長野まゆみのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
オリジナル版より描写が具象的に、文章が平易になってる気がする。
使われてる語彙も意識して「長野まゆみ作品らしい」ものを盛り込んでるような印象で、綺麗な装丁や最後の言葉辞典も含めてセルフパロディ的な意図が強い一冊なのかなと思った。
大きく変更されたラストにはびっくりだけど、一度発表された物語にこうやって大胆なアレンジを加えるのはまさに「改造版」って感じの面白さだし、宮沢賢治の作品が改稿を積み重ねていったのと似たものも感じる。
だいぶ印象変わったとはいえ、物語の素晴らしさは健在。
この改造版から長野まゆみ作品に触れても充分楽しめる名作です。 -
Posted by ブクログ
鉱石を題材に、1つ1つ綴られたストーリー。
写真も掲載されていて、美しい美術カタログのよう。
ビジュアルも含め、長野まゆみの世界観たるや脱帽。
ほんの数行で、宇宙空間に放り出されたような美しさの渦に自分の思考が浸っていることに驚く。
宮沢賢治をこよなく愛す長野まゆみ。
まるで「銀河鉄道の夜」のような、不思議な世界観を繊細でガラス細工のような言葉で紡ぐ。
ストーリーの他、鉱石を薬草か何かのように食べられるものとしてレシピや効用なんかが書かれている所なんか、想像力の豊かさが幼い子供時代を思い出させてくれる。
暗に猫さん目線で語られている感じも宮沢賢治の影響力を感じさせてくれて楽しい。 -
Posted by ブクログ
この作品を読むにあたり、俗っぽく言うところの「BLっぽい」雰囲気は前提にあるとして読むことが求められているように思う。主人公(男)が男性に襲われかけたり、また他の男性と関係を持ったりするシーンが何度かある上、主人公もまた義兄に好意を寄せている。その他周りの人間にも「それらしき」描写が多く見受けられる。同性愛を描く作品でよく見かける「同性だから」という理由での葛藤も本作ではないと思われる。
そういう前提のもとで読み進めると、なんとも艶っぽい文章だったように思う。丁寧な地の文と少し荒っぽさのある実際の口調に差があるのもまた良かった。それに加えて、繰り広げられる情景もなかなかドキドキさせられるものであった。
傘や海などのキーワードや曖昧に終わるラストシーンは読者の想像力に委ねられている。切なさと温もりと、ほんの少しのきらめきを感じる素敵な作品だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ久しぶりに長野さんの本。
発売間近だった次に読む本との間をもってもらおうと読み始めた。理由は暑くて、薄い本だったから。
休暇終わりの地下鉄の駅での朝から物語は語られ始める。
銅貨は友人の水連を待っていたが、なかなか彼は現れない。
やっとやって来た彼の片目には眼帯が付けられていた。
理由は分からないが、朝起きると腫れあがっていたという。
端正な水連の顔が見られないことを残念がりつつ、二人は混みあう学生群をのせた地下鉄から撤退して、さぼることにする。二人が向かったのは鉱石倶楽部という石やそれを愛でる道具を扱いつつ軽い食事ができる喫茶がいっしょになったお店だ。天体と鉱石に強い興味を持っている二人はこのお店の常連だった。
店で朝食を頂こうとした二人はいつもの店番の大学生ではない人影に訝しむ。店番をしていたのは二人と同じ制服を着た少年だったからだ。少年は水連の眼帯を見て
「石が入っている」
という。まさかそんなもの入っていたら大変じゃないか!と言う水連と、治せるという少年を面白がる銅貨。やらせてみればいいという銅貨の言葉に、しぶしぶ水連は頷く。少年は果たして、手のひらに美しい碧色の石を水連の瞼から取り去って見せた。
いったい少年は何者なのか、問い詰めようとすると少年は風のように去っていってしまう。
青いインクと製図ペンで書かれた天体観測の誘い状で行われる天体議会。海のそばの気象台での集まり。高速軌道(カプセル)の信号燈(シグナル)の青ばかりを壊される事件。銅貨の兄との距離、水連と兄との関係性への嫉妬。水連との関係性の濃淡に、自分の心持も揺れる。銅貨の兄藍生のなかの父への渇望と反抗心。そして弟への接し方をうまくできない苛立ち。少子化のために作られた家族の形が故に血の繋がりをもたない兄弟である銅貨と碧生のお互いを大切にしたいし、されたいという感情の幼さとやさしさ。水連の銅貨へのまるで憧れのような友情。銅貨のもつ劣等感さえ、水連は良しとしているように思う。銅貨というものがあるがまま好ましいような。二人の割れた花瓶を大切に繕い続ける関係。お祭りの夜の、変わり玉の交換。幾度も現れては消える少年。南にいる父と、その場所へ思いを馳せる。そして雪の早朝、兄との会話。万華鏡へこめた祈り。
少年たちの不思議な邂逅と別れの物語。
長野さんの描く少年しかいない世界は不思議とくっきりと存在する。そこに置かれている様々な印象的で美しいものたちに囲まれて、うつくしい少年たちは生きている。たくさんのルビをふられた文章なのにとても読みやすい。純文学にくくられるのか、幻想小説に分類されるのか、それなのに夢見心地ではないお話。起こる様々な行事たちは全く身近ではないのに、目にその光景は眩しく浮かび上がった。灯された灯りのやわらかなオレンジと、その奥の深い深い藍の空。飛び立つ衛星の放つ光。見上げる天体のはるか遠い光。それらが鮮烈に網膜に映った。ぐいぐい読ませるお話ではないのに、読んでいると心地よくてついつい読んでしまう、そういう本だった。
長野さんの書く少年たちの名前は、どこのいつという設定から解き放ってくれるし、少年と言い切られているのにどこか性別を失わせてしまう効果があるように感じた。