あらすじ
高校二年生の真緒と暮らす祖母・千絵の仕事
は、割れた器を修復する「金継ぎ」。進路に
悩みながらもその手伝いを始めた真緒はある
日、引き出しから漆のかんざしを見つける。
それを目にした千絵の困惑と故郷・飛驒高山
への思い。夏休み、二人は千絵の記憶をたど
る旅に出る――。選べなかった道、モノにこめ
られた命。癒えない傷をつなぐ感動の物語。
感情タグBEST3
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あたたかな物語だった。それぞれの生きる道、覚悟。千絵さんは「覚悟が足りなかった」とよく言っていたけど最後に納得できてよかった。金継ぎの仕事の素晴らしさのにじみ出る作品だった。
髙山へ、大子へ行きたくなった。
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祖母が行う金継ぎに興味を持った孫娘が、漆に関わっていた祖母の人生に触れていくというお話で、あわい恋物語もあって引き込まれる。祖母、母、娘の3人によるやさしいストーリーで、ゆっくり読めた。
つながっている
過去から今とつなげていただいたように今から未来へとつなげなくてはならないものがある。
つなげるためには覚悟が必要。
その覚悟が未来への希望となったら
とても幸せなことだと思いました。
閑話休題
学生時代にはお世話なった先輩がいた。
この小説を読んで急に思い出しました。
もう一度会ってあらためてお礼を言いたいと思ってネットを調べたら10年も前に亡くなっていました。
世の中は便利になり、どんなところにも簡単に行けるようになりましたが、
会おうと思わなければ、さらに、会うために行動しなければ、会えないままになってしまうことを強く感じました。
先輩によく淹れていただいた酸っぱさのあるキリマンジャロのコーヒーを飲みたい。
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漆に関わる仕事を通して、縦へ横へとあたたかく「繋がる」物語。ストーリーも文章も丁寧で素敵です。
高山にも大子にも、改めて行ってみたくなりました。我ながら影響されやすいなーと思います(笑)。
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祖母、母、孫とそれぞれの視点からの話があってそれがとても良かった。旅も実際しているけど、時間軸での旅もしているよう。
ものづくりには温かさがあるなぁと改めて感じた物語だった。
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ほしおさなえさんの著書は、いつも目にしているものの新たな側面を見せてもらえる。和紙だったり、この作品では漆の工芸だったり。失われつつあるものたち。本当はもっと大切に受け継いでいかなきゃいけないんじやないのと思わされる様々なものたち。生活に追われて忘れがちなものたち。そういうものが沢山あること。その現状に自分は何ができるのかなぁ…。
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いつも数値の睨めっこしている仕事のせいか、
漆を生き物とみなして働く人たちに
ぼんやりとした憧れが。
大変に決まってるけど、カッコいい。
家族の話なんだけど、
印象に残ったのはこっち。
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金継ぎと漆工をめぐる、3世代の女性の物語。
金継ぎに漠然とした興味があったので読んでみた。
物語とは別に、金継ぎや特に漆に関して知らなかった知識を知ることができた。
章によって語り手が異なるのも面白い。
「飛騨春慶」が気になって検索してみた。素朴で日常に馴染みそうな漆器もあるんだな。
漆器が樹木の骨(木材)と血(樹液である漆)から出来ていると書いてあって、すごい表現だと思った。生き物そのものなんだなと、これから漆器を見る目が変わりそう。それと同時に職人が減っていることは残念に思ったけど、自分もそういうものを大切にして購入していかないと、文化は守れないのだなと反省。
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金継ぎの家、というタイトル通りです。
一般的に金継ぎと呼ばれる、漆を使う繕い。
個人で細々と金継ぎを請け負う、熟練の、80代の千絵の物語を中心に、千絵と二人で暮らす高校生の孫娘、真緒との交流、故郷の飛騨高山、漆の生産地と、静かながら、ドラマチックに物語は進みます。
語り手も、千絵と真緒とで交代するのですが、プロローグとエピローグだけ、単身赴任中のバリバリホテルウーマンである娘の語りで、千絵や、真緒の輪郭がわかるのも面白いです。
千絵は、繕うことに、愛も誇りも誠実さも持っているけれど、女性ならではの、柔軟さ、優しさ、気楽さも持っており、とても好感が持てます。
金継ぎや漆に全く興味がないと、厳しいかもしれませんが、私にとっては、物語としても面白く、知識も得られてためになり、一石二鳥な一冊でした。
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ほしおさなえさんの物語は優しい気持ちになれる。読み進めていくうちに、日本の和の美しさを改めて見直したい気持ちにもさせてくれた。金継ぎは、金だけで継いでいるのではないということや、漆がどうやってできるかとかとても興味深かった。金沢へも行きたいし、飛騨春慶も実物をみてみたい。旅にでかけたくなった。
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ほしおさんらしい、伝統工芸とそれにかかわる人々を温かく描いた小説。
今回は少女時代を飛騨高山で過ごした縁で金継ぎをする女性千絵と、キャリアウーマンの娘結子、そしてその娘の高校生真緒の三代を軸に展開する。
金継ぎの技はもちろん、漆の特性、春慶塗の特徴、そして最近の漆畑を守る人々のことまで、丁寧に描かれる。
夫の浮気を耐え忍び、金継ぎにのめり込んだ千絵の世代から、女性の生き方が移り変わっていくことも、一つのテーマのようだ。
ちょっと残念だったのは、語り手の個性がわかりにくいことか?
三世代の女性たちが、章ごとに語り手を務めるのだけれど、ぼんやり読むと語り手は誰なのかわからなくなってしまう。…私だけかもしれないが。
まあ、進路に真剣に悩み、工芸に興味を持つ真緒に、ギャル語で話してほしいとは思わないけれど。
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なんだか偶然なんだけど
ここ最近3冊連続で孫娘andおばあちゃんの本です
人生の終わりを考えるこの頃なので
無意識に選んじゃったか?本に呼ばれたか?不思議な感じ
ほしおさんの工芸シリーズのような小説は
その土地を旅しているようでいいですね
自分は孫娘とおばあちゃん、どちらの立場にもなれる
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金継ぎがどういうものかも知らないで読んだけど、漆のこととか、知らない事をたくさん知れて勉強になったし、面白かった。
金継ぎをした器を見てみたい!!
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ほしおさなえさんの作品は題材がまず惹かれるものがありますね。これまで大事にされてきたまちの文化や技術や人の気持ちなどなど。
今回の作品も一度はやってみたいと思っていた金継ぎの話。まずは金継ぎしたいと思うほどに使い込んだお気に入りの器が必要かなぁ。
三世代の女性たちの生き方や思いとともに、金継ぎについても非常に詳しく解説されていて、読みやすい物語でした。
結子と真緒の中間にいる自分は、これから仕事と生き方とどうしようか…そんなことも考えさせられました。
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祖母が孫娘と共に祖母の故郷を訪れる。
それは祖母の古い記憶を辿る旅でもあった。
いいな、こういうの。
私も年老いた時にそんな旅をしてみたい。
祖母が生業としている金継ぎ。
器等の欠けた部分を繕うその仕事は、欠けた部分を直して元通りにするだけでなく、敢えて色等も変えて継ぎ目や繕った跡を残し、新たな景色を楽しむものだという。
人生も同じだ。
思い通りにいかないからといって無理に繕う必要はない。
継ぎ足して変えていってもよいではないか。
目の前に伸びる道を真っ直ぐ進めばよいと思っていたのに、思いがけず予想外の方向へ曲がることもある。
そんな時は元通りの方向へわざわざ戻らなくてもよいではないか。
曲がったその先にあるものがその人にとって新たな道標となることもある。
金継ぎのように、素敵な器に生まれ変われるかもしれない。
祖母・母・孫と三代の女性の生き方はその時代背景で異なるものとなった。
幼い頃の思い出にすがりたくなることも時にはあるけれど、各々の行きたい道を手探りで歩む三人の姿はとても清々しかった。
ほしおさんの物語は柔らかくて優しい気持ちになれる。
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物作りって素晴らしい。
伝統を復活させたり、それを引き継いでいくことは大切。壊れたから捨てるではなく直してそこが新たな景色になるというところが一番印象的だった。
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金継をする祖母、ホテルに勤める娘、高校生の孫の、それぞれの生き方を丁寧に描いた物語。
飛騨高山から大子へと、祖母の思い出の人を追う祖母と孫の旅。そこへ娘が合流し、今まで胸にしまっておいた思いを互いに語る。
派手さはないが、胸に染み入って引き込まれた。
漆に関わる人達の仕事ぶりを読みながら、以前思い切って購入した拭漆のお椀の美しさを思い浮かべた。これからも大切に使おうと思う。
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この作者ならではの、あたたかで芯の通った女性の生き方が清々しい。
金継ぎという地味な仕事の中に自分なりの意義を見つけて技術を継承していく孫娘の真緒。
女三代の人生には、それぞれ葛藤も諦めもあったが、またそれぞれに希望もある。
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この作者さんらしい暖かな世界観。漆や飛騨春慶や金継ぎの知識がいっぱい詰まってるのに読みやすい。結局修次さんに会えなかったことは残念だっただろうけど、行ったことで色々な気持ちの整理がついたんだろうね。今の世の中、壊れたら捨てるのが普通で修理する方が高くつくから、金継ぎを頼むこと自体がすごく贅沢なことなんだろうけど、きっとそうやって繕った茶碗には新品にはない深い味わいがあるんだろうな。この作者はそういう廃れそうだけど残したい技術に心惹かれるんだろうね。
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強き者、汝の名は…
きちんと後悔しているひとって、格好いいなぁ。
ちゃんと後悔する為には、勇気を出して踏み込んで、そこにあるものを受け止めて精査して、自分のしたことを噛み締めて、
そこから、出来得ることをすべて尽くして。それでも届かなかったところに、ほんとうの後悔があるんだろうなぁ、と。
そうして、ほんとうの後悔をしたからこそ、
その後悔は、ひとに渡せる形になるのだろう。
継承する、ということを強く感じる物語でした。
直近に読んだ弔堂/京極の、あの世論と云うか、わたくしの死んだあとの世界、という考え方に繋がるものがあって。
こういう偶然というか、何気なくテーマが繋がる、みたいなのも本読みの醍醐味ですね。
単純に、そのときこころに引っかかっているものを映しているだけなのかもしれないけれど。
ところで三日月堂のときも感じたけれど、時折出てくる非常に女性的な男性像、というのが、苦手。
なよなよした男、ってわけじゃなくてね?
なんというかな…女性から見た男性像と、男性から見た男性像の乖離というか…
いつも、そんな単純じゃねぇって、と思ったりするんだけれど、それだって結局自己弁護なんだよねぇ。だってそう見えてるんだったら、それに対して、負うものは生まれるわけで。
そんなつもりじゃなかった、というのは…まぁ、通用するところには通用するんだろうけど…うーん。法の抜け道、みたいな気がする、それは。
きっと男の女の、と云う問題ではなくて、発露の方法が偏る…というか。表面的な部分、仕上げは同じでも、手法が違っている、というか。
あぁ、綺麗だなと思った柄が、実は丁寧に、丁寧に繕われた傷跡だったりすることも、あるのでしょう。
その姿はやっぱり格好いいので、☆3.6。
Posted by ブクログ
2025/09/29予約
壊れても修繕して使う。大切なものの思い出も一緒に残せる。手間がかかっても金継ぎで補修して今までより素敵になってまた一緒に時を過ごせるって豊かだなぁ。コスパタイパと対極の価値観の中で、ゆっくりとした読書時間を過ごせました。
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今回のほしおさんは、器を繕う金継ぎ(というのだな。初めて知った)から始まるお話。
夫亡き後に金継ぎをしながら暮らす祖母と、両親が離婚した後に母とともに祖母の家に越してきた高2の孫・真緒を中心にした物語は、おばあちゃんの人生の振返り+真緒の未来を模索する、それぞれの“深い旅”を中心にして、金継ぎ、とりわけ漆に関する蘊蓄を加えて、飛騨高山観光の見所を添えた作り。
大きな起伏はなくても要所要所ではうまいこと締められる。君枝さん夫婦のカフェオレボウルを巡るエピソード、修次さんから渡されたかんざしに秘められたおばあちゃんの気持ち、修次さんの森を見てもう一度漆を掻こうと決めた谷口さんの思い、それぞれに老いて人生を振り返る人の心情がなかなか沁みる。
サラサラと読め深みを感じるところまではなかったが、“うつくしいもの”が人の心に与える力には共感できた。
高山には一度行ったことがあるが、また行ってみたいと思った。
(2025.2.2追記)
後から読んだ配偶者から我が家にある菓子器が飛騨春慶塗だと教えられた。
なんでも、嫁入り道具として持ってきたものらしく、他にも茶托やお盆も出して見せられ、へぇ~となった。
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真緒は高校二年生。母の結子は金沢のホテルに単身赴任中で、今は祖母の千恵と二人暮らしだ。
祖母は、漆を使って壊れた器を繕うこと(金継ぎ)を仕事にしているのだが、夏休みに千恵の仕事を間近に見た真緒は、少しずつ金継ぎの作業を手伝い、深い満足感を知るようになっていった。
ある日、千恵が大切にしてきた紅春慶の簪をきっかけに、ふたりは千恵の生まれ育った故郷・飛騨高山への旅に出ることに。
千恵、結子、真緒の三代の女性たちが交代で語り手となって、それぞれの時代の制約の中で、自らの思いを胸に、喜びをもって打ち込める仕事を見いだしてゆく過程が清々しい。
何もかもが壊れてしまった戦後の混乱期や、夫の裏切りに傷ついた時、“美しいもの”に心を支えられてきたという千恵。
そういうことって確かにあると思う。
漆の木を育て、木を傷つけて漆を得て、何度も繰り返して仕上げる漆工芸。
割れてしまった大切な器を繕って、思い出をも再び繕い蘇らせる金継ぎ。
丁寧な手仕事から生まれる美と、人の手を経てきたものを大切に慈しむ心。
そういうことを忘れずに日々を過ごせたら…
…と、この頃、ついつい食洗機OKの素っ気ない器ばかり使ってしまっていることを、少し反省。
Posted by ブクログ
漆をめぐって親娘3代の目線でそれぞれの葛藤が描かれている。
特に将来のことで迷いがあった孫の真緒が、物作りに目覚めていく過程がよかった。
祖母の金継ぎの手伝いをきっかけに「繕い」の奥深さを知り金継ぎに興味を持ち、高山〜大子の旅で伝統工芸に携わる人々に出会うことで自分のやりたいことがはっきりしていく。その成長の姿がとてもキラキラしていて素敵だった。
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祖母のやっている金継ぎを手伝ううちに漆に興味を持った高校生の真緒.祖母の実家が塗師だったことや祖母の大切にしている飛騨春慶の紅春慶のかんざしに纏わる思いなどを知って祖母とその過去を探す旅に出る.二人の大事にし合う心や物に読みながら癒されていく.伝統工芸の持つ力強さをそこに感じた.
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金継ぎ自体は知っていたけれど、漆が湿気を吸って固まるから梅雨時期のほうが適しているというのは驚き。
何事もそうだけど、今の当たり前を支えているのはトライ&エラーを繰り返してきた先人の知恵の結晶なんだなぁと改めて感じる。
Posted by ブクログ
金継ぎの魅力が、おばあちゃんの人生の深みと共に描かれる。
金継ぎに興味があったので、金継ぎのやり方や、完成まで半年以上かかること、漆の生産地がどんどん減っていることなどがとても興味深かった。
Posted by ブクログ
なんということないストーリーですが、金継を少しかじっている身としては興味深い内容。高山飛騨春慶塗師の家に育った金継師の祖母から孫が漆の扱いを習う。
最後には2人で漆の産地、茨城の大子まで旅行に行き漆掻きまで見学する。ネットで調べると、今も漆を植樹して、漆掻き、木地作り、漆塗りまで全て自分でされる木漆工芸家の方が実際に大子にいらっしゃるのですね。漆は一度掻いてしまえば伐採処理しなくてはならないし、新しく植樹しても成長するまでに10年はかかる。たいへんな作業だ。でも日本産漆の伝統を守ってくださる方がいるから、日本の高い技術で質のいい漆器を産み出していけるのだ。感謝です。
Posted by ブクログ
「金継ぎ」という職業を題材に、祖母の千絵、娘の結子、孫の奈緒の3人の視点から、現在と戦後の女性の働き方・生き方を旨く表現しているお話だなと思った。
高山で暮らしていた頃の、かんざしに閉じ込めていた千絵の想いが、高山で思いを辿ることで外に出て来て、その想いが、地味なんだけど、特に印象がある訳ではないんだけど、凄く美しく描写されているように感じて、きれいな想い出を辿る物語だったなと、少し胸が熱くなりました。
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割れた器を修復する「金継ぎ」。金継ぎという言葉を始めて知りました。
孫の高校生真緒は、金継ぎをする祖母千絵に仕事を習い始める。その中で、祖母の思い出、会いたい人に会う旅に二人で出る。
金継ぎは割れた陶器をつなぐだけではなく、持ち主の思い出もこめるもの。
ステキな仕事だなと思った。
金継ぎの写真をネットで探してみたが、どれも割れたものとわからない、そのものの模様のような感じになっている。本の中で、元通りに戻すだけではなく、新たなデザインとなるようなことが書かれていたので、こういうことかと納得できた。
私の母もどこか行きたい場所・会いたい人はいるのだろうか。ふと気になった。