長野まゆみのレビュー一覧

  • 猫道楽

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    ネタバレ

    ・2月19日に読み始め、22日に読み終えました。

    ・たぶん10年?とかぶりの……再読でした! 長野まゆみで初めて読んだのがこれだったと思う。いや~~なんか、思ってたよりかなりド直球だったね……??

    ・以前三浦しをんの書く色っぽめシーンを読んだとき、長野まゆみの匂わせる感じに慣れてたから三浦しをんは直接的でビックリだ~みたいなこと書いた気がするんですけど、長野まゆみもこれ……作品によっちゃしっかりだわ。耽美な雰囲気に惑わされてたけどしっかりだわ。

    ・話の大枠だけ覚えてて内容はほとんど覚えてなかったんだけど、唯一3章だけ、当時読みながら想像してたデパートの提灯売り場ははっきり覚えてた。想像の景色が強く残ってるのは不思議だね。覚えてたからかわからないけど、3章が一番好みかも。長野まゆみの十八番というか、兄弟間の切なさ…… 

    ・兄弟といえば、猫飼亭の四兄弟が全員異母兄弟なのもすごい、フェチを感じます。


    ・これはフォロイーとお話してて出た話題なんだけど、やっぱ長野まゆみ作品固有の倫理観というか、(これは慣れてるからかもだけど)現実世界に照らしたらおかしいんだけど長野まゆみの文章だからこそスルッと受け入れられる設定とかが気持ちいいね。長野まゆみッ……読んでるッ……!!って気持ちになる。

    ・全編通してお風呂のシーンがだいぶ多いの、やっぱり注文の多い料理店のオマージュだったりするのかな。

    ・あと傘が結構出てくるのも。傘っていうモチーフはもちろん、それが男物か女物かでもかなり区別してるね。それ思うと、彫刻を施した持ち手で銀の房飾りがついてる立派な傘を見て猫飼亭までつけていったのってかなり…かなりだな。レモンタルトでも傘の話、あったな。

    ・最初と最後でお話が繋がってるのよかったね。長野まゆみの主人公攻め(に見えた)って珍しくない……?女物の傘を渡すのとかさ…… 良かったね。

    ・最近だいぶ再読の気持ち高まっているので、それこそレモンタルトとかもう一度読みたいなと思います!

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    2024年02月23日
  • こどものころにみた夢

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    文章と絵で綴られた「こどものころに見た夢」をテーマにした短編アンソロジー。夢の世界は辻褄が合わないような不思議な光景、場面展開が見られるけれど、現実とぜんぜん関連がないわけではないですよね?その夢と現実との繋げ方というか絡め方が12人の作家ごとに違うのが面白いです。これは夢の中?と読んでいて戸惑うものもあり。え!これ現実に起きたこと?というものも。ミステリーあり、サスペンスあり、ロマンスあり、回顧録あり、お笑いあり…一つ一つは短いけれど、なかなかに濃い内容でありました。歌人の穂村弘さんのお話が一番印象に残りました(爆笑でした)。

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    2023年12月26日
  • 時の旅人

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    ネタバレ

    最初は「不思議な話だな」から始まるのだけれど、読み進めるうちに、どんどん迷宮の中に迷い込んでいって、自分がどこにいるのかわからなくなる感覚になる。だけど引き返す道も分からないような。

    主人公の心の声かと思っていたら、急に誰かのセリフになったり、登場人物はひょっとしたら声に出して会話をしていないのかも。「」がないのも面白い。

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    2023年12月21日
  • 野ばら

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    ずっと夢の中
    出てくる言葉一つ一つが美しい
    高円寺の読書喫茶的なところで読んだのも合わせて良かったな

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    2023年11月11日
  • 夜啼く鳥は夢を見た

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    ネタバレ

    紅於は初めて、その沼が途方もなく深いことに気付いた。


    この一文に息が止まりそうになる。
    どこが好きと聞かれたら雰囲気としか答えようがない。
    沼に惹き込まれて沈みたいと願う頬白鳥の気持ちがよく分かるくらい、その沼は魅力的だ。
    言葉のひとつひとつや単語が美しく綺麗であるのに、明確に輪郭を描くことのできない妖しさをまとっている。

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    2023年10月26日
  • 左近の桜

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    久しぶりの読書、そして長野ワールド(勝手に命名)に酔いしれているうちに、あっという間に読み終えてしまった一冊。『左近の桜』シリーズは長野さんの本を読み始めたころから知っていたが、あえて手を出していなかった。なぜなら絶対ハマると分かっていたからだ。結果としてどハマってしまったわけだけど後悔はない。今後はゆっくりと集めていこうと思う。

    長野ワールドでは必ずと言っていいほど青年が主人公にあてがわれるが、本作も桜蔵という青年がその位置にいる。男同士が逢瀬を重ねるための一軒宿である「左近」の長男である桜蔵はこの世のものではないあやかしに吸い寄せられてしまう体質を持っていて、この短編集では彼が巻き込まれる不思議な交わりを描いている。父の柾や交わるあやかしたちからは「女」と呼ばれ、それが生物学的な意味合いではないことを知り、微力ながら抵抗を続ける桜蔵のあまりの無防備さに読者は心配になりつつ、それでもずっと無防備でいてくれとも願っている。
    話の内容としては生々しくなっても仕方ないとも思えるが、それを美しくまろやかに仕上げてくれるのが長野さんの魔法だ。解説にも記されているが、とにかく日本語が美しい。花の香りや情景が浮かんでくるような繊細な描写が内容の生々しさを中和してくれるからこそ、酔いが深まるのかもしれない。

    個人的にはすべてを知りながら桜蔵を掌で転がしている柾というキャラクターがとても好きだ。桜蔵に明確な答えは与えないものの、手掛かりとなる言葉や逆に煽るような言葉をかけて彼に接している絶妙な立ち位置が心をくすぐる。
    またエピソードとしては12章の海市の描写がお気に入りだ。

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    2023年08月26日
  • 改造版 少年アリス

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    ネタバレ

    初版を読んだ時は全体的に尖っているのに脆い印象でした。今回読んだ改造版は柔らかく滑らかな感じ。でも、どちらも透明感があって改めて初版を読みたくなりました。

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    2023年07月23日
  • ぼくはこうして大人になる

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    主人公は中3の少年。
    家でも学校でもよい子を演じているが、実は女子に興味がなく、男子に恋愛感情を抱く性癖があることを必死に周囲に隠している。

    10歳離れた双子の姉兄にいたぶるようにかわいがられて育った彼は、幼い頃自分を女だと思っていた。
    そう洗脳されたと思っている。
    だから、女の子として育ってしまったから男の子のことを好きになってしまうのだと思っている。

    20年以上前の作品だから、そういうことになっているのかな。
    性癖は育てられ方のせいではなく、持って生まれたものだと思うんだけど。
    と思っていたら、最後に衝撃の事実が明らかになる。

    本人にもわかってはいたのだ、姉兄のせいではないことを。
    だけど、認めたくなかった自分。
    そして思い出したくない過去。
    そういうことを認めるところから大人への一歩が始まるのだね。

    学校の人間関係がリアル。
    事なかれ主義のものぐさな教師、それとは対照的に必要なときに必要な支えをくれる教師。
    教室内の力学に敏感で、人の痛みに鈍感なクラスメートたち。
    あまりに自分勝手で、読んでいてちょっとキレそうになる。

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    2023年06月23日
  • 白昼堂々(凜一シリーズ)

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    この本を手に取ったのは時代の流れもさることながら、自分の大好きな作品に志村貴子先生の「放浪息子」があることがきっかけになったんだと思う。凛一の声がちょいちょい似鳥くんで再生されてしまった。
    作中でひとつ違いの従姉と見分けがつかないくらいに似ている、と描写されている美少年、凛一の思考が可愛らしくて仕方がないと思いつつ、見る人が見れば気持ちが悪いという感想にも繋がるのかな。BLという一言で片付けるにはあまりにももったいない、性別というものに対する思春期の揺らめきが詰まった一冊でした。
    読み終えてからシリーズものと知ったので、残りの3冊も読んでみようかな。

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    2023年06月08日
  • 新学期

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    相手に対して「完璧に分かり合えなくてもいいのだ」と割り切っている椋がなお「好き」という感情を諦めないところが眩しくて、ラストシーンで彼のことがより一層好きになった。
    彼が骨董品を好きなのも、「限られた時間の中で意味をなしてきたモノ」の価値を人並み以上に感じているからかもしれない。
    すずしろや密と過ごした時間も、これからも。いずれ必ず来る「好きなもの」との別れが、少しでも悔いのないものであるように。まだ14歳の椋の、少年らしさの奥に秘めた寂しさが埋まってほしいと思う。

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    2023年03月31日
  • カンパネルラ

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    ネタバレ

    約20年ぶりに再読。
    長野まゆみ作品を読むこと自体が約15年ぶりくらい。昔ファンでした。
    いやぁ耽美ですね!
    懐かしいというか、当時は登場人物達に萌えながら読んでいたのだけど、やっぱり久しぶりに読んでも、きょうだいのつれない感じに萌えますね(笑)。
    あと自然風景の描写がさすが緻密で美しいのだが、しばらくこの世界から離れていた私には情景を想像するのが難しかったです。当時の私は理解できていたのだろうか。

    簡単なあらすじ。
    夏、祖父の家で療養している兄・夏織を訪れた弟・柊一。冷たい態度の兄に焦がれる柊一は、お土産の硝子の小魚を渡そうにも渡せない。
    常に眠っているイメージの祖父に読み聞かせを兄と交替ですることになった柊一は、本にはさまれた兄が描いた絵を見つける。署名にはなぜか「カンパネルラ」。
    兄が午後から川をボートで漕いでどこかへ行くのを気にした柊一は、兄の秘密の隠れ処であろう場所を見つける。
    と同時に、兄の描いた絵が変化していく……。

    なぜ、カンパネルラと署名したのか?絵にはどんな秘密が隠されているのか? と謎を追いつつ読み進められたのが楽しかった反面、明確に謎が解明されないまま終わりました。

    だいたい耽美、幻想的な作風というのは、ストーリーではなく世界観に耽溺するものなので、何がどうなったとハッキリ解明するのも野暮なんですが。
    たぶん、夏織は、みんな大好きカンパネルラ(銀河鉄道の夜)その人だったか、もしくは、カンパネルラに惹かれて連れ去られた結果カンパネルラ的存在になったか。つまり、柊一が祖父の家を訪れた時点であの世の人だった、もしくは死後まもない状態だったか。
    要するに、兄が天上へ旅立とうとする時の柊一の心情をファンタジックに描いたのがこの作品なのかな。祖父も生きてんだかよくわからない存在だし、河畔の風景も柊一の心の中の風景なのか……、
    とか解説しちゃうとなんか、やはり野暮ったくなってしまいましたね。
    幻想は幻想のままが良いのですね。

    最後は柊一も兄の後を追っちゃうのかな? カンパネルラに呼ばれて、三途の川を渡るのか渡らないのか。

    またいろいろと再読したいな〜と思うけど作品数が多いので読破するにはかなりかかりそう。

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    2023年03月06日
  • ぼくはこうして大人になる

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    懐かしい青春を感じさせてくれました。先生特有の曖昧なえがかれ方もあり、想像するのも楽しいです!これからが気になります!

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    2023年03月05日
  • 冥途あり

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    む、むずかしかった〜。小気味がよくてすごく面白いんだけど、なかなかサクサクとは読め進められず。結局ゆっくり1ヶ月かけて読み終えた。
    てくてくと河岸を歩いて、あっちの時代、こっちの時代、汽車や車や船に乗り換えて、いろんな場所に連れて行ってくれる小説だった。
    終わり方はあっけなく面食らってしまったけど、あの双子のことだからこんな終わり方も悪くないかなと思った。
    ふと何年か後に思い出すようなエピソードや表現がたくさんあって、またすこし人生が豊かになった気分。
    祖母の指にはめられた紫水晶。
    菓子袋の音に騒ぐ母の小鳥。
    砂浜にきらきらと光の反射を落とす父の背中のガラス。

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    2023年01月29日
  • こどものころにみた夢

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    怖い夢、儚い夢、おもらしの夢…? 角田光代、石田衣良、島本理生、市川拓司、長野まゆみといった豪華作家らが美しい絵と共に綴る「夢物語」。『小説現代』連載に書き下ろしを加えて書籍化。

    実際に読んだのは文庫本ではなく古いほう。

    石田衣良や穂村弘のお話が印象的でした。そんな私は永遠の肛門期…。

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    2023年01月13日
  • カムパネルラ版 銀河鉄道の夜

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    作者は「本」も好きなのでしょうが、その本の作者にすごく興味があるのでしょうね。
    銀河鉄道の夜や宮沢賢治の研究をまとめた本という感じで、ストーリーとして楽しむのは少し難しいように感じましたが、興味深かったです。

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    2023年01月03日
  • 八月六日上々天氣

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    ネタバレ

    再読。投下の瞬間を詳しく描かないことで、かえって大きな喪失が迫ってきます。
    史郎が原爆投下で喪われ、市岡先生も実は鹿屋「に」ではなく鹿屋「を」立つだったんじゃないかと思ったりします。どちらも、最期に珠紀に会いにきたのだと。
    出来るだけキラキラとした日常を送っていても、戦争の影はひたひたと迫ってきて、終戦近くにもなると空襲という牙を剥いてくる。
    どちらが先とかではなく、こうの史代さんの「この世界の片隅に」とも似ている物語世界だと思いました。空襲の描写、長野さんも色遣いが特徴的でしたし。
    珠紀はきっと広島市といっても海側の中心部からは離れた内陸部にいて、すずがいるのは呉。原爆投下は光と振動だけで、、
    焼夷弾、油が降ってくるのは薄っすら存じていましたが改めて怖い兵器です。白く烟るように降る雨の如き激しさで。。

    長野さんのあとがきでいつも長野さんのお父さまのことを考え…母方の祖父の弟の事も思い出してしまいます。叔父は8月9日に長崎にいました。幸いなことに生きて帰ってきたのでそれから長生きしてました。もしかしたら叔父も、何も語れず(語らず)いたのかなと思います。叔父一家だけかなり離れたところで暮らしていたのでほぼ会ったことがなく、そんな話する機会もありませんでした。
    こうやって、先の大戦は遠くなりましたが、こういう作品を読んで反戦を染み込ませていくのは続けていきたいです。

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    2022年11月06日
  • いい部屋あります。

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    もう少し読んでいたかった、と余韻に浸る感じの物語の閉じ方。
    美味しそうな食事の場面もあって、胃袋を刺激された。読後、美味しいアプリコットタルトやクロワッサンが食べたくなった。
    不思議な寮でキャンパスライフが繰り広げられると思っていたら、全く想像しない方向に話しが進んで、穏やかな波にさらわれたような感覚。
    荒々しい波にさらわれたような感じではなく、するすると抵抗できないまま優しく連れ去られたように物語を読み終えた。
    みんなクセがあるのに、みんな優しい。
    少年愛というには大人になり始めすぎていて、大人のドロドロした性愛にはほど遠い、そんな成長の隙間のような話。
    現実にはこの物語にでてくるような人物に出会うことはなかなか難しいだろうな、とは思うけれど、、、。

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    2022年10月07日
  • 夜啼く鳥は夢を見た

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    どことなくマンディアルグ風味な泥濘と水蓮と少年の舞台設定からして、惹かれないはずがないのです。長野まゆみさんらしい精緻で多彩な文章にぐいぐいと呑み込まれるようにしながら頰白鳥といっしょに沼をのぞきこむその瞬間の美しさ畏ろしさ。堪能しました。
    物語の全体を通してみれば平坦かもしれないその一瞬を、いやむしろその一瞬のために、築き上げられ飾られた文章一行一行を味わうように、大切に読んでいくことのできる作品こそ、私が偏愛したくなる作品なのです。

    「頰白鳥、駄目だよ。燥いているように見えても、水は沁み出してくるんだ。」
    「沈んでしまうの。」
    「あゝ、沼だからね。」

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    2022年09月13日
  • 少年アリス

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    高山宏さんの解説が正鵠を射ているのでもはや私の劣文は必要ない気もしますが、とにかく、『少年アリス』はさまざまなものから「解放」されている作品として群青天鵞絨に輝く屈指の幻想譚だと言うことができるのです。
    澁澤龍彦さんや短歌の好きな私は、前者には博物誌的な面白さを、後者には音とリズムに凝縮した言葉の感覚の面白さを見出します。ペダンティックな充足を得ることの面白さというより、普段私たちが使う言葉とは違った場所に居る言葉を採集することの面白さを求めて、手を伸ばしているのです。これが私の読書傾向かつ好みです。
    そして私の好む作家さんの中に、まちがいなく長野さんも含まれています。解説で高山さんは長野さんを「マニエリスト」と述べ、「意味の重圧から言葉を解放した」本書を評価しています。まったくもっておっしゃる通りだと思います。文字どうしの間隔、本文の余白も趣があります。
    さて、私は今回の感想で作中の内容にあまり触れていませんが、いいのです。それこそ私の「言葉」で語るに語れない『少年アリス』の感慨は、言葉や記憶にとどめるよりも、螢星が消えた一夜の出来事のように、夢うつつとしていいものなのです。

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    2022年09月10日
  • いい部屋あります。

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    長野まゆみさんの作品を初めて読みました。
    なんとなく買って、大学生が寮生活始める話ね〜
    と思って読み始めたのですが、想像していたものとまったく違いました。
    前半は主人公の鳥貝がひたすら翻弄されて、読者も鳥貝と一緒に?だらけです。
    何かよくわからず気持ち悪いけど、きちんと回収されるので大丈夫。
    文章は綺麗で優しい。BL要素があるとは思っていなかったので驚きましたが、これくらいなら許容範囲かな。

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    2022年09月01日