実際に見てみたくなりました。それぞれの色が、木の枝や根などの自然の素材で作られたものだということや、どうやって染めるのかとか、手織りの織り方などが詳しく書かれていました。
小説では、三人で暮らすうちにそれぞれが生きていく方向を見つけることが出来ました。信じられないような出来