中野京子のレビュー一覧
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イギリス王家12の物語。
イギリス王家と聞いて思い浮かぶのは、エリザベス1世とメアリ・スチュワート、アン・ブーリン、ヴィクトリア女王でしょうか。見事に女性ばかり、悲劇と繁栄の女性たちですね。
12の物語も、国家としての栄光の下の光と影を色濃く描き出しているものばかりに思います。それを繰り返しながら、現在でも王室が続いているのが素晴らしいというか、恐ろしいというか、歴史の面妖さなんでしょうか。
紹介されている絵画は、テューダー朝から始まりスチュワート朝、ハノーヴァー朝、そして現在のウィンザー朝へと続く12枚。それぞれ王朝の血脈が絶え、他の血脈に変わるというわけでなく、かすかに繋いでいるというのが他の3作で紹介された王朝との大きな違いで魅力ですかね。ブルボンともハプスブルクともロマノフとも違う形で命脈を保っているイギリス王家。タイトルが〜朝でないのは、そういうことかと読み終えて納得です。
「私はイギリスと結婚した」というのはエリザベス1世の言葉。王朝の名前が変われど、王家と国家が離れずにいるのは、この言葉が発せられた時から王家と国家の婚姻関係が続いているからかもしれない。と感情に任せた感想を抱いてしまいました。 -
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ロマノフ家12の物語。
ロマノフと聞いて思い出すのは、大津事件とラスプーチン、そしてアナスタシア。ただ、「ゴールデンカムイ」の存在でアレクサンドル2世暗殺事件の印象も強い。
エリザヴェータとエカテリーナ女帝のふくよかな肖像画。この2人の女傑があるから、ソフィアはああいった女丈夫になったんじゃなかろうか。
個人的なことですが、第10章の山下りんにものすごく琴線を震わされました。彼女の存在を知っていたわけではないのですが、たまたま最近本屋さんで見かけて買ったのが、彼女を書いた小説「白光」でした。この本を読む前だったし、山下りんという人を知っていたわけでないのに、面白そうと思って買った本が予想外につながってしまったという奇跡。自分しかわからない感情ですが、運命的な衝撃でした。大袈裟かな。
なので、次は「白光」読もうと思います。この昂った気持ちが静まる前に、わくわくを抱えたまま。 -
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ブルボン王朝に続いてハプスブルク家12の物語。
ハプスブルクといえば、マリア・テレジアとマリー・アントワネット。マリア・テレジアは「少女時代のマリア・テレジアの肖像画」がすぐに思い浮かびます。美人さんだという印象。今回肖像画のタイトル改めて調べて「少女時代」ということに驚く。でも、マリア・テレジアの肖像画の中で一番綺麗だな、と思うのです。でも少女時代ということだとロリコンみたいなことになりそうだ。
違いますよ。
ブルボン王朝で書いた婚姻関係の複雑さの原因は、ほとんどハプスブルクにあるのではないでしょうか。それがあってこその650年という王朝の長さになったとはいえ。
ただ、ルイ14世のような世界を謳歌したという印象はないです。マリー・アントワネットやエリザベート、マクシミリアンの最期のせいではなく、歴史の表舞台に颯爽と現れた英雄という印象がないせいかもしれません。
いや、マリア・テレジアは英雄ではあるのだろうけど、隣のフリードリヒ大王の方が色濃く写ってしまいます。
ま、それも知ってゆくにつれて変化してゆくことですね。その感情の変化を楽しむことができるのも歴史の楽しみ方だと思います。
「ウェルトゥムヌスとしてのルドルフ二世」のインパクトの強烈さ。この1枚の強烈さに勝る絵画はないでしょう。表紙のエリザベートの美しさもすばらしいですが、野菜や果物で描いたという衝撃には敵わない。 -
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12枚の絵画を通してフランス・ブルボン王朝の歴史を紐解く1冊。
ちょこちょこ小説で読んでいる人物が絡んでくると、急に解像度増す気がするから歩楽しい。
こういう自分の中にある知識の点と点が、読書中に線になって繋がってゆく瞬間がたまらなく気持ちいい。おそらくこの瞬間の気持ちよさのために読書をし続けているのだな、と思います。
その瞬間は、読書中だけではなく、ゲームでも映画でもたわいのない会話中でも同じ。
ふとした瞬間に、繋がる気持ちよさ。知識が繋がるのはとてもいいです。
絵画は12枚だけでなく、各章ごとに補足するためにいくつか追加で紹介されています。知っていたのは「ガブリエル・デストロとその妹」乳首摘んでるやつですね。思春期には印象は強いですこの1枚。「ぶらんこ」スカートの中覗いているやつ。あの貴族に気づいてなんちゅう性癖絵画だと思った記憶。
「ナポレオンの戴冠式」「アルプスを超えるナポレオン」「民衆を導く自由の女神」の有名すぎる3枚。
「メデュース号の筏」極限の暗さ。
世界史というかヨーロッパ史の複雑さは、各時代各国の婚姻関係にあると思います。
これに比べたら、日本史の同じ感じ使用している名前(偏諱のせい)が多くて覚えられない、なんて戯言じゃないかと思うんですけどねぇ。まあ、覚えられないと言っている時点で覚える気持ちを半ば放棄していると思うので、死ぬ気で覚えるしかないのですが。テストなら丸暗記でいいのでしょうが、物語として楽しんでいる身としては、するする覚えたい。
なので、点と点が繋がると気持ちがいいのです。あ、この知識がランクアップしたという感覚。他人にはわかりづらいでしょうが、楽しいのです。 -
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ネタバレロマノフ家と言えば、ピョートル大帝か一家全員銃殺されたニコライ二世あたりが有名かなと個人的には思うけれど、流石300年続いた一族、エピソードには事欠かない。
女帝への道の基礎を作った女傑ソフィア、やたら短命なツァーリたち、とにかく家族仲が悪い、そしてやたら逞しく太ましい女帝たち……いやもう、本当に濃い。
そんなロマノフ家を様々な絵画を通して追いかけていく一冊。
勿論ラスプーチンもいますぞ。
あの嘘かよとツッコミを入れざるを得ないエピソードも勿論紹介されていて、今回もツッコミを入れました。
人間ではなかったのかもしれん。
びっくりしたのは、ロマノフ家の話なのに日本人のしかも女性のイコン画家が出てきた件。
先にも挙げたニコライ2世が日本贔屓だったこと、大津事件の被害者なのも知ってはいたが、日本に来た彼へのお土産として渡すイコン画を日本人女性が手掛けていたことを全く知らなかったので驚いたの何の。
男性ですら西洋画家を名乗るのも難しかったであろう時代に女性がイコン画とはと。
彼女の波乱万丈であっただろう人生を思うと、いたたまれなくなるというか……エピソードを見る限り、逞しかったようにも思うが。
とにかく血生臭いエピソードの多いロマノフ家、「うわあ」と思いながらも興味深く読ませていただきました。
『怖い絵』など他の著書でも登場した絵も出てくるので、馴染みあるものもあるかも。
流石中野先生、複雑な歴史でも大変読みやすかったです。 -
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ネタバレ『怖い絵』シリーズは、ある1枚の絵の対するエピソードを語っていくスタイルだったと思うが、この本はあるテーマやエピソードに対して複数枚の絵を紹介していくスタイル。
例えば男性のロマンティシズムを皮肉ったエピソードのときは、『新曲』を書いたダンテとベアトリーチェを描いた絵と、生き様がダンテに似てしまったある画家の自身のベアトリーチェなる女性を描いた絵を紹介している。
ダンテの生涯と、後者の画家の生涯を比較し、若くして亡くなった運命の人ベアトリーチェにロマンを馳せた彼らをばっさりぶったぎっている。
小気味い。
他にも有名な絵から無名の絵まで様々。
個人的にはゴヤの鬼気迫るゲリラの絵、そして手術の光景を描いた明暗の対照的な2枚の絵が印象的だった。 -
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『怖い絵』『新 怖い絵』一気に読破。面白くて為になる。
ふだん美術や絵画に馴染みの無い層向けに"怖さ"という独特の切り口で娯しみ方(絵画の"読み方")を教えてくれる。
主役はもちろん名画の数々なのだが解説文にも筆力扛鼎たるものがある。片言隻語も忽せにしない筆致がより一層名画の世界観ー絵画には物語があるーを引き立てている。
それもその筈で著者はその昔小説の賞に応募して最終候補まで残ったこともあるという独逸文学者だ。名画の解説それ自体が一つの文芸の域に達していると言えよう。
過不足なく雕琢された美しい日本語で極上の名画を"読む"。この読書体験は実に得難いものである。 -
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新婚旅行でパリに行ったため、予習のため読んでいた。
ロマノフ、ハプスブルクも読んできており、やっぱり中野さんの文章は読みやすいしとっつきやすい。
ちょうどパリでルーブル美術館に行く予定があったため、本書が大いに役立った。歴史を学ぶという意味でも、絵画が描かれた背景を知るという意味でも。
ルーブル美術館ではルーベンスの『マリー・ド・メディシスの生涯』を見ることができたし、なぜこの絵が描かれたのかという背景も事前知識として持っていたのが良かった。
また、『ナポレオンの戴冠式』はルーブル美術館にもあるがヴェルサイユ宮殿にもある。なんとどちらも本物のようだ。この細かさと大きさの絵を2枚も描いたということ…。