カルト教団の集団自決現場から唯一生き残った少女・渡良瀬莉世の依頼を受けた探偵・上苙丞。彼は、事件が全くの奇蹟であることを望んでいる。冷めた目で成り行きを見守るヤオフーリンを横目に、数々の仮説を残念そうに論破していく。果たして、全ての可能性を論破した先にある奇蹟へと辿り着くことかできるのだろうか。
まあ、新しい試みである。
事件解決に息巻くでもなく、無関心でもなく、論理的に解決できない道を模索していくという風変わりな構成だ。ありそうでなかった探偵の新境地。この試み自体は興味深い。ただ、既に考えた可能性については網羅的に共有すべきで、後出しで出して良い情報ではない(笑)
ポケモントレーナーのように、推理勝負をしかけてくる方々。上苙丞は、回りくどく奇襲をかけなくても快く推理勝負に応じるのではないだろうか。仮説の討論の前後のやりとりが、もたつきの要因であると思うので、すぱっと本題に入ってほしいと思った。後半で突如現れる枢機卿なんかも含めて、色々盛り込みすぎである。もっとシンプルな方が面白かったかなあ。
キャラ小説としては、もう一歩!
上苙丞もヤオフーリンも見目麗しい設定なのであるが、所作や雰囲気が全っ然美し足りない!!せっかく美男美女設定を盛り込むなら、もっと魅力的に描いてほしい。ただ「美丈夫である」「美しいのである」と直截に述べるだけでは魅力に乏しい。所作や雰囲気、台詞回しなんかで読者を魅了してほしかった。そうでないのなら、無駄なイケメン美女設定はノイズでしかない。
事件が血生臭くて魅力的で良かった。
閉鎖的な宗教集落、集団自決、脱出を目論む子どもたち…魅力の種は十分にあった。もっともっとシンプルにその謎を回収するだけでよかったのに。枢機卿と繋がってた渡良瀬とか、もう本当に蛇足。引き算の魅力ってあるよなあ、と遠くを見詰める瞬間があった。続編では、改善が見られる点もあるという噂を耳にしたので、続けて読んでみることにする。