堂場瞬一のレビュー一覧
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ネタバレ「だけど、山城 以外に走れる人間は」
「1人いますよ」
いきなり聞こえた 第三者の声。ドアが開き 門脇が 監督室の中を覗き込んできた。
「僕が走りましょうか?」
「準備はしてたから」
「俺、裏方をやるって言ったよな」
「裏方 ってそういう意味か?」
「ああ」 照れたように言って、門脇 が含み笑いを漏らした。「当然だろう、チーム なんだから」
「そうか」胸の中に温かなものが流れ出すのを感じた。
自分のためだけに走る。それは決して間違いではないが、それでできることには限りがある。誰かのためを思って走る時、人は一段 強い存在になれるのだ。
今のお前に必要なのはそういう気持ちじゃないのか?今のままでもお前の天才ぶりは大したものだが、今よりもっとすごいやつになりたいと思わないか? -
Posted by ブクログ
ネタバレ犯罪現場のグロテスクな描写もない、メディアの今をテーマにした社会派ミステリだった。
前職が新聞記者だったという堂場さんが舞台にしたメディアの世界が生々しく、ノンフィクションを読むような流れで興味深かった。
日本新報甲府支局の記者、南泰祐は体が解けるほどの暑さの中、ほとほと嫌になりながらサツ回りを続けている。
彼は団地で幼い姉妹が絞殺された事件を追っている。若い母親は行方がしれない。
詰めかけたメディアに住民が不満を募らせて目の敵にされるようになっている。これはもう通常に見られる「メディアスクラム」という光景になってきた。
そんな中でも南は何とか実績を作って東京に異動したいと思っている。
そして親しくなった警察の関係者から貰った事件の情報が特ダネだと躍り上がって締め切りに滑り込ませた。
しかしそれが誤報だった。
それからは南と警察・自社内部の思惑との戦いは始まった。自身の記者としての矜持のために誤報の元を突き止めなくてはならない。
姿を隠した母親は子供を殺されても厄介払い程度にしか感じていない。彼女はこの状況では姿を表せない、金のためもあって売春目的でかくまってもらっている。
新聞社も誤報についてお詫びでは済まなくなっている。ネットの書き込みは過熱している。検証記事を発表しなくてはならない、そのために前例のない対策をたてた新聞社は「外部調査委員会」を設け公に紙面で告知することにする。
このメンバーが個性的でそれぞれ重い経歴があり、社会的に今でも重鎮であり視野の広い人達がリードしていく、新聞社の思惑通りに動かなくなる。
新聞をはじめ紙のメディアの衰退が見え始めている今を、改めて実感している。そこでメディアを見直すこの委員会の活動は味がある。
ネットにまき散らされる無責任な情報は、それが今のメディアの姿だと作者は南という記者を通して映し出して見せる。
ストーリーは犯罪絡みで警察と政治家の個人的な事情も絡めて面倒な世界を描き、南が誤報の裏の真実を追いかけるのがメインで、幼い姉妹の殺人事件はその発端に過ぎない扱いになっている。
父親が自殺未遂で発見された。そこから終息の糸口が見え始める。
南の追う誤報の真相がどう解決されるのか、ただメディアの姿を追うだけでなく、一面政治利用の思惑や個人的な関係のこじれや、様々に絡まった裏事情が解きほぐされていく。
大きな波が感じられない話の流れはこれは警察小説かと思って読み始めたが全く違っていた。
現代の新聞社の記事や報道番組はどのくらい独立した矜持を持ち続けているのだろうという、作者の姿勢が見える。現代のメディアに向かっての問いかけも問いのままで忘れられていく。そんな薄靄がかかっているような部分が掘り起こされていく。興味深かった。
三部作だそうだ。時間があれば南記者のその後を読んでみたい気がする。
堂場さんは、鳴海了の「雪虫」が面白かった。ずいぶん前で忘れかけているがこのシリーズもいいらしい。 -
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ネタバレ逆境から這い上がろうとする兄弟が別々に育って、20年後に再会した時は全く違った道を歩いていた。
解説では「砂の家」という題名から、名作「砂の器」を引いていた。
だが弟がいることで兄の生き方が際立っている、その足にもつれ込む弟が兄を暗闇に引き込もうとする。
題名からの連想だが、家族の罪が障害になって、そこから抜け出そうとする憐れは兄弟どちらにも重い鎖になっている。
読み始めで先の筋書きを追ってしまう癖で、この兄弟の生い立ちから未来を予想して読んだが思い通りに進んでいった。だが最後になって、思いも寄らない意外な方法で解決した。
父親が経営に行き詰って、一家心中の保険金で負債を弁済しようとした。母と妹が刺殺された直後に兄(浅野健人)が帰宅した。
健人が10歳の時だった。
4歳の弟(正俊)がドアをすり抜けて走り出てきて泣きながら階段に逃げ、転がり落ちて左足を折った。
兄は叔父夫婦に引き取られ、弟は九州の父の実家に行くところが祖父の具合が悪くなり施設に入った。
20年後兄は大手食品企業の末端でアルバイトをしていて、たまたま出会った社長に見込まれ、学費の援助を受けて大学を卒業した。聡明で真面目なところが気に入られ出世コースに乗る。彼は重い恩義を社長に尽くして返そうと決心していた。
社長あてに脅迫状が来る。チェーン店の海外進出を計画して交渉の折裏金を使ったらしい。会社には危機管理会社が付いていて社長は全面的に信頼していた。しかし担当者が乗り気でない。ことが決まればなんとかなると構えていた。
内々で済ますために健人が指定の場所に1000万を届ける。だが話はそれでは済まず社長の個人情報で3億円を要求された。
指定場所に行くと、隠し撮りをしたカメラに正俊に似た顔が写っていた。
ふらっと正俊が来た。出世と金の話をほのめかす。弟が可愛く可哀そうで小遣いを渡し励ましてきた。だが施設でも問題児で少年院にも入っていた。まっすぐ生きろと言ってみたが笑い飛ばして帰っていった。すでに父親は出所して九州の実家にいることも知っていた。
健人は社長の恩義に報いようと解決策を練る。車のナンバーや仲間のマンションを探し当てた。正俊が現れた時がその時だ。
社長は無理をするなというが彼は、任された仕事を果たさなくてはならない。
悲惨な生い立ちから壊れてしまい、兄に嫉妬する足の不自由な弟。
兄は恩を受けた社長を助けたいと一途に思い詰める。
社内の勢力争いも筋書き通りという展開で、業界の話もあまり深くない、正俊のいじけ方に対して真面目過ぎるくらいの健人が、少し作り物めいて重かった。
家族に恵まれなかった、家族によって前途の闇の中を歩かなければならなかった兄弟。
誠実に生きようとしても閉ざされている兄弟の哀感は理解できるものの何か作家の熱意についていけないところが残念だった。 -
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長年ラグビーやっていましたが、フルハウスを知らなかった…まあ、代表クラスのスタンドオフくらいしかできないんでしょうけど。
主人公は日本人で初めてオールブラックス入りしたスタンドオフ。ワールドカップで日本と同じプールに入るが、なぜか取材拒否。その真意は・・・
試合の描写は、経験者なら映像化できるくらいの完成度だと思います。
ただ、物語自体がチョット中途半端感ありです。恋愛、友情に大きく振れることはなく、ラグビーそのものもドラマティックかといえばそこまでではない。
でも、ラグビーという競技の国籍・人種主義ではなく、地域主義というのがうまく伝わるように書いていると思います。 -
Posted by ブクログ
様々な罪を犯した人々を描く
短編12編
印象に残ったのは
〈褒められた男〉
無差別殺人を起こした男が、初めて人に
褒められる
〈ある後悔〉
一族で爪弾きだった借金取りの男を
殺した男。生き続ける限り、自分の罪は
消えることはない
〈暗い復讐〉
重い‥
戦後、こういうことが実際あったのでは?
考えさせる内容だった
〈連鎖反応〉
煽り運転の話
怖い‥昨今の煽り運転、きっかけは
こんな感じではないのだろうか
結末が‥‥
〈推さない〉
アイドルの推し活をする娘と母との
対立。他に方法はなかったのか、
ラストが救いようがない
〈消えない目〉
罪を犯した者は、たとえ法で裁かれなくても
罪は消えることなく、一生背負って
いかなければならない
全編、後味は悪いが
サクサク読めて意外と面白かった(面白いと
言っていいのか) -
Posted by ブクログ
ネタバレ1つの出来事を複数の人の視点で、ほぼ同時に読み進めるのは物語を深く味わえるし、おもしろいと思った。映画でいう「バンテージポイント」を思い出させる内容だった。
特に人物たちの心の声(モノローグ)を中心に描いているので、人の心情を楽しめて、野球に興味がある人にはたまらない内容だと思う。特に序盤、最終盤はページをめくる手が止まらなかった。しかし、中盤が長すぎて、逆にモノローグの多さが、スピード感を損なう要因になっていて、少し飽きてしまうところは、正直あった。のめり込み度を形で表すと「つららのような形」になるのかな?
でも、一度手に取る価値はあると思う。