あらすじ
親戚の家からゆずりうけてきた、古い紅い箪笥。年ふりたそのひきだしからは、時に不思議なものたちがあらわれる。そして箪笥によばれるように、この界(よ)ならぬ人びとがわたしを訪ねてやってくる――。現実と非現実のあわいの世界をたゆたうものものを細やかな筆致で描き出し、著者の新境地を示す連作小説集。(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
姉弟の日常に起こる不思議な出来事の短編集。
ざわざわするけど癒される。
忘れたころにまた読み返したくなるお話。
もう何度読んだかわからないくらい、お気に入りの一冊。
長野まゆみの著書の中では異色で、綺麗な少年は出てきません。
読み終わりたくないなぁって気持ちで読んでいました。
続編出ないかなぁ。
Posted by ブクログ
これほど不思議な雰囲気の漂う小説。という説明がしっくりくるものもないでしょう。
次へ次へと言葉を求めていく。それは小説として求められるべき文章力なのですが、この作品では言葉をじっくりと噛みしめながらよみたいという欲求がわき上がります。
長野まゆみ先生の初期作品のような、総じてほっこり出来る雰囲気をもつ小説でした。
Posted by ブクログ
おもしろい。
こんな箪笥ほしいなあと思います。
蝙蝠の引き出しが一つであんなに不思議なことがたくさん起こったのだから、もらったのが蝶ではなく飾りが蝙蝠の方の箪笥だったらもっと不可思議なことが起こっていたのかな。
蝙蝠はドラキュラとセットになっていることが多く、不吉なものというイメージが強いですが、中国では縁起ものなのだそうです。
お店が繁盛するようにということでカステラのお店、福砂屋さんの商標は蝙蝠なんだとか。
Posted by ブクログ
子供の頃よく想像した、ドアの向こうにある異次元の世界を髣髴とさせる。
この書ではドアではなく箪笥なわけだが、異次元の世界へこちらから赴くのではなく、向こうの住人がやってくるのである。
ワクワクしながら読み進めることのできる1冊。
Posted by ブクログ
見える人の弟と、たんたんと家族をやっているお姉さん。
多少の不可思議なことには動じない。
弟のお嫁さんも動じない。
不思議な風景が、"住む場所を選ぶ箪笥"を中心に語られていく。
短編集だけれど、一編読んでは余韻にひたり、短編の数だけ日数が過ごせる本。
Posted by ブクログ
ほう、長野まゆみってこういう雰囲気の話も書くんだ。というのが第一印象。譲り受けた箪笥から現われる怪異。聞こえないものを聞こえてしまう少年期の弟、それらがすごく日本的な感覚なんです。
此岸と彼岸、夢と現、過去と現在、それらがない交ぜとなり境界線が薄れていく。しかし登場人物たちはきちんと地に足のついた生活を送っている。どちらかに片寄るのでなく、たゆたうように境界線の辺りを漂う文章が気持ちよかったです。
Posted by ブクログ
すごく好きです。ゆっくり読まないと置いていかれるような小説。たびたび登場する「あめふらし」から『あめふらし』を手に取った。リンク具合がたまりません。
Posted by ブクログ
不思議なものたちが引き寄せられてくる古い箪笥を譲り受けたことから始まる連作短編集。
ぽつりぽつりと呟く日記を読んでいるようで心地よいリズムだった。
この世のものでない存在も面白かったけれど、昔からのものを大事にする穏やかさや、新しいものや分からないことを否定しない人間性がよかった。さまざまなものと共存していると気づかされる。こういうしなやかさを私も持ちたい。
Posted by ブクログ
単行本の方を読んだのは2007/10/25になってたけど全然内容を覚えてなかった。箪笥を通して不思議ななにかが起きる、和風な話だったような…くらいの印象。
読み直したらめっちゃ面白かったやんか。非日常のはずのものがスーンと入ってきてて、なんのことなく日常に受け入れられている平和な雰囲気がいい。あと食べ物がおいしそう。最初のラーメンと鳩のクリームパンが特においしそうだった。
解説読んだら、文字遣いが単行本とだいぶ違うらしいんやけど、今のわたしにはこっちの方がいいな…もう若くないからなわたし…
Posted by ブクログ
少年が主人公の甘くてステキな言葉が詰まった作品と違い
不思議で懐かしくて優しい物語。しかも語り手は女。
不思議なものを見たり聞いたりするのは弟である。
そんな弟を、すんなり受け入れる家族がステキだ。
梨木さんの家守奇譚を連想しました。
人から人へ渡り歩いてきた箪笥。
箪笥に選ばれた者が体験する不思議。
久しぶりにホッコリしましたぁ
Posted by ブクログ
いかにも長野さん、な文章なのですが、今回はほかの作品とどこかひと味違ったように感じます。
設定に少年が出てこなかったのが、珍しいと思いました。
姉と弟の組み合わせは結構何回か読みましたが、今回の姉弟の掛け合いが一番好きです。
綺麗な文章はもちろん、いつもみたいに登場人物たちに危うい感じがしない作品だったので、安心して人に勧められる一冊です。
Posted by ブクログ
長野まゆみの初期作品を好んで読んでいた私にとって、
これはごく最近の作品となる。
読み進めるうち、不安になった。
紛れもなく長野まゆみの作品で、面白い。
でも、作家仕事の仕舞いの支度をしているような気になってしまった。
交錯し、曖昧で、美しい道具仕立てであるのは変わりない。
でも、それらすべては全く不安でないのだ。
初期作品でのこれらの要素は、永遠に続く美しい不安だった。
でも、これはまったく不安でなく、むしろ曖昧なままを良しとする暖かな曖昧だ。
安心できる作品を読んで不安になってしまった。
長野まゆみには、こういう古い日本の風景を記録せねばという義務感があるのだろうか。
Posted by ブクログ
すべてを語られてしまうほど退屈なことはない。
それは親切でも丁寧でもなく、ただ、無粋というものだ。
この世とあの世をわけなきゃいけないなんてことはなく、
あっちとこっち、ゆるゆると行き交い、交錯する。
しろとくろに分けろなんて、だれも決めていないのだから。
「私」は「弟」にくらべると、こっちに重心を置いて生きている。
それが、読者を安心させて、物語に深く入り込ませてくれる。
「弟」があれやこれや、正体不明の存在を引き寄せてしまうのは、彼がそういう存在も、あって当然と自然に受け容れているからだろう。
ただ、物語を楽しむだけでなく、いまは耳にすることもめっきり減った言葉や名称に触れられることも、また一興である。(片手に辞書があると良い)
Posted by ブクログ
「そうそう、そうなんだよな〜」「あぁ、そうだったよね〜」
小さなエピソードに妙に共感できたのは子供時代を送った「昭和」が感じられるから?
箪笥の引き出しをめぐる不思議な短編連作は、どれも郷愁を覚える心が和む作品。
Posted by ブクログ
長野作品なのに一般向けで超びっくりした! 何このほのぼのした話!
箪笥、という言葉はやはり魅力的ですね。古い空気と独特の懐かしい香りがある。それらを言葉にしたような話です。読みやすい短編形式です。
Posted by ブクログ
親戚の家から、古い紅い箪笥を譲り受けた私。
その箪笥は突然引き出しが開かなくなったり、お酒を飲んだり、あるはずのないものが出てきたりする。
風変わりな弟と共に、主人公が遭遇した箪笥にまつわる不思議な出来事を描いた短篇集。
掴みどころがない、ふわふわとした物語である。
弟のキャラクタが味わい深い。
ホラーよりのファンタジーというイメージ。
寝しなに少しずつ読んでいくのが合っていそう。
Posted by ブクログ
☆3.6
親戚から譲り受けた、古い紅い箪笥。その引き出しから時々不思議なものたちがあらわれ、また箪笥に呼ばれるように、この世ならぬ人々が私を訪ねてやってくる...。
古い紅い箪笥の影響で、現実とちょっと不思議な世界の入り混じった空間になってる。訪ねてくるのは怖いものたちじゃない、ちょっと不思議なものたち。マイペースな弟や大家さんもいい味出してる。
Posted by ブクログ
少年アリスからの読者にとっては年齢を感じさせる作風になったなぁというのか素直な感想です。
妖との遭遇が日常的に淡々と綴られていくのは長野作品らしいです。