あらすじ
母の死を機に生きる意味を見いだせなくなった槐は、川越で染織工房を営む叔母の家に居候していた。そこに、人気の女性画家・未都の転落死事件に巻き込まれ、心を閉ざした従兄弟の綸も同居することに。藍染めの糸に魅了された綸は次第に染織にのめり込んでいく。ある日不審な男が現れ、綸が未都の最後の言葉を知っているはずだと言う。死の謎を探りながら、槐は「なぜ生き続けなければならないのか」という問いに向き合っていく――
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草木染め、染織への興味が深まりました。
藍染めの「藍」が生きていること、寿命があることを初めて知りました。
植物の生と、人間の生。
命について想いを馳せる物語でした。
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草木を染め、糸を織る。
死を恐れる気持ち、それでも生きたいと思う気持ちを見つめること。人生を途切れずに織っていく決意をもらえた気がした作品だった。
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染織を通じて転落死の謎を解く話。何者にもなれない、空っぽな自分でどうやって生きていくのかがテーマ。瑞々しさと絶望の隣り合わせ、それでも生きていく。
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進路や就職。子が苦労しないように、「何者かになれ」と願い、言い聞かせる親。きっと今の世の中、少なくはないでしょう。
そして母に言われたように進学し、就職した槐はコロナ禍で職を失います。そこで何者にもなれてない、虚無感の中で日々を過ごします。
私の母は存命だし、私自身も職は失っていません。それでも自身と重なる部分はすごく大きい物語でした。
またこの物語を大きく占める染色。
藍建ての部分がすごく印象的でした。同じ藍でも、最初に染めたものと、最後に染めたものは全く違います。じっさいに画像検索すると、驚きます。
それでもたしかにどちらも藍で染めたことに代わりはありません。
この物語を通して、度々でてくる「死ねないから生きている」だけれども、それは「確かに生きている」ということ。それは藍で染められた「瓶覗色」に等しいものに感じました。
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手仕事の世界を描いた話が好きなので、川越の染織工房を舞台にしたこの物語は、とても魅力的で一気に読んでしまった。
母の死をきっかけに叔母の工房に居候するようになった槐は、初めて藍染めをしたとき涙を流す。「藍はなまなましいから触れるとその人の奥にあるものが外に引っ張り出されることがある」そうだ。少し恐ろしいようなすごい体験だ。織るのは歌ったり踊ったりするのと同じで、心を解放することだというのも魅力的でぜひ体験してみたくなった。
母の死、女性画家の死、女性画家の死に巻き込まれて心に傷を負った大学生の従兄弟・綸…暗くて重苦しい部分もあるが、最後は希望の灯りが見えて良かった。
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ほしおさんと言えば、柔らかい雰囲気で優しい作品のイメージ。
本作はそんな印象とは少し違っていて、全体的に薄いモヤがかかっているような感じ。心の機微や「生きること」について描かれています。
こんな作品も書かれるんだとちょっと驚きました。
ずっと「生」と「死」を意識させられていた。
「染織」という世界の奥の深さとその魅力を描きながら、無気力な槐と従兄弟の輪が「生きること」に向き合い、成長していく姿が描かれています。
みんな何かが足りなくて、迷い、苦しくなりながらも今を生きている。
彼女たちの抱えている闇や不安定さから目を離せなくなってしまいました。
人生何があるかわからない。何が良いかなんてわからない。誰かにとってのベストが、別の誰かにとって必ずしもベストだとは限らない。
目に見えている姿だけが全てじゃないし、道はいくつもある。
ただ、良いと思える選択をしていくだけ──。
誰もが自分なりの歩みで、人生を一歩一歩進んで、楽しさや小さな幸せを感じ、肯定的に生きられたらいいなと思う。
槐に輪、ふたりが自分の人生を前向きに歩めるようになったことにホッとした。
個人的に染織家という職業に憧れと興味がある。以前体験した“さおり織り”で目にした、多種多様な糸が壁一面に並んでいる光景は本当に美しかった。
草木染め、藍染め、元々興味がありましたが更に興味が増しました。
表題が心にしっくりくる。
静かで、深い物語でした。
『そもそも、才能というのは世界からのズレなのだ。人とちがうから才能があると言われる。それ自体が苦しいことなんじゃないか、と思う。』
『先に道があったんじゃなくて、歩いたところが道になった。』
『だれかと手を繋がないと越えられない壁もある。おたがいにわかりあうためじゃない、壁を越えるために手を繋がないといけないときがある。』
「染織」「織物」の世界を描いた作品を読むのはは、下記とあわせてこれで4冊目。
雲を紡ぐ 伊吹有喜
野生の風 村山由香
いろは匂へど 瀧羽麻子
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草木染めと機織りのお話と思って読み始めたら なんだか志村ふくみさんの話に似ていると思っていたら やっぱりそうだった。
少し前に体験した染めと織りの体験を思い出した。
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母の死をきっかけに生きる意味を見いだせなくなった槐は、川越で染色工房を営む叔母の家に居候していた。
そこに転落事故に巻き込まれ、心を閉ざしていた従兄弟の綸も同居をすることになる。
綸は、祖母が生きていた頃に機織りに興味を持ち織ったこともあり、藍染めの青の糸に魅了されてから染織にのめり込むようになり、少しずつ槐や叔母とも会話するようになる。
ある日、槐は不審な男につけられるようになり…、綸に助けを求めたところ、実は綸のことを探っていたことがわかり…。
草木で染め出した糸を織り作品を生み出していく世界観に引き寄せられた。
「生きる」ことの意味などないと思いながら一日をなんとか過ごしていた槐が、綸の染織や織り物に対する熱い思いを知り、自らの気持ちも変化していく様子がわかった。
まぼろしを織る…とても素敵な言葉だと感じた。
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川越の染織工房を手伝いながら「なぜ生き続けなければならないのか」という問いと向き合っていく物語。答えは見つからないまでも、読後は少しだけ、前を向けたようなすっきりした気分に。主人公達が「自分の生きる意味がわからない。死ぬ気力もないから生きている」ともがく姿には、数年前の自分を見ているようで共感した。染織の世界にも興味が持てた。
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生きるとは、自身の存在意義とは、、そんな思いに絡め取られる事のある主人公、槐。
これは、私の思考をトレースしているのかと思う程に共感する部分があったのですが、、
生きていく事を前向きに捉えられた終わりでよかった。
染めと織物の世界観にも触れられて読み応えありました。漢字難しかったけど。
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最初、槐の無気力な感じに違和感がありなかなか作品世界に入り込めなかった。倫がやって来て、色々事件に巻き込まれ変わていく。
紬についても、染め物についても全然知らない世界だった。ほしおさんの本は伝統工芸など新しい世界を知ることができて楽しい。
そしてこの作品も川越。行ってみたいが膨らむ。
夢まぼろしを追いかけて今日も生きていこうと思った。
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紬について無知だったが、なるほど~と納得。
草木染のことも初めて知ることばかり。
藍のすごさにも驚いた。
ほしおさんの小説から、和紙、そして水引のことに関心を持ち、今は梅結び三昧の毎日。
新しい世界が広がって、楽しい。
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この主人公はひねくれてるねーと思いながら読んでいたが、それは本心を隠すためだったと最後に分かる。死を恐れ、生きたいと願う自分を否定するのに必死だったのだと。存在意義などどうでもいい、ただ生きているだけでいい、と私も思う。
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染色(草木染)と織物の世界に満たされながら、何者かになれという母の言葉に縛られた主人公の気付きと再生の物語。また、彼女のいとこの落下事故の巻き込まれによるその後の展開も、少しミステリータッチでハラハラさせられた。
祖母の作品「御神渡り」など登場する色々な作品は創造するだけで美しい。
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存在の意味について
今までのほほんと生きてきて考えることもありませんでした。
これから自分の人生、少し気持ちを変えてみようと思いました。
草木染めや手織りの素晴らしさも印象に残りました。興味津々です。
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ずっと、村山早紀さんの小説だと思って読んでいました。
・・・村山さん、やたら死ぬことばかり云って、人生に否定的じゃん、
(同世代なのに止めてよ)
どうしたの作風を変えたの?と、変だ変だと思いながら、
ラストまで。
巻末の著者プロフィールで、
「あ、ほしおさんかぁ・・・」と納得した次第。
お粗末!
肝心の小説は・・・
村山さんなら(違うって!)★3、
ほしおさんなら★4かな~
限りなく3に近いけれどw
というのは・・・
二十代のアルバイト女性が
染織家の親戚の家で、人生に迷いながら
生きることを問い続ける・・・というお話。
わたしの年齢だと、どう読んでも、
「志村ふくみ」さんのエッセイで読んだような内容が多くて・・・
何より、人生に迷っている時期はとっくに過ぎたし、
生きることに疑問なんて抱いていられないんだよね、もはや。
必死なのw
若い人が<志村さんのような>世界にハッとして、
生きることに、ほんのちょっとだけでも前向きになる分には
良い作品なんじゃないかな。
昭和生まれのわたしには、もはやもうね~~ww
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ほしおさなえは「三日月堂シリーズ」しか読んだことがなかった。
三日月堂シリーズは優しくて温かい話だけど、この作品は全体的にちょっと重い。
でも良い話だった。
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母の死後、生きる意味が見いだせずにいる20代後半の女性、槐(えんじゅ)が主人公。川越で染織の工房を営む叔母の伊予子と、不慮の事故で心を閉ざしている大学四年生のいとこの綸(りん)との暮らしのなかでの物語でした。
各章のタイトルが草木染の色の名前です。読んでいるうちに、草木染と手織りが特徴の伊那紬の色の美しさや繊細な織り目を実際に見てみたくなりました。それぞれの色が、木の枝や根などの自然の素材で作られたものだということや、どうやって染めるのかとか、手織りの織り方などが詳しく書かれていました。
小説では、三人で暮らすうちにそれぞれが生きていく方向を見つけることが出来ました。信じられないような出来事や、親子関係の問題や、簡単に乗り越えられないことが起きても、救いはどこかにあるのかもしれないと思いました。自然の美しさを感じられること、夢中になれるものがあること、自分を必要としている人がいると思えることがあれば、人はなんとか生きていけると教えてくれたように思いました。
序章
一章 夜叉五倍子 (やしゃぶし)
二章 臭木(くさぎ)
三章 藍
四章 蘇芳(すおう)
五章 紫根(しこん)
終章
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高名な染織家の祖母を持つ槐(えんじゅ)はコロナ禍で失職し、叔母が祖母から引き継いで営んでいる染織業を手伝いながら暮らしています。そんな彼女が叔母や従兄弟と関係する中で考え成長する物語りだったと思います。全体の流れが既定路線のようでもあり、また物語中のエピソードも私としては期待ほどの盛り上がりにならず星3つとさせていただきましたが、読みやすく良書と感じました。
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染織工房を営む叔母の家に居候をする槐と綸の話。ちょうど藍染体験をしてたから分かる、という共感が嬉しい。機織りしてみたくなる。そして明確な目標や誇れる何かがなくても生きていくことを肯定してくれる。機織りの音が聞こえるかのような空気感が伝わり好き。
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織物の世界を知りながら、主人公・槐と従兄弟・棆が生死と向き合う物語。
生きること、死ぬことが、製糸、染物、機織とリンクさせているのが感慨深い...
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ほしおさん、舞台はおなじみ川越で今回は染織工房。主人公の槐(えんじゅ)という名前をはじめ、織物の機械に使う道具の名前の読み方が難しくなかなか読み進められずにいましたが、草木染や藍染の奥深さ、特に藍染は生き物だという所はとても勉強になりました。
母を亡くし生きる意味を見いだせなくなっていた槐。そして、転落死事件に巻き込まれて心を閉ざしていた綸。2人とも親の考えや言葉に縛られていたんですよね。綸の織る青の帯を見てみたい。才能があるって素晴らしい。私は槐同様に何の才能も特技もないけれど、生きてるだけで丸儲けです。
Posted by ブクログ
生きること、死ぬこと。たまたま2作続いた。日々、漫然と暮らし、あまり深く考えないが…目指すものが無くても生き続けられるし…大上段に構えると苦しいだろうな。「僕たちはただ誰かに何かを渡すために生きている」うーむ。
Posted by ブクログ
自分は生きていていいのか、生きる価値、意味はあるのか…。母の死からの喪失感をもつ槐。才能ある画家の転落死に巻き込まれた後、心を閉ざしていた綸が、糸を染め織る職人の伊予子の下で再生する物語。派手な物語ではないけど、こうやって心は回復し、人は前に進むのだなぁと思う。
Posted by ブクログ
槐は、川越で染織工房を営む叔母の家に住む。
亡くなった母は家族と折り合いが悪く孤独に生き
槐を残し亡くなった。
生き辛さを抱えた者がもうひとり。
従兄弟の綸も叔母の家に身を寄せる。
唯一無二の作品を生み出すこと。
その難しさも含め染色の世界に魅了される。
ただ、槐や綸に共感できないことも多かった。
不審な人物に跡を付けられ槐は切りつけられる。
その恐怖は相当だと思う。
付け回す理由が知りたいためだけに
自分を切りつけたその男を問い詰めることができるだろうか。
転落死をした画家・未都と綸の出会いも唐突すぎる気がした。
息詰まる日々を過ごす二人が
それぞれの何かに惹かれたということか。
職人技は知らないことが多くおもしろく読んだ。
私には心理描写が薄く感じられ少し残念。