ほしおさなえのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
『植物の妖怪とも称されるウツログサ。多くは無害だが人についたものは宿主の欲望を読んで成長することもある』
生まれながらに隣に穴がついてまわっていた「アナホコリ」
恋すると爪から芽が出て成長する「オモイグサ」
文字が体に纏わりつき変化していく「ツヅリグサ」
村人みなが瓢箪を背負っている「ウリフネ」
空に浮かんでいる透明な綿菓子のような「ヒカリワタ」
憑いている人、あるいは一部の人にしか見えないウツログサ。すっかり取り憑かれている人もいれば、そこにいるのが当たり前すぎて違和感を感じていない人も。
皆、見えない人たちとの疎外感や違和感を感じつつも困り果てているという感じはない。
だが様々なウツログサが見え、祓うことが出来るという年齢不詳の男・笹目と出会うことで決断の時が来る。
笹目は決して祓うことを強制しない。
本人が困っていないなら祓う必要はないという。
長年寄り添ってきたウツログサとの別れを決断する人、ともに生きることを選ぶ人、ついに取り込まれた人、その結末は様々。
妖怪と聞くと悪いイメージしかないが、中にはその存在に救われた人もいるし新たな一歩を踏み出そうとする人もいる。
笹目の一歩も二歩も引いた立ち位置や、それぞれの物語が淡々と語られているところなど、なかなか新鮮なファンタジーだった。
ほしおさんは「菓子屋横丁」シリーズしか読んだことがないが、こういう作品もあるのかという発見ができて良かった。 -
Posted by ブクログ
言葉の園のお菓子番シリーズの(ニ)
カバー絵は歳時記を抱いて立つ一葉。彼女を優しく包むように咲く白い花はヒトツバタゴ(なんじゃもんじゃ)です。
花の名が連句会につけられた謎が明かされるニ巻目は、生と死について、人が生きて行く意味を考えさせられました。
勤めていた書店が閉鎖して実家に戻り、亡くなった祖母、治子の代わりに連句会「ひとつばたご」に通うようになった一葉。約束事の多い連句は難しいけれど皆で巻く楽しさもわかる様になった。
連句仲間の萌さんに「手作りマーケットに出す焼き菓子に付けるタグを考えて欲しい」と頼まれ、一葉は萌さんの句とお子さんの絵を入れた豆絵本を作る。蛍さんの妹の海月さんと出会い、祖母を知る歌人、川島久子さんからはブックカフェの書店員の仕事を紹介されて…と、連句を通して人と人が次々に繋がっていく面白さがありました。
一巻で連句に興味を持ち、二巻では主人公の一葉と共にどんな句を付けたら良いだろうと考える楽しさも味わうことが出来ました。
石垣りん『シジミ』を読んでみたい!
銀座清月堂の 「おとし文」や、富山県高岡市の
不破福寿堂「鹿の子餅」がとても美味しそう!
あずきブックスの「果物の香りのお茶」も飲んでみたいなぁ。
「初夏になると真っ白な花が咲いてすごくきれい。こんもり白い花がついて、雪が積もったみたいで・・」航人さんの前に並ぶいくつもの白い短冊がまるでヒトツバタゴのようで・・
蒼子さんの亡き夫、茂明さんの最後の句をながめながら「ひとつばたごに会いに来てくれたのかもしれない」と思った一葉の優しさに心が癒されるようでした。
「その人のぬくもりといる花の夜」蒼子
-
Posted by ブクログ
連句をテーマにしたシリーズ第五冊。
連句サークル「きりん座」との交流が深まっていく。
きりん座メンバーが、一葉の勤めるブックカフェ、あずきブックスに遊びに来たり、ひとつばたごの蛍と一葉がきりん座の定例会に顔を出して連句を巻いたり。
文芸マーケットの話が出てきた。
コミケではなく、文芸同人誌のマーケットがあるということを初めて知った。
ひとつばたごも、若いメンバーを中心に、作品集を出してみようという話にも発展する。
一葉がきりん座の雑誌にエッセイを頼まれ、若いころの父の取った夕焼けだんだんの写真と組み合わせて掲載するのが評判となっていく。
ほしおさんの作品を何シリーズか読んできたが、父親がこんなに前面に出てくるのは珍しい気がする。
が、そういえば写真(現像するタイプの)を軸にした小説もほしお作品にはあったような…。
この作者さん、いろいろな「趣味の世界」に精通しているなあ、と改めて思う。
それから、なんとなく恋の雰囲気もただよってきたような?
一葉が学生時代あこがれていた今井先輩のこと、そして急に関わりが頻繁になってきた、きりん座の大輔のこと。
前の巻にも航人と廸子の話があったが、あれは恋というより破局の話だった。
次の巻では、一葉の恋愛に結びついていくのかな?
さて、俳句の話で、あっ、と思ったこともある。
俳句は季題に「つける」という意識がある、という話だ。
短歌や小説とは違い、自分の作り出す作品世界だけで完結しない文芸だということかと理解した。
蕉風俳諧の特徴である「さび、しおり、細み、軽み」のうち、軽みを「日常生活の中に新しい美を見出だし、平淡にさらりと表現すること」とあったのも、なるほど、と思ったこと。
(ちなみに、これは定例会での海月の質問への回答として出ているが、誰が話しているのか、ちょっとわかりにくいところがある。)
まだこのシリーズ、お話は広がっていくのかな?
次の巻を楽しみに待つことにしよう。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ着物に宿る記憶を視ることができる琴子。
琴子が働くリユース着物店「本庄の蔵」の店長、柿彦。
ほしおさなえさんが今まで書かれてきた主人公たちより少し上の世代のふたりが今作の中心。
ふたりは姉弟のように育ったが、その実、関係性は叔母と甥である。
琴子は本庄呉服店2代目店主の養女、柿彦は3代目店主の次男。
一見複雑なようで、当人たちは全くそんなことはなく。お互い以外の家族との関係の方がよほど複雑で厄介だ。
着物に宿る記憶は、幸せな記憶もあれば暗く重い記憶もある。
戻ってこれないかもしれないと感じながらも視ずにはいられない琴子が危うく感じる。