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なぞ多き人気画家が生きた“奇跡の時代”
17世紀、王を戴かず、経済の力で大国になったオランダ。庶民が絵画を愛する国でフェルメールら画家は何を想い、感じ、描いたのか。
【本書で紹介する絵画】
フェルメール『真珠の首飾りの少女』『デルフト眺望』『信仰の寓意』『取り持ち女』
ルーベンス『戦争の惨禍』
レンブラント『夜警』『テュルプ博士の解剖学講義』
ハルス『ハールレム養老院の女性理事たち』
メツー『手紙を書く男』『手紙を読む女』
メーリアン『コショウソウとスリナムのヒキガエル』
など
単行本 2022年5月 文藝春秋刊
文庫版 2025年4月 文春文庫刊
この電子書籍は文春文庫版を底本としています。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
これは面白い。フェルメールの絵についての造詣が深まるのも嬉しいが、何よりも17世紀のオランダの黄金期の背景を知るための歴史書として秀逸である。当時のオランダには2,000人もの画家がいて、500万点以上の絵画が流通していたというのは凄いことだ。そして当時のオランダが、男の識字率が57%,女の識字率が32%という周辺国ではダントツであったこと。ヨーロッパ中の船舶の半分以上をオランダが持っていたというのだから…
チューリップバブルも球根一つで家が2軒買えたというのだから凄いことだ。そしてそれらのことが当時の絵画の背景になっているのだ。そんなことがわかってくると、当時のオランダの絵画が興味深く感じるのだから、この本は読んだ方がいい。
Posted by ブクログ
26年8月、関西でフェルメール展が開催されると話題になっていたため、(まさに開催中)書店でフェルメールの関連の書籍がたくさん並べられ、ちょっと気になっていたので、読んでみようと思った。
学生のころ、絵画、特にルネサンス時代や印象派の絵画が好きで、はじめは絵がきれいだなぁ、華やかだなぁと鑑賞して、その後、描かれた絵画の持つ意味を知ることによって、再びその絵をみるとまた違った一面が見えてくる、その感覚が好きだったなぁと思いだしてしまった。
謎解きのような感じ?
また、作者が、中野京子さん、彼女の怖い絵シリーズも好きだったなぁと思いながら。
「真珠の耳飾りの少女」があまりにも有名で、フェルメールの名前は知っていたが、残念ながらそれぐらいしか知らなかった。
このエッセイは、フェルメールを中心にというより、オランダ建国までの流れ、そして黄金期時代に至るまでその時代を生きていた画家たちが、当時の日常の一コマを描いた絵画から、どういう時代だったかを紹介するような形だった。
そこに、国を代表するフェルメールや、レンブラントなどの絵も紹介されていた。
学生時代は、派手で華やかで、時には残酷でもあったスペインや、フランス、イギリスなどそちらの歴史ばかり関心があったけれど、改めてオランダの建国までの道のり、黄金期がどのようなものであったか知るきっかけにもなり、最後まで面白く読むことができた。
中野京子さんの絵画にまつわる他の書籍も、久しぶりに読んでみようと思う。
Posted by ブクログ
文庫本サイズではあるものな、カラーで画面いっぱいの絵画鑑賞+時代や文化背景の解説を読める。さながら美術館や博物館を1人で巡りながら、傍らのガイドさんの説明をゆっくり楽しむような気持ち。
スペインから独立を勝ち取った市民戦争の体験から、組織としての気分を昂揚させるような集団肖像画(しかも割り勘で安い)が流行ったという発想、おもしろい。
初心者でも楽しめるようにかなり丁寧に解説してくれていたと思うが、個人的には絵画や音楽など文化的教養、知識が足らないことを痛感した。
これを機にいろいろ見てみたいという気にはなったが、次に何すればいいか、具体的にはちょっとまだ定まらない。とりあえずどこかの美術館でホンモノをみてみたい。
Posted by ブクログ
書名のとおり、「フェルメール」と「オランダ黄金時代」についての本です。
フェルメールの作品だけでなく、かれが生きた17世紀オランダの画家たちの作品を紹介しています。分量的には、前者より後者への比重が大きいです。じじつ、本書が紹介している作品は38作で、そのうちフェルメールの作品は8作です。
作品それ自体を語るだけでなく文脈に置くことで、作品を関係の総体の一部と捉えているのは、さすがと思わせてくれます(いくぶん牽強付会に思える箇所もありますが)。知識をひけらかすこともなく、文体もわかりやすいです。
フェルメールについて知りたいという読者には期待はずれかもしれませんが、フェルメールが生きた時代を知りたい場合には期待どおりでしょう。個人的には、後者でした。
表紙では『フェルメールとオランダ黄金時代』というタイトルの「黄金」を色使いで強調していることからもわかるように、フェルメールは黄金期に生きた、あまた多くの画家たちの一人だったのです。
Posted by ブクログ
◼️ 中野京子「フェルメールとオランダ黄金時代」
フェルメールはオランダのデルフト地方で活動した。ブームですねえ。
大阪・中之島で開催されているフェルメール「真珠の耳飾りの少女」を中心とした展覧会は大盛況のようだ。で、この本が回ってきた。
オランダ、はホラント州から派生したポルトガル語の「Holanda」が入って来た時の日本語化。国際的にはネーデルラント、政府はDutchも公式に使っているとか。
本ではフェルメールの作品も数点紹介されているが、オランダの中世から近代への過程、その中での画家の活動や民俗的なものが語られており興味深い。世界史以外でオランダ史、にはなかなかフォーカスすることがない。ただ、世界史とも、日本ともつながっている。
宗教改革からプロテスタントの多かったオランダエリアと、カトリックの宗主国、スペイン・ハプスブルク家との血で血を洗う独立戦争は16世紀後半から続き、さらに三十年戦争にもつれ込む。ようやく1648年のウエストファリア条約で独立が認められた。そこから東インド会社を中心の1つに、オランダは黄金時代を迎える。
オランダ人の性質は、世界一の高身長、幸福度が高く、実利的、そして庶民に至るまで絵画好き。国土的には低地が多く、国で最も高い山は300mレベル。土地の奪い合いが起きやすいと納得する。フランドル、はフランス、オランダ、ベルギー領を含む北海沿岸の地域のことらしい。
とはいえ紹介する絵画はオランダに関係するがオランダ人が描いたものだけではない。スペインの宮廷画家ベラスケスの「ブレダ開城」、フランドルのルーベンス「戦争の惨禍」が序盤に掲載されている。どちらも展覧会でよく観る画家で特に後者は神話からヴィーナス、マルスを登場させ、芯となる者に端正できれいな顔を描いていて、いかにもルーベンスっぽい。
世情からオランダ各都市では商工業者が自警組織、市民隊を作った。そして絵画好きの市民間では団体の肖像画を割り勘で描いてもらい、公共の場所などに置くことが流行し、多くの作品が残っている。レンブラントの「夜景」では知られざるエピソードも書かれていて興味深い。
オランダは魔女の火あぶりを他国に先駆けて廃止するなど、先進的で独自の文化がある。絵画史でいつも驚くのは、近代までヨーロッパでは人物画、宗教、神話などに関わる場面が、ある意味、正統とされていたこと。おそらく上流階級や教会からの発注量にも関係があるのだろう。画家も食わねばならない。しかしカトリックとプロテスタントが共存し自由な気風が強いオランダでは早くから日常の風景、風景画が描かれ、売れた。
ロイスダールの風車の入った絵、バクハイゼンの軍艦の入ったアムステルダム、どちらも港である。スッキリとして遠景、抜けが良く、建物や船は実にバランスよく配置されている。オランダは特にスピードスケートが強い。人を細かくたくさん描いたアーフェルカンプ「スケーターたちの冬景色」も同じ特徴で、微笑ましい。フェルメールも地元の光景「デルフト眺望」を描いている。クリアで落ち着いていて、水面への映り込みを凝視などしてしまう。
さて、とはいえ団体を含め人物画は絵画の1つの中心。フェルメールではエキゾチックな「真珠の耳飾りの少女」、さらに「真珠の首飾り」「窓辺で手紙を読む女」など。メツーという画家の、富裕層の美青年が手紙を書き、別の作品で手紙を読む絵などは日常も垣間見える美しさ。
人物以外でも、集団肖像画の一環として、解剖学講義の絵画なども流行したようだ。面白いのは、後に紙幣の顔となったマリア・メーリアンという生物好きの画家が昆虫など多くの生物の絵を残していること。本ではスリナムのカエルの描写が紹介されている。当時メーリアンの絵を持っていることはステイタスでもあったとか。
絵の背景を追っていくと楽しい。すべてタッチが似ているような気もする。その中でレンブラントやフェルメールは、名前を知っているから、かも知れないがひときわ何か予感させるものがあるな、と今回思ったのでした。
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