垣谷美雨のレビュー一覧
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ネタバレ【あらすじ】
39歳の小松原菱子は42歳の夫麦太郎、中学3年の娘実花、小学5年の息子真人と4人で2LDK+Sのマンションに暮らしている。新しいマンションを探しているとパソコン履歴で夫の浮気相手(夫と同じ大東亜製粉株式会社営業三課)の山岸星見のブログを見つけてしまう。夫には直接聞けず、浮気相手に会って話をしようとしたところ『真っ赤なロングドレスをきたババア』に菱子と星見の中身を入れ替えられてしまう。2ヶ月間お互いになりきって生活していくなかで、菱子は星見の同僚達と親しくなり仕事の成果もあげ、星見の母親との関係も修復する。一方の星見も菱子の子供達を自立させ実花の悪先輩との関係も絶たせ、PTAでも発言し他のママさん達から賛同を得る。結局浮気ではなく夫は星見など契約社員だが有望な後輩たち(石黒)を正社員にならせるために仕事を教えていただけであり、菱子と星見がお互いを理解し合えたところで再び『ババア』が現れ2人は元に戻る。
菱子は家族との平和な日々が戻り、パン屋で働くようになる。星見は母親と亡くなった父親の生まれ故郷新潟に祖母に会いに行ったり、製粉会社を辞めて菱子の義父の履物屋に弟子入りしたりして、菱子家族と星見家族の交流が始まる。
【感想】
今までに読んできた垣谷さんの小説の中でも珍しくSF的要素のある作品。「入れ替わってお互いのことを理解し合って誤解が解けてハッピーエンド」とお決まりで分かりやすい展開なんだけど、面白くさらっと読めました。『自分が変われば相手も変わる』
人間関係に悩んでる時におすすめの作品。 -
Posted by ブクログ
「お墓のことって、いつかは考えないといけないけど、正直後回しにしている」
そんな人ほど、この本は他人事じゃなく刺さってきます。
『墓じまいラプソディ』は、親の死や先祖の供養をきっかけに、「誰が」「どこで」「どうやって」弔うのかという現代ならではの問題に直面する人たちの群像劇です。少子化、核家族化、地方の過疎化といった現実が背景にあり、いわゆる“お墓を守るのが当たり前”という価値観が、静かに崩れていく様子が描かれます。
面白いのは、この作品が「墓じまい=合理的で正しい」とも、「伝統を守るべき」とも単純に言わないところ。世代や立場によって考え方がまったく違い、そのズレがとてもリアルです。ある人にとってはご先祖との絆であり、別の人にとっては重荷でしかない。その両方が同時に成り立ってしまうのが、現代の家族の難しさだと感じました。
また、重たいテーマなのに語り口はどこか軽やかで、クスッと笑える場面も多い。樹木葬や改葬費用といった知識もさりげなく盛り込まれていて、「物語として読める社会問題の入門書」のようでもあります。
読み終えたあと、自分の家族や、自分自身の“その後”を考えずにはいられませんでした。お墓とは、過去を守るためのものなのか、それとも生きている人のためのものなのか。本書は答えを押しつけず、「あなたならどうする?」と静かに問いかけてきます。今まさに迷っている人にも、まだ先の話だと思っている人にも、そっと読んでほしい一冊です。 -
Posted by ブクログ
読みやすさと切り口の斬新さで少し甘めの星4つ。
「結婚」や「親子関係」「女性の生きづらさ」を直接的に描いた作品で、切り口は斬新で読みやすかったです。特に、母との共依存や「生きがいを押し付けられる苦しさ」の描写はリアルで印象に残りました。
一方で、登場人物の思いが説明的に語られる場面が多く、テーマの面白さの割に少し薄っぺらく感じたのは残念でした。終盤の「みんな必死で生きている」という着地も悪くないですが、やや予定調和にも思えます。つまらなくはないですしすらすら読めますが、強く余韻が残るタイプではなく、問題提起型のライトな作品という印象でした。 -
Posted by ブクログ
今年で20代の折り返し地点に来ました。昭和では、25歳までに結婚するという風潮がある中で、現代は年齢に縛りがなくある程度自由な恋愛ができると思っています。だからこそ、今結婚について考えるこの年齢で読んでみようと思いました。
結婚は好きな人として、生涯愛し合うものだと家族の姿を見て感じていました。しかし、主人公の澄子のように、パートナーに対して拒絶反応を示す関係もあることを知りました。いかに家庭環境が子の価値観を形成する上で重要な役割を果たしているのか読んでいて嫌なほど感じました。
この話は母の視点中心でありましたが、教育機関で働く身として、子の視点にも注目でき、働く上で子への接し方について改めて考えさせられる作品でした。
少しでも共感して頂けたら嬉しいです。 -
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穏やかな地方都市の描写とは裏腹に、女性が無自覚のうちに引き受けさせられる役割の重さを鋭く描いた作品。
夏葉子の「可愛げがない」という自己認識や、頼られる側に回ってしまう生き方は非常に現実的で、随所に痛みがあります。夫の浮気相手ではないかと夏葉子が想像していたサオリの存在は、疑念や不安の象徴としては効果的である一方、生前の旦那の行動を説明する要素としてはやや違和感が残りました。
ただ、実父が登場してから理不尽が言語化されていく過程は痛快です。「人が良すぎる者ほど便利に使われる」という指摘は本作の核心であり、弱者に見える人間が本当に弱い立場なのかを問い直す終盤の視点も印象的でした。
前向きなラストはやや予定調和な印象もありましたが、読後感は良く、読みやすく面白い一冊でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ垣谷美雨『あなたのゼイ肉、落とします』は、タイトルの軽妙さから想像される以上に、人の人生や尊厳に深く踏み込んだ物語だった。描かれているのは単なる減量の成功譚ではなく、長い時間をかけて身にまとってしまった「思い込み」や「諦め」、そして他人の価値観という名の重荷を、少しずつ削ぎ落としていく過程である。
登場人物たちは皆、決して特別な存在ではない。仕事、家庭、人間関係の中で傷つき、無自覚のうちに自分を縛り続けてきた、ごく普通の人々だ。その姿があまりに現実的であるからこそ、読者は彼らの葛藤に自然と自分自身を重ねてしまう。体重が増えた理由の裏に、心の疲労や孤独が静かに横たわっていることを、本作は声高にではなく、淡々と、しかし確かな説得力をもって示していく。
印象的なのは、「痩せること」が目的ではなく、「自分の人生を取り戻すこと」が本質として描かれている点だ。誰かに評価されるためでも、理想像に近づくためでもない。自分自身を大切にするために変わるという姿勢が、物語全体に揺るぎない芯を与えている。その過程は決して魔法のように簡単ではなく、小さな選択と地道な積み重ねの連続として描かれるからこそ、深い現実味と重みがある。
読み終えた後に残るのは、爽快感以上に静かな勇気だ。人は何歳からでも、どんな状況からでも、自分の「ゼイ肉」と向き合うことができるのだと、優しく背中を押される感覚がある。本作は、心と身体の両方にそっと光を当て、「変わること」を恐れているすべての人に寄り添う、誠実で力強い一冊である。