長野まゆみのレビュー一覧

  • 掌篇歳時記 秋冬

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    12名の著名な作家の短編が72候の解説と一緒に読める、ある意味で贅沢な本だ.重松清の鷹乃学習(たかすなわちがくしゅうす)は父親としての最後の旅行で息子の翔太を見つめる親心がうまく描写されている.筒井康隆の蒙霧升降(ふかききりまとう)は戦後の風物詩を散りばめた彼独特の文章でしっかり意見を述べているのが良い.堀江敏幸の熊蟄穴(くまあなにこもる)は菱山の取材活動のなかで村の古老たちとの奇妙な会話が面白かった.

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    2019年12月08日
  • 掌篇歳時記 秋冬

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    物語ではなく、読書そのものと、日本の繊細な四季の移ろいを味わう一冊。初めて読む作家さんもいて楽しかった。

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    2019年12月05日
  • 学校ともだち

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    面白かったです。
    少年たちの日々と世界が、学級日誌を通して描かれています。
    学校ともだちとの生活のなかで悩みながらも成長していく少年たちが眩しい。
    そして言葉の端々から浮かび上がってくる、破壊されつつある世界。紫外線の影響で夏期は外出規制があり、普段の外出もままならない。5年後には『選抜』という制度もある…。食料などにも問題があるようです。仄かなディストピア感、好きです。
    担任のオヅ先生が素晴らしいです。厳しくも優しい、理想的な先生だなぁ。

    「きょう解決できないことがあっても、あしたはうまくゆくかもしれません。そう考えるようにいたしましょう」

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    2019年12月03日
  • 綺羅星波止場

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    面白かったです。短編集。
    「綺羅星波止場」「レダの卵」「月夜の散歩」「銀色と黒蜜糖」が特に好きでした。
    表題作は、三日月パン(パンの字が出せない…)が美味しそうなのと、熱くないほのをを立ち上らせる碧い石がなんなのか気になりました。素敵。
    「レダの卵」は、大人の女性二人組が主役というのが珍しかったです。酒店とか的士、香港…?と思いました。
    「月夜の散歩」は詩のようでした。
    「銀色と黒蜜糖」はふたりがとても冷酷で良いです。影を壊した銀色が、月彦を柘榴石にしてその紅玉の粉末を飲んで元に戻るために、黒蜜糖と共に月彦を夢の中でつけ狙うのですが、月彦が彼らに囚われているのか、それとも銀色と黒蜜糖が月彦の夢

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    2019年11月13日
  • 螺子式少年

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    面白かったです。
    百合彦も野茨も葡萄丸も、少年たちが誰も彼もレプリカだと思ってしまう、ぐらぐらする世界でした。
    野茨が本物かレプリカか見分けられない百合彦と、どちらなのか即答する葡萄丸。
    人の見る力なんて当てにはならないのかも、と思いました。
    そして近未来と懐古が混じり合う空気とディストピアな雰囲気…たいへん好みです。

    「寝ても覚めても」と、人の認識の曖昧さを感じる作品が続きました。

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    2019年11月01日
  • 天体議会 プラネット・ブルー

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    面白かったです。
    水蓮と銅貨の関係性が好き。お互いをかけがえのない存在だと思っているけれど、べたべたし過ぎない。程よい距離感です。
    おそらく、代理母なのであろうタミーやバービィが当たり前の世界はディストピア感があってよいです。そして男の子しかいない。。
    少年(名前は最後まで出てこない)は本当にオートマータだったのかな。
    鷹彦も良いです。歌声聴いてみたい。
    当て字がすごく使われているけど、近未来のような、でもノスタルジックな世界観と、繰り広げられる微かな切なさが素敵な作品でした。

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    2019年09月20日
  • 夏至祭

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    面白かったです。
    銀色と黒蜜糖、月彦にまた会えて嬉しいです。
    「野ばら」を読んでいるので、銀色と黒蜜糖が白猫と黒猫と知っている読書でしたが、ふたりが性格の違う猫っぽくて可愛いです。
    半夏生の集会も綺麗で賑かで素敵でした。

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    2019年09月06日
  • 夏期休暇

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    面白かったです。
    千波矢と葵というふたりの少年が中心ですが、桂という葵の姉もよく出てくるのが珍しいと思いました。
    自分のせいで亡くしてしまった兄を慕う千波矢と、千波矢に虐げられながらも気になる葵の関係が切ないです。
    葵が悲しすぎました。
    次に、海から千波矢の帽子を持ってくるのは葵なのかな。
    荒れた海の轟きが聞こえてくるお話でした。

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    2019年09月01日
  • 箪笥のなか

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    単行本の方を読んだのは2007/10/25になってたけど全然内容を覚えてなかった。箪笥を通して不思議ななにかが起きる、和風な話だったような…くらいの印象。
    読み直したらめっちゃ面白かったやんか。非日常のはずのものがスーンと入ってきてて、なんのことなく日常に受け入れられている平和な雰囲気がいい。あと食べ物がおいしそう。最初のラーメンと鳩のクリームパンが特においしそうだった。
    解説読んだら、文字遣いが単行本とだいぶ違うらしいんやけど、今のわたしにはこっちの方がいいな…もう若くないからなわたし…

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    2019年08月20日
  • 魚たちの離宮

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    ネタバレ

    面白かったです。
    お盆の時期は過ぎてしまいましたが、この季節にぴったりで、冷たく澄んだ世界に浸りました。
    夏宿は初めから幽霊だったのだろうし、市郎と弥彦も最後は池へ沈んだのでしょう。
    市郎が終盤まで弥彦に翻弄されていて不憫になると共に、弥彦の不安定さと傲慢さも気になります。でも夏宿の儚さに惹かれます。
    ピアノ教師が不気味でした。
    ほととぎすを鏡暮鳥と書いてあるのは何か意味があるのだろうか…素敵です。

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    2019年08月18日
  • カムパネルラ版 銀河鉄道の夜

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    ネタバレ

    カムパネルラからの視点からの銀河鉄道を紐解く……という形だが中原中也が俺の方が宮沢の事をよぉく知っているんだぜとインタビューに乱入してくる。
    むしろ中原中也が途中からメインの語り手になりつつある。
    しかし、太宰治さんの「モ、モ、ノ、ハ、ナ」があって何度みてもこれは笑ってしまう。

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    2019年08月17日
  • 夜啼く鳥は夢を見た

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    面白かったです。
    冷たい水と沼と、水笛や水蓮に涼しくなりました。
    紅於だけに生命力を感じ、頬白鳥や草一は夢の中に生きているようなふわふわとした感じでした。頬白鳥は沼に魅せられ、沼に沈み、夢遊病の草一も沼へ。
    頬白鳥が沈んだあとに咲いた青い水蓮、見てみたいです。
    紅於はこれからも生きていくのかな。
    暑い毎日の清涼剤でした。

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    2019年08月02日
  • 三日月少年漂流記

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    面白かったです。
    自動人形である三日月少年の跡を追う、水蓮と銅貨のふたりの少年の冒険でした。
    自動人形にも惹かれたのですが、水蓮と銅貨のご飯が美味しそう…という本編には関係ないところもとても惹かれました。
    列車や、プラネタリウムや海洋展覧館も懐古的で好きな世界です。
    逃亡した三日月少年たちは飛行船で三日月へ帰るのだろうか…メルヘン。

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    2019年07月14日
  • 少年アリス

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    夏が近付くと長野まゆみ作品を読みたくなります。
    再読でも、冷たく澄んでいる不思議で綺麗な世界でした。
    アリスと蜜蜂が迷い込む夜の学校、夏から秋へ変わる瞬間。星を夜空の天幕に縫い付ける。
    お話は優しいのですが、言葉の音の雰囲気とか、硬質な独特の世界です。
    初期の長野作品は恋愛色がなくて、こちらも良いです。

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    2019年06月14日
  • カムパネルラ版 銀河鉄道の夜

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    カムパネルラの視点から、「銀河鉄道の夜」を語り直す…だけでは終わらなかった。

    もっとファンタジーで、きらきらしたかんじかと思っていたのですが、中原中也(宙也?)さんの電波妨害による宮沢賢治という人の解釈とか、なんかもう小説というよりは論文みたいでした。

    読後感としては、カムパネルラよりも中也さんの印象が強かった…
    これはこれですごく面白かったですが。

    ジョバンニが幼い頃の宮沢賢治の姿であり、カムパネルラは青年時代(恋をしていた頃)の自己投影、という説は、なんというか、そんな見方があるのかと、もう一度、「銀河鉄道の夜」を読み直したくなりました。

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    2019年06月02日
  • カムパネルラ版 銀河鉄道の夜

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    表紙と装丁がとっても素敵。
    宝箱みたい。

    そして、帯に書かれた煽り文が、
    なんだかどきどきしました。
    ジョバンニの旅は終わっても
    カムパネルラの旅は続く…

    内容は、そうだな、と思うところもあれば。
    どうかな?、と思うところもありました。
    まぁ、そういうところも含めて私は面白かったですけど。

    自分の中だけにある銀河鉄道の夜の世界が誰にでもあるでしょうから、それがちょっとでもこわれてしまうのが嫌な人はあんまり読まないほうがいいのかも。
    と思いました。

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    2019年05月27日
  • 夏帽子

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    ほのぼの。
    白い夏帽子が特徴の紺野先生は臨時の理科教師。
    夏帽子ってどんなのかな?

    子狐の生徒が好き。海の少年と山の少年(子狐)の交流とか。

    あとがきに小学校の出入り口を昇降口としてたことに校正者から?マークが付いたってあって、
    下駄は一足も入ってないのに下駄箱だし、昇降口って言う。
    世代?地域性?

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    2019年05月11日
  • 夏至祭

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    ずっと積読になっていた一冊。
    たぶん10年ぐらい前に購入してる一冊。

    不思議な世界と
    綺麗な言葉と
    夏の夜にぴったりの本。

    本の醍醐味の、紙質と文字の印刷がすごく良い味を出していました。

    腕時計が落ちていたら
    それは
    不思議な世界を繋ぐ羅針盤かも。

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    2019年05月06日
  • 改造版 少年アリス

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    ネタバレ

    初めて改造版を読んだときは、こっちの方が好きかな~と思ったけど、再読したら、そうでもないかも?と思い、旧版が読みたくなって、そっちも電子書籍で買ってしまった…

    比較したら、アリスと蜜蜂が、お互いがどんな存在か想ったり、自分の弱いところについて考えたりする部分が全部削られててびっくり!行間を読めってこと?
あと、遠くを見ているアリスの横顔を蜜蜂が見ているところも好きなんだけど、なくなってる…

    文章は、初期の漢字が多くて硬質なものから、ひらがな多用の文章に変わっていて、全体のかんじは新しい方が好きかなあ。
要するにふたつでひとつだな、と思った。
改造版が出たときの「文藝」長野まゆみ特集を読み返

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    2019年04月12日
  • 夏至祭

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    上質な文体で幼い少年たちの幻想譚である。羅針盤が象徴的である。宮沢賢治の童話の影響も感じられた。夏至祭のようにはかなく、終わりがとても良かった。著者の別の作品を読みたい。

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    2019年03月21日