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Posted by ブクログ
1話1話が全く別のものと思わせて、最終話で「こんな繋がりがあったのか」と読者に思わせるだけでもはっとさせられるが、その繋がりが誤りであったと実感させられて一転。悪と思っていたものがそうではない真相で二転。被害者や正義側と思いこんでいたものがそうではなく三転。二転三転として結末後には、「もしかしたら明るい未来が訪れた彼女が未来に書いた1話1話なのかもしれない」という読後感が残る。
どんでん返しと呼ぶに相応しい一冊であっただけでなく、AIなどの無機質なものを題材としていながらも、人の温かさや熱を帯びた期待が描かれた、祈りの一冊でした。
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以下はただの私見ですが。
SFが重要な要素となる1~4話はいわば最後の章の「前振り」なのかなと。
最終話で作家である「私」が書いた作品が入れ子式に登場してくる。しかしその内容はAIやVRといった題材こそ同じものの、内容は大きく異なり、かなり絶望的な内容であったよう。わが身に降りかかった不幸、そして追い打ちをかけるように直面した恩師の「裏切り」。それらが「私」にそのような本を書かせた。
しかし教授が自ら呼んだ警察に連行される時に云った言葉で「私」は悟ることになる。教授は何も変わっていなかったと。
そして進化する技術が人間をより豊かにする世界を祈った。
おそらく1~4話はその後の世界を描いたフィクションなのだろうと感じた。それは祈りの先の世界ほど明るくはないが、「私」の想定ほど絶望的でもない。とても「現実的」なものにも感じられた。
ここからは余談。
参考文献にルドガー・ブレグマン著の「隷属なき道」が紹介されていた。
のちに「Humankaind 希望の歴史」を書く人とは知らず読んだベーシックインカムについて書かれた本だ。
ベーシックインカムについては左右いろんな人が言及している。ブレグマンから小池百合子、果ては竹中平蔵まで。
日本では弱者に冷たく労働者をシバキあげる系の人たちがベーシックインカム導入を云っている印象がある。確かに人の善意を前提に制度を設計してしまうと早晩破綻してしまうのだろうけど、不正を働いても「割に合わないという、人の経済合理性」(p265)が機能すれば、それこそ現実的な選択肢の一つではないかなとは思っている。
Posted by ブクログ
ミステリーという形で読者に飽きさせない工夫をこらしつつ、近代的な諸技術について考えさせられる一冊。ミステリのようで、ミステリじゃない。エンタメ本でもあり、教養本でもある。そんな不思議な本でした。
Posted by ブクログ
近未来の世海を題材にした小説。
言の葉の子らは、AI
存在しないゼロでは、遺伝子組み換え
もう一度、君とでは、AR
見に見えない愛情では、エンハンスメント
ベーシックインカムへの祈りは、ベーシックインカム
を題材として、ミステリーを絡めて展開していく。
個人的なお気に入りは、もう一度君と。二重のARで、ありがちな結果でしたが、楽しめました。
未来は、決して楽園でないと思わずにいられないのは、過去の歴史が物語ってきたからでしょうか。
技術の進歩は常に人の倫理観が伴うと思うと、ベーシックインカムの導入もまた考えてしまいます。