Posted by ブクログ
2022年04月17日
独り暮らしの姑が急死し、突如遺品整理をすることになった、主人公、望登子。いざ家に足を踏み入れると、驚くほどの物量にため息をつくことになる。
しかも、こたつが変に暖かかったり、見覚えのない変化が起きていたり、なんだか不気味。
ねえ、なんで少しずつ捨ててくれなかったんですか?
なんでこんなもの取ってある...続きを読むんですか?
そう亡くなった姑に問いかけながら作業していくうちに、団地のほかの住人等とも関わり、姑の憎めない人柄を改めて感じることに。一方、実母の様子を思い返し、寂しい気持ちになることも。
この方の小説は、一人ひとりのキャラクターがリアルで、たくましくて、弱くて、面倒くさくて、微笑ましい。
姑など、もう亡くなっていて一度も生身で出てこないにも関わらず、隣家の様子や町内会の話などから、おせっかいでチャーミングな様子が見えて、上手く入れ込むなぁ、とストーリーの組立に舌を巻く。名前が多喜、というのもいい。こういう大人
になりたいとは思わないけれど、こういう人がいたら、話のタネにしながら、でもなんだかんだ力になりたいと思ってしまうと思う。現実にもいるよな、こういう人。
今回は遺品整理というワンテーマなので、そのキャラ造形と文章の巧みさがよりよくわかると思う。面白いです。
解説もわかりやすく秀逸。