中野京子のレビュー一覧
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洋画の絵解きをエッセイとして楽しめる本だ。シリーズものだが、私としてはこの本から入った。怖い絵というのだが、何が怖いのかをエッセイの中で明かしてくれる。
私たちが恐怖を感じるのは説明のできない何かを感じたときなのかもしれない。理解不能の事実を突き付けられたときに恐怖は生まれる。本書で紹介されている絵画にはその意味での様々な意味不明が登場し、明かされていく。
一つの作品をどのように解釈するのか、鑑賞するのかは個人の自由だと思う。ただミレーの「晩鐘」をダリが解釈した見方はどう考えても邪道であり、絶対そうではないと思う。しかし、その作品がそういう幻想を抱かせたのなら、少なくとも鑑賞者の心象は虚偽とは言い切れない。
絵の怖さはさまざまな憶測を人々に想起させ、無責任に人をひきつけ続けることにあると感じた。 -
Posted by ブクログ
概ね300年間に及ぶ、ロシアのロマノフ朝時代に関して「絶好の入門書」となっていると思う。「ロシア史?」と多少なりとも関心が在る方には強くお薦めしたい感の一冊だ!
本書では、各節の導入部で画を紹介している。絵画作品に関しては、史上の出来事や言い伝え、伝説の様になっている事件等に題材を求めたモノや、君主の肖像画というようなモノが多々在る。そういうような作品を紹介しながら、題材になっている事件や人物に関連する物語が展開する訳である。
ロマノフ朝は混迷の中から産れ出た…そういう状況が語られた後、「過ぎる程」に劇的な側面も在る、歴代皇帝達の歩んだ人生や、彼らの治世下での様々な様子が綴られている。
これは好い!! -
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ネタバレ相変わらずの面白さで2日足らずで読み終わりました。
一番印象に残ったのは、ヨルダーンスの『豆の王様』。現代を生きる私たちはハレとケの境目が曖昧になっている、という著者の見解を読んでからこの絵を見ると、確かにここまで我を忘れて酒を飲むこともないな、と感じます。
表紙を飾るレーピンの『皇女ソフィア』もインパクトが大きい。まさかここまで壮絶な兄弟喧嘩が過去にあったなんて、と驚きました。
解説で村上さんも書かれてましたが、本当に一作品一作品、映画を見ているような気持ちになります。絵が書かれた背景を知れば知るほど怖くなる。このシリーズ、もっと読みたいです。 -
Posted by ブクログ
読みやすくわかりやすい本だった。1点1点の絵の解説というより、イエス・キリストの物語の挿絵に名画が使われているという感じで読み進めやすかった。
取り上げられているエピソードは知っていることが多かったが、それを画家はどう描いたか、その背景としてそれを描かれたころには、一般的にどのようにとらえられていたのか、どのように解釈されていたのか、そういった面も伺うことができたのも面白かった。
加えて、地図が載っていたのも興味深かった。実在の場所で実際にあったこととして、イエスの生涯が伝えられているということが実感できた。
それと同じ場面を、別の画家が描くと描き方も変わるというのも面白い。たとえば「最後の晩餐」もレオナルド・ダ・ヴィンチとドメニコ・ギルランダイオで配置や描き方が違う。こういう比較をもっと観たい。 -
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中野京子が名画の背景を主観と批評を交え読み解いていくシリーズ第三弾。
正直絵画にはそこまで興味がなかったのだが、時にユーモアたっぷりに、時にエスプリを効かせ、時に辛辣な観察眼を発揮し綴られていく文章は名人芸の域。当時の時代背景や風俗と巧みに絡め、作者の人生や心情をも投影させるような文章は読みやすく面白い。
絵画そのものの迫力もさることながら、その絵が描かれるに至った背景を知る事によって、人間性の深淵をも抉り出すような凄みと深みが増す。
今巻で特に印象的だったのは「悪しき母たち」。
某翻訳恐怖小説短編集の表紙にも採用された有名な絵だが、不勉強な自分は恥ずかしながらこの本を読むまで作者はおろかタイトルさえ知らなかった。しかしまさか堕胎の罪を犯した女(娼婦)の罪と罰をテーマにした絵だったとは……
章立てが短いので集中力を途切れさせずに好きな所から読むことができるのも親切。 -
Posted by ブクログ
カメラのない時代、記念写真代わりになるのは「絵」だが、誰でも描かれるものじゃない。相当な財力と描かれるのにふさわしい家柄が必要だ。
そんな条件を満たしていたのが、マリー・アントワネット。父親は神聖ローマ皇帝フランツ1世、夫はフランス国王ルイ16世。文句なしの家柄と財力を背景に、幼少から死の直前までのアントワネットには多くの絵画が残されている。
本書はアントワネットが描かれた絵画を歴史順に並べ、彼女の生涯を追いかける。彼女の偉人伝だ。ヴェルサイユ宮殿での絶頂期からフランス革命を支持する大衆による監禁、そしてギロチン処刑と、空前絶後な波乱の一生を送ったアントワネットだが、その行動は常に受け身だ。姉の急死によりフランス王妃となり、ルイ16世の優柔不断と親国王派の人材が次々と亡くなったことが彼女を追い詰める。自らの意思なく、運命に弄ばれた不幸な一生だった。それゆえにフランス革命を象徴するアイコンにふさわしい。
夫ルイ16世が処刑され、次の処刑に自分が選ばれることは間違いのない状況で、喪服を着た彼女の肖像画が一番印象的だ。まだ30代なのに、苦労と恐怖で白髪になったマリー・アントワネットにかつての威厳も気品もない。そんな自信のない表情こそが本当の彼女だったのだろう。 -
Posted by ブクログ
「怖い絵」を紹介した中野京子さんの人気シリーズ。今年は美術展も予定されているので楽しみ。副題が関係していない作品も多いように思いますが、内容は安定の面白さです。印象的なものだけ抜粋。
ベラスケス『ラス・メニーナス』
一枚の絵画に詰まった情報量。俯瞰して眺めたような構図が以前から好き。あどけない表情を見せる5歳のマルガリータ王女を囲う従者たちと、バルボラの隠しきれない怒りと哀しみ。
ジェラール『レカミエ夫人の肖像』
はだけたドレスと艶っぽい線の細さの裏に潜んだ、女性の死をも恐れぬ美への追求。見方は180度変化し滑稽さすら感じる。
ブリューゲル『ベツレヘムの嬰児虐殺』
恐るべき改竄の事実。
ビアズリー『サロメ』
少し前にワイルドの『サロメ』を読んでいたのでより思い入れがある作品。小説のなかのサロメは無垢で猟奇的、恐れを知らない少女のイメージが強かったけれど、ここでは成熟した女性の終生の姿だった。妖艶なサロメと彼女を抱える異形の2人の対比に目を奪われる。
ルーベンス『パリスの審判』
三女神とパリスのやりとりが一枚の絵から十二分に伝わってくる。
ドレイパー『オデュッセウスとセイレーン』
セイレーンの登場により起こる船上の恐怖と混乱。本作では一見美しくも映る人魚セイレーンですが、彼女たちの目的を思い出すと湧き上がるのはやはり恐怖。ギリシャ物語の名シーン。
ファン・エイク『アルノルフィニ夫妻の肖像』
計算しつくされた構図のなかに込められた契約のかたち。
ベックリン『死の島』
黒々とした島の前にぼぉっと浮かぶ白装束の後ろ姿。この世のものではない、見てはいけない世界を前にしている気分に。