あらすじ
雪山の洋館での殺人。犯人は双子のどちらか。なのにいずれが犯人でも矛盾。この不可解な事件を奇蹟の実在を信じる探偵・上苙丞(うえおろじょう)が見事解決ーーと思いきや、癒やし系天才美人学者の硯(すずり)さんは、その推理を「数理論理学」による検証でひっくり返す!! 他にも個性豊かな名探偵たちが続々登場。名探偵を脅かす推理の検証者、誕生! 大ヒットミステリー『その可能性はすでに考えた』はここから始まった!?
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Posted by ブクログ
初めての方の作品!これがデビュー作とのこと。あまりにも数学の単語の嵐に溺れかけたけれど、わかった気がしたつもりで読み進めた。数学の論理だけで事件を解決するという方法にもびっくりしたし、作中に現れる探偵たちもめちゃくちゃキャラが濃い。こんなに名探偵がわんさかいる世界で犯罪とかしたくない…と思った。ただ叔母と甥の関係はどうなのって思ったけど恋と禁忌の、とタイトルにもあるしそういうことなんだろね。ラストの展開にはめっちゃびっくりした。面白かったけど、個人的に軽い気持ちでおすすめできないかな…。
Posted by ブクログ
p.161
謎中毒者 (addicted to riddle)
面白かった!のめり込んだ!
けど最後に実は親戚では無かったオチはいただけない…
そこはもう本当の甥と叔母でいいよ
タイトルに禁忌のって書いてあるし
Posted by ブクログ
むずい。推理の時に論理式とかいろんな定理が出てくるけど、それが難しくて理解できない。それでも、物語は面白くて最後のどんでん返し?も気づく要素が散りばめられていて上手だなと思った。
Posted by ブクログ
動機フル無視の検証がとても面白くて、かっこいい。
数学の専門用語がたっっくさん!理系にはたまらん!
難しいからそこは理解できないけど、最後まで面白かった。
キャラクターも良かった。
まさかの結末に驚き
Posted by ブクログ
数理論理学という聞きなれない分野も、文中の掛け合いや噛み砕いた説明である程度は理解できました。(巻末資料の詳細部分は諦めました・・・)
推理を検証するという形式も面白かったです。
Posted by ブクログ
上苙丞シリーズの3作目かと思っていたのですが、青髪の探偵はなかなか登場せず、新シリーズかな?と勘違い……しかけたところでようやく登場し、安心。
しかし、1章と2章(レッスンI、レッスンII)に登場する花屋探偵とオラオラ女探偵、そして主人公格の硯さんも個性が強烈。彼らの言動を見ている(読んでいる)だけで十分面白く、上苙は元は本作からのスピンオフだったらしいので、先の3人を主人公にしたシリーズが出てもおかしくないと思うほど。
何より数理論理学を用いての推理が新鮮で良いですね。著者が大学時代、専攻していたんですかね。他の作家には書けない内容かと。
検証の内容は十分に理解できていない(十分どころか、十分の一も理解できている自信はないです(涙))のですが、上苙シリーズ前2作に登場したキャラに劣らぬインパクトの登場人物たちと意外過ぎる真相に、十二分に楽しませてもらいました。
Posted by ブクログ
○ 総合評価 ★★★★☆
〇 サプライズ ★★★☆☆
〇 熱中度 ★★★☆☆
〇 インパクト ★★★☆☆
〇 キャラクター★★★★☆
〇 読後感 ★★★☆☆
〇 希少価値 ★☆☆☆☆
論理学で「探偵」の推理を検証するという一風変わったミステリ。正確にいうと、「レッスンⅠ スターアニスと命題論理」では、探偵役の藍前あやめは、妹である藍前ゆりを納得させるために「過失」であるという強引な推理をしている。「レッスンⅡ クロスノットと述語論理」と「レッスンⅢ トリプレッツと様相論理」では、それぞれ森帖詠彦が考えた完全犯罪を検証してもらっているという構成となっている。よって、名探偵による推理を検証するというとやや語弊があるが、作品の構造としてはまさに「名探偵の推理」を「論理的に検証」している。
構成は非常に面白い。まずは短編ミステリとして謎と探偵による推理を提供する。この部分だけで短編ミステリとして成立している。その探偵役の推理を、森帖詠彦の叔母とされている「硯」が論理的に検証する。この「論理的に検証する」の部分に、「命題論理」、「述語論理」、「様相論理」といった論理学についての解説を含まれている。計算式もほんの少し取り入れながら、結構本格的に「論理学」についてのレッスンがされる部分は新鮮。この点は、この作品のオリジナリティとして高い評価をしていいと思う。
問題は個々の短編のミステリとしての弱さ。「レッスンⅠ スターアニスと命題論理」は、「しきみ」と「スターアニス」の違いを知り、殺人の故意があったと言えるのか。それとも過失なのかというもの。謎解きの鍵が、犯人とされる女性(蜜川ほのり)は、しきみが日本に自生しないことを知っていたというもの。トリックと言えるほどでもなく、ひねりもない。短編ミステリの完成度としてはやや低めと言わざるを得ない。「レッスンⅡ クロスノットと述語論理」は、共犯者まで用意しているが、殺人犯が被害者に変装し、殺人があった時間をずらすことで、別の人物=オーナーシェフの日笠深都音を犯人だと誤信させるというもの、「レッスンⅢ トリプレッツと様相論理」は双子という使い古されたガジェットを使った、雪の上の足跡のトリックを使っただけの作品。いずれも短編ミステリとしての完成度は低め。硯による推理の検証という点が非常に目新しいだけにこの点が残念
また、硯による検証部分も、読んでいて面白いと感じる表現ではあるが、それでも退屈に思える部分がある。作中では「ナイトメアモード」として茶化しているが、読者の多くが読み飛ばす部分があると思う。
総じて、作品の雰囲気、全体の構成で勝負しているミステリであり、細かい部分やミステリとしての核の部分に難がある。あとは、「論理学」に興味を持てるか。完全に理解できなくても「論理学」についてのウンチクを楽しく読める人なら評価は高めだろう。
個人的には「論理学」についてのウンチクを楽しく美むことができた。硯や詠彦のキャラクターも好き。好みの作品なので評価は★4で。
★ メモ
★ レッスンⅠ スターアニスと命題論理
森帖詠彦から、硯に対し、毒殺と事故死を論理的に見分けることは可能か?という質問がされる。詠彦が5月に参加した女子大OBの女子会で事件は起こった。庭のしきみ(強い毒性を持つ)の木がスターアニス(マレーシア料理などで使われるスパイス)だと誤解され料理に使われてしまった。詠彦は、既に「探偵役」が推理し、解決したこの事件について、「探偵」の推理の検証を硯に依頼する。
● 探偵、藍前あやめの推理
容疑者3人には全員、被害者を殺害する動機がある。被害者に恋人を寝取られた馬場園美香。都築志穂はかつて流産をしており、その原因に被害者が関係していた。蜜川ほのりは同性愛者で、被害者に振られていた。三人に共通するのは被害者が妊娠したことを恨んでいるという点。スターアニスには子宮収縮作用があるので、スターアニスを食べさせて流産させるのが目的だったと考える。そうすると、わざわざしきみを食べさせて殺害するまでの動機はない。よって、本件は事故…という推理
● 硯による検証
藍前あやめの推理は「温い」という。拠って立つ公理の恒真性がいささか心もとない…と。ポイントは「必要のない行為を行った。ならば行為は故意ではない」とぴう部分。事実的根拠も含んでいないし、世間一般の共通認識でもない。
故意か過失かを見極める基準を「相手が死ぬ可能性を認識していたにもかかわらず、あえてその行為をしたかどうか」。容疑者のうち蜜川は、スターアニスが日本の野山に自生していないことを知っていながら、嘘を言っている。自分が料理に使ったはずのない木の実をあえて使ったと偽り料理に混入させた。よって、蜜川には殺意があったと判断
● 物語の結末
藍前あやめは、あえて「事故」だという推理をしたのかもしれない。本当に「故意」だったとしても誰も幸せにならない。そこで、事故だと強引な推理をした。
藍前ゆりに真相を伝えるかどうかは詠彦に委ねられる。
● スターアニスと命題論理の登場人物
都築志穂
自宅をパーティ会場として提供した人物。バツイチ。家事手伝い
蜜川ほのり
東南アジア系の母親を持つハーフ美人。生粋の関西育ち。ゲーム会社勤務
馬場園美香
アジアンカフェの雇われ店長。料理をしていた。
三月さえり
被害者。元商社OL。再就職をしていた。
藍前あやめ
フラワーショップ「アリストロキア」の店長。「花屋探偵」。「花占い推理」を行う。藍前あやめの推理のポイントは動機
★ レッスンⅡ クロスノットと述語論理
イタリアンカフェレストラン「アマトリーチェ」のあるビルの1階の女子トイレで、「アマトリーチェ」の女性従業員である中川アリーナが殺害される。トイレは誰でも利用可能。凶器は「アマトリーチェ」のネクタイ。特注のネクタイ。被害者は友人Aと友人Bと食事をする約束をしていた。友人Bはアマトリーチェに客として来ていた。探偵役の中尊寺有の推理におけるポイントは、被害者がネクタイをしていたかどうか。Bさんにネクタイを貸したので、被害者はネクタイをしていなかった…という仮説を立てる。中尊寺の推理では犯人はオーナーシェフの日笠
● 硯による検証
硯は、中尊寺の推理は「古典論理的」には正しい公理と正しい推論規則で結論を導きだしている妥当な証明だと言う。しかし、直観主義論理では妥当な証明ではない。直観主義論理とは、「排中律」を取り除いた論理。硯は「ヘンペルのカラス」の説明で対偶による証明の危うさを説明する。硯は、「犯行時の被害者は、ネクタイをしていたかしてなかったかのどちらか。それを証明の出発点にしてはいけない」という。「犯行時刻と思われる時間帯、被害者は既にこの世に存在しなかったとしたら?」。硯は、詠彦の話から3つの違和感を覚えたと説明する。「オーナーに無断でネクタイを貸すか」、「勤務中に携帯電話で欠席のメールを送ったのはなぜか」、「日笠シェフが本当に犯人なら、なぜ彼女は商店街の防犯カメラを見なかったのか」。硯の推理では犯人はBと共犯者。共犯の目的はネクタイの誤推理を利用して店員の誰かを犯人にすること。詠彦は、硯が何らかの事実を持ち出す前に、中尊寺の推理の弱い点を指摘した点に衝撃を受ける。
※ ヘンペルのカラス
対偶を利用すると、直接カラスを見ることなく、カラスが黒いことを証明できるというもの
● クロスノットと述語論理の登場人物
中尊寺有
現役女子大生にして経営戦略コンサルタントにして俺っ子にして剣の達人で名探偵。森帖詠彦の剣道サークルの先輩。天才。女性
日笠深都音
イタリアンカフェレストラン「アマトリーチェ」の女性オーナーシェフ。死体の第一発見者
中川アリーナ
被害者
海東
東京でカレー屋をチェーン展開している実業家。中尊寺有に助言を受け、大阪で出店をしようとする。しかし、オープン日を間近に迎え、入居予定のビルで殺人事件が起こる。
★ レッスンⅢ トリプレッツと様相論理
双子のどちらかの犯行であることを示唆する証拠は出ている。しかし、犯人を特定しようとするとどうしても矛盾が生じてしまうという事件。金桜館で、芸能人で、同館を相続した資産家の申神蓮花が殺害される。申神蓮花のマネージャーである周防の目撃証言、足跡、死亡推定時刻を考え合わせると、双子のどちらかにしか犯行は実行不可能に見えた。上苙丞は、申神蓮花のマネージャーである周防が犯人と推理する。周防は偽証していたと。トリックは足跡の起点を周防が泊っていた部屋の側にある桜の木のところとするもの。
● 硯による検証
「赤いケープを着た双子の1人を見た」という発言から、周防の証言は偽証でないと推理。「知らないものは偽証できない。実際に見たのだろう」と。周防が偽証をしていないとすると、犯行ができたのは双子。硯は、様相論理で真相を解き明かす。上苙丞の推理は古典論理学の世界では正しい。しかし、様相論理の世界では…矛盾すら生じていない。「詠彦が午前6時にイリナと館内にいた」ことは絶対的。しかし、周防が証言する「午前6時に館外を歩く姿を見た」のは「イリナが館外にいた可能性があった」ことを示すに過ぎない。真相はイリナとオリガが足跡のトリックを使い、併せて3往復をしていた。実行犯はイリナ
● トリプレッツと様相論理の登場人物
上苙丞
都内で探偵業を営む自称27歳。キリスト教で言うところの7つの大罪の象徴で、将来起こる不吉な出来事を予見する「未来予知能力」を持つ。
姚扶琳(フーリン)
在日華僑。金貸し。上苙丞に1億円以上の金を貸している。
士道夏海
元郵便局員。今は上苙丞の助手
鈴木多恵
可愛いメイド服を着た高齢の家政婦
申神蓮花
「金桜館」の現当主。上苙丞に「あるロシアの小説にちなんだ「絵の謎」を説く」という依頼の依頼主。鈍器で頭部を殴打され、家電のコードで手足を縛られた上、椅子に座らされ絞殺される。
周防梨乃
蓮花が所属する芸能尾事務所のマネージャ。堅実な印象の眼鏡の女性
申神衣莉奈
双子の妹。蓮花の父寿太郎の甥の子。母と祖母を不慮の事故で無くなったので、寿太郎が引き取った。右足首をねん挫しており、左足にも軽度の障害がある。
申神小里花
双子の姉。蓮花の父寿太郎の甥の子。母と祖母を不慮の事故で無くなったので、寿太郎が引き取った。現在は右腕を包帯で吊り、左目を眼帯で覆っている。
★ 進級試験「恋と禁忌の……?」
殺人事件の検証の相談に来た詠彦に対し、硯は、「お願いだから完全犯罪なんて目論まないで。他人のために殺人の計画を練るなんて、詠彦くんが考えている以上に罪が重いことなんだよ……?」という。硯がそのように考えたきっかけは、「トリプレッツと様相論理」の事件の相談を2か月待てなかった点。その点から考えると他にも気になる点があった。そもそも藍前姉妹は3人姉妹ではないか。最初の相談の事件についての藍前姉妹の悲しみぶりも踏まえると、最初の事件の被害者は藍前ゆりの姉。その事件が故意であったことをゆりに伝えたため、ゆりが復讐を計画したのではないかと推理した。そうすると2つ目と3つ目の相談の事件はトリックの構造が同じ。被害者が1名で一人の実行犯と一人の共犯。そして最初は犯人が特定されず、次に別の人間に嫌疑がかかるという構成になっている。硯はそのことを解き明かし、詠彦に殺人も殺人ほう助もせず、ゆりを説得することを約束させる。ラストは詠彦と硯が甥と叔母の関係ではないのではないか…と思わせる描写で終わる。
★ 登場人物
● 硯
主人公、森帖詠彦の叔母と思われる女性。乞われてフランスの大学に行き、論文の引用件数が日本人で年間トップになるほどの革新的な研究を成し遂げた超才媛。作品中で姓は出てこない。
● 森帖詠彦
主人公。理系の大学生
● 藍前ゆり
森帖詠彦の幼馴染
Posted by ブクログ
おもしろかった。
この作者の著作を初めて読んだが、登場人物や設定や文体がラノベで、そうと知らずに手に取ったので驚いた。
トリックが主人公の創作、かつ他の探偵の推理後に手を加えている、という設定のため仕方がない部分があるとはいえ、
述語論理云々をことさら持ち出す必要がない(それらを無意識に含んだ日本語のレベルで説明可能)と感じてしまった。自分の理解が至らないだけかもしれないが。
アイデアと、挑戦と、それで1冊成立させていることには大拍手。
Posted by ブクログ
気にはなっていたから意を決して読んでみたらやっぱり難しかった。
斜め読みした箇所もしばしば。。。もちろん頑張ってついていったけども完全に理解したとは言えない。1〜100まで楽しめたとは言えない。無念。
とはいえこういう、動機度外視の「探偵の推理の検証による真相解明」を可能とする数理論理学ミステリーは新鮮だった。
また、物語が「レッスンⅢ」までで終わっていたら星2だったけど、最後のエピローグのおかげで+星1。「なるほど。そういうことだったのか」と、ミステリっぽく終わってくれたのが良かった。
「トリプレッツ」の使い方もオシャレかつ伏線だったとはね。
3番目に登場した探偵一派のキャラが濃ゆくて浮いていて、そんなキャラ立ちし過ぎている探偵の推理に間違いがあるのかと読みながら漠然と思っていたところにラストのタネ明かし。まんまとやられました。
恋の顛末は気になるようで、もう答えはでているような気もしていて、もし仮に今後硯さんが再登場することになっても手に取るのは躊躇ってしまいそう。