中野京子のレビュー一覧
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ネタバレ今回も楽しく読むことが出来た。
中野京子さんの著作は私にとっては、あまりがっかりすることがない本が多い。
今回紹介された絵画もタイトル通り、美しいものが多かった。
その中でも印象に残ったのが、「クリュタイムネストラ」。姉妹であるヘレネのエピソードが取り上げられることが多いので、彼女に目を向けることは少ないかもしれないが、私は彼女のエピソードのほうが好きだ。殺し殺され、血で血を洗うみたいなことになるのだけれども、「美女が攫われて戦争が起きました。美女は夫の元に戻り、仲睦まじく暮らしました」という結末のほうがおかしく感じてしまう。
その「クリュタイムネストラ」の絵画。ジョン=コリアの作。とても強くてかっこいいクリュタイムネストラ。もちろん彼女も悲劇が待ち受けているのだけれど、それでも意志を感じさせるところがヘレネより惹きつけられる理由だと思う。ミスマープルもの「復讐の女神」の中で、ある人物がクリュタイムネストラのよう、とマープルに思われてしまうシーンがあった。そのシーンも印象的で事件を暗示している。
ヴィジェ=ルブランの自画像も良かった。大変幸運な人なのだけれど、運だけでなく、努力と人柄もあったのだろうなあ、と感じさせる。苦労も多かっただろうが、幸せな生涯を送った画家の話は、やはりホッとする。クールベの自画像は、この本に載せられているのを見たのは初めてで、なんだか俳優の安田顕みたい、と思ってしまった。クールベさんにも安田さんにも、ごめんなさい、と思います…
ベッリーニの章ではベッリーニとドニゼッティの関係性が興味深かった。芸術家は繊細なものだけれど、そういった意味ではドニゼッティは芸術家らしくない。自分の周囲にいて、共感されるのはベッリーニではなく、ドニゼッティ。繊細すぎると長生きできないなあ、長生きすれば、大成する場合もある。
表紙を飾る「虚栄」。クーパー作。特定の人ではなく、擬人化によって虚栄を表したもの。驕るな、いずれその若さと美しさは失われていく、ということだが、驕ることによって美女はさらに美しくなることもある、と著者は言う。私もそう思う。「いいじゃないの、それならその短い間くらい驕ったって」本当にその通り。 -
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ネタバレ西洋の不思議な話を集めたもの。21話からなる。
ハーメルンの笛吹き男、消えた子供達が史実であったことは興味深い。本当になぜ、消えてしまったのだろう。グリム童話で読んだことがあるが、「人を騙してはいけない」という教訓を述べるものだと思っていた。もちろん、そういう側面も童話にはあるのだと思うのだけれど、史実であるなら、何故それが起こったのか、は知りたくなるもの。あしべゆうほが絵を描いている「悪魔の花嫁」にハーメルンの笛吹き男の話があった。ネズミに襲われるラストが怖くて怖くて、今でも絵が頭に浮かぶ。
マンドラゴラ、子供はハリー・ポッターでマンドレイクと覚えていた。私は「エコエコアザラク」で覚えていた。うーん、時代の違い。犬が抜くことも知っていたけれど中野京子さんの「可哀そうなワンちゃん……。」には激しく同意。
ブロッケン山の魔女集会、の章にはゴヤの絵「魔女たちの集会」、ファレロ「魔女の旅立ち」が紹介されている。どちらも素敵だが、より肉感的なファレロの絵は大丈夫なのかな、と思った。ともにスペイン人なので、異端審問とかの心配をしてしまう。ヴァルプルギスの夜、子供の頃、子供向けの「ファウスト」を読んだことがあったのだけれど、ヴァルプルギスの夜についての記述の記憶はない。
蛙の雨、ファフロツキーズ、SEKAI NO OWARIの歌詞でこの言い方を知った。現象自体は知っていたが、蛙だけでなく、オタマジャクシ、魚もあったと思う。この章の始めに書かれている、子供の自殺に母親が手を貸してしまった事態のほうが、確率としては低すぎるくらいのように思う。
犬の自殺、この話は初めて聞いた。犬が飛び降りたがる橋の話は聞いたことがあるのだが、まあ人を飛び降りたがらせる橋や駅や崖があるとしか、思えないようなことは聞いたことがあるので、さほど不思議には思わなかった。しかし獣医は人間相手の医者よりも5倍も自殺者が多い、というのは初めて聞いた話だった。
ホワイトハウスの幽霊、この話も聞いたことがある。偶然の一致というのは凄いもので、数字の遊びみたいなものかもしれないけれど、確かにこんな偶然はなかなかないだろうなあ、とは思う。
貴種流離譚、ディカプリオ主演の「仮面の男」も見に行ったし、遙か昔にデュマの「鉄仮面」も読んだことがあったので、その話だと思ったが、他にもいろいろ出てきたのが面白かった。アレクサンドル1世の話はとても面白い。日本でも明智光秀は生きていて天海になった、とか、源義経は生きていてジンギスカンになった、などがある。やはりそのような話はロマンがあるのだろうか。
ディアトロフ事件、こちらも有名な話。実際に何が起きたのか、今は調べる術もなく、想像することしか出来ないけれど、こんなに想像を掻き立てる話もなかなかない。私は自然発生的なものだと思っている(雪崩や超低周波も自然発生だし)。人間は何でも出来るようになったかのように見えるが、まだまだ不可思議なことは残っているように感じる。 -
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ネタバレテューダー朝からの人物とその人物にまつわる絵画の本。もう何作も小説、映画、演劇が作られるようなドラマティックな人生の目白押し。中野京子さんの本をたくさん読んでいるので、既知の部分も多くあったが、ヴィクトリア女王に関してはあまり知らなかったので、興味深く読んだ。映画「至上の恋」は、この話だったのかぁ、と今更ながら知った。ヴィクトリア女王は当時の王室では珍しく恋愛結婚で、アルバート王配も愛人で煩わせることもなかった。王配は王室の改革に奔走し、パクスブリタニカに大きく貢献したといえる。しかし、王室は代々親子仲が悪い。王室だから悪いのか、そもそも親子仲がいいのが稀なのか、分からないくらい悪い。親子というのは難しいものだなあ、と思う。
イギリス王室で私が一番印象に残っているのが、「アールデンの公女」。ジョージ一世妃である。もう可哀想で、可哀想で。ヘンリー八世が離婚するために国教会にしたのに、妻の側から離婚されるのは嫌なんかい?
話は全く変わるけれど、家系図でよく見かける、マチルダという名前が最近つけられないのはなぜなのだろう? -
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ネタバレ面白かった。「ワトソンと鮫」、赤ずきんちゃんの寓話の教訓、不屈の人のメーリアンのエピソードなどは別の中野先生の著書で読んだことがあったけれど、それでも絵画を通して、その絵画に描かれた生き物と通して語られると、また別の側面から見ることが出来て面白い。しかも生き物の本を書く人の疑問とあって、目の付け所が違うなあ、と思う。
中野先生のエイに対するトラウマの話、面白かった(申し訳ありません)。早川先生の掛け合い込みで面白いのだと思うが、恐怖というものに客観性がなくなるのは「怖い」というキーワードで何度も本を書く人でも同じなのだと思った。
ミツバチで人類は滅ぶのか「ヴィーナスとクピド」クラナッハ と ハエで人類は復活できるのか「聖母子」クリヴェッリ の二つは本当に興味深い。マゴット治療についての話が凄すぎて。
猿に対しての認識の違いも興味深かった。これも以前、中野先生の著書で読んだことがある。
てっきり実在しない「怖い」いきものの話だと思っていたが、取り上げられていた生き物の多くは実在するものだったので、それも驚きだった。 -
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ネタバレ再読。こうやって絵を読み解くことが出来るのは幸せだと思う。
今回、何度目かの再読だが、01 消えた少年たち、については子どもといろいろ話をした。ちょうど薔薇戦争を習っていたからだ。教科書では薔薇戦争終結、チューダー朝が始まる、という二言で終わってしまうことだけれど、その中でもいろいろなドラマがあり、悲劇がある。私は「戦争の終わりに両家の男女が結婚し、ピンクの薔薇になりました、めでたしめでたし」のように覚えていたので、今回しっかり読んでみて、自分がなんと浅はかな読み方をしていたかを痛感した。
05 トロイア戦争の悲劇 はこの絵自体にはさほど興味がわかなかったが、先日行った、メトロポリタン美術館のエル・グレコの「羊飼いの礼拝」とそっくりな絵が、プラド美術館にあり、それを見比べて非常に興味深かった。グレコの光の当たり方は劇場のように見える。また人の顔の伸び方(子供の頃からソラマメ型と思っていた)がやはり独特。しかし嫌いにはなれない。フェリペ二世が「祈る気になれない」が評価していた、という気持ちが分かるような気がする。
12 あふれかえる死 はブリューゲル「死の勝利」。プラド美術館所蔵。大きい図で解説を読みながら、骸骨の動きや人の動きを見ていた。とても楽しい。ブリューゲル展、日本でやらないかなあ。
同様に 10 異端審問所の妖怪たち のゴヤも大きな図で見ていた。ゴヤ展、日本でやらないかなあ。13 笑うコサック レーピン「トルコのスルタンへ手紙を書くザポロージャ・コサック」も大きい図で見る。亡くなった義父が残してくれた「講談社 世界の美術館」シリーズが非常にありがたい。
先日行った、メトロポリタン美術館に来ていたジェローム(来ていた作品は「ピグマリオン」)。こちらで解説されていたのは「仮面舞踏会後の決闘」。決闘後の虚無感がとても現れているように思う。
ああ、見たい絵が尽きないなあ。 -
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こういった絵の解説?というようなものは今まで手を出したことのないジャンルだった。だけどBOOK・OFFの端にいたのにも関わらず、えげつない存在感を醸し出していたこの本に思わず手が伸びた。
自分自身の好きな絵はルドンの「キュクロープス」(夜に見ることは勧めません)だったり岡本太郎の「明日の神話」だったりで、そういった奇妙で恐ろしさも感じる絵に目が釘付けになる。そんな自分からしたらこの本のタイトルと表紙に引かれないはずがないのだ(実は中学生?とかそれくらい昔にも表紙とこのタイトルに引かれた経験あり。その際は怖くて買えなかった)
他の積読作品たちを押し退けて即座に読み進められたこの本は、作者の図ることの出来ない幅広く、そして絵という部分に至っては素晴らしいくらいに深く練られた考えによって、飽きることなくじっくりとページをめくってしまった! 正直、読書数稼ぎで流して読もうなんて思っていたのに、読み返すわ、前のページに戻るわ、熟読するわで途方もない時間をかけてしまった。が、後悔なし!
解説の方が書かれてたように、この本は「絵そのもの」が怖いのではなく、作者の書き方によって絵を怖く見ることが出来る。
はじめは「何でこんな絵が怖いんだ?」と思って文章を読み進めていくと、怖い怖い怖い怖い。と少しずつ背筋がひんやりとしてきて、もう一度絵のページを開く(もちろん恐る恐る) 怖い!!!
さっきまで全然怖くなかった絵が、めっちゃ怖い!
もう今日は寝れなさそうだ、よしもう一ページ読もう。なんて事で、かなりの分量でしたが(読み返したせい)短い期間で読むことができました。
どうやら他にもこの「怖い絵」シリーズはあるみたいなので、合間合間で他のも読んでみようかなぁと思いました。
新たな知見に満ちた本! かなり好きです!