垣谷美雨のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレタイトルを見て、修羅場系の話かな、と思って読み始めたのだけど…全然ちがった。
夫の浮気を疑った妻が、相手の女性と直接対決しに行ったら——なぜか二人の中身が入れ替わってしまう、という予想外のファンタジー展開。最初は「え、そっちに行く?」となったけど、ぐんぐん引き込まれてしまった。
立場が変わると、見える景色って全然ちがう。自分が「正しい」と思ってたことは、あくまで自分というフィルターを通したものであって、正しさはひとそれぞれなんだよな、と。
垣谷美雨さんの文章はテンポがよくて、重くなりすぎない。シリアスな場面なのにちょっと笑えて、でもじんわり考えさせられる。
コミカルなのに、すごく刺さる。嫌いな人でも、理解しようとする過程って、意外と面白いな——垣谷美雨さんに、またやられました。 -
Posted by ブクログ
感想
身近に起こりそうな問題で、面白くてついつい読んじゃうな。
最後の話は怖かった。
あらすじ
熊野佐奈枝は71歳。優しかった夫に先立たれ、最近は身体の不調が続くが病院での診断結果はどれも健康そのもの。とある病院でキワミという女医にかかる。キワミは、男性医師から渡された聴診器を使ってみると佐奈枝の半生が見える。
佐奈枝は向かいの主人の大塚からセクハラを受けて精神的に参っていた。それを理解して対策を佐奈枝に渡し、問題は無事に解決する。
2話目は家族から寄生される真澄の話。自分は家族のいうことを聞いて頑張り、ネイルサロンを経営するまでになったが兄弟や母親が寄生するようになり、ストレスが溜まっていた。
3話目は、家を買ってもらい家事もする必要がない静歌の肩こりが治らない。下された診断は慈悲的差別症。いつまでも自分を一人前と扱ってくれない周囲にストレスを感じるものだ。そのうち義父母がやってあげていたこと、自分の実家を下に見ていたこと、夫が女子中学生相手に過去に事件を起こしていたことが分かり、親の助けを得て逃げ出す。 -
Posted by ブクログ
本作を読んで最も印象に残ったのは、「立場が入れ替わることで見えてくる人間関係の本質」である。物語は、平凡な主婦と夫のカノジョが入れ替わるという非現実的な設定から始まるが、その奇抜さとは裏腹に、描かれているのは非常に現実的な感情の揺れや葛藤であった。
主人公の主婦は、家庭を守りながらもどこか満たされない思いを抱えている。一方で若いカノジョは自由に見えるが、彼女なりの不安や孤独を抱えている。この二人が入れ替わることで、互いの生活や価値観を体験し、「見えていなかったもの」に気づいていく過程が丁寧に描かれている点が興味深かった。
特に印象的だったのは、「相手の立場に立つこと」の難しさと重要性である。普段は対立する関係にある二人だが、入れ替わりを通して相手の事情や気持ちを理解していく。その過程で、単純な善悪では割り切れない人間の複雑さが浮き彫りになっていた。読んでいる自分自身も、他人を一面的にしか見ていないのではないかと考えさせられた。
また、この作品は「結婚とは何か」という問いも投げかけている。長い時間を共にする中で生まれる倦怠感やすれ違い、そしてそれをどう乗り越えるのか。非日常的な出来事をきっかけに、登場人物たちは自分の本当の気持ちと向き合い、関係を見つめ直していく。その姿は、現実の夫婦関係にも通じる普遍的なテーマだと感じた。
全体として、本作はコミカルな要素を持ちながらも、人間関係の深さや難しさを描いた作品である。読み終えた後、「相手を理解しようとする姿勢」の大切さを改めて考えさせられた。日常の中で見落としがちな感情に目を向けるきっかけを与えてくれる一冊だと思う。
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Posted by ブクログ
垣谷美雨の『病棟』シリーズ、これにてコンプリートです。
『希望病棟』は、他の三作とは異なり、患者は二人で、この二人が関わりを持っていきます。その過程に惹き込まれます。「どんな着地を見せてくれるのだろうか?」と。
摩周湖医師によるあの「聴診器」の使い方は、他の作品に比べると控えめです。
私が読んだ順は、『絶望』(4作目)→『懲役』(3作目)→『後悔』(1作目)→『希望』(2作目)でしたが、それぞれ独立して読めるようになっているので、時系列通りでなくとも問題なく、楽しめました。とは言え、時系列で読んだほうが、楽しめることも事実です。
大満足のシリーズでした。 -
Posted by ブクログ
お父さんと同じ墓には入らないと宣言して亡くなった母。戸惑う夫と子どもたち。
遠方の墓を墓じまいするためには数百万かかることに悩む夫婦。
夫婦別姓を選択できないがために、姓でもめる中で婚約者に愛想をつかす女性。
いろいろな話が展開されて、そうだよなあと、自分事として考えてしまう。
あまりあったこともない遠方の先祖の墓を、私の子どもたちに任せるわけにはいかないし、そもそも私がみるのか?という問題もある。
放っておくのも一つですよ、と言い切る住職もすごい。
そもそも火葬の時に、拾うお骨は骨壺に入るだけで、残りは捨てられますよね。
そう思うと、全部捨ててもよいような気もしなくもないが、心も持ちようとしてそういうわけにはいかない。
だとすると、あまり多くない量を散骨したり、歴史ある今後もずっとありそうな寺社の共同墓地に納めるというのが、私にはよいような気がする。それこそ、縁もゆかりもないけど築地本願寺とか。 -
Posted by ブクログ
なんでも意見をはっきり言う女と、思ってることすら口にできない女の対比。其々に生きにくさと幸福の種類があり、パーソナリティというものはなんとも複雑で、ヒトに正解不正解はないんだよなぁと改めて気付きます。
お医者さんも患者さんもみんな人間くさくていいですね。
非科学的な設定も全然気にならないです。
書評がすごく良くて、キレーに纏めてくれてます。
〈地獄とは他人のことだ〉
【地獄のような他人との悪縁を断ち切るには多大なエネルギーが必要になる。その悪縁が表向きは良縁に見える場合はなおさらだ。
絶縁しようとしている自分には良くないレッテルを貼られてしまう。けれど世間の目を恐れてはいられない。危険を察知したら、三十六計逃げるに如かず、ということを教えてくれる。
小説はハウツー本ではないが、作家の創造力の結晶だ。絶縁病棟の中にはさまざまな人間の思考と行動のパターンがつまっている。エンターテイメントとしてたのしみながら、災害みたいな人間関係に備える洞察力と気力を養いたい。】