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Posted by ブクログ
ずいぶん前にTLに流れてきてから気になっていた一冊。
するする読めた、面白かった……!恥ずかしながら存じ上げなかったクリムトという一人の画家と、彼の生きた時代、皇室や芸術の姿が綴られていて、"エリザベート"への理解も深まる時間でした。
中野京子さんの文体(好きなんだろうなあと感じさせてくれる、それでいて知性に溢れた文章)がとっても好きで、嬉しい出会い!
ミュージカル"エリザベート"がややフィクションでありファンタジーであることは承知の上で観ていたけれど、
"マイヤーリンク"が彼が亡くなった地名であること、彼は自殺ではないかもしれないこと(少なくとも独りではなく愛人といたこと)、
ハプスブルク帝国がこんなにも大きかったこと、第一次世界大戦の前のヨーロッパの地図への衝撃など(世界史選択ではなかったとはいえ自分の教養のなさを恨みます…)、
視野を広げてはその時代へ導いてくれる、非常に良質な1冊でした。
抱え込んだモデルを性欲の捌け口として扱いながらも高い評価を得たクリムトその人自身、そしてこの時代の芸術家への思いを馳せては考え込んでしまう。中世ヨーロッパには憧れるけれど、女性として生きるなら現代の方が嬉しいだろうなあ。
せっかく来日が決まっているので、"真珠の髪飾りの少女"を見に行く夏前に、シリーズ第1弾も読もうと思います。
Posted by ブクログ
オーストリア・ウィーン、ハプスブルク王朝の熱狂と終焉を予感させるような黄金を散りばめたクリムトと、その時代背景と空気感をふんだんに語る中野京子さんの解説に、手に汗握る臨場感。
『旧ブルグ劇場の観客席』華やかさとざわめきの中観客の表情一人一人を眺める。実在の有名人を描いたらしいが150名以上の中からは探しきれない。
『シェイクスピア劇場』の自画像も、じっくり鑑賞。
家の経済状況を考え、職人養成機関といわれた博物館付属工芸美術学校にて奨学金を得、学生時代の17歳で弟と友人とで仕事を請け負うのちの「芸術家カンパニー」を立ち上げたプロ意識。
ウィーンのカフェ文化、社交クラブ的コーヒー文化にため息がでる。
『エミーリエ・フレーゲの肖像』クリムトの12歳下エミーリエの凛々しいこと。高級オートクチュールを開き成功した実業家、ファッションデザイナーとして自信がみなぎって堂々としている。
ゲルマン民族は耳のひとなので、ウィーンが今も音楽の都であるという指摘や、ハプスブルグ家の特殊な埋葬法の解説もある。
『アデーレ・プロッホ=バウアーの肖像Ⅰ』砂糖産業で莫大な富を築いたユダヤ人フェルディナント・プロッホ=バウアーの妻がモデル、製作に3年もかけたとのこと、平面描写及び黄金の渦巻模様が包み込む美しさ。
歴代万博の入場者数ベスト32010年上海万博 2位1970年大阪万博 3位が1900年パリ万博らしい。そのパリ万博に『パレス・アテナ』を出品。「女神の恐ろしさ、非人間的側面」を描いたとのこと。
『マフの貴婦人』オリエンタリズムに惹かれ「美しい黒を引き立てるカラフルな背景」
最後まで、感動を表せきれないくらいのクリムトの絵の素晴らしさを味わう贅沢な時間と同時期の画家や文化人世相を学ぶ盛りだくさんの内容。
最後のページの現在のオーストラリアを示す地図が小国に落ち着いた様子を静かに示している。世界史が苦手な私でもじっくり見てしまう年表も巻末にある。
Posted by ブクログ
面白すぎてほぼ一気読み。
ミュージカル『エリザベート』が大好物なのでフランツ・ヨーゼフ1世まわりのハプスブルク家は私もよく知るところ。
そんな自分にとって本書は「知ってること+α」の具合が大変ちょうど良かった。
本書で触れられていた映画『黄金のアデーレ 名画の帰還』やエゴン・シーレの伝記的映画は鑑賞済みだったので、より一層楽しく読めた。
それにしても、フランツ・ヨーゼフ1世を囲い込む怒涛の死たるや。
1867年 弟:マクシミリアン メキシコで銃殺刑
1886年 妻の従弟:バイエルン国王ルートヴィヒ2世 変死
1889年 息子:ルドルフ マイヤーリンクで心中(公には心臓発作)
1898年 妻:エリザベート スイスでアナキストによる刺殺
極め付けが1914年 皇位継承者の甥:フランツ・フェルディナンド 夫婦で暗殺 人呼んで『サラエボ事件』
改めて、凄まじい。
なお、エリザベートを襲ったルイジ・ルケーニは反体制派からも支持されず、世間からは卑劣漢扱い、スイス当局は政治犯としてすら認めなかったと。ミュージカルの中で狂言回しの良い役を与えられているのが申し訳なくなってきた。
それから、皇帝の愛人とされるカタリーナ・シュラットの存在は知らなかった。
皇帝自身は第一次世界大戦の最中に病死。
1916年11月 フランツ・ヨーゼフ1世 肺炎により86歳で崩御
1918年1月 グスタフ・クリムト 肺炎とインフルエンザで死去
同年10月 エゴン・シーレ スペイン風邪で死去
クリムトもシーレも、ハプスブルク家の最期の灯火のようだ。あるいは、旅路の共に連れて行ったのか。2人とも宮廷とはほとんど関わりはなかったようだが、時代を彩って時代と共にこの世を去ったところがそんな気にさせる。
Posted by ブクログ
クリムトの出自や経歴だけでなく、彼の生きた時代についても詳しく載っていて彼自身や作品についてよりくわしく知れて、より面白かった。
特にこの本の中でクリムトとは切っても切れない関係性を示すハプスブルク王朝、特にフランツ・ヨーゼフについての話がすごく印象的だった。
著者が表した「神話上の悲劇の巨人」という表現があまりに的を得ていてすごい。と同時にすごく物悲しい気持ちになった。
彼の死をきっかけに終わっていくハプスブルクの歴史の流れが切なかった。
クリムト作品といえば、金箔の輝く艶やかで特徴的な作品を思い描いていたけど、当然クリムトらしさが生まれる以前、または描き方を模索したり試作したりしてきた時期もあったわけで、そんな作品達についても知れたのが嬉しかった。
そんな中で特に好きだったのが「旧ブルク劇場の観客席」という作品。一見全くクリムトらしさの見えない作品だけど、ぐわっとくる画面の広がりに一目で心を奪われた。
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