【感想・ネタバレ】恋と禁忌の述語論理のレビュー

あらすじ

雪山の洋館での殺人。犯人は双子のどちらか。なのにいずれが犯人でも矛盾。この不可解な事件を奇蹟の実在を信じる探偵・上苙丞(うえおろじょう)が見事解決ーーと思いきや、癒やし系天才美人学者の硯(すずり)さんは、その推理を「数理論理学」による検証でひっくり返す!! 他にも個性豊かな名探偵たちが続々登場。名探偵を脅かす推理の検証者、誕生! 大ヒットミステリー『その可能性はすでに考えた』はここから始まった!?

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Posted by ブクログ

井上真偽さんのデビュー作。
数理論理学という聞き慣れない学問を使って、事件の推理が正しかったのかを検証する、という話。

難解な数式というよりは、命題や論理の記号を駆使して、推理を数式化しており、恐らく多くの読者には理解できない部分が多かったと思う。
(私も含めて)

しかし、敢えて井上先生はそれを分かって本作を書いており、主人公の大学生も高度な説明に全くついていけていない、という形で読者の理解のハードルを同じレベルにしてくれている。

また、各章の話が最後に繋がりを見せる部分は、私の大好きなどんでん返しの要素もあり、とても良い気分でひっくり返されてしまった。

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2025年08月05日

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この作品の主人公しかり、硯の論理式やらなんやらをばっちり理解できた人間の方が少ないだろう、いや少ないに決まってる。それは置いといて、面白い作品だった。特にタイトルの意味の判明やら伏線回収やらがここまで鮮やかなのは久々かもしれない。伏線についてはある箇所に違和感は少しあったもののそれが最後にああいう風に絡んでくるとは想像もしてなかった。

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2025年02月22日

Posted by ブクログ

『姑獲鳥の夏』を読んだ時と似た衝撃が走った
何処かと言われればレッスンⅡに出てくる直観主義論理のところ
これがどう面白いかは是非読んで確かめてもらって
何より、今までの探偵小説を超越(メタ)した推理が面白かった
論理学自体にも興味を持ってきた

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2025年01月03日

Posted by ブクログ

文系なので主人公と同じ目線で硯さん何言ってんだと思いつつ読み進めた。(主人公は一応理系だけど)
文系にも分かりやすい例題のくだりは笑ったし、色んな場面でちょいちょい笑わせてくるので楽しく読みやすかった!

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2024年12月07日

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ミステリ小説と思って読んだら難しい数式が立ち並び読者を数学論理の世界に引き摺り込む世にも珍しい小説だった。内容もちゃんと練られており、ジャンルとしてはミステリになると思うが所々に出てくる専門用語(シークエント計算とかもはや読者に分からせる気ないやろ!)の内容が全体の3分の1くらいを占めていてメフィスト賞も頷ける奇天烈な内容であった。この著者はもはや小説ではなく学者とか違う分野でも成功できるのでは?次作のその可能性はすでに考えたも最高に面白いのでまだ読んでない方本書も合わせては是非読んでみてほしい!

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2023年08月15日

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もっと評価されていい。
後にも先にもこんな推理を見せてくれる作品は無いのでは。
恋愛要素のところで若干の取っつきにくさを感じたが、オチで腹落ちさせてくれる設定も妙で、感服。
シリーズ化を強く望みますが、難しいのかなぁ。
本当に読んでいて楽しいのが素晴らしい。変にセンセーショナルな展開で釣るのではなく、平々凡々な進め方をしているのに常にポジティブな場所へ読者を連れていってくれる才能が素晴らしい。

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2023年06月02日

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91点:僕が絶対不変の事実と信じていた公理が今、形を変えた。
天才的な伯母に探偵の推理があってるか検証してもらう主人公。そもそもなぜ検証してもらうのか?圧倒的傑作!

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2022年11月28日

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ネタバレ

初めての方の作品!これがデビュー作とのこと。あまりにも数学の単語の嵐に溺れかけたけれど、わかった気がしたつもりで読み進めた。数学の論理だけで事件を解決するという方法にもびっくりしたし、作中に現れる探偵たちもめちゃくちゃキャラが濃い。こんなに名探偵がわんさかいる世界で犯罪とかしたくない…と思った。ただ叔母と甥の関係はどうなのって思ったけど恋と禁忌の、とタイトルにもあるしそういうことなんだろね。ラストの展開にはめっちゃびっくりした。面白かったけど、個人的に軽い気持ちでおすすめできないかな…。

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2025年07月07日

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なるほど分からん!
数理論理学難しい

上苙丞シリーズかと思いきや上苙が登場するのはほんの一部分
主人公は天才論理学者の硯さんと詠彦
詠彦が解決済事件の内容を硯さんに話、硯さんはその事件の真偽を判断するという安楽椅子探偵さながらの推理をしていく
またその推理の過程に数理論理学を用いるという一風変わった物語の展開がされる

が数理論理学の内容が難しすぎて、さながら詠彦と同じ状態だった
巻末資料もなんのことやらさっぱり笑
ラスト付近にどんでん返しもありで物語自体は面白いので記号や符号の羅列が苦じゃないよという方はおすすめ

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2024年12月09日

Posted by ブクログ

探偵が既に推理したトリックが実現可能かどうか、数理論理学を以て検証するという珍しい小説だった。
テーマが難しいので、もっと読むのに時間がかかるかと思っていたけれど、地の文の軽さや、キャラクターのコメディ感でバランスが取れているのかテンポよく読めた。
有識者が読んだらどうコメントするのかわからないが、数理論理学に興味を持つきっかけになる一冊だと思う。

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2024年04月07日

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ネタバレ

p.161
謎中毒者 (addicted to riddle)

面白かった!のめり込んだ!
けど最後に実は親戚では無かったオチはいただけない…
そこはもう本当の甥と叔母でいいよ
タイトルに禁忌のって書いてあるし

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2024年03月31日

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名探偵が披露する名推理に潜むバグを瞬時に見抜く天才学者
4つの事件とエピローグで明かされる本当の目的で二重構造のミステリー
がっつり「数理論理学」の難解な講義を読む…ことをクリアできるかできないか…それが問題だ
□P:この本を最後まで読めたらクリアできた
True or False

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2024年02月14日

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そうか、これもミステリなのか…というのが正直な感想。これまであったような、事件が起こって探偵が謎を解決して…そこで終わるのではなく、さらにその探偵の推理が正しかったのかどうかを論理学的に証明する――はぁ~よく考えますねと感心(^^; 超ド文系のワタクシ、数式を見て一瞬ぎょっとしましたが、論理学初心者の主人公がストーリーテラーであるのでちゃんと解説もあって、結構面白く読めました。文庫版を読んだんですが解説にもある通り、中編3編をエピローグが串刺しにする構図――これはお見事です!ていうかコレ、続編あるんですよねっ⁈

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2023年11月22日

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「推理」でなく「検証」。

始めは「?」でしたが、読み進めていくうちに、なるほどと唸りました。
解説にも書かれていましたが、数式とか出てきて、ド文系の僕からしたら「うっっ」ってなりかけましたが、それでも読み進めていくうちに、ちょっとずつ分かるようになりました。

そして何より面白い。
難解なトリックを見破ると言うのがミステリの王道で本書も同じですが、アプローチの仕方が今まで読んできたミステリと全然違う。
数理論理学的に矛盾する部分を分かりやすく、整理して数式にしているのがすごく面白い。
硯さんに惚れました。

井上真偽さんの作品はまだ『その可能性はすでに考えた』を読みましたが、すごく作者の頭の良さが滲み出てました。
圧倒的な知性で読者をボコボコにするのですが、それでいて分かりやすいし面白い。
大好きな作家さんになりました。

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2023年07月23日

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ネタバレ

むずい。推理の時に論理式とかいろんな定理が出てくるけど、それが難しくて理解できない。それでも、物語は面白くて最後のどんでん返し?も気づく要素が散りばめられていて上手だなと思った。

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2023年04月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

動機フル無視の検証がとても面白くて、かっこいい。
数学の専門用語がたっっくさん!理系にはたまらん!
難しいからそこは理解できないけど、最後まで面白かった。
キャラクターも良かった。

まさかの結末に驚き

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2023年01月29日

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ネタバレ

数理論理学という聞きなれない分野も、文中の掛け合いや噛み砕いた説明である程度は理解できました。(巻末資料の詳細部分は諦めました・・・)

推理を検証するという形式も面白かったです。

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2022年10月19日

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硯さんと詠彦くんの掛け合いが非常に魅力的で面白い作品でした。また、ある解決済み?の事件に対して別の角度から検証するということが新鮮でした。
最後は、「そういう事だったのか!」と安心させてくれると共に納得する作品でした。

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2022年06月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

上苙丞シリーズの3作目かと思っていたのですが、青髪の探偵はなかなか登場せず、新シリーズかな?と勘違い……しかけたところでようやく登場し、安心。

しかし、1章と2章(レッスンI、レッスンII)に登場する花屋探偵とオラオラ女探偵、そして主人公格の硯さんも個性が強烈。彼らの言動を見ている(読んでいる)だけで十分面白く、上苙は元は本作からのスピンオフだったらしいので、先の3人を主人公にしたシリーズが出てもおかしくないと思うほど。

何より数理論理学を用いての推理が新鮮で良いですね。著者が大学時代、専攻していたんですかね。他の作家には書けない内容かと。

検証の内容は十分に理解できていない(十分どころか、十分の一も理解できている自信はないです(涙))のですが、上苙シリーズ前2作に登場したキャラに劣らぬインパクトの登場人物たちと意外過ぎる真相に、十二分に楽しませてもらいました。

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2025年09月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

○ 総合評価  ★★★★☆
〇 サプライズ ★★★☆☆
〇 熱中度   ★★★☆☆
〇 インパクト ★★★☆☆
〇 キャラクター★★★★☆
〇 読後感   ★★★☆☆
〇 希少価値  ★☆☆☆☆

 論理学で「探偵」の推理を検証するという一風変わったミステリ。正確にいうと、「レッスンⅠ スターアニスと命題論理」では、探偵役の藍前あやめは、妹である藍前ゆりを納得させるために「過失」であるという強引な推理をしている。「レッスンⅡ クロスノットと述語論理」と「レッスンⅢ トリプレッツと様相論理」では、それぞれ森帖詠彦が考えた完全犯罪を検証してもらっているという構成となっている。よって、名探偵による推理を検証するというとやや語弊があるが、作品の構造としてはまさに「名探偵の推理」を「論理的に検証」している。
 構成は非常に面白い。まずは短編ミステリとして謎と探偵による推理を提供する。この部分だけで短編ミステリとして成立している。その探偵役の推理を、森帖詠彦の叔母とされている「硯」が論理的に検証する。この「論理的に検証する」の部分に、「命題論理」、「述語論理」、「様相論理」といった論理学についての解説を含まれている。計算式もほんの少し取り入れながら、結構本格的に「論理学」についてのレッスンがされる部分は新鮮。この点は、この作品のオリジナリティとして高い評価をしていいと思う。
 問題は個々の短編のミステリとしての弱さ。「レッスンⅠ スターアニスと命題論理」は、「しきみ」と「スターアニス」の違いを知り、殺人の故意があったと言えるのか。それとも過失なのかというもの。謎解きの鍵が、犯人とされる女性(蜜川ほのり)は、しきみが日本に自生しないことを知っていたというもの。トリックと言えるほどでもなく、ひねりもない。短編ミステリの完成度としてはやや低めと言わざるを得ない。「レッスンⅡ クロスノットと述語論理」は、共犯者まで用意しているが、殺人犯が被害者に変装し、殺人があった時間をずらすことで、別の人物=オーナーシェフの日笠深都音を犯人だと誤信させるというもの、「レッスンⅢ トリプレッツと様相論理」は双子という使い古されたガジェットを使った、雪の上の足跡のトリックを使っただけの作品。いずれも短編ミステリとしての完成度は低め。硯による推理の検証という点が非常に目新しいだけにこの点が残念
 また、硯による検証部分も、読んでいて面白いと感じる表現ではあるが、それでも退屈に思える部分がある。作中では「ナイトメアモード」として茶化しているが、読者の多くが読み飛ばす部分があると思う。
 総じて、作品の雰囲気、全体の構成で勝負しているミステリであり、細かい部分やミステリとしての核の部分に難がある。あとは、「論理学」に興味を持てるか。完全に理解できなくても「論理学」についてのウンチクを楽しく読める人なら評価は高めだろう。
 個人的には「論理学」についてのウンチクを楽しく美むことができた。硯や詠彦のキャラクターも好き。好みの作品なので評価は★4で。
★ メモ
★ レッスンⅠ スターアニスと命題論理
 森帖詠彦から、硯に対し、毒殺と事故死を論理的に見分けることは可能か?という質問がされる。詠彦が5月に参加した女子大OBの女子会で事件は起こった。庭のしきみ(強い毒性を持つ)の木がスターアニス(マレーシア料理などで使われるスパイス)だと誤解され料理に使われてしまった。詠彦は、既に「探偵役」が推理し、解決したこの事件について、「探偵」の推理の検証を硯に依頼する。
● 探偵、藍前あやめの推理
 容疑者3人には全員、被害者を殺害する動機がある。被害者に恋人を寝取られた馬場園美香。都築志穂はかつて流産をしており、その原因に被害者が関係していた。蜜川ほのりは同性愛者で、被害者に振られていた。三人に共通するのは被害者が妊娠したことを恨んでいるという点。スターアニスには子宮収縮作用があるので、スターアニスを食べさせて流産させるのが目的だったと考える。そうすると、わざわざしきみを食べさせて殺害するまでの動機はない。よって、本件は事故…という推理
● 硯による検証
 藍前あやめの推理は「温い」という。拠って立つ公理の恒真性がいささか心もとない…と。ポイントは「必要のない行為を行った。ならば行為は故意ではない」とぴう部分。事実的根拠も含んでいないし、世間一般の共通認識でもない。
 故意か過失かを見極める基準を「相手が死ぬ可能性を認識していたにもかかわらず、あえてその行為をしたかどうか」。容疑者のうち蜜川は、スターアニスが日本の野山に自生していないことを知っていながら、嘘を言っている。自分が料理に使ったはずのない木の実をあえて使ったと偽り料理に混入させた。よって、蜜川には殺意があったと判断
● 物語の結末
 藍前あやめは、あえて「事故」だという推理をしたのかもしれない。本当に「故意」だったとしても誰も幸せにならない。そこで、事故だと強引な推理をした。
 藍前ゆりに真相を伝えるかどうかは詠彦に委ねられる。
● スターアニスと命題論理の登場人物
都築志穂
 自宅をパーティ会場として提供した人物。バツイチ。家事手伝い
蜜川ほのり
 東南アジア系の母親を持つハーフ美人。生粋の関西育ち。ゲーム会社勤務
馬場園美香
 アジアンカフェの雇われ店長。料理をしていた。
三月さえり
 被害者。元商社OL。再就職をしていた。
藍前あやめ
 フラワーショップ「アリストロキア」の店長。「花屋探偵」。「花占い推理」を行う。藍前あやめの推理のポイントは動機
★ レッスンⅡ クロスノットと述語論理
 イタリアンカフェレストラン「アマトリーチェ」のあるビルの1階の女子トイレで、「アマトリーチェ」の女性従業員である中川アリーナが殺害される。トイレは誰でも利用可能。凶器は「アマトリーチェ」のネクタイ。特注のネクタイ。被害者は友人Aと友人Bと食事をする約束をしていた。友人Bはアマトリーチェに客として来ていた。探偵役の中尊寺有の推理におけるポイントは、被害者がネクタイをしていたかどうか。Bさんにネクタイを貸したので、被害者はネクタイをしていなかった…という仮説を立てる。中尊寺の推理では犯人はオーナーシェフの日笠
● 硯による検証
 硯は、中尊寺の推理は「古典論理的」には正しい公理と正しい推論規則で結論を導きだしている妥当な証明だと言う。しかし、直観主義論理では妥当な証明ではない。直観主義論理とは、「排中律」を取り除いた論理。硯は「ヘンペルのカラス」の説明で対偶による証明の危うさを説明する。硯は、「犯行時の被害者は、ネクタイをしていたかしてなかったかのどちらか。それを証明の出発点にしてはいけない」という。「犯行時刻と思われる時間帯、被害者は既にこの世に存在しなかったとしたら?」。硯は、詠彦の話から3つの違和感を覚えたと説明する。「オーナーに無断でネクタイを貸すか」、「勤務中に携帯電話で欠席のメールを送ったのはなぜか」、「日笠シェフが本当に犯人なら、なぜ彼女は商店街の防犯カメラを見なかったのか」。硯の推理では犯人はBと共犯者。共犯の目的はネクタイの誤推理を利用して店員の誰かを犯人にすること。詠彦は、硯が何らかの事実を持ち出す前に、中尊寺の推理の弱い点を指摘した点に衝撃を受ける。
※ ヘンペルのカラス
 対偶を利用すると、直接カラスを見ることなく、カラスが黒いことを証明できるというもの
● クロスノットと述語論理の登場人物
中尊寺有
 現役女子大生にして経営戦略コンサルタントにして俺っ子にして剣の達人で名探偵。森帖詠彦の剣道サークルの先輩。天才。女性
日笠深都音
 イタリアンカフェレストラン「アマトリーチェ」の女性オーナーシェフ。死体の第一発見者
中川アリーナ
 被害者
海東
 東京でカレー屋をチェーン展開している実業家。中尊寺有に助言を受け、大阪で出店をしようとする。しかし、オープン日を間近に迎え、入居予定のビルで殺人事件が起こる。
★ レッスンⅢ トリプレッツと様相論理
 双子のどちらかの犯行であることを示唆する証拠は出ている。しかし、犯人を特定しようとするとどうしても矛盾が生じてしまうという事件。金桜館で、芸能人で、同館を相続した資産家の申神蓮花が殺害される。申神蓮花のマネージャーである周防の目撃証言、足跡、死亡推定時刻を考え合わせると、双子のどちらかにしか犯行は実行不可能に見えた。上苙丞は、申神蓮花のマネージャーである周防が犯人と推理する。周防は偽証していたと。トリックは足跡の起点を周防が泊っていた部屋の側にある桜の木のところとするもの。
● 硯による検証
 「赤いケープを着た双子の1人を見た」という発言から、周防の証言は偽証でないと推理。「知らないものは偽証できない。実際に見たのだろう」と。周防が偽証をしていないとすると、犯行ができたのは双子。硯は、様相論理で真相を解き明かす。上苙丞の推理は古典論理学の世界では正しい。しかし、様相論理の世界では…矛盾すら生じていない。「詠彦が午前6時にイリナと館内にいた」ことは絶対的。しかし、周防が証言する「午前6時に館外を歩く姿を見た」のは「イリナが館外にいた可能性があった」ことを示すに過ぎない。真相はイリナとオリガが足跡のトリックを使い、併せて3往復をしていた。実行犯はイリナ
● トリプレッツと様相論理の登場人物
上苙丞
 都内で探偵業を営む自称27歳。キリスト教で言うところの7つの大罪の象徴で、将来起こる不吉な出来事を予見する「未来予知能力」を持つ。
姚扶琳(フーリン)
 在日華僑。金貸し。上苙丞に1億円以上の金を貸している。
士道夏海
 元郵便局員。今は上苙丞の助手
鈴木多恵
 可愛いメイド服を着た高齢の家政婦
申神蓮花
 「金桜館」の現当主。上苙丞に「あるロシアの小説にちなんだ「絵の謎」を説く」という依頼の依頼主。鈍器で頭部を殴打され、家電のコードで手足を縛られた上、椅子に座らされ絞殺される。
周防梨乃
 蓮花が所属する芸能尾事務所のマネージャ。堅実な印象の眼鏡の女性
申神衣莉奈
 双子の妹。蓮花の父寿太郎の甥の子。母と祖母を不慮の事故で無くなったので、寿太郎が引き取った。右足首をねん挫しており、左足にも軽度の障害がある。
申神小里花
 双子の姉。蓮花の父寿太郎の甥の子。母と祖母を不慮の事故で無くなったので、寿太郎が引き取った。現在は右腕を包帯で吊り、左目を眼帯で覆っている。
★ 進級試験「恋と禁忌の……?」
 殺人事件の検証の相談に来た詠彦に対し、硯は、「お願いだから完全犯罪なんて目論まないで。他人のために殺人の計画を練るなんて、詠彦くんが考えている以上に罪が重いことなんだよ……?」という。硯がそのように考えたきっかけは、「トリプレッツと様相論理」の事件の相談を2か月待てなかった点。その点から考えると他にも気になる点があった。そもそも藍前姉妹は3人姉妹ではないか。最初の相談の事件についての藍前姉妹の悲しみぶりも踏まえると、最初の事件の被害者は藍前ゆりの姉。その事件が故意であったことをゆりに伝えたため、ゆりが復讐を計画したのではないかと推理した。そうすると2つ目と3つ目の相談の事件はトリックの構造が同じ。被害者が1名で一人の実行犯と一人の共犯。そして最初は犯人が特定されず、次に別の人間に嫌疑がかかるという構成になっている。硯はそのことを解き明かし、詠彦に殺人も殺人ほう助もせず、ゆりを説得することを約束させる。ラストは詠彦と硯が甥と叔母の関係ではないのではないか…と思わせる描写で終わる。
★ 登場人物
● 硯
 主人公、森帖詠彦の叔母と思われる女性。乞われてフランスの大学に行き、論文の引用件数が日本人で年間トップになるほどの革新的な研究を成し遂げた超才媛。作品中で姓は出てこない。
● 森帖詠彦
 主人公。理系の大学生
● 藍前ゆり
 森帖詠彦の幼馴染

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2019年01月15日

Posted by ブクログ

なんとも不思議な読後感。論理学の講義を含みながらもコメディタッチな描写で進む変化球な傑作ミステリーと思って読んでいたのだが・・・。
硯さんのキャラクター設定はとびきり面白いのだけれど、主人公とゆりの関係性が今一つ腑に落ちないのと、最後に明かされる主人公と硯さんの関係性についても寝耳に水すぎた。総論で言うと、変化球を狙い過ぎてすっぽぬけてしまったボールのような印象が残った。もっとストレートな結末で十分に面白かったのに。
いろいろと語られない含みが多すぎて置いてけぼりにされた感がある。
ただ、硯さんが言う「いや、いいか。動機なんて、別にどうでも」という言葉は、この言葉自体にこの物語の含みが込められていると同時に、その含みを取り去った上でも、この世のひとつの真理を言い当てている深い言葉だなと感じ入ってしまった次第です。

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2025年04月08日

Posted by ブクログ

メフィスト賞受賞作の論理学を駆使した推理小説。
探偵の推理が本当に正しいかを数式に当てはめて“検証”していく。
一章目から数式がでてくるので、うへえと思いながらも、とりあえずの斜め読みでも楽しめた!
各章で感じた違和感も最終章できっちり解決。
楽しめたが外連味溢れる上苙シリーズの方が個人的には好きかなと思いました。

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2025年03月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

おもしろかった。
この作者の著作を初めて読んだが、登場人物や設定や文体がラノベで、そうと知らずに手に取ったので驚いた。

トリックが主人公の創作、かつ他の探偵の推理後に手を加えている、という設定のため仕方がない部分があるとはいえ、
述語論理云々をことさら持ち出す必要がない(それらを無意識に含んだ日本語のレベルで説明可能)と感じてしまった。自分の理解が至らないだけかもしれないが。


アイデアと、挑戦と、それで1冊成立させていることには大拍手。

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2024年08月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

気にはなっていたから意を決して読んでみたらやっぱり難しかった。
斜め読みした箇所もしばしば。。。もちろん頑張ってついていったけども完全に理解したとは言えない。1〜100まで楽しめたとは言えない。無念。

とはいえこういう、動機度外視の「探偵の推理の検証による真相解明」を可能とする数理論理学ミステリーは新鮮だった。

また、物語が「レッスンⅢ」までで終わっていたら星2だったけど、最後のエピローグのおかげで+星1。「なるほど。そういうことだったのか」と、ミステリっぽく終わってくれたのが良かった。
「トリプレッツ」の使い方もオシャレかつ伏線だったとはね。
3番目に登場した探偵一派のキャラが濃ゆくて浮いていて、そんなキャラ立ちし過ぎている探偵の推理に間違いがあるのかと読みながら漠然と思っていたところにラストのタネ明かし。まんまとやられました。

恋の顛末は気になるようで、もう答えはでているような気もしていて、もし仮に今後硯さんが再登場することになっても手に取るのは躊躇ってしまいそう。

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2024年08月03日

Posted by ブクログ

難しかった…!
肝心要の部分は分かりやすく説明してくれているので、誰が犯人でどういうトリックを使って〜というのは分かるし、硯さんや詠彦くんのキャラも良いのでとても面白い。
でもそこに至るまでの硯さんの講義が、理系に妙な憧れがありつつも、まったく理系ではない私には難しかった。
きちんと理解しつつ読み進めるためには、しっかり腰を据えて、ノートをとりながらでないと無理だなと思います。
いずれリベンジしたい。

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2023年10月08日

Posted by ブクログ

著者のデビュー作であり、第51回メフィスト賞受賞作。
自分は文系の人間なので、作中に登場する大量の数式には眩暈を感じたが、しっかりと説明がなされるので、特に困らなかった(理解したとは言ってない)
理系ミステリは多数あるけど、理系っぽさの演出を、蘊蓄などで表現するのでは無く、謎を論理学の公式に当てはめて解いていくというのは、斬新だった。
最初2つの話は正直なところ、ビミョーな感じだったが、3話目は雪の山荘の足跡の謎という、クラシカルスタイルで、トリックも面白かった。

そして3つの話が終わった後に判明するとある真相は驚かされました...!
読み返すと、しっかりフェアに書かれてるんですよね〜、しっかり騙されました。

次作の「その可能性はすでに考えた」は本作に登場したウエオロ探偵がメインとなるみたいですね〜ウエオロ探偵のキャラも好きですが、硯さんもいつか出てきて欲しいなぁ〜

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2023年08月23日

Posted by ブクログ

天才数論理学者が甥っ子の相談で、名探偵の推理によって解決された事件を検証していく話
話の中に数論理学による検証シーンが多用されるので苦手な人は読み進めれないかも…
文体自体は割と素直で読みやすくなっていて、トリックや話の展開も唸るほどのクオリティなので、ミステリ好きの人は一見の価値あり!

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2023年06月22日

Posted by ブクログ

「数理論理学」という理論を用いて事件を解決していくミステリー。
短編が数本あって最後まで読むと…という形式で進んでいく今では珍しくない構成になっている。
事件の解決に一役買う数理論理学は、ざっくり言うと高校数学で習う「AならばB、BならばA、これは真か偽か?」みたいなやつの進化系だが、これを事件に落とし込んで理解するのが難しい。一応数理論理学をあまり知らない登場人物も存在していて、その人のために解説する体で読者にも説明がなされているが難易度は高い。
ミステリーとしては変わり種なので、合わない人もいるかもしれない。

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2022年10月28日

購入済み

すごくすごく疲れました…。理論やなんやかんや…。読み飛ばしてしまいましたが難しくて疲労困憊です。でも読み終わってみるととても面白かったです。

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2022年10月13日

Posted by ブクログ

すずりさんのような真をもった女性、、、憧れます。頭が良いのに、、、ギャップが愛されキャラなのかなぁと。

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2022年10月09日

Posted by ブクログ

理系の教科書のような小説。
文系の私には難しかったですが、だんだん説明も理解できるようになり、理系のおもしろさを少し知る事ができました。
推理で止まらず、それが真相かを数理論理学で検証する。
今までにない新感覚でおもしろい発想のミステリーです。

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2022年07月13日

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