あらすじ
運命の支配か、宿命への挑戦か――。エリザベス一世と熾烈な闘いを繰りひろげたメアリー・スチュアート。血族結婚くりかえしの果てに生を受けたハプスブルクの王女マルガリータ・テレサ。強烈すぎるロシア皇帝イワン雷帝に嫁いだ七人の王妃たち……。数百年の時を越え、王族の生々しい息遣いがここに甦える。『恐い絵』の著者がヨーロッパ王朝の光と闇を辿る歴史読み物。 ※本電子書籍に図版等は収録されていません。
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Posted by ブクログ
中野京子さんの本は、膨大な歴史と芸術に関する知識をテーマ縛りで解説してくれるので大変わかりやすく面白い。
この本も、王と女王の関係をテーマにオムニバス形式でまとめられている。
プリンセスと聞いてディズニー映画を想像したらとんでもない。
ハプスブルク家の血縁結婚、幽閉される王女、イワン大帝の顔の見えない妻達など
どれもこれも女性の視点から見ると、今の感覚では到底許されない人権侵害が必須条件としてまかり通っている世界。ホラーです。
同時にそうまでして血を繋がなければならなかった王の側の苦しみもあったんだろうなと。
当時のヨーロッパ王族が血縁を駆使して国の存続や領土拡大という国家事業をやっていたというグロテスクな現実にドン引きするとともに、この本では彼らの人間的な感情を想像し共感することもできる。
それは肖像画や歴史画の存在が大きい。
とくに印象に残ったのは、ベラスケスの才能によって生きているように描かれた肖像画達や、のちの時代に資料と画家の想像を交えて描かれた「イワン大帝とその息子」の衝撃的な姿。
単に歴史を知る為だけでなく、生身の人間を通して現代と共通する部分を見出す力が絵画にはあるのだと改めて思った。
Posted by ブクログ
学部時代に美術史をかじったときに先生が”絵というのは、その歴史と合わせて見ないと全然面白くないのよ”とおっしゃっていたのを思い出した。
本当にその通りだと思う。
いくつかの王家についてのドラマを、話ごとに特定の女性に焦点をあてて描き出している。
当時の王政を世界史で習ったときにどうしてこんなことが起きてしまったんだろう?と疑問に思っていたことが、本書を通して納得できた。
これはある特殊な人たちの織りなす、凡庸で魅力的なお話の集まりである。
Posted by ブクログ
放心しました。
表紙の少女マルガリータは結婚七年目、四回妊娠し、女児一人残し二十二歳を待たずして身罷る。長すぎる幽閉後に断頭台で処刑されたメアリー、自制できぬ暴君ゆえに跡継ぎ息子を勢いで殺してしまうイワン雷帝(後にその様子が絵画となる)、伯爵との結婚を望んでいたにもかかわらず(一族、自分の身分昇格の為)ヘンリー八世に見初められ結婚、息子を流産させた為に自分を誘惑した魔女として処刑されたアン・ブーリン…。
王族を生きた人たちの悲痛が伝わってくる、そんな一冊だった。
Posted by ブクログ
絵はただ鑑賞するもので背景までは気にしてませんでした。
でも背景や時代背景を知ると辛いし怖くもありますね。
まさに女性がモノ扱い。
やっぱり中野さんの本はおもしろいなぁ。
Posted by ブクログ
この時代の女性の扱いというか、地位が怖いまでにわかる一冊。でも個人的にイワン雷帝が好き。もっと穏やかというか、幸せに?朗らかに?過ごせればと、願ってみたり。ベラスケスの偉大さも分かる一冊。ヘンリー8世は好きになれないが、エリザベス1世も好きにはなれない。読む人によって肩入れする人は大きく変わりそう。それがまた、楽しい。
Posted by ブクログ
まごうことなき一般人の私、王や王妃、王子様お姫様などまるで別世界の話。
ヒラヒラ美しいドレスを着て、社交パーティーに習い事、たくさんの召使いを従えて蝶よ花よとチヤホヤされて生きている…そんな貧相なイメージを大雑把に持っていて、そこに中野さんの絵画エッセイから、時代の激動に巻き込まれて悲しい運命を辿ることになった数名の王妃を知る程度。
こんな知識で読んだ本著、読んでみて…王や王妃の時代時代、何がきっかけで幸せに生きれるか、また真逆かはわからない。
そして…綺麗な世界では決してない。
とても厳しい。
別世界でよかった。
レーピンの『イワン雷帝とその息子』は本当に傑作。
Posted by ブクログ
本当は「怖い絵」を買おうと思ったのですがイマイチ食指が動かず、こちらを。
こういう話、大好き。
しかし昔のヨーロッパは、国を越えると同一人物でもゲオルクがジョージになったり、従兄弟や義姉、叔父と結婚してみたり血筋が濃いわで大変なことになってるな……。
絶対生まれてなくてよかったと思ったのはロシア。夫は妻を殴るのが当たり前なんだって。絶対嫌だそんな国。
この手の本、もっと読みたいなー。
Posted by ブクログ
メアリー・スチュアートとエリザベス1世、歴史上の勝者は後者だったが、果たして一人の人間としてはどうだったか…。長年の謎が、すっきりと氷解した!マルガリータは幸せな王女だったのか?絵の中に閉じ込められた不思議を、深い歴史と共に紐解ける、興味深い一冊でした。
Posted by ブクログ
世界史だけはどうしてもできなかったわたしが中野女史の本はとても面白く読めるのは彼女の筆力ゆえ?今回もわかりやすくさくさく読めました。ただの壁に掛けられた絵が生々しく動き出す瞬間は毎回ぞわざわします。しかし女性に対する肩入れ具合を見ているとなかなか女史自身も生きづらい方なのではといらん心配をしてしまう…
Posted by ブクログ
中野京子氏の語り口は独特で、歴史上の人物に対する感情がはっきりと伝わってくる。
時に自分の抱く像とは異なり、反発を覚えつつも、
新しい切り口に興味を覚える気持ちのほうが勝る。
ベラスケスの絵にのこされたマルガレーテ王女など、歴史上であまり有名ではない人物が、動きを伴って見えてきたり、とても楽しんで読んだ。
Posted by ブクログ
中野京子さんの著書を2冊続けて読みました。若干業務も入っておりますが。いやはや怖いです。「怖い絵」は見た目だけではないその絵が描かれた背景が怖い。「残酷な王と悲しみの王妃」はヨーロッパの王の信じがたい残酷さと凄惨な事件が怖い。
しかし一番怖いのはこういう話を淡々と調べあげて本にまとめ続けている中野さんかも…。
Posted by ブクログ
書店のナツイチ・フェアで見つけ、書名に惹かれ読み、堪能しました。別のカドフェスで「怖い絵」を買っていたので同著者の本をとりあえず買っていたら、こちらの方が面白かった。
アン・ブーリンは映画などで著名だけど、ゾフィ・ドロテアとかイワン雷帝については無知だったので、魅力的な人物を知れて満喫しました。
Posted by ブクログ
読書録「残酷な王と悲しみの王妃」3
著者 中野京子
出版 集英社
p38より引用
“ これまでのいきさつ上、死んだ息子の嫁
をカトリーヌが優遇するなどありえなかった。
メアリーがもう少し知恵を働かせ、姑に対し
て慎重な言動をとっていれば状況は違ってい
たかもしれないが、今となっては「子なきは
去る」しか道はない。”
目次より抜粋引用
“メアリー・スチュアート
マルガリータ・テレサ
イワン雷帝の七人の妃
ゾフィア・ドロテア
アン・ブーリン”
独文学・欧州史に明るい著者による、ヨー
ロッパの五人の王と王妃を巡る逸話を取り上
げた一冊。同社刊行作文庫版。
政敵との覇権争いをした者から夫のでたら
めさに振り回された者まで、肖像画とともに
ダイナミックなエピソードが記されています。
上記の引用は、メアリー・スチュアートと
カトリーヌ・ド・メディシスの関係がひっく
り返ったことを記した項での一節。
王妃として我が世の春を謳歌して、姑にも悪
い態度で接していたところ、夫が死に宮廷に
居場所がなくなったそうです。人生はいつ何
時逆転してしまうか、誰にも分からないもの
なのかもしれません。
自分の息子を殴り殺したり、自分の妻を斬
首にしたりと、ロクなやつがいません。しか
し、現代のニュースを見ていても、同じよう
な事件が後を絶たないのを見るに、人は思っ
た程進歩していないのではないかと感じてし
まいます。自分がそうならないためにも、歴
史を学ぶことには意義があるのではないでしょ
うか。
ーーーーー
Posted by ブクログ
絵の中の貴女は泣いているのでしょうか。
メアリー・スチュアートとかアン・ブーリンは知っていたけれど、恥ずかしながらマルガリータ・テレサ(あのベラスケスの少女である!)、イワン雷帝の七人の妃、ゾフィア・ドロテアは全然知らなかった。面白かった!
絵は真実を伝えないかもしれない。でも、見えるもの以上を伝えられるんだ。
Posted by ブクログ
事実は小説よりも奇なりと言うか、現代人とは感覚が違いすぎるのか…、血生臭いエピソードに彩られた王妃と王の物語。
テンポの良い文章なので読みやすかった。
Posted by ブクログ
中世ヨーロッパを舞台に実在した王と王妃の悲しみの歴史。
読み終えて率直に中世と呼ばれる時代、ヨーロッパの王族間がこんなにも複雑な婚姻関係にあったことに驚かされました。
ちょっと特殊な高校の専門コースに通っていた私自身が世界史を深く学んでこなかったこともあり、この複雑な家系を理解することは困難で、各章を純粋な一つの歴史として読み終えました。
相変わらず登場人物の相関関係を把握することが苦手な私にとって、カタカナ名は一層の苦労を要しました。
王の権力が強大が故に跡目争いは熾烈を極める。
そこに隠された人間の本性はやはり恐ろしいものがありました。
説明
内容紹介
16、17世紀のヨーロッパを支配した王たち。現代に残る絵画や財宝にみることができる華やかさとは裏腹に、王朝を存続させるため政略結婚した王や王妃が歩んだ激動の人生とは!?(解説/原田マハ)
第1章 メアリー・スチュアート
第2章 マルガリータ・テレサ
第3章 イワン雷帝の七人の妃
第4章 ゾフィア・ドロテア
第5章 アン・ブーリン
内容(「BOOK」データベースより)
運命の支配か、宿命への挑戦か―。エリザベス一世と熾烈な闘いを繰りひろげたメアリー・スチュアート。血族結婚くりかえしの果てに生を受けたハプスブルクの王女マルガリータ・テレサ。強烈すぎるロシア皇帝イワン雷帝に嫁いだ七人の王妃たち…。数百年の時を越え、王族の生々しい息遣いがここに甦える。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
中野/京子
作家・独文学者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
Posted by ブクログ
スコットランド女王のメアリ、ベラスケスの絵のモデルとなったスペイン王女マルガリータ、ロシアのイワン雷帝と7人の妃、後のイングランド王ジョージ1世の妃ゾフィア・ドロテア、エリザベス1世の母アン・ブーリン。
肖像画からも垣間見える、女性として最高の地位に就きながらも壮絶な人生を送った者たち。
この中でマルガリータだけは幸せを感じていたかもしれない。
しかしヨーロッパの王族は深く絡み合っているので複雑だな。
Posted by ブクログ
ヨーロッパは地続きなんだな。と、改めて思う。
戦国時代の大名が家の繁栄や安泰のために、息子や娘に政略結婚させたように、国を越えてそれをやっていた。
だから王族、皇族は海外の王族、皇族と親戚になっていて、名前も似たりよったりでややこしい。
何度も系譜に戻って確認した。
以前読んだ小説と映画では、アン・ブーリンは自分から仕組んでヘンリー8世に近づいたように描かれていたけど、本書ではヘンリー8世のゴリ押しで仕方なく結婚したようになっている。どちらが正しいのかはわからないが、当時の王様はやりたい放題、男尊女卑な世界だった事がうかがえる。
Posted by ブクログ
中野さんの著作なので面白くないわけはないんですが、4人で1冊だと間延びしていた印象です。脱線があったり感情の類推にポエミーに何ページも使っていたり。「はじめてのルーブル」のような軽快さが一番好きです。それでも有名なアンブーリンさんやらかわいそうなイワン雷帝、美しかったけど流れを読み違えたメアリー・スチュアートさんとエリザベス女王の確執など読んでいて面白かったです。女性の地位が低く政略結婚がデフォルトかつ暗殺も気にしていないといけない中でのし上がるのはやはり並みの心がけではいけないんでしょうね。華やかだけどお気の毒。
Posted by ブクログ
15世紀~17世紀ごろのヨーロッパの凄惨で劇的な生涯をすごした人たちを、絵画を辿りながらどんな人物だったか、どんな人生を歩んだか解き進めていく本。
凄惨な話はなぜこうも人を惹きつけるのか。
読みやすい文章と、全体の構成も流れを汲んでいるので、あっという間に読み終えてしまいました。
謀略や裏切りなど血なまぐさい話がつきものの王室ですが、こんなにひどかったとは・・・。
世界史を避けてきた身としては、年表や系譜などの知識が抜けている分、面白さが半減してしまったのかと思うと悔しい。
でもこの頃の女性は日本でもそうだけど、子供を産む道具としてでしか見られないことが多いから、相当なプレッシャーだったんでしょうね。
子供を産んでも自分やその子供が殺されてしまうかもしれないという恐怖・・・。
といっても、現代の尺度でしか考えられない私より、もしかしたら彼女たちは相当タフだったのかもしれないいけど・・・。
その女性の運命を決めてしまう非道な王様たちも、いろんなタイプがいて、本当にろくでなしの人間もいれば、過去の生い立ちが一生ついて回ってしまう人など、王様側の視点でも見れるのが面白いですね。
なんとな~く歴史が学べる本。
まるでどこかのテレビ番組みたいだねww