井上真偽のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
若手作家陣による豪華読みきり短編集。全てのお話がタイトル通り「脱出」を軸に据えたミステリーです。なんとなく暗い、難しいイメージを持って読み始めたのですが、予想よりは読みやすく読後感も悪くなかったです。
「屋上からの脱出」阿津川辰海
天文部の屋上観測で起こった閉じ込め事故。それは事故なのか?
故意だとしたらだれが何の目的で起こしたのか?
高校生の話なので、思惑はあるにせよ殺人などもなく読み心地良好です。
「名とりの森」織守きょうや
民族学的昔話を調べるのが好きなノキ。皆が恐れる森に夏の探検に行こうという。しかも最も入ってはいけないという時に。そんなノキを探しに森に姉と入ったタネチン目線で話は始まる。さあ、この森の持つ条件をクリアーしてノキを見つけて、タネチンは森から出られるのか。そもそも、今何が正常なのかわからずハラハラします。
「鳥の密室」斜線堂有紀
魔女狩りの時代(のような設定)、ベネデッタは聖女として教会に住み、働いていた。魔女への拷問や仕置きはデルンバッハ司教が行っていたが、いつしか手伝うようになり、措置に疑問を抱く頃マリアが捕らわれる。ベネデッタはマリアに心を寄せるようになり、救済を願い出て悪魔つきと判断され、さあ、どう脱出するのか?しないのか?マリアの命運は?
「罪喰の巫女」空木春宵
戦後すぐくらいの時代設定。古語のような言葉で流れるように押し積められた文体で怪しい世界が描かれる。某県S郡の深山にある籠守神社にいる罪喰様の存在にひかれた私。そこは神域であり、罪を犯した者しか潜れない場所にある。
罪喰様がどういうものか、私は何を犯し、何を求めて神域へと向かうのかを、恐ろしく感じながら読み進めました。
「サマリア人の血潮」井上真偽
目を覚ますと記憶はないし、輸血されている?トオルはゾンビのような人たちがたくさんいる建物から脱出しなくてはならない状況下で、スピーカーから聞こえてくる僕の親友カズトの誘導により逃げ道を探す。その中でわかってくるトオルのおかれた状況とカズトとの関係が特殊。 -
購入済み
つまみぐいにアンソロ
母がフォローしている恩田陸を少し読んでみようと思ったのですがこういう方向性は求めてなかったなあ…という感じ。ファンタジーはちょっと。
しかし高田さんの作品だけかなり刺さったのでシリーズ読みたくなりました。こういうのと出会えるから良いのよね。 -
Posted by ブクログ
脱出
脱出をテーマにした短編ミステリー集
阿津川辰海 屋上からの脱出
とあるカップルの結婚式。友人として招かれた一ノ瀬。結婚式に参加しながら、二人の馴れ初め、そして彼らと共通の部活で起きたとある事件について、同じく招かれていたハルと話しながら詳細を思い出していく。
性格柄か、何をそんなに驚いているのか、事件の真相と隠された事実について、微笑ましいとまで読み取ったのだが、現代の読み手はこの様な事は想いがねじ曲がっていると感じるのだろうか。僕にはとある二人の行動は普通だと思うし、されたら嬉しいのだが。阿津川辰海は歴代短編も漏れなく面白いのだが、今作は登場人物のバッグボーン含めあまり楽しめなかった。
こんな設定でも密室にできるんだなあと感心した。
織守きょうや 名とりの森
ノスタルジーを感じる舞台設計に森に入ると出られなくなると言うオリジナリティ。唯一、自身の名前を呼ぶ事が森の外に出る為のルール。
現実的な要素では無いファンタジー的な要素の組み込みがうまく、あっという間に読み終えてしまった。各キャラクターがまだまだ確立されておらず、それぞれの登場人物の背景を広げながら長編でも読んでみたいと思った作品だ。(ほんの少しだけ、スパイス的にホラー要素があっても良いなぁと思った)主人公の年齢設定とそれに見合った友情が素敵だ)
斜線堂有紀 鳥の密室
魔女狩りをテーマにした作品は、大体が壮絶で聴くに耐えないストーリーになるのだが、今作も例に漏れず胸糞悪い背景の作品だ。
魔女と言われ捕まえられたマリアがあれだけ多くの拷問に耐えた理由に衝撃を感じ、彼女がどの様にして密室から消え去ったのかはある意味ミスリードされたトリックだと思う。僕はそうなっているだろうと予想はしたが、動機は全く違った理由で捉えていたため、動機がわかってからも衝撃は醒めなかった。
空木春宵 罪喰の巫女
文体が難しく読むのが大変な作品だった。その分、雰囲気が充満しており、知らず知らず世界に飲み込まれそうになった。ストーリーも幻想的で、戦後の設定なのでそれ程時代設定が古い訳では無いはずだが異様さに満ちている。
トリックは異様で、そして最後は驚きの結末になっており、この文体で物語を進行させた理由が読み取れる様な気がした。
罪を犯した人々とその罪を喰らう巫女、その巫女を書こう神社と謎に満ちていたが短いなかで見事に伏線を回収している。読みやすければ長編でも面白そうな作品。
井上真偽 サマリア人の血潮
今作で一番面白いのはこの作品だろう。作風へ暗くヒリヒリするが、きちんと物語が完結されており、正しく短編として面白い作品だ。
世界観は最初は理解できないが、徐々に解明されていき、それでも最後の最後まで謎を提供し続けて見事に回収までしている。トオルとカズトの関係性そのものが物語のベースだが、最後とある事実で一気に事件がひっくり返る印象だ。今後、どの様に作中の人々が生きていくのか。久しぶりに余韻に浸れた作品だ。