井上真偽のレビュー一覧
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ネタバレ『ぎんなみ商店街の事件簿 SISTER 編』は、日常の匂いが染みついた商店街という舞台に、じわりと奥行きを帯びた謎を重ねることで、軽妙さの奥に確かな深みを宿した一冊だった。姉妹たちの視線を通して描かれる「同じ出来事の別の輪郭」は、読者に“真実とは何を指すのか”という静かな問いを投げかける。彼女たちの日常は素朴で温かいのに、その中に潜む気配はどこか鋭い。柔らかさと緊張感が同じ呼吸で共存するのが、この作品ならではの魅力だ。
特に印象的なのは、登場人物たちの心の揺らぎが、事件そのものと同じくらい重要な“謎”として配置されていることだ。姉妹の思考、反発、守りたいもの――そうした感情が、読後に重く静か -
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ネタバレ(※この感想は一部「Sisters編」と重複しています)何年か前の「スーパー戦隊シリーズ」に「怪盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー」というのがあった。通常、主役の戦隊と敵組織の戦いを描くシリーズだが、本作に限っては戦隊がふたつ存在し、敵組織との戦い以外に「怪盗」側、「警察」側、両方の物語が描かれるユニークな作品だった。
ひとつの"事件"に対して「怪盗」チームは「お宝奪還」がテーマになり「警察」チームは「事件解決と犯人確保」がテーマだ。
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「警察」側のメンバーたちもそれぞれの事情を抱えている。失ったもの、取り戻したいもの。密かに抱く恋心。単なる"犯人憎し"に終わることの -
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ネタバレ(※この感想は一部「Brothers編」と重複しています)
何年か前の「スーパー戦隊シリーズ」に「怪盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー」というのがあった。通常、主役の戦隊と敵組織の戦いを描くシリーズだが、本作に限っては戦隊がふたつ存在し、敵組織との戦い以外に「怪盗」側、「警察」側、両方の物語が描かれるユニークな作品だった。
ひとつの"事件"に対して「怪盗」チームは「お宝奪還」がテーマになり「警察」チームは「事件解決と犯人確保」がテーマだ。
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「怪盗」チームのメンバーはそれぞれ人には言えない事情を抱えている。何よりも大切なものを失い、それを取り戻すために敵組織が持つ「ル -
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ネタバレこの本は、Brother編のみで評価するのか、
Sister編も合わせて評価すべきか…
※sister編の感想にも書きましたが…
1話目はbrother編から、
2話目はsister編から交互に読み、
3話目もsister編から読みました。
1冊ずつでも成立するけど、
やはり両方読むべき。
解説では、sister編からお薦めでしたが、
先程の自分の読み方で良かった気がします。
それぞれ、後に読んだ編が
表面的な解決ではなく、
深いところまで追っている気がします。
で、両方読むべきと評価しましたが、
逆に言うと、片方だけでは良さが半減…
2冊買ってはじめて成立すると言うのが
少し反則 -
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この本は、Sister編のみで評価するのか、
Brother編も合わせて評価すべきか…
まずは、ひとつの出来事を
別の切り口で見ると言う手法は
はじめて見ましたが面白かった。
コナン君の「真実はいつもひとつ」ではなく、
整くんの「事実はひとつだが、真実は人の数だけある」
1話目はbrother編から、
2話目はsister編から交互に読み、
3話目もsister編から読んでそのまま最後まで。
途中で姉妹の末っ子と兄弟の3男の絡みがあり、
それも楽しかった。
本評価は、2冊で別の視点で見るのが
面白かったという評価(⭐︎5弱かな?)
次作「白雪姫と五枚の絵 ぎんなみ商店街の事件簿2」 -
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【短評】
特定の物語を「摂取」したいと渇望することがある。
文章なのか、キャラクタなのか、はたまた巧緻に富んだトリックなのか、私の脳髄を心地良く刺激するものが何かは判然としないが、井上真偽の「その可能性はすでに考えた」シリーズが、私にとって、そうした何かを有する作品であることは間違いないようだ。
浸るように、飲み干すように、貪るように一気読みである。嗚呼、大好き。
青髪の探偵・上苙丞(うえおろじょう)は、とある事情から「奇蹟」の存在を実証せんとしている。今回の事件は「飛び石殺人」。聖女伝説が残る地で行われた婚礼において、同一の盃を回し飲みした者のうち、3名(および犬1匹)が毒死した。全員が酒 -
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ネタバレ物語の構図が斬新でした。
過去起きたカルト宗教団体集団自殺事件。生き残りの少女の証言、当時の物証だけを頼りに、事件を紐解いていくストーリー。
よかった点は探偵が奇蹟を肯定するために推理を重ねるところです。こういったストーリーはだいたい奇蹟をトリックのものと否定し、暴くために探偵は動くものですが、本作は全く逆です。
何人もの個性豊かなキャラクターたちが、奇蹟を否定するために推理をしていくなか、主人公はそれを反証し、跳ね除けていきます。
犯人探しというより、推理ゲームをみんなで解いていくような進行です。後半はディベート対決のようになりますが、試みとしてとても魅力的だったと思います。
周りの人 -
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【短評】
人生初の井上真偽(いのうえまぎ)である。素敵なお名前。
10点満点中1000点みたいなタイトルに惹かれて手に取ってみた。果たして、実に好みな作風だった。タイトルが好き。キャラクタが好き。スタイルが好き。琴線に触れたと言うべきか、波長が合ったと言うべきか、ゾワッとする位に嵌った感じがした。
探偵・上苙丞(うえおろじょう)は、とある理由から「奇蹟」の存在を肯定している。故に「人知の及ぶ全ての可能性を否定すること」により、彼は「奇蹟」を実証せんとする。
新興宗教団体「血の贖い」において発生した大量殺人事件。首を斬られた人間が少女を運んだとしか思えない不可能犯罪を調査し、彼はそれを「奇蹟」 -
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ある事件の真相を証言だけを基に探るお話
探偵は奇蹟を信じており、それを証明するため「実現しうる可能性を全て論破する」という勝負に挑む…
証言に基づいてはいるけど実現可能性はかなり低いトンデモ理論を、これまた証言から読み取れる論証で論破していく様を、推理など全く出来ない自分は「ほぇ〜」と感心しながら読んでいました笑
各人の主張も、トンデモ理論ながらしっかり証言に基づいていて、丁寧に構築されている印象です
逐一まとめ的に「つまりこういう事」という分かりやすい説明が入るので助かります
基本的な進行役が中国人なので、中国語や中国文化で例えたりするのが少し読みにくいかな…
とはいえ依頼人の真相 -
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下巻でございます。
一華ちゃんのお父さんの四十九日の法要の日、
すなわち一華ちゃんが暗殺されようとしている日でございます。
大陀羅家の暗殺を企てるセレブ親戚達VS
さらっと未然に対処してしまう探偵、千曲川光。
どんどん暗殺がいろんな手法で繰り出されるわ
繰り出されるわ。しかも一華ちゃんが気づかないうちに、探偵千曲川が解決している始末。
親友曰く、『一華は少しボケていると言うか・・・、馬鹿じゃなくてスーパー馬鹿なんだよ』
ナイスです!すなわち超天然良い子なんですね。
ドラマだと千曲川の『トリック返し』がフォーカスされてましたが、原作は時間の都合上割愛されまくってました。普通逆じゃないかい -
Posted by ブクログ
ドラマで楽しく見ていた作品が、井上真偽さんの作品だと知り上下巻本を購入して、早半年。
やっと読みはじめました。ブク友さんも2.3人しか読んでいなさそうな作品でございます。
主人公一華ちゃん、家政婦的使用人橋田さん。
ドラマと変わらぬキャラで世界観を楽しめました。まぁ明るいこと。
ただ探偵である『千曲川光』は少し小説の方がミステリアスで、ドラマは滝藤さんが激しいキャラだったので、いい意味でストーリーに集中でしました。
なんといっても、タイトル通り『探偵が早すぎる』、事件が起こる前に解決しちゃうのが面白い。
その名もトリック返し!
井上真偽さんの名作『その可能性はすでに考えた』
に通じる世界観 -
Posted by ブクログ
ネタバレいや凄い。真偽っち天才すぎるわこれ。これぞザ・新本格。
初回の決め台詞には厨二心がくすぐられたぜ。
同じ多重解決の『毒入りチョコレート事件』や『ミステリーアリーナ』と明確に違うのは、最初に推理に必要な手がかりをすべて開示し、かつ不可能性が極めて高い逆密室状況で、多重解決が繰り広げられること。これは奇跡の存在を証明するために、あらゆる可能性を否定する名探偵という設定が功を奏している。名探偵と推理対決をする相手はただ「可能性」を示すだけでよくなるのだから、フィージビリティーの問題を元から排除しているという隙の無さ。なにより、3つの説が出揃ってからなされる"ある趣向"には、細部