あらすじ
高校二年生の真緒と暮らす祖母・千絵の仕事
は、割れた器を修復する「金継ぎ」。進路に
悩みながらもその手伝いを始めた真緒はある
日、引き出しから漆のかんざしを見つける。
それを目にした千絵の困惑と故郷・飛驒高山
への思い。夏休み、二人は千絵の記憶をたど
る旅に出る――。選べなかった道、モノにこめ
られた命。癒えない傷をつなぐ感動の物語。
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Posted by ブクログ
祖母が孫娘と共に祖母の故郷を訪れる。
それは祖母の古い記憶を辿る旅でもあった。
いいな、こういうの。
私も年老いた時にそんな旅をしてみたい。
祖母が生業としている金継ぎ。
器等の欠けた部分を繕うその仕事は、欠けた部分を直して元通りにするだけでなく、敢えて色等も変えて継ぎ目や繕った跡を残し、新たな景色を楽しむものだという。
人生も同じだ。
思い通りにいかないからといって無理に繕う必要はない。
継ぎ足して変えていってもよいではないか。
目の前に伸びる道を真っ直ぐ進めばよいと思っていたのに、思いがけず予想外の方向へ曲がることもある。
そんな時は元通りの方向へわざわざ戻らなくてもよいではないか。
曲がったその先にあるものがその人にとって新たな道標となることもある。
金継ぎのように、素敵な器に生まれ変われるかもしれない。
祖母・母・孫と三代の女性の生き方はその時代背景で異なるものとなった。
幼い頃の思い出にすがりたくなることも時にはあるけれど、各々の行きたい道を手探りで歩む三人の姿はとても清々しかった。
ほしおさんの物語は柔らかくて優しい気持ちになれる。
Posted by ブクログ
この作者さんらしい暖かな世界観。漆や飛騨春慶や金継ぎの知識がいっぱい詰まってるのに読みやすい。結局修次さんに会えなかったことは残念だっただろうけど、行ったことで色々な気持ちの整理がついたんだろうね。今の世の中、壊れたら捨てるのが普通で修理する方が高くつくから、金継ぎを頼むこと自体がすごく贅沢なことなんだろうけど、きっとそうやって繕った茶碗には新品にはない深い味わいがあるんだろうな。この作者はそういう廃れそうだけど残したい技術に心惹かれるんだろうね。
Posted by ブクログ
強き者、汝の名は…
きちんと後悔しているひとって、格好いいなぁ。
ちゃんと後悔する為には、勇気を出して踏み込んで、そこにあるものを受け止めて精査して、自分のしたことを噛み締めて、
そこから、出来得ることをすべて尽くして。それでも届かなかったところに、ほんとうの後悔があるんだろうなぁ、と。
そうして、ほんとうの後悔をしたからこそ、
その後悔は、ひとに渡せる形になるのだろう。
継承する、ということを強く感じる物語でした。
直近に読んだ弔堂/京極の、あの世論と云うか、わたくしの死んだあとの世界、という考え方に繋がるものがあって。
こういう偶然というか、何気なくテーマが繋がる、みたいなのも本読みの醍醐味ですね。
単純に、そのときこころに引っかかっているものを映しているだけなのかもしれないけれど。
ところで三日月堂のときも感じたけれど、時折出てくる非常に女性的な男性像、というのが、苦手。
なよなよした男、ってわけじゃなくてね?
なんというかな…女性から見た男性像と、男性から見た男性像の乖離というか…
いつも、そんな単純じゃねぇって、と思ったりするんだけれど、それだって結局自己弁護なんだよねぇ。だってそう見えてるんだったら、それに対して、負うものは生まれるわけで。
そんなつもりじゃなかった、というのは…まぁ、通用するところには通用するんだろうけど…うーん。法の抜け道、みたいな気がする、それは。
きっと男の女の、と云う問題ではなくて、発露の方法が偏る…というか。表面的な部分、仕上げは同じでも、手法が違っている、というか。
あぁ、綺麗だなと思った柄が、実は丁寧に、丁寧に繕われた傷跡だったりすることも、あるのでしょう。
その姿はやっぱり格好いいので、☆3.6。