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美しい絵画の裏にある人の世の深淵 若く、美しいバーの売り子。彼女の虚ろな表情が物語る、残酷な現実とは――。名画の背後に潜むドラマを読み解く絵画エッセイ17篇。 ※この電子書籍2019年1月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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Posted by ブクログ
880円 ゴーギャン、ムンカーチ・ミハーイ、ターナー、ローザボヌール、男装れず、 中野 京子 (なかの きょうこ、生年不詳)は、日本の作家[1]、ドイツ文学者[2]、西洋文化史家、翻訳家[3]。北海道生まれ[4]。1979年、早稲田大学大学院修士課程修了[5][6]。オペラ、美術などについて多く...続きを読むのエッセイを執筆する。2007年に発表された『怖い絵』を端緒とする『怖い絵』シリーズが大ヒットとなる。新聞や雑誌に連載をもつほか、テレビの美術番組にも出演する[7][8]。早稲田大学講師[9][10]。『怖い絵』シリーズの刊行10周年を記念して2017年に開催された「怖い絵」展では、特別監修を務めた[11][12][13]。2021年9月に開催された「怖いクラシックコンサート」(東京文化会館)での解説[14]、2022年3月公演の舞台「怖い絵」の監修[15][16]、同年7月上映の「星と怖い神話 怖い絵×プラネタリウム」の監修・解説を担当した[17][18]。 「『フォリー・ベルジェールのバー』は、エドゥアール・マネ最晩年の大作。画面左端にある酒瓶のラベルに、マネのサイン「 Manet」と制作年「 1882」が見える。この翌年、彼は五十一歳の若さで亡くなるのだ。 高級官僚の息子に生まれ、生涯、経済的に不自由せず、生活のため絵を売る必要もなく、生粋のパリジャン、人好きするダンディーで知られたマネだが、二十代で罹患した梅毒が進んで末期症状を迎え、壊死した片脚を切断したものの、ついに回復できなかった。本作制作中も手足の麻痺や痛みに苦しみ、現地でデッサンした後はもはや外出できず、わざわざ自分のアトリエにカウンターを設え、モデルをそこに立たせて描きついだ。少し絵筆を動かしてはソファで休む、その繰り返しだったという。」 —『運命の絵 もう逃れられない (文春文庫)』中野 京子著 「ゴーギャンは晩年、虚実ないまぜの半自伝的紀行『ノアノア(タヒチ語で「かぐわしき香」の意)』を発表し、それに触発されたサマセット・モームが傑作『月と六ペンス』を書いている。ゴーギャンという破天荒な画家の伝説化に、モームのこのベストセラーが果たした役割はきわめて大きい。 とはいえ『月と六ペンス』は伝記ではない。実際のゴーギャンの足跡は小説よりさらに荒々しく、彼が描いた南洋の奇怪な色彩と同じように、凡人の平穏を揺さぶるものだった。生まれる前から波乱は始まっており── ゴーギャンの母方の祖母フローラ・トリスタンは、女性社会主義活動家の先駆者だ。フランス女性とスペイン系ペルー人との間に生まれた彼女は、父亡きあと貧困から逃れるため年長の石版画家と結婚し娘(ゴーギャンの母)を産んだが、妻を私物とみなす暴力的な夫との生活に耐えきれず、娘を連れて出奔。各地を転々として働くうち、父の実家がペルーの富豪と知ってペルーへ渡る。歓待され、援助金をもらい、フランスへ帰るとペルー旅行記を出版、才色兼備ぶりを証明するとともに、女権拡張論者として名を馳せてゆく。」 —『運命の絵 もう逃れられない (文春文庫)』中野 京子著 「フランスではお坊ちゃんのままではいられなかった。父方の家族のいるオルレアンで神学校に通ったあと、海軍軍人になろうと試験を受けたが失敗し、水夫見習いとなって世界の海を廻る(母の死はインドで知った)。二十三歳でパリの証券会社に勤め、デンマーク女性と知り合って結婚し、家庭を作り、金融恐慌で画家となったのは、先述したとおり。 ここから始まる売れない画家としての彼の人生は、美術愛好家なら誰しも知るところだ。印象派の画家と交流し、作風を真似たが売れず、印象派から離れても売れず、パリを離れても売れない。貧乏生活を知らなかったので、最初はそうとう堪えたが、会社勤めにもどる気はなかった。妻は子を連れてデンマークへもどってしまう。」 —『運命の絵 もう逃れられない (文春文庫)』中野 京子著 「ちなみに仏訳に関してだが、イギリスやドイツ(そして日本)と違い、フランスは基本的に亡霊譚をあまり好まないので(幽霊などいるわけがない、とはなから信じないフランス人は多い)、『レノーレ』訳は次第に翻案・改変されてゆく。ドイツの深い森から生まれた幽霊花婿譚が、フランスでは官能性を前面に押し出すことで大衆人気を得たといっていい。」 —『運命の絵 もう逃れられない (文春文庫)』中野 京子著 「エレンがフランスのサラ・ベルナールと並び称される大女優にまで昇りつめたのは、このアーヴィングに拠るところ大である。二人のコンビネーションは絶妙で、互いに互いを最高に引き立てた。彼らは二十年以上にわたってイギリス演劇界を牽引し、それまで軽蔑されていた役者の地位を自他ともに認める芸術家の域にまで高めたのだった。 男優として「サー( Sir =ナイトの称号)」を授与されたのはアーヴィングが最初であり、イギリス人女優として「デイム( Dame =男性のサーに対応する称号)」を獲得したのはエレンが最初だった。二人は愛人関係にあると囁かれはしたが、もはやそのことで社会的制裁を受けることはなかった。芸術家はそうした世間的縛りから自由な身だと、次第に捉えられるようになっていたのだ(現代日本はなぜかそれに逆行している気がするが……)。」 —『運命の絵 もう逃れられない (文春文庫)』中野 京子著 「抵抗すべき何ものもなくなったムンカーチは、実質的なハプスブルク最後の皇帝だった老フランツ・ヨーゼフの、ハンガリー軍服姿の見事な肖像画を描いた(左図)。またハプスブルク家が誇る美の殿堂ウィーン美術史美術館からも、大天井画の依頼を受けた。一八八八年に完成したその『ルネサンス讃歌』は、今もホールを見上げれば鑑賞することができる。女神グローリアのもとで、レオナルド、ラファエロ、ミケランジェロ、ヴェロネーゼ、ティツィアーノを描きながら、ムンカーチは何を思っていたろうか。 貧しく、虐げられた時代には心から噴出する主題と表現があったのに、成功して豊かになった途端、それは手からこぼれてゆく。アウトロー的外見に似ず繊細な神経を持つムンカーチは、自らの芸術的展開への焦りを感じていたようだ。そのせいばかりでもあるまいが、少しずつ心も病み(脳梅毒との説もある)、五十六歳で世紀の変わり目にひっそり死んだ。第一次世界大戦の勃発もハプスブルク崩壊も、ソ連によるハンガリーの共産化も知らぬまま……。 ムンカーチ・ミハーイ( 1844 ~ 1900)の作品の大部分は、ブダペストの国立美術館にある。歴史画の他に宗教画の大作もよく知られている。」 —『運命の絵 もう逃れられない (文春文庫)』中野 京子著 「ギュスターヴ・モロー( 1826 ~ 1898)は生涯独身だった。作品の散逸を心配し、自邸兼アトリエをモロー美術館とすること、初代館長を弟子ジョルジュ・ルオーが務めること、との遺言をのこしてそのとおりになった。本作もこの美術館に所蔵され、人々を惹きつけている。」 —『運命の絵 もう逃れられない (文春文庫)』中野 京子著 「当時のフランスでは、女性の男装(とりわけズボン)は禁じられていた。これは一八〇〇年に発布された警察令をもとに、一八〇四年のナポレオン法典で明文化された法律で、違反者には罰金や禁固刑が科せられた。例外は健康上の理由など特殊な場合のみで、警察に申請して「異性装許可証」を取得する必要があった。一八五〇年代の取得女性はわずか十二人というから、ハードルは高い。 現代人にとっては、何ゆえそこまでズボンにこだわるのかと呆れるが、フランス革命時に女性市民が政治に大きく関与したことを苦々しく思っていたのも一因とされる。ナポレオン法典には、妻は夫に絶対服従と明記されているばかりか、妻の収入は夫の財産であり、離婚も中絶も避妊も禁止なのだから、女がズボンを穿くことが男の権利簒奪と見做されて何の不思議があろう。」 —『運命の絵 もう逃れられない (文春文庫)』中野 京子著 「 三十八歳の時、フォンテーヌブローの禁猟区域の一角にある城付きの土地を購入し、念願の動物王国を作っている。小さなものだと、犬、猫、イタチ、リス、ウミガメ、トカゲ、カワウソなど。大きなものだと、各種の馬、ヤク、サル、カモシカ、イノシシ、鹿、ヤギ、牛、羊など。野獣だとライオンまで。 次第にほとんどの時間を男装で通すようになり、酒を飲み、煙草を吸い、時に男の女装と間違えられ、ナタリーと同棲し続けたが、スキャンダルにはならなかった。動物画家であり、動物たちとの特殊な暮らしも知れ渡っていたので、「男装は必要に迫られてのもの、奇矯な性癖(レズビアン)ではない」と世間は納得していたようだ。それでも「フォンテーヌブローのディアナ」というあだ名は付けられた。ディアナは言わずと知れた月と狩猟の女神。処女神にして男嫌い。周りには女性しか侍らせなかったことで知られる。」 —『運命の絵 もう逃れられない (文春文庫)』中野 京子著
1作目を飛ばして読み始めてしまったが、とても面白かった 絵画って自分の解釈でしか見たことがなかったからこれを読んでから本物を見に行ったらきっと世界が変わって見えるんだろうなあ
難しいな。神話とか地理歴史がわかってなさすぎて全然頭に入ってこなかった。カタカナ固有名詞が多すぎて大混乱。ひとまず全体を一読。 またタイミングのいいときに読めたら。
「怖い絵」ほどでは無いけど 絵が描かれた時代背景や画家の生活環境など、展覧会で見るだけでは知り得ない事がわかるので、大変興味深く読めました。 他のシリーズも読んでみたい
『マクベス夫人に扮するエレン・テリー』の迫力たるや。エレン・テリーの生涯とエレンをモデルにした別の絵画『選択』も紹介されてて、とても作品の背景とか時代が分かりやすい。 やっぱり中野京子さんの本は面白い。
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