あらすじ
名画に秘められた人間心理の深淵――。憎悪、残酷、嫉妬、絶望、狂気を鋭く読み解き、圧倒的な支持を得てロングセラー中の「怖い絵」シリーズ。文庫版だけの書き下ろしも収録!
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
周りを警戒しなかったがために処刑されたイングランド最初の女王「レディ・ジェーン・クレイの処刑」。
描いているのは労働の崇高さと夫婦愛の美しさ、それとも亡き子に祈り悲しむ姿か。どちらにしても寂しげな印象を受ける「晩鐘」。
崇高なる血を濃くし続けた一族の咎を引き受けざる得なかった少年王「カルロス二世」。
幸福に満ちた時間を提供するために道化として他者の優越感の犠牲になる者の怒りを描いた「ラス・メニーナス」。
一つの平面としてなら違和感がないのに、複数は成立できない。本当は存在しているのに私たちが見えないだけだろうか「相対性」。
今回も中野さんの知識に唸った。
Posted by ブクログ
再読。
単に絵がホラーなだけでなく、
時代背景や寓意を読み解いた時ありありと感じる人間心理の深淵や恐ろしさ。
頭から中野京子先生の巧みな文章術に引き込まれた。
著名な作品を詳らかに分かりやすく書いてくれているので予備知識無しでOK。
レディ・ジェーン・グレイの処刑/絵画にハマるきっかけとなった作品。濃い解説に興味を深めた。
晩鐘/ダリの天才の度を超えた変人的な思想にちょっと引いた。
カルロス二世/近親結婚という代々繰り返してきた過ちの代償が全てカルロス二世にのしかかってしまったのが可哀想でならない。
Posted by ブクログ
怖い絵展で個人的に1番印象に残っていた作品の解説を読めたり、とても充実感のある本となりました。
正直、タイトルの"泣く女篇”というのが関係ないと感じる作品は多かったが、比べると1番初めの『怖い絵』より内容がとても良く、印象深さも強かったと感じました。本当に様々な"怖い"があると学んだ。
Posted by ブクログ
洋画の絵解きをエッセイとして楽しめる本だ。シリーズものだが、私としてはこの本から入った。怖い絵というのだが、何が怖いのかをエッセイの中で明かしてくれる。
私たちが恐怖を感じるのは説明のできない何かを感じたときなのかもしれない。理解不能の事実を突き付けられたときに恐怖は生まれる。本書で紹介されている絵画にはその意味での様々な意味不明が登場し、明かされていく。
一つの作品をどのように解釈するのか、鑑賞するのかは個人の自由だと思う。ただミレーの「晩鐘」をダリが解釈した見方はどう考えても邪道であり、絶対そうではないと思う。しかし、その作品がそういう幻想を抱かせたのなら、少なくとも鑑賞者の心象は虚偽とは言い切れない。
絵の怖さはさまざまな憶測を人々に想起させ、無責任に人をひきつけ続けることにあると感じた。
Posted by ブクログ
歴史の勉強になる。中身が充実している。
趣味悪い類の本ではあるが、嫌いではない。
こういうものの言われや裏話は好き。
また、せっかちな自分にとっては、
ゆっくり絵画を鑑賞できて、歴史も学べて良かった。
やはり日本史より世界史が好き。
Posted by ブクログ
表紙の「ジェーン・グレイの処刑」の解説からどんどん読み進めてしまう。絵の隅々まで描かれている内容そして絵が描かれた背景など、解説を読んで始めて知ることばかりでとても面白い。
Posted by ブクログ
怖いよー。
でも面白いよー。
著者の博識と洞察力と文章力でとても興味深く読ませてもらった。
特に怖かったのはカレーリョ・デ・ミランダの『カルロス二世』
妙に生白い男が立っているだけなんだけど、初めて見たときゾクッとするほど怖かった。
その男の背景を教えてもらうとまたさらに怖い。
テレビやネットの演出感ありありの『心霊映像』を観るくらいならこの本読んだらいいのに...と思った。
怖いついでに歴史や想像力も学べる気がする。
Posted by ブクログ
「怖い絵」を紹介した中野京子さんの人気シリーズ。今年は美術展も予定されているので楽しみ。副題が関係していない作品も多いように思いますが、内容は安定の面白さです。印象的なものだけ抜粋。
ベラスケス『ラス・メニーナス』
一枚の絵画に詰まった情報量。俯瞰して眺めたような構図が以前から好き。あどけない表情を見せる5歳のマルガリータ王女を囲う従者たちと、バルボラの隠しきれない怒りと哀しみ。
ジェラール『レカミエ夫人の肖像』
はだけたドレスと艶っぽい線の細さの裏に潜んだ、女性の死をも恐れぬ美への追求。見方は180度変化し滑稽さすら感じる。
ブリューゲル『ベツレヘムの嬰児虐殺』
恐るべき改竄の事実。
ビアズリー『サロメ』
少し前にワイルドの『サロメ』を読んでいたのでより思い入れがある作品。小説のなかのサロメは無垢で猟奇的、恐れを知らない少女のイメージが強かったけれど、ここでは成熟した女性の終生の姿だった。妖艶なサロメと彼女を抱える異形の2人の対比に目を奪われる。
ルーベンス『パリスの審判』
三女神とパリスのやりとりが一枚の絵から十二分に伝わってくる。
ドレイパー『オデュッセウスとセイレーン』
セイレーンの登場により起こる船上の恐怖と混乱。本作では一見美しくも映る人魚セイレーンですが、彼女たちの目的を思い出すと湧き上がるのはやはり恐怖。ギリシャ物語の名シーン。
ファン・エイク『アルノルフィニ夫妻の肖像』
計算しつくされた構図のなかに込められた契約のかたち。
ベックリン『死の島』
黒々とした島の前にぼぉっと浮かぶ白装束の後ろ姿。この世のものではない、見てはいけない世界を前にしている気分に。
Posted by ブクログ
絵の考察といっても作品の時代背景や著者のバックボーン・題材となった作品群などの説明含めて解説されているので、美術史・宗教史・歴史など一気に勉強した気がするぐらい濃密な一冊。
解説読み終えると画家たちの絵での表現力に圧倒されます。
ベラスケス作「ラス・メニーナス」の中に描かれているベラスケス本人の表情が印象的。〝これを見てどう思う〟とその絵に対峙する者すべてに訴えかけているよう…
Posted by ブクログ
最後のピカソの泣く女、からの後書きが印象に残っている。
・絵についてもっと語ってみたくなる。
・このような本を読むと、知識がついたように錯覚するが、そういったものは忘れてしまう。一方、絵に向かう「まなざし」は残り続ける。
なんとなく納得してしまった。
何となく見るのではなく、この小物はどういう意味を持つのか、この人物だけ周りの雰囲気とマッチしていないがどうしてか、そんなことを考えながら絵画を鑑賞するきっかけとなればいいと思った。
絵が小さくて見難いのは文庫の弱点ですね。
Posted by ブクログ
中野京子さんの「怖い絵」シリーズ。
今回は泣く女篇。
泣く女とは、ピカソの作品のタイトル。
あの、物凄い迫力で泣いている、いかにもピカソなキュビズム作品。
今回収録されている作品は22。
有名な作品が多い。
ちょっと挙げると、ドラローシュ、ミレー、ベラスケス、エッシャー、ブリューゲル、ヴェロッキオ、ピアズリー、ボッティチェリ、ブレイク、ルーベンス、カルバッチョ、レンブラントなどなど一度は耳にも目にもしたことのある芸術家の数々。
正直、前に読んだ「怖い絵」の方が作品に隠された怖さとしては面白さが上なようにも思えるけれど、こちらはこちらで十分楽しめる。
ドラローシュ「レディ・ジェーン・グレイの処刑」
カレーニョ・デ・ミランダ「カルロス二世」
これらの歴史上の人物を描いた作品を観ると、まるで一冊の歴史書を読んだかのように感じる。
もっと深く知りたいと思わせる。
ブリューゲル「ベツレヘムの嬰児虐殺」
ヴェロッキオ「キリストの洗礼」
ピアズリー「サロメ」
ボッティチェリ「ホロフェルネスの遺体発見」
これらのような宗教画は、聖書を読みながら観てみたいと思う。
絵を観るとき、何の予備知識も持たずに、綺麗だなあとか凄いなあとか言いながら眺めることは、それはそれで楽しいことだと思う。
でも、もしその作品に隠された物語を知っていて観ることがあったら、今迄特に思うことなく通り過ぎてしまっていた作品であっても、心に何かを感じるのではないだろうか。
作家であれば、自分の思いを残らず文章することが出来る。
でも、芸術家と呼ばれるひとたちは文字を用いずに表現するしかない。
表立って言えないことや、社会情勢といったことを作品に載せているとしたら、言葉にならない言葉を聞きたくなる。
いつか本物の作品をこの目で観ることがあるといいなと心から思う。
Posted by ブクログ
前に読んだのが面白かった本シリーズ。語りの妙によって、何となく絵の描かれた背景まで理解出来たように感じられるのが良い。ある意味、個人的ホラー特集の一環かも。
Posted by ブクログ
こういった絵の解説?というようなものは今まで手を出したことのないジャンルだった。だけどBOOK・OFFの端にいたのにも関わらず、えげつない存在感を醸し出していたこの本に思わず手が伸びた。
自分自身の好きな絵はルドンの「キュクロープス」(夜に見ることは勧めません)だったり岡本太郎の「明日の神話」だったりで、そういった奇妙で恐ろしさも感じる絵に目が釘付けになる。そんな自分からしたらこの本のタイトルと表紙に引かれないはずがないのだ(実は中学生?とかそれくらい昔にも表紙とこのタイトルに引かれた経験あり。その際は怖くて買えなかった)
他の積読作品たちを押し退けて即座に読み進められたこの本は、作者の図ることの出来ない幅広く、そして絵という部分に至っては素晴らしいくらいに深く練られた考えによって、飽きることなくじっくりとページをめくってしまった! 正直、読書数稼ぎで流して読もうなんて思っていたのに、読み返すわ、前のページに戻るわ、熟読するわで途方もない時間をかけてしまった。が、後悔なし!
解説の方が書かれてたように、この本は「絵そのもの」が怖いのではなく、作者の書き方によって絵を怖く見ることが出来る。
はじめは「何でこんな絵が怖いんだ?」と思って文章を読み進めていくと、怖い怖い怖い怖い。と少しずつ背筋がひんやりとしてきて、もう一度絵のページを開く(もちろん恐る恐る) 怖い!!!
さっきまで全然怖くなかった絵が、めっちゃ怖い!
もう今日は寝れなさそうだ、よしもう一ページ読もう。なんて事で、かなりの分量でしたが(読み返したせい)短い期間で読むことができました。
どうやら他にもこの「怖い絵」シリーズはあるみたいなので、合間合間で他のも読んでみようかなぁと思いました。
新たな知見に満ちた本! かなり好きです!
Posted by ブクログ
絵の解説(構図や技巧について)だけでなく、時代背景と絡めた説明、モデルになっている人物についての考察なども書かれていて、非常に興味深かったです。あと、著者がちょいちょい毒舌なのも面白かった(笑)。
描く側(画家)のお話もなかなか面白かったなぁ。「ルーベンスってそんなに恵まれてたんだ~(天にえこひいきされた幸運の画家、ですって)」とか、「ピカソってクズだったんだな・・・(女性の扱いがひどすぎて引いた)」と思いながら読みましたよ。
Posted by ブクログ
シリーズ2作目を手にしました。
「怖い絵」で感じた「絵」の見方に付け加えて、「絵」を見ることの楽しさを教わった気がします。
今まで興味がなかった美術館に行きたいと最近になって強く思うようになりました。
少なからず影響を受けているのだと思います。
世界中の人々を虜にする名画との出会い。
本物を目にした時に自分がどのように感じることが出来るのか。
何を感じ、何を思うのか。
答えを探しに足をのばしてみようと思います。
説明
内容紹介
名画に秘められた人間心理の深淵――。憎悪、残酷、嫉妬、絶望、狂気を鋭く読み解き、圧倒的な支持を得てロングセラー中の「怖い絵」シリーズ。書き下ろしを加筆してついに文庫化!
内容(「BOOK」データベースより)
散る直前の匂いたつ美しさ、「レディ・ジェーン・グレイの処刑」―彼女を死に追いやった陰謀とは?フェルメールの知られざる宗教作品、「エマオの晩餐」―世界の美術市場を震撼させた事件とは?近親結婚くり返しの果て、「カルロス二世」―スペイン・ハプスブルク家断絶の過程は?憎悪、残酷、嫉妬、絶望、狂気、妄想…。名画に秘められた人間心理の深淵を鋭く読み解く22の物語。書き下ろしを加えてついに文庫化。
著者について
北海道生まれ。早稲田大学講師。専門はドイツ文学、西洋文化史。著書に『名画で読み解くハプスブルグ家12の物語』『名画で読み解くブルボン王朝12の物語』『危険な世界史』『「怖い絵」で人間を読む』などがある。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
中野/京子
早稲田大学講師。ドイツ文学、西洋文化史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
Posted by ブクログ
美術館で絵を見ても「この時代はこういうのが流行ってたんだな」とか「これは私好みじゃない」とか、それぐらいしか感想が湧かないのがもったいないと常々思っていました。
本書のように歴史や風俗を掘り下げ、絵の背景にあるものを推理・考察してゆけたら・・・と思わずにはいられません。美術鑑賞が100倍面白くなると思います。
私が今まで実際に目にしたことのある絵も数点含まれており、その時に知識がなく素通りしてたと思ったら悔しくて悲しい・・・
Posted by ブクログ
上の森美術館の怖い絵展に行く前に読みました。本と展示作品はあまりかぶっていなかったように思います。美術館は大人気でゆっくり見ることができないうえに解説が短いので個人的には本の方が楽しめたように思います。ただ、絵の細かな部分に関しては文庫本のため見えにくいところもあります。
Posted by ブクログ
前回に読んだのが面白かったので、他のシリーズも購入。相変わらず知っている絵もあり初見もあり。
何より説明文が魅力的。世界史が好きなあたしには色々と知ることが出来て楽しかったー。おすすめです。
Posted by ブクログ
絵の中のモチーフ一つずつ取り上げ丁寧に解説してくれています。一見「怖い絵」でなくても、バックグラウンドを知ると「怖い!」と思うものも。描かれた当時の時代を知ることができるのもいい。
ただ文庫版だと絵の細部まで見るのはかなり厳しい。特にブリューゲル…。
Posted by ブクログ
絵に込められた想いや政治批判、などを淡々と解説していく。20枚ほどの絵がかいせつされますが、その中には私の縁が深いスペインの作家のものも。最後がピカソの「泣く女」ですが、こんな背景があったとは知りませんでした。(当時製作中だったゲルニカの前でピカソの愛人二人がつかみ合いのケンカをし、そのうちの一人が「泣く女」のモデル、と)
たまには路線を変えてこのような本を読むのも大事ですね。
Posted by ブクログ
エッシャーの『相対性』のパラレルワールド的な表現に魅了された、確かに怖い
それから『ガブリエル・デストレとその妹』の生前のガブリエルのバックグラウンドと絵に込められた暗喩がマッチして面白い
ハントの『シャロットの乙女』は一目見て好きだって思った絵、背景を聞くと尚更好きだと思った、なんで男の理想に付き合わなかんねん
Posted by ブクログ
シリーズ2作目
表紙絵は衝撃的な「レディ・ジェーン・グレイの処刑」
彼女を含む時代背景も恐ろしいけれど、表紙絵の右横に
隠れているけど、斧を持った男がいる。
ギロチンが出来る前だからね・・・斧で斬首すると・・・
一流の人間は、超一流の人間に潰される。
レオナルド・ダ・ヴィンチの才能に驚いた師は
絵筆を折ったというのは、そう言う事か・・・
他にも、香水のそもそもの使い方とか、色んな蘊蓄やら
小ネタも満載で、怖い絵展を観てない事が今更ながら悔やまれます
Posted by ブクログ
2017/0918
いろんな意味を含んだゾクゾク感を味わいたくて購入。
装丁のインパクト!
読んでみたら中野さんのサクサク通る文章と絵画の深さ?にぐいぐい惹き込まれて、どんどん読んでしまう。
一作品の解説ページ数がちょうどいいのもあるかな
掲載されている絵のサイズが小さいのが見辛いけど仕方ないやな。
携帯で絵を観ながら読んだりしました。
目の前で観ながら解説を聞いたら更に楽しいだろうなぁ、美術館行きたくなる。
Posted by ブクログ
その絵に隠された秘密を知ったら、もう平静ではいられない。
説明されなくても怖い絵もあるけれど、秘密を知って怖くなる絵も多い。また、それを描いた画家の心理を考えると怖くなるというのもある。超有名作からどこかで見たことあるかもという作品まで、ガイドとしてなかなか面白いシリーズ。
Posted by ブクログ
『知る楽』というNHK講座が雑誌になったものを何の気なしに買った過去があり、
それがとても易しく面白い内容だったので覚えていました。
本屋でこの本を見かけた時、「あれっ?似てるな……」と思い手に取り。
家に帰ってから確かめたところ同じ著者だったという不思議なご縁でした。
普段美術系に疎い人間でも楽しめるので、ちょっと西洋史と併せて
絵画を知りたいなという気分の時にはぴったりの一冊。
カラーの絵が一章ごとに挟み込まれているので、それと照らし合わせながら
著者の解説を読み進めていく形です。
一見すると何が怖いのか分からない絵でも、解説を読むとその隠された
歴史的背景にゾッとしてそれがまた面白い。
実際にこの絵を生で見たいなあとか思うようにもなったりして……。
まだ自分が知らない世界に興味を持つようになる入門書の位置づけだと
思います。
他の怖い絵シリーズも読みたいです。
Posted by ブクログ
一番読みやすい絵の本シリーズ。
絵のことを知らない、でもヨーロッパ史が好き、という人にはぴったりの本です。文庫本で手に取りやすいかわりに絵が見にくいので、これを読んでから本物を世界中に見に行きたい。
ひとつひとつ解説してくれるので、ぱっと読めます。暇つぶしに最適。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
☆レディジェーングレイの処刑、ドラローシュ
☆アルノルフィニ夫妻の肖像、ファンエイク
ロンドンナショナルギャラリー
☆カルロス二世、カレーニョデミランダ
☆ラスメニーナス、ベラスケス
プラド美術館
☆レカミエ夫人の肖像、ジェラール
カルナヴァレ美術館