ほしおさなえのレビュー一覧
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このシリーズもいつの間にか完結していた。4,5,6巻をまとめて読む。
終わってみると、このシリーズは川越という場所を主役にした壮大な群像劇だったな、と思う。活版印刷三日月堂も出てくるし、藤崎記念館の名は出てこないが、和紙の店も出てくる。(このシリーズも最後まで読んでいなかったので忘れてるが、そちらを読めばまたこれとリンクしているのかも)
家の声が聞けるというファンタジーに関しては、今は、遠野守人の創作のモチーフだったのではと思える。守人は喜代さんも家の声が聞けるときいて、喜代さんとの確かな繋がりを覚えるが、それも創作へと繋がっていく。ファンタジーは、守人の心の中で深く意識されるが、現実の人間 -
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ほしおさんと言えば、柔らかい雰囲気で優しい作品のイメージ。
本作はそんな印象とは少し違っていて、全体的に薄いモヤがかかっているような感じ。心の機微や「生きること」について描かれています。
こんな作品も書かれるんだとちょっと驚きました。
ずっと「生」と「死」を意識させられていた。
「染織」という世界の奥の深さとその魅力を描きながら、無気力な槐と従兄弟の輪が「生きること」に向き合い、成長していく姿が描かれています。
みんな何かが足りなくて、迷い、苦しくなりながらも今を生きている。
彼女たちの抱えている闇や不安定さから目を離せなくなってしまいました。
人生何があるかわからない。何が良いかなんて -
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言葉の園のお菓子番シリーズ(三)
亡き祖母の縁で連句会「ひとつばたご」に通い始めた一葉。ポップを書きながらブックカフェに勤めて4ヶ月が経つ。
一葉の勤めるあずきブックスで少女マンガイベントが提案される。連句会でも陽一さんの句「夏のおわりのト短調聴く」がとられ、マンガ談義に花が咲く。
「大島弓子の描いた『夏のおわりのト短調』は叔母でなく、本当は母が壊れる話なのかも!」と語る小説家・上坂柚子さんは歌人の川島久子さんに連れられやって来た。
「親も弱さを持つ小さな人間に過ぎず、世界も信用ならないものだと、見え方ががらりと変わる。それが思春期でしょう」航人さんの重みのある言葉に、このマンガを読んでみた -
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ネタバレコロナ禍で閉店セレモニーもできずに閉じてしまった記念館は、川越で新しくオープンすることになる。プロジェクトチームのメンバーとして様々なアイデアを出し合い準備していくのは、大変だけれど楽しそうだった。新しい記念館には紙漉きのコーナーも作るということで美濃で紙漉きの研修も受ける。最初はもちろん上手くいかないが、2日目には「自分が自分であることを忘れて、紙漉きの世界に溶けこんでいく感じ。」を得る。心が自由になる。ものづくりはやっぱり良いなぁと思った。オープンセレモニーの司会という大役を果たした百花は、最初に記念館のアルバイトをしていたオドオドして自信なさそうな大学生の頃と比べると、立派になったなぁと
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『植物の妖怪とも称されるウツログサ。多くは無害だが人についたものは宿主の欲望を読んで成長することもある』
生まれながらに隣に穴がついてまわっていた「アナホコリ」
恋すると爪から芽が出て成長する「オモイグサ」
文字が体に纏わりつき変化していく「ツヅリグサ」
村人みなが瓢箪を背負っている「ウリフネ」
空に浮かんでいる透明な綿菓子のような「ヒカリワタ」
憑いている人、あるいは一部の人にしか見えないウツログサ。すっかり取り憑かれている人もいれば、そこにいるのが当たり前すぎて違和感を感じていない人も。
皆、見えない人たちとの疎外感や違和感を感じつつも困り果てているという感じはない。
だが様々なウツ -
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言葉の園のお菓子番シリーズの(ニ)
カバー絵は歳時記を抱いて立つ一葉。彼女を優しく包むように咲く白い花はヒトツバタゴ(なんじゃもんじゃ)です。
花の名が連句会につけられた謎が明かされるニ巻目は、生と死について、人が生きて行く意味を考えさせられました。
勤めていた書店が閉鎖して実家に戻り、亡くなった祖母、治子の代わりに連句会「ひとつばたご」に通うようになった一葉。約束事の多い連句は難しいけれど皆で巻く楽しさもわかる様になった。
連句仲間の萌さんに「手作りマーケットに出す焼き菓子に付けるタグを考えて欲しい」と頼まれ、一葉は萌さんの句とお子さんの絵を入れた豆絵本を作る。蛍さんの妹の海月さんと出会い -
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連句をテーマにしたシリーズ第五冊。
連句サークル「きりん座」との交流が深まっていく。
きりん座メンバーが、一葉の勤めるブックカフェ、あずきブックスに遊びに来たり、ひとつばたごの蛍と一葉がきりん座の定例会に顔を出して連句を巻いたり。
文芸マーケットの話が出てきた。
コミケではなく、文芸同人誌のマーケットがあるということを初めて知った。
ひとつばたごも、若いメンバーを中心に、作品集を出してみようという話にも発展する。
一葉がきりん座の雑誌にエッセイを頼まれ、若いころの父の取った夕焼けだんだんの写真と組み合わせて掲載するのが評判となっていく。
ほしおさんの作品を何シリーズか読んできたが、父親が