中野京子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
大好きな中野京子さんの著書『名画で読み解く メディチ家 12の物語』を読んだ。
「芸術家のパトロンをしていて、何で稼いでいるかは謎だけど、とにかく大金持ちの一族」それが、読む前の私のメディチ家に対するイメージだった。
しかし、本を通じて彼らの歴史を追っていくうちに、その魅力にすっかり取り憑かれ、読む手が止まらなくなった。
暗殺未遂や何度も繰り返される国外追放など、イメージとは裏腹に苦労が絶えない。
それでも、才能ある後継者や周囲の思惑、そして何より「運」を味方につけて何度も返り咲く姿は、まさに圧巻だ。
歴史は実力だけでなく、運や巡り合わせにも大きく左右されるのだと感じた。
ただ、イタリア人の名前を覚えるのには本当に苦労した。
海外の名前が並ぶだけでも大変なのに、一族内で同じ名前を使い回すし、王族ではないから「一世・二世」といった区別もない。
さらに、一族から教皇が出ると「ジョバンニ」が「レオ10世」に呼び名が変わる。
2ページ前の名前すら怪しくなり、何度も読み返しながらの読書となったが、それでも2日で読み終えてしまうほど面白かった。
私の推しは、フィレンツェで「祖国の父」と称えられた初代領主、コジモ・イル・ヴェッキオだ。
彼は政治家として敵国と戦いながら、真面目に働いて納税する。
商才にも長け、当時のフィレンツェの納税額の6割以上を彼一人が納めていたというから驚きだ。
特に惹かれたのが、国外追放から復帰した際のエピソード。
国民が大歓迎で待ち構えていたのに、目立つのが恥ずかしくて夜中に裏門からコソコソと帰ってきたという。
そんな人間味のあるギャップに、思わず心を掴まれてしまった。
華やかな功績の裏に、こうした控えめな一面があるからこそ、多くの人に支持されたのではないかとも感じた。
また、10代の頃のラファエロやミケランジェロを自宅に住まわせて面倒を見ていたというエピソードからも、一族の審美眼の高さが伺える。
ただ、これほど芸術に精通していた一族なのに、家紋のデザインだけはどうにもセンスがない気がしてならない。
「誰か才能ある芸術家に新しくデザインさせればよかったのに」と、そこだけは勝手にダメ出しをしたくなってしまった。
華やかな名画の裏には、ドロドロとした権力争いと、人間らしい迷いや弱さがあった。
そうした一面を知ったことで、歴史上の人物がぐっと身近に感じられるようになった気がする。
そして私は、目立たずとも着実に信頼を積み重ねるコジモのような在り方に、強く惹かれたのだと思う。
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Posted by ブクログ
ずいぶん前にTLに流れてきてから気になっていた一冊。
するする読めた、面白かった……!恥ずかしながら存じ上げなかったクリムトという一人の画家と、彼の生きた時代、皇室や芸術の姿が綴られていて、"エリザベート"への理解も深まる時間でした。
中野京子さんの文体(好きなんだろうなあと感じさせてくれる、それでいて知性に溢れた文章)がとっても好きで、嬉しい出会い!
ミュージカル"エリザベート"がややフィクションでありファンタジーであることは承知の上で観ていたけれど、
"マイヤーリンク"が彼が亡くなった地名であること、彼は自殺ではないかもしれないこと(少なくとも独りではなく愛人といたこと)、
ハプスブルク帝国がこんなにも大きかったこと、第一次世界大戦の前のヨーロッパの地図への衝撃など(世界史選択ではなかったとはいえ自分の教養のなさを恨みます…)、
視野を広げてはその時代へ導いてくれる、非常に良質な1冊でした。
抱え込んだモデルを性欲の捌け口として扱いながらも高い評価を得たクリムトその人自身、そしてこの時代の芸術家への思いを馳せては考え込んでしまう。中世ヨーロッパには憧れるけれど、女性として生きるなら現代の方が嬉しいだろうなあ。
せっかく来日が決まっているので、"真珠の髪飾りの少女"を見に行く夏前に、シリーズ第1弾も読もうと思います。
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Posted by ブクログ
読書録「名画で読み解く
メディチ家12の物語」5
著者 中野京子
出版 光文社文庫
p84より引用
“「嫉妬は雑草のようなもの。絶対に水を
与えてはいけない」という二代目コジモの
教えを守らず、これみよがしだったことも
一因だ。”
目次より抜粋引用
“ジョヴァンニ・ディ・ビッチ・デ・
メディチの肖像
アンギアーリの戦い
ベツレヘムに向かう東方三博士
レオ十世と二人の枢機卿
教皇クレメンス七世の肖像”
欧州の歴史に造詣が深い著者による、
ルネサンスを盛り上げる多くの芸術家を支
えた、イタリアの富豪一族の盛衰を記した
一冊。
家を立ち上げ盛りたてた初代からその
血縁の終焉の物語が、一族の隆盛を彩る名画
や芸術作品と共に描かれています。
上記の引用は、敵がはっきりしているのに
従兄弟二人といがみ合っていた、ピエロ・
デ・メディチについて書かれた章での一節。
自分が人に対してでも、人の自分に対する
ものでも、悪い感情は出来る限り排除して
おきたいものです。
作中の初代と二代目は、人から嫉妬を受け
たりしないように、目立たないようにして
注意深く過ごしていたそうですが、それが
かえって悪目立ちしてしまっていたそうで。
お金を持っているというのも、無いのとは
また違う苦労があるのでしょうかね。
第1章終盤で語られる、ローマ教皇と初代
の関係性についての記述は、胸の熱くなる
逸話。
まるで漫画のようなというよりも、漫画に
描かれていたらこの二人のようなと例える
ほうが、より正確なのではないかと思って
しまいます。
漫画みたいというのであれば、第4章の暗
殺者とロレンツォのエピソードも面白い。
そんなベタなことある?と思わざるを得ま
せんでした。
事実は小説よりも奇なりを、地で行くよ
うなエピソードが、一族が滅びるまで続く
ような歴史物語。
正直な感想としては、身内同士で諍いすぎ
だし、殺し過ぎ。
あとその他の一般人も、事ある毎に極端に
暴れすぎ。穏やかに生きていたいものです。
著者の「怖い本」シリーズで、絵画を
面白く観る見方を知ることが出来たので、
期待して手に取りました。
歴史の授業の進め方が、一冊の教科書を
学ぶのではなく、こういう本を何冊も読む
ようなやりかただったら、面白かっただろ
うなと思う作品でした。
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Posted by ブクログ
オーストリア・ウィーン、ハプスブルク王朝の熱狂と終焉を予感させるような黄金を散りばめたクリムトと、その時代背景と空気感をふんだんに語る中野京子さんの解説に、手に汗握る臨場感。
『旧ブルグ劇場の観客席』華やかさとざわめきの中観客の表情一人一人を眺める。実在の有名人を描いたらしいが150名以上の中からは探しきれない。
『シェイクスピア劇場』の自画像も、じっくり鑑賞。
家の経済状況を考え、職人養成機関といわれた博物館付属工芸美術学校にて奨学金を得、学生時代の17歳で弟と友人とで仕事を請け負うのちの「芸術家カンパニー」を立ち上げたプロ意識。
ウィーンのカフェ文化、社交クラブ的コーヒー文化にため息がでる。
『エミーリエ・フレーゲの肖像』クリムトの12歳下エミーリエの凛々しいこと。高級オートクチュールを開き成功した実業家、ファッションデザイナーとして自信がみなぎって堂々としている。
ゲルマン民族は耳のひとなので、ウィーンが今も音楽の都であるという指摘や、ハプスブルグ家の特殊な埋葬法の解説もある。
『アデーレ・プロッホ=バウアーの肖像Ⅰ』砂糖産業で莫大な富を築いたユダヤ人フェルディナント・プロッホ=バウアーの妻がモデル、製作に3年もかけたとのこと、平面描写及び黄金の渦巻模様が包み込む美しさ。
歴代万博の入場者数ベスト32010年上海万博 2位1970年大阪万博 3位が1900年パリ万博らしい。そのパリ万博に『パレス・アテナ』を出品。「女神の恐ろしさ、非人間的側面」を描いたとのこと。
『マフの貴婦人』オリエンタリズムに惹かれ「美しい黒を引き立てるカラフルな背景」
最後まで、感動を表せきれないくらいのクリムトの絵の素晴らしさを味わう贅沢な時間と同時期の画家や文化人世相を学ぶ盛りだくさんの内容。
最後のページの現在のオーストラリアを示す地図が小国に落ち着いた様子を静かに示している。世界史が苦手な私でもじっくり見てしまう年表も巻末にある。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ中野京子先生の語り口はやっぱりユニークで読みやすく印象に残る。
今回も楽しい読書だった。
職業ごとに名画を複数紹介・解説した一冊。
絵画の登場する職業なので、宮廷音楽家や船頭、異端審問官など現在ではあまりお目にかからない職業の話も登場して興味深かった。
警官や政治家など、現代でも通じる職業であっても、描かれた時代当時の事情などから現代とは違う面が見えたのもよかった。
驚いたのは働く者として、子どもや天使も話のターゲットにしていた件。
その視点はなかった。
特に働く天使の話としてガブリエルが取り上げられていて、そのあまりの働きっぷりに本当に驚かされた次第。
ロレンツォ・ロットの絵に登場したガブリエルの描写に対して先生が書かれた解説にもう笑うしかなかったという。
受胎告知の際にドスン、いやガツンと大きな音を立てて着地してくるガブリエル……めっちゃ笑ったけど、実際は嫌だなあ、そんな登場。