ほしおさなえのレビュー一覧
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今回の三作品とも心温まる物語でした。
第三章の軽井沢黄金伝説のお話。
銀河ホテルのフロント担当の三枝は夫の明大と、二人の子ども結菜と颯太と暮らしている。
弟の颯太はのんびりした性格できょうだい喧嘩でも、たいてい先に怒り出すのは姉の結菜。颯太は言い返すことはなく、たいてい黙って部屋にこもってしまう。
結菜は自己主張が強い分、わかりやすくもあった。
それにくらべると、颯太はおっとりしている。結菜にくらべると気持ちがわかりにくい。
悩んでいるときも、結菜なら自分の考えていることをあれこれ言葉を尽くして説明しようとするけど、颯太はそうじゃない。ひとりで抱えこんで、だんまりになってしまう。
颯太は中学三年生で進路を決めないといけない時期にいるが、本人から進路についてはっきりとした言葉が出てこない。
三枝は手紙室のワークショップで人生ゲーム作りの手伝いをしているときに気がつく。
人生も冒険のゲームみたいなもので、分岐のマスに来ればなにかを選択しないといけない。本当の人生ではそこに分岐って書かれているわけじゃないから、知らずに選んでしまっていることがほとんどだけど。あとになって、あれが分岐だったんだ、と気づく。
颯太がいまいるのもそういう場所だ。なにを選ぶかによって今後の人生が変わる。
きっと重いんだろうな、と思う。重くて、苦しくて、不安なんだろう。
「颯太は自分の悩みをうまく言語化できないんじゃないかな」
三枝は以前颯太について話していたとき、明大がそう言っていたのを思い出した。
「不満や不安をわけがわからない大きなかたまりに感じる人も多い、ってこと。気持ちは重いけど、なんでそうなるのかわからない。・・・君や結菜のように原因を自分の外に出して、外から見ることが出来るタイプの人は自分の感情が原因だった場合も、とにかく外に出して対象として見ようとする。・・・世の中にはそうじゃない人もいるんだよ。だだ上下に大揺れしているだけになっちゃう人。・・・身を守るためにとにかくいったんすべて遮断してしまうんだ。一種の思考停止状態。」
自分は結菜タイプだと思う。
私の友人にも自分の事をあまり表に出さない人が確かにいる。いい奴なのだが本心の部分が見えない、人との間に一線を引いていると感じていた。どうして自分をもっとださないのだろうかと不思議に思っていた。しかし、この本を読んで少しは友人の気持ちが理解できた気がする。 -
Posted by ブクログ
人の心は、その人の出会い、言葉、経験、
そこから生まれた想いなど、
幾重にも重なっていて、本人にもわからないところがある。
なぜ、こんなことをしてしまったのか、
こんなことを言ってしまったのか。
ここに辿り着いたのか。
それは、その人の幾重にも積み重ねられた
歴史からくるものなのだろう。
登場人物は、実在ではないし、
当然会ったこともないのに、
なぜか、あぁそんなことがあったんですね。
そんな想いがあったんですね。
と、読みながら語りかけたくなるような
不思議な親近感があった。
自分も、誰かの積み重なる思いの中に
優しさを一枚折り込むことのできるような
そんな人になりたいと思った。 -
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塗師の祖父がいて、今は金継ぎをしている千絵の人生を振り返るとともに、離婚した娘、進路に悩む孫・真緒と三世代の女性が描かれていました。
じんわり温かな気持ちが広がるラスト。
しばらく余韻にひたりました。
千絵のこれまで、そしてまたここからの人生に思いを巡らせ、未来への希望と期待感で爽やかな気持ちにもなりました。
この本は「金継ぎ」の文字に惹かれて手に取りましたが、金継ぎそのものだけではなく、漆器や漆について、漆の森のこと、漆掻きをする人のこと……広くその周りの世界までのぞくことができました。
読んでいて嬉しい、楽しい!
『日本には古来そうして生まれたあたらしい景色を楽しむという伝統がある。割れや欠けは自然の生み出した形だ。そこに別の色を入れることで前とはちがう景色が生まれる。』
という作中の言葉に「ちょっと人生みたい」って、ふと思いました。
マイナスに思えることも、何とか乗り越えたりやり過ごしたり、振り返ってみたら新しい道が拓けてた・新しい自分と出会えたなんてこともある。
出会いと離別、人生における大きな選択。
苦しみのなかで思い出のかんざしに支えられてきた祖母・千絵の心の内を思うと切ない。
一人一人歩む道は違うけど、祖母も娘も孫もみんなここまで来た。そしてまたここからなんだなぁとしみじみ。
幼い頃、当たり前にあった風景。景色やモノ。その奥に誰かの人生があったことに気づき、見つめることでつながりを感じることが出来る。
ほしおさんの作品なので、きっと物語もとびきりだと予想はしておりましたが、素敵な作品でした。
工芸の世界にも興味が増してきました。
『あのかんざしがわたしの生きる力だった。いままでずっと、どうにもならないことにぶつかるたびに、あの赤いかんざしを見て生きてきた。』
『全然喜べない。けど、思い返すと、宝になってる。過去をもう一度抱きしめることができた。』
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Posted by ブクログ
活版印刷のこと自体、なーんにも知らないので、大丈夫かなあ?と少し不安になりながら手に取ったけど、とてもよかったです!
活版印刷の繊細さと、登場人物達の繊細な心のヒダがとてもよくマッチしていいい雰囲気です。
店主である弓子さんのミステリアスだけど、どこまでも人に優しい振る舞いに感激しました。
★世界は森
母子家庭の一人息子の進学という旅立ち。
母であるハルさんの喜びと寂しさ。
とても心に染み入りました。
★星たちの栞
多感で繊細な女子学生二人の心のやり取りに涙しました。
活版印刷について、自分でも少し調べました。
私の人生で、これから名刺やショップカードを作ることはないだろうけど、
とても素敵でした☆
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秋になり、シリーズ(6)を手にした。
一葉や、連句会ひとつばたごのメンバーにまた逢えて嬉しい!
11月に開催される文芸マーケットに、雑誌「坂道ノート」を出すことになった一葉の父親とキリン座の大輔さん。「坂好き」で「写真好き」の二人は、根津の坂から撮影を始めて…。
「モノクロフィルムについて話す父が眩しい」
一葉はエッセイを通して若い頃の父の思いに触れる。もう一度写真を始めた父の姿を、娘として見つめる場面にじんわりさせられた。
——表現するということは、特別なものになるということとは違う。仲間と楽しくできればそれがいちばんで、仲間を大切に思うことは生きていく上でとても大事なことだよ。 (父の言葉)
一葉が勤めるあずきブックスでは、同人誌フェアやトークイベント が行われた。「アカシア」主催の詩の朗読会は、私も参加してみたかった。
文芸マーケットで雑誌を作る楽しさを知った一葉。いろいろな人と場を共有しながら成長していく一葉に今回もエールを送りたくなった。
—— 人ってみんな違うもの。おもしろいし、怖いし、でもそれがわかるとやる気が出てくる。自分も自分なりにがんばろうって!(大輔さんの言葉)
ひとつばたごでも、オンライン連句会の開催に向けて打ち合わせが始まる。
巻かれた半歌仙「近未来の月」には大切な言葉のかけらが沢山詰まっているように思えた。